74 / 256
学園編~四学年~
9.油断
しおりを挟む
□
「この辺りだよ」
やってきたのは一番近い魔力が感じられた場所。
ヘビもトカゲもサソリもエリアAにいるくらいだから、そこまで魔力を保有していない筈だから手当たり次第に確認するしかないと思った私はとりあえず一番近くの場所にやってきたのだ。
ちなみにエリアAは前も言ったかもしれないけれど、虫系の魔物が多く生息している場所の事。
キョロキョロと辺りを見渡し、たまに草をかき分けながら課題の魔物を探す私達。
それにしてもよく他のチームと会わないわね。
今まで何度か討伐授業を受けてきてはいるけれど、同じエリアAにいる筈なのにすれ違うこともないことが驚きだわ、とある意味感心しながら作業する。
「シティシス嬢!」
セファルドのちょっと大きい鬼気迫る声を聞いて私は驚きながら振り返ると、背を向けるマリアに人の半分程の大きさのスネークが牙を出して襲い掛かろうとしていた。
そしてセファルドが身を挺して守ろうと身を乗り出す。
「マリア!セファルド!!」
状況を判断するのに時間がかかった私は瞬時に防御の魔法を発動できず、咄嗟に手を伸ばした時にはスネークの牙がセファルドの腕に食い込んでいたところだった。
私はすぐに魔法でスネークの首と体を切断し二人に駆け寄ると、振り返ったマリアが顔を青ざめて私を呼ぶ。
「サラ!後ろ!」
「<マー_壁>!」
振り返らずに私は防御魔法を後ろに展開させ、続けて私達三人を囲むように水のバリアを張る。
Bクラスと戦った時に使ったあの魔法だ。
一人ずつかけてしまうと、水のバリアが邪魔で近づけなくなるし、そもそもチームで協力する討伐授業。
この防御魔法はまだ改善してない魔法だから、三人纏めて覆うようにかけたのだ。
これなら大丈夫だよね。
そこでようやく辺りを見渡した私は、やっと状況を把握出来た。
どうやらここはスネークの生息地のような場所みたいだ。
至る場所からとびかかるようにスネークが私達を襲う。
そのたびに私の水のバリアが弾いてはいるが……、一体は既に倒したし長居をしない方がいいだろうと私達はこの場から立ち去ろうとしたところで、がくっと力が抜けた様に膝から崩れ落ちるセファルドに気付く。
「セファルド!?」
地面に膝をつきながらセファルドの顔を覗き込むと、汗を流し顔色が悪い。
そこでレルリラの言葉が脳裏に浮かび上がった。
”毒性を含んだ攻撃をしかけるものもいる”
「まさか毒!?」
「そんな…!毒消しのポーションなんて持ってきていないわ!」
「私もだよ!とりあえず先生の元に戻った方がいいよね?!」
胴体を切り落としたスネークの頭自体は消えていたが、セファルドの腕にはいまだに牙が食い込んでいたのだ。
牙だけ残すなんてなんて器用な…と悔しく思いながら、とりあえずなんとかしなければとセファルドの腕からスネークの牙を取り除く。
「私先生を呼んでくるわ!」
「マリア!?」
「彼を連れていったら毒が余計に回ってしまうわ!それなら誰か一人先生を呼びに行った方がいいでしょう?」
それでもマリア一人で向かわせるなんて…と躊躇するが、マリアは私の返事を待たず駆けていく。
どんどん小さくなっていくマリアに、せめてもの思いで防御魔法をかける。
どうか私の魔法がマリアを守ってくれますようにと、祈りを込めて。
走り去るマリアの後姿を見送った後、セファルドに目線を移した。
苦しいのか汗を流しながら息を荒げている。
「体を横にさせた方がいいよね…」
誰に質問したわけでもないが、私はセファルドの体を地面へと横たわらせた。
ローブを脱ぎ、丸めて頭の下に敷く。
足はどうしよう、立たせた方がいい?
治癒魔法もどうしよう。
かけたほうがいい?かけないほうがいい?いや、かけないほうがいいんだよね?
ただの治癒魔法は相手の治癒能力を上げるだけだから、寧ろ毒が余計に回るかもしれない……。
なんでこういう勉強はしてこなかった私!!!
「そうだ!毒!毒を外に出さなきゃ!!」
アラさんから応急処置的な感じだけどと、水魔法ならではの便利な使い方を教わっていたことを思い出した私は早速水の球を作る。
魔力を多く練り込ませ、その水の球をセファルドの腕にくっつけた。
正確には噛まれた傷跡がある場所にだ。
傷口に魔力が練り込まれた水が触れると、面したところから赤い血だけではなく赤黒く変色した血が水の球のほうにどんどん流れ出す。
「もしかしてこの赤黒いのが毒だったりするのかな?」
アラさんの話だと魔力を保有している毒ならば、魔力を含ませた水をくっつけると血と共に流れ出ると言う話だ。
なんでも魔力は魔力に引き寄せられるらしい。
この応急処置はその特性を利用していて、勿論綺麗な水があれば他の属性でもこの方法が利用できる。
水属性の魔法使いなら、他の属性よりももっと効率的に魔力を練り込ませることが出来るし、なにより水の純度が高いから体に不純物も入らない。
でもこの方法には一つ欠点がある。
この世の全ての生命には魔力を保有している。
人も動物も植物も。
だけど魔力量の違いがあるために、一定以上の魔力を持った毒にしかこの処置の効果はないらしい。
つまり植物や魔物ではない虫等の毒には使用できないのだ。
その場合に効果的なものはやっぱり毒消しのポーション。
そして専門知識がない私にはわからないけれど、明らかに違うその血が出るごとに落ち着きを見せるセファルドの様子に私は自分の推測が正しいことを悟った。
赤黒いこの血はやっぱり毒だったんだ。
新しく水の球を作り出して交換すると、最初といかないまでもまだ赤黒い血が出てくるため、この作業を何度も繰り返した。
そして赤い血だけが出てきたところで私は手を止める。
聞きなれた声で、頼りになる声が聞こえたからだ。
「この辺りだよ」
やってきたのは一番近い魔力が感じられた場所。
ヘビもトカゲもサソリもエリアAにいるくらいだから、そこまで魔力を保有していない筈だから手当たり次第に確認するしかないと思った私はとりあえず一番近くの場所にやってきたのだ。
ちなみにエリアAは前も言ったかもしれないけれど、虫系の魔物が多く生息している場所の事。
キョロキョロと辺りを見渡し、たまに草をかき分けながら課題の魔物を探す私達。
それにしてもよく他のチームと会わないわね。
今まで何度か討伐授業を受けてきてはいるけれど、同じエリアAにいる筈なのにすれ違うこともないことが驚きだわ、とある意味感心しながら作業する。
「シティシス嬢!」
セファルドのちょっと大きい鬼気迫る声を聞いて私は驚きながら振り返ると、背を向けるマリアに人の半分程の大きさのスネークが牙を出して襲い掛かろうとしていた。
そしてセファルドが身を挺して守ろうと身を乗り出す。
「マリア!セファルド!!」
状況を判断するのに時間がかかった私は瞬時に防御の魔法を発動できず、咄嗟に手を伸ばした時にはスネークの牙がセファルドの腕に食い込んでいたところだった。
私はすぐに魔法でスネークの首と体を切断し二人に駆け寄ると、振り返ったマリアが顔を青ざめて私を呼ぶ。
「サラ!後ろ!」
「<マー_壁>!」
振り返らずに私は防御魔法を後ろに展開させ、続けて私達三人を囲むように水のバリアを張る。
Bクラスと戦った時に使ったあの魔法だ。
一人ずつかけてしまうと、水のバリアが邪魔で近づけなくなるし、そもそもチームで協力する討伐授業。
この防御魔法はまだ改善してない魔法だから、三人纏めて覆うようにかけたのだ。
これなら大丈夫だよね。
そこでようやく辺りを見渡した私は、やっと状況を把握出来た。
どうやらここはスネークの生息地のような場所みたいだ。
至る場所からとびかかるようにスネークが私達を襲う。
そのたびに私の水のバリアが弾いてはいるが……、一体は既に倒したし長居をしない方がいいだろうと私達はこの場から立ち去ろうとしたところで、がくっと力が抜けた様に膝から崩れ落ちるセファルドに気付く。
「セファルド!?」
地面に膝をつきながらセファルドの顔を覗き込むと、汗を流し顔色が悪い。
そこでレルリラの言葉が脳裏に浮かび上がった。
”毒性を含んだ攻撃をしかけるものもいる”
「まさか毒!?」
「そんな…!毒消しのポーションなんて持ってきていないわ!」
「私もだよ!とりあえず先生の元に戻った方がいいよね?!」
胴体を切り落としたスネークの頭自体は消えていたが、セファルドの腕にはいまだに牙が食い込んでいたのだ。
牙だけ残すなんてなんて器用な…と悔しく思いながら、とりあえずなんとかしなければとセファルドの腕からスネークの牙を取り除く。
「私先生を呼んでくるわ!」
「マリア!?」
「彼を連れていったら毒が余計に回ってしまうわ!それなら誰か一人先生を呼びに行った方がいいでしょう?」
それでもマリア一人で向かわせるなんて…と躊躇するが、マリアは私の返事を待たず駆けていく。
どんどん小さくなっていくマリアに、せめてもの思いで防御魔法をかける。
どうか私の魔法がマリアを守ってくれますようにと、祈りを込めて。
走り去るマリアの後姿を見送った後、セファルドに目線を移した。
苦しいのか汗を流しながら息を荒げている。
「体を横にさせた方がいいよね…」
誰に質問したわけでもないが、私はセファルドの体を地面へと横たわらせた。
ローブを脱ぎ、丸めて頭の下に敷く。
足はどうしよう、立たせた方がいい?
治癒魔法もどうしよう。
かけたほうがいい?かけないほうがいい?いや、かけないほうがいいんだよね?
ただの治癒魔法は相手の治癒能力を上げるだけだから、寧ろ毒が余計に回るかもしれない……。
なんでこういう勉強はしてこなかった私!!!
「そうだ!毒!毒を外に出さなきゃ!!」
アラさんから応急処置的な感じだけどと、水魔法ならではの便利な使い方を教わっていたことを思い出した私は早速水の球を作る。
魔力を多く練り込ませ、その水の球をセファルドの腕にくっつけた。
正確には噛まれた傷跡がある場所にだ。
傷口に魔力が練り込まれた水が触れると、面したところから赤い血だけではなく赤黒く変色した血が水の球のほうにどんどん流れ出す。
「もしかしてこの赤黒いのが毒だったりするのかな?」
アラさんの話だと魔力を保有している毒ならば、魔力を含ませた水をくっつけると血と共に流れ出ると言う話だ。
なんでも魔力は魔力に引き寄せられるらしい。
この応急処置はその特性を利用していて、勿論綺麗な水があれば他の属性でもこの方法が利用できる。
水属性の魔法使いなら、他の属性よりももっと効率的に魔力を練り込ませることが出来るし、なにより水の純度が高いから体に不純物も入らない。
でもこの方法には一つ欠点がある。
この世の全ての生命には魔力を保有している。
人も動物も植物も。
だけど魔力量の違いがあるために、一定以上の魔力を持った毒にしかこの処置の効果はないらしい。
つまり植物や魔物ではない虫等の毒には使用できないのだ。
その場合に効果的なものはやっぱり毒消しのポーション。
そして専門知識がない私にはわからないけれど、明らかに違うその血が出るごとに落ち着きを見せるセファルドの様子に私は自分の推測が正しいことを悟った。
赤黒いこの血はやっぱり毒だったんだ。
新しく水の球を作り出して交換すると、最初といかないまでもまだ赤黒い血が出てくるため、この作業を何度も繰り返した。
そして赤い血だけが出てきたところで私は手を止める。
聞きなれた声で、頼りになる声が聞こえたからだ。
12
あなたにおすすめの小説
報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?
小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。
しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。
突然の失恋に、落ち込むペルラ。
そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。
「俺は、放っておけないから来たのです」
初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて――
ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】田舎育ちの令嬢は王子様を魅了する
五色ひわ
恋愛
エミリーが多勢の男子生徒を従えて歩いている。王子であるディランは、この異様な光景について兄のチャーリーと話し合っていた。それなのに……
数日後、チャーリーがエミリーの取り巻きに加わってしまう。何が起こっているのだろう?
ディランは訳も分からず戸惑ったまま、騒動の中心へと引きづりこまれていくのだった。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる