殺意満載な異世界に出向する羽目になった。

二都遊々

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3章

九話 安堵

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無事、灯台の機構が機能したのか魔物に襲われず街についた二人はアーケロン公に報告に向かう。
既に夕暮れだったため公爵家の屋敷へと続く道に人はあまり見えず商店も閉まり酒場や娼館といった店に火が灯り始める。
昨日までグールに連日襲われていたのがなくなり安心と笑顔がこぼれ始め夜の街が活気付いてゆく。


公爵家の屋敷に着いた天羽と兵士リコはアーケロン公へ報告に、灯台の死体回収諸々のため人を集めに兵士詰め所へそれぞれ別れて向かっていった。


屋敷への入り口をノックしメイド服を着た女性の案内のもと執務室に到着する。

「アーケロン公、今戻りました。」
「あちこち服が破けているが大きな怪我が無くて何より、灯台の魔物を遠ざける機構は直ったかね。」
「無事元通りになりやはり魔物の仕業でした。ですがその過程で兵士3名が犠牲となり帰らぬ者となってしまい申し訳ありません。」
「君と我が兵士4人に大変な重荷を背負わせて閉まって此方こそすまない、よくぞこの街を救ってくれた感謝する。」

灯台までの出来事、兵士の死に様など数十分話したあと気が抜けたからか足が痛み始めその日は客室に戻り休むことになった。


再びメイド服の女性に客室へと案内され、あとで医者が診察に来てくれることを言付け退室していった。

天羽はソファーに座る。

「ニャルラトテップ 居るなら出てこい」

ほとんど陽が沈み窓からその日最後の光が差し込み蝋燭が灯った部屋の中でも自分の影が大きく壁にまで映し出されている。
その影の中から生け贄の男、ニャルラトテップが姿を現す。

「今日は五臓六腑に染み渡る程の活躍だったねおめでとう。君の活躍によりボクの退屈な時間が華やかな時間に変わったよ、君には期待できそうだし今後もっと楽しませてくれるといいなー。」
「最悪だなお前」
「そんなに怒らなくていいじゃないか。どうせこの世界はボクとクトゥグアが創りだした世界じゃない。君の世界じゃここは存在しない所謂テレビゲームのNPCだよ?もっと楽しまなくちゃ♪」

こいつとマトモに話なんて出来やしない
自分の勝ち負け以前に楽しむコトを再優先にするサイコ野郎め

天羽は非常に不愉快になりつつも今回で分かったが経験も無ければ呪文を行使する魔力が絶対的に足りないことを思い知った。
悔しいがこの不条理な世界で適応するしか無いのである。

「楽しむということは俺も成長したりするのか?」
「もっちろん。」
「じゃあ今俺のステータスを教えてくれ」
「呪文あるから自分ですればいいじゃん、まぁ今回オマケで教えてあげるよ。生命力の最大が1あがって魔力は変わらないね。それより君の生命力が60まで減ってるよ、現代人は捻挫して少し運動するだけで四分の一も死ぬなんて軟弱だね。」

ニャルラトテップは手を広げクルクルと回る。
まるで入学式が終えすぐに友達となった少年が話しかけるように、無邪気な笑顔を此方に向け接してくる。
少年と違う点は悪意だなんてものは違った意味で存在しないし少年と呼ぶにはサイズが大きすぎる。

「手早く成長する方法はあるのか?」
「色々あるけど君じゃ無理だよ女じゃないからね。」
「男でも可能な方法はないのか?」
「もぉ!質問が多すぎだよ。飽きちゃったから帰るね。どうしても知りたかったら蛇にでもなるんだね!」

そう言い残すと勢い良く扉から出て行く。
扉を開けて出たと思うとすぐ入れ替わりで医者とメイド服の女性が入ってきた。
先ほど出て行った男がいないかと聞くとそんなものはいない、きっと疲れてしまって無いものでも見たのだろうと診断を受ける。

医者の先生に足首を見てもらったところ、やはりただの捻挫らしく1日安静にしていれば問題ないという。
医者の先生を玄関まで送り届けたメイド服の女性が暫くして夕食を告げに来た。


ダイニングに着いた天羽は昼座った席に再び案内される。
やはり安全だった頃に戻ったからといってすぐに食事は戻らなかった。
昼と変わったものはスープの具材ぐらいである。

「天羽殿、その服に思い入れなどはあるのかね。」
「この服はお役所仕事の人や銀行、政務者など大人が仕事の時に着る服で特に思い入れはないありませんね。」
「それは良かった。この街でなかなかよい仕立屋がいる、話を通しておいたから街で整えてくるといい。」
「有難う御座います。」
「案内はカトレアに任せよう」

そう言うと正面に座るカトレアはスープを飲むスプーンを止め話しかけてくる。

「私で宜しければよろしくお願い致します。」

初めて声を聞いたが、なんと気品のある声だったろうか。
天羽は人生で2度目の恋に落ちてゆくのであった。
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