恋愛初心者の恋の行方

あおくん

文字の大きさ
67 / 256
学園編~四学年~

2.制服の秘密

しおりを挟む

話し終えた先生は各自にブレスレットを配布する。
ふよふよと浮かぶブレスレットを受け取り、私は言われるままに手首につけた。
隣から訝し気な眼差しがチクチクしてくるが、私は悪くない。
これが普通の反応なはずだ。
だって自分の担任の先生から渡された魔道具なんだから、必要なんだと思うもんでしょう。
レルリラみたいに、刻まれた魔法陣を疑うように凝視する真似はよくないと思う。

「先生、このブレスレットはなんですの?」

ブレスレットを受け取った一人の生徒が尋ねると、鼻高々に先生は答える。

「まだ渡すには早かったかもしれないが、そのブレスレットには転移機能が組み込まれているんだ。
転移先は学園に設定されているが、使用回数は一度きりだ。
危険が迫った時だけに使ってくれ」

先生はそういってまだブレスレットを装着していない生徒につけるように促した。
へぇこれが転移魔法陣か。と私はブレスレットの魔法陣を凝視する。
小さすぎて細部までみるのが難しいが、私も転移魔法を使いたい気持ちがあるので、あとでブレスレットに刻まれている魔法陣をよく観察してみようと思った。

「わかりましたわ」

質問した生徒は感心するように呟き、手首に嵌めたブレスレットを眺めた。
うんうん。
憧れだよね。転移魔法は。

「次はチームだな。最初は仲がいい奴同士で組んでいいぞ。
次からは先生の方で勝手に決めるから」

先生の言葉に私は目を輝かせた。
好きに組んでいいとなれば、私はレロサーナとエステルと組もうとちらりと二人の方に目線を向けると、同じことを考えていたのかエステルもレロサーナも私を見てニコリと微笑む。
ちなみに隣からも視線を感じるが、チーム戦となれば私はレルリラと組みたくない為絶対視線を合わせたりしない。
だってレルリラの独壇場みたいな感じになるのは目に見えているもの。
もしくはトレーニング。
絶対横を向いて目を合わせてたまるかって感じ。

「あと先生が常々思っていたことだが、無事に進級した今だから言うぞ。
なんで女子生徒は制服を着ていないんだ?」

先生が口にした言葉に私を除く女子たちが顔を見合わせる。
私は再び目を輝かせた。
先生よく言った!!!
レロサーナもエステルもなんでか着てくれないんだもの!
仲良くなってから『なんで制服着ないの?』と気軽に聞けるようにはなったけど、家柄が高位になればなるほど『嫌ですわ!』『サラは私が残り物になってもいいのです?!』と意味不明の反応ばかりが返ってくる。
剣術とか対戦試合とか明らかに体を動かす授業では運動服に着替えてはいるけれど、それでも制服を着ようとはしてこなかった。
着ない理由にダサいとか言ってないから、制服のデザインが問題ではないと思うし、私もそんなこと思ってないから本当に不思議。

「……何故ですの?」

そして絞り出す声でそう尋ねると、先生はあっさりとした様子で答える。

「制服もローブも防御魔法が組み込まれているアイテムだからだよ」

「「「「え?」」」」

目が点になる生徒たちに、先生は首を傾げた。
本当に不思議そうな表情を浮かべているから、私達が制服とローブに防御魔法が施されていることを知っていると思っていたらしい。
ちらりとレルリラをみると、コクリと頷かれたので、コイツは知っていたみたいだ。
もしかして一部の人は知っていたのかもしれないね。
でも女子は皆先生の発言に驚き、信じられないと口をあんぐりと開く人もいたので知らなかったようだ。

「あれ?知らなかったか?
この学園に通う以上危険が伴うことを想定しているため、生徒の身の安全を守るために魔法が組み込まれているんだよ。
身近なものでいうと檻で至る所に放置されている魔物だな。
それでも今まで脅威な場面ってのはなかったから特に何も言ってこなかったが、これから各自幻影とはいえ魔物との戦闘を考慮すると、先生は魔法がかかっている制服とローブを身にまとって_」

「「「「聞いてません(わ)!!!!!」」」」

先生の話途中に席を立ちすぐさま教室を出ていく私を除く女生徒たちに、私と先生、そして男子生徒は無言でその後ろ姿を見送った。
きっと急いで寮へと戻っているのだろう。
いつ戻ってくるかわからないけれど、制服よりも着るのが難しそうで且つ重そうなドレスを身にまとって毎日登校してきているのだから、きっとすぐにやってくると思う。

「………とりあえず、外に出て待つか」

その先生の言葉に頷いて、私達はぞろぞろと教室を出る。
いつもなら先生が転移魔法で移動させているけど、女子たちの着替え時間も考えて今回は魔法を使わずに移動するらしい。
後になって聞いた話だが、頑なに制服を着なかった理由として女性の学園入学は女をアピールする場ともいわれているということだった。
先生も「いつからそういう思考に変わったんだ…」と呆れながら口にしていたから、元々は違うのだろう。 

ちなみに制服の防御魔法は、着用している人物の生命の危機的な場合のみ発動するらしい。
頻繁に発動するような魔法を組み込んでしまうと、授業にならないからだとか。
あとで皆に教えてあげよう。
先生の話途中で出ていってしまったからね。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?

小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。 しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。 突然の失恋に、落ち込むペルラ。 そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。 「俺は、放っておけないから来たのです」 初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて―― ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】田舎育ちの令嬢は王子様を魅了する

五色ひわ
恋愛
 エミリーが多勢の男子生徒を従えて歩いている。王子であるディランは、この異様な光景について兄のチャーリーと話し合っていた。それなのに……  数日後、チャーリーがエミリーの取り巻きに加わってしまう。何が起こっているのだろう?  ディランは訳も分からず戸惑ったまま、騒動の中心へと引きづりこまれていくのだった。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...