恋愛初心者の恋の行方

あおくん

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学園編~二学年~

21 買い物②

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次の日私は扉をノックする音で起こされた。
朝から出かけるということで、今日の朝のトレーニングを無くすようにとレロサーナとエステルがレルリラにかけあったことから、私はいつもよりもゆっくりと睡眠を堪能していたのだ。

コンコンコンコンとなり続けるノック音。
乱暴に叩いているわけではないから、うるさくは感じないけど止まることなく続けらているとそれはそれでなんというか。
そう。目覚まし時計のような効果がある。

私は温かい布団のぬくもりを自ら抜け出し、目を擦りながら扉に向かった。

「もぉ、まだ出かけるには早いじゃない…」

そういいながら扉を開けるとにっこりと笑顔で服を持つエステルに、にっこりと微笑むレロサーナが無言で私の部屋へと入る。
そんな二人に問答無用で顔を洗われ、寝間着にしていた服を脱がされ、エステルが持ってきた服を着せられた。
なんだか二年の初めの頃に戻ったみたいだ。
でもあの時よりも無言の圧を感じるのは気の所為か。

私はレロサーナに髪を整えられ、約一年ぶりに変身した姿でレルリラ達が待つロビーへと向かった。


のだが反応は散々だった。

「サラが女になってるぞ!」とキアがいい、「馬子にも衣装だな」と誉め言葉かわからない言葉をマルコが言うとサーが頷く。
こいつら…せっかくレロサーナとエステルが可愛くしてくれたのに、とぷるぷる怒りで震えているとレルリラが羽織っていた上着を脱ぎだして私の腰に巻き付けた。

服で隠す程似合っていないのかと思った私は「いらない!」と腰に巻き付けられた服をレルリラに突き返すも、「いいから黙って巻いてろ」と巻きなおされる。

「まぁまぁ」とエステルとレロサーナに宥められ、私は少しだけ落ち込みながらもレルリラの服をそのままにして馬車へと乗り込んだ。







そして私とエステル、レロサーナに加えて、レルリラとマルコ、キアとサーで王都の街をぶらついく。
まだ早い時間だからか三人で来た時よりも人通りは少なかったが、焼き立てパンのいい香りが鼻腔を刺激した。
そしてその美味しそうな、いや絶対美味しいとわかる香りは私のお腹も刺激する。

学園から王都までは馬車で一時間ほどかかること。
そしてマルコ達は王都で買い物が済んだらそのまま地元に帰省することを聞いたため、なら朝早くに出かけようという話になったのだ。

ぐぅ~

という大きな音を最初に響かせたのはサーだった。
だがそれを揶揄うものはいない。
皆お腹をすかせているのは同じだからだ。

「ね、あそこのパン屋さんで朝食買おうよ」

「いいな、早く入ろう」

と私とサーがいうとエステルとレロサーナは戸惑いがちに顔を見合わせた。

「大丈夫だよ。飲食できるスペースもあるみたいだから」

そういうとほっと安堵したような表情を浮かべる二人に、やっぱり貴族は買い食いしないんだなと内心思う。
思い返してみると席が設けられている場所でしか二人とは食事をしたことがない。
だからパンを買っても、じゃあどこで食べるのかという次の疑問が二人にはあったのだろうと思った。






そして軽く朝食を済ませた私たちは服飾系が並んでいるお店へと向かう。
クラスの女子達が来ているドレスを取り扱ったお店が多く並んでいたが、一度大通りを離れると運動服にぴったりの上下わかれている服を取り扱うお店がちらほらと見え始める。
ちなみに男性は貴族でも着ているイメージだが、女性だと平民でも上下わかれている服を着ているひとは少なくワンピースタイプの服をよく着ているイメージだ。

…あ、でもエステルに借りている服は今回も前回も綺麗目なブラウスにハイウエストのスカートで、上下分かれているタイプだな。

「あ、サラ。あそこにオーレ学園のマークがついたお店があるわ」

レロサーナが指を差してお店の場所を教えてくれる。
その言葉通りそのお店の窓ガラスには、先生が教えてくれた割り引いてくれる対象店舗を示すオーレ学園を示すシールが貼られていた。
レロサーナは私に「寄ってみる?」と問い、私は頷いてから男連中に顔を向ける。

「じゃあ悪いけど、私達は…」

そういうと流石に察したのかマルコ達はあっさりと別れを切り出した。

「ああ、俺たちもあっちの店に行きたいから、一旦別行動な」

「うん、終わったらここに戻ってくるから」

じゃああとで、と寄りたい店に向かってなのか、歩き出すマルコ達と別れ、私達は見つけたお店に足を向けた。
だがここで空気を読まない男が一人いることに気付く。

「…で、なんでレルリラは私達と一緒に行動してるの?」

「?ダメなのか?」

とことこと後ろをついてくる一人の男に尋ねると、レルリラは本当にわかっていなそうな顔で不思議そうに首を傾げた。
こいつ本当こういうところあるよね。
今はもうなくなったけど、レルリラが私に急に特訓を付け始めた頃なんて、私の行く先々について回っていた。
女子同士ならわかるけど、流石に男子を引き連れてトイレなんていくわけもなく、毎回ついてこようとするレルリラに私は初めて冷たい眼差しを向けたことを思い出す。

トイレの話とは状況は違うが、今のこの状況だと同じようなモノだ。
でもこれは私の精神的なものじゃなくて、レルリラの精神的なものを心配しているから言っているだけである。

「いや、ダメってわけじゃないけどさ…」

買う物がないというレルリラが暇だから着いてこようとしているのはわかる。
それが同じ性別のマルコ達ではなく、何故私達なんだっていうのは知らないけど、でも流石に居心地が悪いんじゃないかと思うのだ。
だって、私達が向かうお店は“女性物の肌着”が売っているお店なんだから。

流石に店の前まで来ればわかるだろうと、とことこ後ろを歩くレルリラをそのままにした私は店の前で足を止める。
そして察してもらおうと店を指さして見せると、レルリラは暫く無言で固まった後「店の前で待ってる」といった。
いや、マルコ達のところいけばいいじゃんとは思ったが、もう別行動をしているから何も言わずにおく。
「あんまり時間をかけないようにするから」と店の前で待つレルリラに言ってから、私達は店に入った。



店に入ると色々なデザインの下着が綺麗に並べられていた。
きょろきょろと見渡すと女性の体に見立てた人形にも下着をつけて展示していて、どれもマーオ町にはなかったようなお洒落なデザインで買ったら自慢したいと思わせられるような品揃えだった。
まぁ肌着だから見せるわけにはいかないけど。

「いらっしゃいませ。どのようなものをお求めですか?」

「あ、私達彼女の下着を探しに来たのですが…」

来店した私達にお店の人が話しかけエステルが代わりに答えてくれるとお店の人の視線が私に向けられる。

「失礼ですが、平民の方で間違えありませんか?」

「あ、はい…。もしかして平民は利用できないとか、割引が効かない、とかなんですか?」

身分を尋ねられた私は不安に思ってそう聞くと、お店の人は目をきょとんとさせてからくすくすと笑いだした。
私はなぜ笑うのかと首を傾げる。

「あの…」

「も、申し訳ございません。ふふふ…当店は身分に関わらずどなたでもご利用できますよ」

笑いが収まったのか、来店したときに向けてくれた笑みに戻った店員さんは安心させるようにそう言った。
私はその言葉に胸をなでおろして安堵する。

「私が尋ねた理由は、同じく店を営んでいる知り合いに聞いたからです」

「聞いた?」

「はい。平民の方は出世して偉くなっても利用している店を変えないと。
その知り合いは魔道具店を営んでいるのですが、大人になった今でも常連客として店に定期的に足を運んでくださるといっていました。
正直ランドリーショップがオーレ学園の生徒に利用されるとは思っていませんでしたので、この店にも常連客が出来るのではないかと期待をしてしまったのです」

「そういうことだったんですね」

「はい。ご不快な思いをさせてしまったのなら申し訳ございません。
お客様が良ければ商品を選ぶお手伝いをさせてください」

そう告げた店員さんの言葉に甘え、私は初めて女性”らしい”下着を購入した。
だって今まで本当に可愛くない下着をつけていたから。
レロサーナとエステルもこういうお店に実際に来たことがなかったのかとても楽しそうに選んでいて、それぞれ気に入ったものを手に入れることが出来満足げに店を出たのだった。
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