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世界を包み、魔物は夢を見る 前
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知っていることがある。
俺だけが知っていること。
それはこの世界には、世界を覆うような「何か」がいるということ。
そして、その何かは実体がなく、世界と重なるようにしてずっと眠っているということ。
俺がそのことに気づいたのは眠りの研究をしているときのことだった。
そのころ俺は自分だけでなく、他人や魔物にいたるまで眠らせることができたし、その人の夢でさえある程度操ることができるようになっていた。
そして最近は、自分や他人の夢の深さを調整して、見る夢にどんな違いが出るのかを調べていた。
浅い夢を見ているときは、人は現実に近い夢を見る。寝ている場所が暑ければ暑い夢を見るし、硬い床で寝れば体を痛めつけられる夢を見る。
それに対して、深い夢は現実を離れて整合性のない空想の世界のようだった。夢はあくまでも自分の過去の体験をもとに作られているはずだが、ときおり、自分が体験したはずがないことが夢に出る。
それが気になって、俺は夢の深い部分を探るようになっていた。
そして夢の深い部分を探っているときに、ふと、自分以外の「何か」が近くで眠っていることに気づく。
実際には、その「何か」が近くにいるのかはわからなかったが、その「何か」は大きくて、それでいて不定形で揺らいでいるように感じられた。
そして、その「何か」は俺の夢と、深い部分で夢を通して繋がっていたのだった。俺は夢の深い部分でなぜ、自分の知らないことが出てくるのかがわかった。
それは俺と「何か」の夢が繋がってたために、「何か」の夢が俺の夢に影響を与えていたのだった。
俺はその存在が気になって、夢の中で「何か」を調べることにした。
調べると、その「何か」は俺だけでなく、他の人や生物、魔物まで、あらゆるものを包みこんで夢を見ているようだった。
とはいえ、「何か」にはとくに意思が感じられなかった。
「何か」が身じろぎをするようにゆらぐと、水面に波紋が広がるように他の人の夢もゆらいで、影響が生じていった。
けれど、影響があるのは夢の深い部分なので、その影響を感じられる人はいないだろう。
それを除けば「何か」はただ、自分や他の人の夢と繋がっているだけのように感じられた。
俺以外には誰も、意識を持ってたどり着けない夢の深淵で、いったいこの「何か」はいつから眠っているのだろうか。
俺には想像もつかなかった。
それからしばらくして、俺は「何か」が人間にとって脅威となる存在だということを知る。
なぜなら、その「何か」は魔物を生み出していたのだ。
「何か」が夢の中であくびをするかのように泡を出すと、そこから魔物が現実世界で生まれるのだ。
おそらく誰も信じないだろう。
一般的な話では、魔物も他の生物と同様にオスとメスがいて、交尾をすることで子供をつくるとされている。
だがそれは違った。いや、交尾をして子供をつくる魔物もいるのだろう。
しかしながら、それだけではなかったのだ。もっと深い、人が知ることのない場所では、その「何か」が夢から魔物を生み出していたのだ。
眠っているだけで魔物を生み出してしまうような存在が目を覚ましてしまったら、間違いなく人間の脅威になるだろう。
あるいは、「何か」は夢から人ですら生み出せるのかもしれない。
それが本当に人と呼べるのかはわからないが。
俺にわかるのは、きっとこの「何か」は眠ったままのほうがよいということだった。
それはさておき、夢の中から魔物が生まれるなら、眠りを研究している身としてはやってみたくなるものである。
そこで、俺はその「何か」の夢に干渉してみることにした。
俺は自分でも不思議なほどに、それで自分の身に何が起こったとしてもかまわないと考えていた。
それはもしかすると、自分よりも眠りに精通しているモノがいることへの対抗心からの行動だったかもしれないし、あるいは、何か宿命のようなものに操られていたのかもしれなかった。それほどまでに無意識に近い行動だったのだ。
干渉といっても小さな魔法によるものだ。また、相手がはるかに大きな存在なので、多少の干渉をしても大きな影響はないだろう。
「何か」の夢を小さなスプーンでかき混ぜるようにすると、夢が少しだけ泡立った。そして、
ボスッ
なにもない空間から、現実世界の俺の手のひらに小さなスライムのような魔物が出現していた。
「ブヒュ。」
そのスライムはなにか空気が抜けるような鳴き声を発すると、すぐに崩れて死んでしまった。
きっと、俺が「何か」への干渉を最小限にしたためだろう。もっと強く干渉していたら、このスライムは崩れたりしなかったはずだ。
しかしながら俺の考えは確信に変わった。この世界のどこかで、「何か」は夢を見て魔物を生み出しているのだ。
俺だけが知っていること。
それはこの世界には、世界を覆うような「何か」がいるということ。
そして、その何かは実体がなく、世界と重なるようにしてずっと眠っているということ。
俺がそのことに気づいたのは眠りの研究をしているときのことだった。
そのころ俺は自分だけでなく、他人や魔物にいたるまで眠らせることができたし、その人の夢でさえある程度操ることができるようになっていた。
そして最近は、自分や他人の夢の深さを調整して、見る夢にどんな違いが出るのかを調べていた。
浅い夢を見ているときは、人は現実に近い夢を見る。寝ている場所が暑ければ暑い夢を見るし、硬い床で寝れば体を痛めつけられる夢を見る。
それに対して、深い夢は現実を離れて整合性のない空想の世界のようだった。夢はあくまでも自分の過去の体験をもとに作られているはずだが、ときおり、自分が体験したはずがないことが夢に出る。
それが気になって、俺は夢の深い部分を探るようになっていた。
そして夢の深い部分を探っているときに、ふと、自分以外の「何か」が近くで眠っていることに気づく。
実際には、その「何か」が近くにいるのかはわからなかったが、その「何か」は大きくて、それでいて不定形で揺らいでいるように感じられた。
そして、その「何か」は俺の夢と、深い部分で夢を通して繋がっていたのだった。俺は夢の深い部分でなぜ、自分の知らないことが出てくるのかがわかった。
それは俺と「何か」の夢が繋がってたために、「何か」の夢が俺の夢に影響を与えていたのだった。
俺はその存在が気になって、夢の中で「何か」を調べることにした。
調べると、その「何か」は俺だけでなく、他の人や生物、魔物まで、あらゆるものを包みこんで夢を見ているようだった。
とはいえ、「何か」にはとくに意思が感じられなかった。
「何か」が身じろぎをするようにゆらぐと、水面に波紋が広がるように他の人の夢もゆらいで、影響が生じていった。
けれど、影響があるのは夢の深い部分なので、その影響を感じられる人はいないだろう。
それを除けば「何か」はただ、自分や他の人の夢と繋がっているだけのように感じられた。
俺以外には誰も、意識を持ってたどり着けない夢の深淵で、いったいこの「何か」はいつから眠っているのだろうか。
俺には想像もつかなかった。
それからしばらくして、俺は「何か」が人間にとって脅威となる存在だということを知る。
なぜなら、その「何か」は魔物を生み出していたのだ。
「何か」が夢の中であくびをするかのように泡を出すと、そこから魔物が現実世界で生まれるのだ。
おそらく誰も信じないだろう。
一般的な話では、魔物も他の生物と同様にオスとメスがいて、交尾をすることで子供をつくるとされている。
だがそれは違った。いや、交尾をして子供をつくる魔物もいるのだろう。
しかしながら、それだけではなかったのだ。もっと深い、人が知ることのない場所では、その「何か」が夢から魔物を生み出していたのだ。
眠っているだけで魔物を生み出してしまうような存在が目を覚ましてしまったら、間違いなく人間の脅威になるだろう。
あるいは、「何か」は夢から人ですら生み出せるのかもしれない。
それが本当に人と呼べるのかはわからないが。
俺にわかるのは、きっとこの「何か」は眠ったままのほうがよいということだった。
それはさておき、夢の中から魔物が生まれるなら、眠りを研究している身としてはやってみたくなるものである。
そこで、俺はその「何か」の夢に干渉してみることにした。
俺は自分でも不思議なほどに、それで自分の身に何が起こったとしてもかまわないと考えていた。
それはもしかすると、自分よりも眠りに精通しているモノがいることへの対抗心からの行動だったかもしれないし、あるいは、何か宿命のようなものに操られていたのかもしれなかった。それほどまでに無意識に近い行動だったのだ。
干渉といっても小さな魔法によるものだ。また、相手がはるかに大きな存在なので、多少の干渉をしても大きな影響はないだろう。
「何か」の夢を小さなスプーンでかき混ぜるようにすると、夢が少しだけ泡立った。そして、
ボスッ
なにもない空間から、現実世界の俺の手のひらに小さなスライムのような魔物が出現していた。
「ブヒュ。」
そのスライムはなにか空気が抜けるような鳴き声を発すると、すぐに崩れて死んでしまった。
きっと、俺が「何か」への干渉を最小限にしたためだろう。もっと強く干渉していたら、このスライムは崩れたりしなかったはずだ。
しかしながら俺の考えは確信に変わった。この世界のどこかで、「何か」は夢を見て魔物を生み出しているのだ。
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