恋愛初心者の恋の行方

あおくん

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学園編~四学年~

9.油断

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「この辺りだよ」

やってきたのは一番近い魔力が感じられた場所。
ヘビもトカゲもサソリもエリアAにいるくらいだから、そこまで魔力を保有していない筈だから手当たり次第に確認するしかないと思った私はとりあえず一番近くの場所にやってきたのだ。
ちなみにエリアAは前も言ったかもしれないけれど、虫系の魔物が多く生息している場所の事。

キョロキョロと辺りを見渡し、たまに草をかき分けながら課題の魔物を探す私達。
それにしてもよく他のチームと会わないわね。
今まで何度か討伐授業を受けてきてはいるけれど、同じエリアAにいる筈なのにすれ違うこともないことが驚きだわ、とある意味感心しながら作業する。

「シティシス嬢!」

セファルドのちょっと大きい鬼気迫る声を聞いて私は驚きながら振り返ると、背を向けるマリアに人の半分程の大きさのスネークが牙を出して襲い掛かろうとしていた。
そしてセファルドが身を挺して守ろうと身を乗り出す。

「マリア!セファルド!!」

状況を判断するのに時間がかかった私は瞬時に防御の魔法を発動できず、咄嗟に手を伸ばした時にはスネークの牙がセファルドの腕に食い込んでいたところだった。
私はすぐに魔法でスネークの首と体を切断し二人に駆け寄ると、振り返ったマリアが顔を青ざめて私を呼ぶ。

「サラ!後ろ!」

「<マー_壁>!」

振り返らずに私は防御魔法を後ろに展開させ、続けて私達三人を囲むように水のバリアを張る。
Bクラスと戦った時に使ったあの魔法だ。
一人ずつかけてしまうと、水のバリアが邪魔で近づけなくなるし、そもそもチームで協力する討伐授業。
この防御魔法はまだ改善してない魔法だから、三人纏めて覆うようにかけたのだ。
これなら大丈夫だよね。

そこでようやく辺りを見渡した私は、やっと状況を把握出来た。

どうやらここはスネークの生息地のような場所みたいだ。
至る場所からとびかかるようにスネークが私達を襲う。
そのたびに私の水のバリアが弾いてはいるが……、一体は既に倒したし長居をしない方がいいだろうと私達はこの場から立ち去ろうとしたところで、がくっと力が抜けた様に膝から崩れ落ちるセファルドに気付く。

「セファルド!?」

地面に膝をつきながらセファルドの顔を覗き込むと、汗を流し顔色が悪い。
そこでレルリラの言葉が脳裏に浮かび上がった。

”毒性を含んだ攻撃をしかけるものもいる”

「まさか毒!?」

「そんな…!毒消しのポーションなんて持ってきていないわ!」

「私もだよ!とりあえず先生の元に戻った方がいいよね?!」

胴体を切り落としたスネークの頭自体は消えていたが、セファルドの腕にはいまだに牙が食い込んでいたのだ。
牙だけ残すなんてなんて器用な…と悔しく思いながら、とりあえずなんとかしなければとセファルドの腕からスネークの牙を取り除く。

「私先生を呼んでくるわ!」

「マリア!?」

「彼を連れていったら毒が余計に回ってしまうわ!それなら誰か一人先生を呼びに行った方がいいでしょう?」

それでもマリア一人で向かわせるなんて…と躊躇するが、マリアは私の返事を待たず駆けていく。
どんどん小さくなっていくマリアに、せめてもの思いで防御魔法をかける。
どうか私の魔法がマリアを守ってくれますようにと、祈りを込めて。

走り去るマリアの後姿を見送った後、セファルドに目線を移した。
苦しいのか汗を流しながら息を荒げている。

「体を横にさせた方がいいよね…」

誰に質問したわけでもないが、私はセファルドの体を地面へと横たわらせた。
ローブを脱ぎ、丸めて頭の下に敷く。
足はどうしよう、立たせた方がいい?
治癒魔法もどうしよう。
かけたほうがいい?かけないほうがいい?いや、かけないほうがいいんだよね?
ただの治癒魔法は相手の治癒能力を上げるだけだから、寧ろ毒が余計に回るかもしれない……。
なんでこういう勉強はしてこなかった私!!!

「そうだ!毒!毒を外に出さなきゃ!!」

アラさんから応急処置的な感じだけどと、水魔法ならではの便利な使い方を教わっていたことを思い出した私は早速水の球を作る。
魔力を多く練り込ませ、その水の球をセファルドの腕にくっつけた。
正確には噛まれた傷跡がある場所にだ。
傷口に魔力が練り込まれた水が触れると、面したところから赤い血だけではなく赤黒く変色した血が水の球のほうにどんどん流れ出す。

「もしかしてこの赤黒いのが毒だったりするのかな?」

アラさんの話だと魔力を保有している毒ならば、魔力を含ませた水をくっつけると血と共に流れ出ると言う話だ。
なんでも魔力は魔力に引き寄せられるらしい。
この応急処置はその特性を利用していて、勿論綺麗な水があれば他の属性でもこの方法が利用できる。
水属性の魔法使いなら、他の属性よりももっと効率的に魔力を練り込ませることが出来るし、なにより水の純度が高いから体に不純物も入らない。

でもこの方法には一つ欠点がある。
この世の全ての生命には魔力を保有している。
人も動物も植物も。
だけど魔力量の違いがあるために、一定以上の魔力を持った毒にしかこの処置の効果はないらしい。
つまり植物や魔物ではない虫等の毒には使用できないのだ。
その場合に効果的なものはやっぱり毒消しのポーション。

そして専門知識がない私にはわからないけれど、明らかに違うその血が出るごとに落ち着きを見せるセファルドの様子に私は自分の推測が正しいことを悟った。
赤黒いこの血はやっぱり毒だったんだ。

新しく水の球を作り出して交換すると、最初といかないまでもまだ赤黒い血が出てくるため、この作業を何度も繰り返した。
そして赤い血だけが出てきたところで私は手を止める。

聞きなれた声で、頼りになる声が聞こえたからだ。


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