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学園編~四学年~
31 買い物と手紙
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■
休日。
レルリラとの特訓が終わった後、いつもならそのまま食堂に向かうのだが今日は寄るところがあった為、レルリラに別れをいうとどういうわけか私についてきた。
まぁそんなレルリラの行動はいつものことなので、特に拒否することもなく私はレルリラと共に目的地へと向かう。
ちなみに向かう先は購買だ。
それにしてもレルリラは仲良くなると本当に人懐っこいというかなんというか。
絶対上に兄弟いるよね。
うんうん。と一人納得しているとレルリラが火照った体を冷ますためか、首元の服をパタパタと動かして空気を取り込む。
魔法で冷やしてあげてもいいけど、以前断られたために私はそんなレルリラを横目で見るだけにした。
「何を買うんだ?」
目的地をレルリラにも告げると私が何を買うのか不思議に思ったレルリラが尋ねた。
まぁ私が買い物をすることは滅多にないしね。
「便箋よ」
「便箋?手紙でも書くのか?」
「うん。両親にね」
学年が昇級する年度末には、週に一度の休みよりも長い休暇が与えられる。
帰省する人もいれば学園で過ごす人と様々だが、私の場合マーオ町まで一週間以上かかることから長い休暇でも帰省には足りず、入学してから一度も帰ったことがない。
その為毎月両親に手紙を書いていた。
手紙には大したことは書いていない。
学園で習ったことや寮での生活が手紙の大半を占めている。
それでもお父さんとお母さんはそれぞれで手紙を書いてくれて、毎月沢山の紙が同封された手紙が届いていた。
(そういえば、一家で隣の町からマーオ町に越してきた家族がいるって書いてあったわね)
私と同じ年齢の女の子もいるって書いてあったから、マーオ町に戻ったら会ってみたいな。
それで仲良くなれたら嬉しい。
そんな事を思い出しているとふと私は疑問に思った。
「レルリラは?お父さんやお母さんに手紙書いているの?」
故郷から遠い私は仕方ないけど、レルリラが帰省したことは一度もなかったはずだ。
一年の時はコイツ一匹狼貫き通してたから知らないけど、でも二年以降はずっと私とトレーニングしてたことを私は覚えている。
それに二年の時の話だけど、レルリラはお父さんから手紙が来ていといって、実際にその手紙を私にみせてくれた。
男の子だし、口数少ないし、それに学園に入るまで色々あったから私よりも頻度は少ないだろうけれど、それでも手紙のやりとりくらいはしているだろうと尋ねると、レルリラはなんてことない顔で否定した。
「出したことはない」
「は?」
「手紙を出したことがない」
「………えっと……」
私は過去を思い返してみた。
確かに二年の時、レルリラはお父さんの手紙を見せてくれながら、レルリラ自身が抱えていた心の問題が解決したと、そういっていた。
そうじゃなかったら属性は炎と風だけど、それでも氷のようだったレルリラが今こんな柔らかくはなっていないもの。
ただレルリラ家にはまだお母さんが戻っていなく、そのままレルリラとお母さんの関係があやふやになっていて、それを気にしているレルリラのお父さんが卒業後でもいいから会って欲しいと、確か手紙には書いてあったはず。
祖父の件についてはなんとなく深く聞けるような内容でもないから、いまだに聞いてないからわからないけど。
「アハハ、聞き間違えたみたい。
お父さんから手紙毎月来てるっていっていたもんね、お父さんに返事書いてるの?」
「書いていない」
「………」
どうせ私の聞き間違いだと思い問い直したが、一刀両断するかのように否定された私は口を閉ざす。
ついでに歩いていた足も止まった。
「いや、なんでよ!返事書きなさいよ!」
「なんでだ?」
首を傾げるレルリラは本当に不思議そうにしている。
こっちが不思議だわ!
「“なんでだ”じゃないわよ!あれから二年も経っているのよ!?
もしかしてまだお父さんからの手紙を無視しているの!?」
「いやあれからきていないが…」
まさかの連絡が途切れていた!
必要な情報を伝えるだけで、その後の交流がないとは!
レルリラがこういう性格なのはもしかしてお父さんの影響なのだろうか。と、見知らぬ人に対して失礼なことを考えながら私はレルリラの手首を掴む。
向かう先は変わらず購買だ。
だが本当に必要な人が私以上にいたということがわかっただけ。
「お、おい…」
「さあ!レルリラも手紙書くわよ!」
「いや、俺は…」
「可愛い柄の便箋を買えだなんていわないから!」
戸惑う様子を見せるレルリラに珍しいと思いながら、私はレルリラが逃げないようにレルリラの手首を掴んで購買に向かう。
レルリラは家族の間でごたごたしていたといっていたが、元々の仲は良かった筈なのだ。
それを良く思わない人の所為で気まずい関係になってしまっただけ。
ならせめて手紙という、自分の気持ちを込めた文字のやりとりだけでもしてほしいと私は思った。
ただのおせっかいだというのはわかっている。
だけどさ……。
(顔を会わせていないなら余計に…)
「返事がないのは寂しいよ…」
「……」
私が家族と手紙を書いているのは、ただ単に両親に私の近況を知らせたい、そして家族の状況を知りたいからという理由だけじゃない。
家族と会っていないから。会えていないから。
お父さんとお母さんの字で起きたことや思ったことが書かれている手紙を読むと、まるで自分もその場にいるような、そんな気分になれるのだ。
良く知っている間柄だからそう思えるのかもしれない。
この時きっとお母さんは笑っているんだろうなとか、お父さんが慌てているんだろうなとか、手紙を通して不思議と情景が思い浮かぶのだ。
勿論手紙を読むことで、実際に会えていない実感も感じてしまうから寂しい気持ちだってある。
だけどそれ以上に手紙を読むと心が温かく感じるのだ。
レルリラやレルリラのお父さんの性格上マメな事はしないと思っているのかもしれないけれど、それでも一度くらいは返事を返してあげてほしいと私は思う。
(レルリラにとっては迷惑なことかもしれない…)
そう思っていると私の気持ちが伝わったのか、レルリラはレルリラの手首を掴んでいる私の手に手をそえた。
ただ添えるだけで、無理やり離そうとしていないから嫌とかではないらしい。
やりすぎたかもしれないと、思い始めていた私にとってそのレルリラの行動はとても安心できるものだった。
そして
「………書いたことがないから、…教えてくれよ」
そういってくれたレルリラに私は元気よく答えたのだった。
「うん!お安い御用よ!任せて!」
休日。
レルリラとの特訓が終わった後、いつもならそのまま食堂に向かうのだが今日は寄るところがあった為、レルリラに別れをいうとどういうわけか私についてきた。
まぁそんなレルリラの行動はいつものことなので、特に拒否することもなく私はレルリラと共に目的地へと向かう。
ちなみに向かう先は購買だ。
それにしてもレルリラは仲良くなると本当に人懐っこいというかなんというか。
絶対上に兄弟いるよね。
うんうん。と一人納得しているとレルリラが火照った体を冷ますためか、首元の服をパタパタと動かして空気を取り込む。
魔法で冷やしてあげてもいいけど、以前断られたために私はそんなレルリラを横目で見るだけにした。
「何を買うんだ?」
目的地をレルリラにも告げると私が何を買うのか不思議に思ったレルリラが尋ねた。
まぁ私が買い物をすることは滅多にないしね。
「便箋よ」
「便箋?手紙でも書くのか?」
「うん。両親にね」
学年が昇級する年度末には、週に一度の休みよりも長い休暇が与えられる。
帰省する人もいれば学園で過ごす人と様々だが、私の場合マーオ町まで一週間以上かかることから長い休暇でも帰省には足りず、入学してから一度も帰ったことがない。
その為毎月両親に手紙を書いていた。
手紙には大したことは書いていない。
学園で習ったことや寮での生活が手紙の大半を占めている。
それでもお父さんとお母さんはそれぞれで手紙を書いてくれて、毎月沢山の紙が同封された手紙が届いていた。
(そういえば、一家で隣の町からマーオ町に越してきた家族がいるって書いてあったわね)
私と同じ年齢の女の子もいるって書いてあったから、マーオ町に戻ったら会ってみたいな。
それで仲良くなれたら嬉しい。
そんな事を思い出しているとふと私は疑問に思った。
「レルリラは?お父さんやお母さんに手紙書いているの?」
故郷から遠い私は仕方ないけど、レルリラが帰省したことは一度もなかったはずだ。
一年の時はコイツ一匹狼貫き通してたから知らないけど、でも二年以降はずっと私とトレーニングしてたことを私は覚えている。
それに二年の時の話だけど、レルリラはお父さんから手紙が来ていといって、実際にその手紙を私にみせてくれた。
男の子だし、口数少ないし、それに学園に入るまで色々あったから私よりも頻度は少ないだろうけれど、それでも手紙のやりとりくらいはしているだろうと尋ねると、レルリラはなんてことない顔で否定した。
「出したことはない」
「は?」
「手紙を出したことがない」
「………えっと……」
私は過去を思い返してみた。
確かに二年の時、レルリラはお父さんの手紙を見せてくれながら、レルリラ自身が抱えていた心の問題が解決したと、そういっていた。
そうじゃなかったら属性は炎と風だけど、それでも氷のようだったレルリラが今こんな柔らかくはなっていないもの。
ただレルリラ家にはまだお母さんが戻っていなく、そのままレルリラとお母さんの関係があやふやになっていて、それを気にしているレルリラのお父さんが卒業後でもいいから会って欲しいと、確か手紙には書いてあったはず。
祖父の件についてはなんとなく深く聞けるような内容でもないから、いまだに聞いてないからわからないけど。
「アハハ、聞き間違えたみたい。
お父さんから手紙毎月来てるっていっていたもんね、お父さんに返事書いてるの?」
「書いていない」
「………」
どうせ私の聞き間違いだと思い問い直したが、一刀両断するかのように否定された私は口を閉ざす。
ついでに歩いていた足も止まった。
「いや、なんでよ!返事書きなさいよ!」
「なんでだ?」
首を傾げるレルリラは本当に不思議そうにしている。
こっちが不思議だわ!
「“なんでだ”じゃないわよ!あれから二年も経っているのよ!?
もしかしてまだお父さんからの手紙を無視しているの!?」
「いやあれからきていないが…」
まさかの連絡が途切れていた!
必要な情報を伝えるだけで、その後の交流がないとは!
レルリラがこういう性格なのはもしかしてお父さんの影響なのだろうか。と、見知らぬ人に対して失礼なことを考えながら私はレルリラの手首を掴む。
向かう先は変わらず購買だ。
だが本当に必要な人が私以上にいたということがわかっただけ。
「お、おい…」
「さあ!レルリラも手紙書くわよ!」
「いや、俺は…」
「可愛い柄の便箋を買えだなんていわないから!」
戸惑う様子を見せるレルリラに珍しいと思いながら、私はレルリラが逃げないようにレルリラの手首を掴んで購買に向かう。
レルリラは家族の間でごたごたしていたといっていたが、元々の仲は良かった筈なのだ。
それを良く思わない人の所為で気まずい関係になってしまっただけ。
ならせめて手紙という、自分の気持ちを込めた文字のやりとりだけでもしてほしいと私は思った。
ただのおせっかいだというのはわかっている。
だけどさ……。
(顔を会わせていないなら余計に…)
「返事がないのは寂しいよ…」
「……」
私が家族と手紙を書いているのは、ただ単に両親に私の近況を知らせたい、そして家族の状況を知りたいからという理由だけじゃない。
家族と会っていないから。会えていないから。
お父さんとお母さんの字で起きたことや思ったことが書かれている手紙を読むと、まるで自分もその場にいるような、そんな気分になれるのだ。
良く知っている間柄だからそう思えるのかもしれない。
この時きっとお母さんは笑っているんだろうなとか、お父さんが慌てているんだろうなとか、手紙を通して不思議と情景が思い浮かぶのだ。
勿論手紙を読むことで、実際に会えていない実感も感じてしまうから寂しい気持ちだってある。
だけどそれ以上に手紙を読むと心が温かく感じるのだ。
レルリラやレルリラのお父さんの性格上マメな事はしないと思っているのかもしれないけれど、それでも一度くらいは返事を返してあげてほしいと私は思う。
(レルリラにとっては迷惑なことかもしれない…)
そう思っていると私の気持ちが伝わったのか、レルリラはレルリラの手首を掴んでいる私の手に手をそえた。
ただ添えるだけで、無理やり離そうとしていないから嫌とかではないらしい。
やりすぎたかもしれないと、思い始めていた私にとってそのレルリラの行動はとても安心できるものだった。
そして
「………書いたことがないから、…教えてくれよ」
そういってくれたレルリラに私は元気よく答えたのだった。
「うん!お安い御用よ!任せて!」
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