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2章 

八話 半魚人

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天羽は急いでハシゴを降り螺旋階段を下っていく。

「こなくそぉおおお!」

そこには体が上下に別れ壁に張り付きグチャグチャになった死体と足が溶け気絶している兵士。
そして兵士より頭2つほど大きい身の丈、刺々しい背びれ、エラのような切れ込みがある胸元、ゴツい手、水かきのような膜、ウロコに覆われた腕、ヌメった体、太い尾ひれ、大きな口、サメのような歯、真っ黒な目。

人間などとても太刀打ちできそうにないそのような魔物に兵士が気力を振り絞りショートソードでそのクマのように大きなてから繰り出される振り下ろしを凌いでいた。



「加勢する!」

天羽は咄嗟にゲーム脳は働かせ考える。
相手はどう考えても水属性である。
書庫の本でその場に精霊の力とイメージさえ出来ればある程度の呪文は変幻自在に活用出来ると書いていたことを覚えていた。
そこから水属性に有利で大気中に存在する力、それらの条件から導き出される精霊の力は雷の力である。

あとはどのようなイメージをするか。
前回みたく相手の数と配置がわかっているならまだしも今回は数は不明、相手の強さもおおよそですら分からない。
贅沢に魔力を使うにも残量不明、漫画のように成長しているとは限らず数値化出来る呪文を使って残り0だなんて洒落にならない。
そうなると放出系の呪文は使えなかった。
消去法、エンチャント系か具現系に絞られる。

相手は自分より大きく力も強い。
エンチャント系で殴りあうのは防御に割り振る魔力があるのか分からず分が悪く思えた。
残りは具現系となり雷の特性と合う武器、それは直剣だった。

天羽はゲーム脳をフルに回転させ瞬時に思いついた雷の力を、体中の魔力を手のひらに集めるようイメージする。
手のひらに痺れるような感じがしたらそれを薄く長細く伸ばすイメージをする。

バチバチと鳴り神々しく輝く刃渡り六十センチになろうかという大きな剣が出来上がった。
出来上がると同時に兵士を押しつぶさんとする魔物へ階段から飛び降り斬りかかる。

剣は脳天から腰にかけて振り下ろされ切れたように思える。
すると上半身は左右に割れ断面は焼き溶けていた。

「リコさん大丈夫ですか!」
「なんとか俺は大丈夫だが仲間が・・・、それよりまだ下にいるかも知れん気をつけてくれ。」
「分かった、ここで待機していて欲しい」

天羽は急ぎ階段を降りていった。


「奴ハ何ヲ シテイル。」

日本語の外人訛りが聞こえてくる。
翻訳機能はどうやら魔物の会話も翻訳するらしい。

「ナンダ コノ ヒカリ ハ。」

チィ!
剣そのものが光ってるおかげで暗くはないがすぐにバレちまった
だが見える範囲で2匹か、いける!

「化物めこの草薙の剣のサビとなるんだな!」

天羽は先ほど飛び降りつつ斬りつけた際足を軽く捻挫していたためアドレナリンが大量に分泌されていた。
おかげで恐怖心などあまり感じ取れず振り下ろされた手を真っ向から斬りつける。
触れると同時に切り分かれていきそのまま押し切る。
押し切る勢いで肩から斜めに袈裟斬りにした。

「あと一匹ぃ!」

天羽が斬りかかろうとするが接近戦は不利とみた半魚人が水を天羽に向け吐きながら、壁の一部が崩れ海へと面していた方へ逃げる。
水を被ってはまずいとたまらず天羽は回避行動を取りその間に半魚人は逃げ去っていた。

念のため天羽は持っていた剣を海中へ投げ込み感電し浮き上がってこないか確かめたが浮き上がってこない。
一旦落ち着いたので生き残った兵士のリコさんに火の灯ったカンテラを持ってきてもらい海面を監視していてもらった。


落ち着いて周りを見てみる。
中央に台座があり上階でみた装置の小ぶりなのが据えられている。
装置の中央に何か設置していた跡が感じ取れたので周りを探すと壁際に手のひらサイズの加工されたトパーズが落ちている。
それを拾い中央にはめ込んでみた。

するとトパーズから温かいヒカリが漏れだし周りの空間がほんのり明るくなる。
それと同時に目の前の空中へ文字が現れた。


『congratulations』


最初、呆気に取られたがすぐに例の奴の仕業だと気がつく。
そもそもおかしかったのだ。
魔物が入れないような地域に魔物が入りその入れないようにしていた装置を止める。
更にクトゥグア陣営の者であれば要である宝石を壁の隅に放置せず破壊するか持ち帰るはずである。

天羽と兵士リコは死んだ兵士3名を灯台の中に安置し這々の体で街へ帰るのであった。
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