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章間①
4 第二王子エルフォンスの事情③
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それから比較的早い段階で謁見の許可が下り、日時と共に伝えられた。
エルフォンスは身なりを整え謁見の間を進むと、片膝をついた。
頭を伏せ、攻撃の意思などないことを表すように手を背中に回す。
「よい。楽にせよ」
エルフォンスは言葉通りに顔を上げ立ち上がった。
だが手は背中に回したままだ。
「陛下、お願いがございます」
エルフォンスの言葉に国王であり、エルフォンスの父親であるヴァイス・レン・キュオーレは目を見開いた。
そして少しだけ眉をひそめる。
優秀すぎるアルヴァルトと比べられ、一時期はやる気もなくしていた第二王子であり息子のエルフォンスが、再び瞳に輝きを取り戻し願った令嬢との婚約を許可しなかったことを思い出したのだ。
それでも王子として与えられた仕事はそれなりにこなしてきた息子が、次に願うのはなんだと、少しだけ困惑した。
「…お前の願とはなんだ?」
どうか令嬢との婚約話を蒸し返さないでくれ、もう決まった事なんだ。と願いながら息子の言葉を待つ。
心情が目に見えるのならば、ただのそこら辺にいる親子の会話と変わりなかった。
「はい。聖女の召還に私も関わらせていただきたく思います」
想定していなかったエルフォンスの言葉にヴァイス国王は瞬いた。
「…それは一体…?」
純粋な気持ちが口からでた。
聖女の召還は王家から神殿へと依頼はするが、主体は神殿なのだ。
例え半年以上成果が得られていなくとも、神殿から要請があるまで王家からは手出しできない。
勿論依頼しているのは王家な為に、催促は行うが。
その為召喚に携わるには遥か昔に決まった決まりごとが関係していた。
だがエルフォンスはそうは受け取らなかったし、そんな決まり事など知らなかった。
いや、決まり事を知っていたとしても純粋な疑問で口にしたのだと思わなかっただろう。
『今度は何を企んでいるのかしら』
『どうせアルヴァルト殿下より高い成果をあげられないんだから大人しくすればいいのに』
『あれでも王位継承権二位なんだ。なにかしらしたいのだろう』
周りが常に口にしていた言葉を思い出し、父親の言葉にも『何故お前ごときが加わろうとするのだ』と言っているように聞こえていたのだ。
ネガティブ過ぎと思えなくないが、今までの環境がエルフォンスをそう思い込ませるようになってしまったのだ。
「それは聖女がこの国へ召喚できていないからです。
私もオーレ学園で学びそして優秀な成績で卒業した身、微力ではございますが少しでもこの国の為、そして民の力になりたいと、そう思っているのです」
学園を卒業して一年も経っていない、そして成人の誕生日もまだ迎えていない人間がなんて偉そうなことをいうのかと、普段ならそう言われていただろう。
例え面と向かって言われなくとも、陰で言われ続けてきた内容なだけに、エルフォンスは許可が下りないかもしれないとそう思った。
だが例え許可が下りなくとも、食らいつけば少しは考えが変わってくれるかもしれないと、緊張な面持ちで返事を待つ。
一方ヴァイス国王は感動していた。
気に入った令嬢との婚約が断たれ、しかも令嬢の相手が自分の兄弟。
恋情が粉々に打ち砕かれ、すっかり消沈してしまっていた息子を心配していたのだ。
勿論日々の業務が忙しい為、息子に気の利いた言葉を掛けることは出来なかったが。
それでも(他に思う子がいたら…、その時は力になろう!)と考えていたのだ。
そしてヴァイス国王は、息子の民を思う心に感動する。
酷な事を息子にしたと思ってはいた。
それでもそれを乗り越え王子として、民を国を支えようとする息子の心に感銘を受けた。
だが
「……聖女の召還は神殿でのみ行うものとされている。王家が首を出していいものでは…」
「神殿からは直接要請を受けました」
「なに?」
エルフォンスは必ず拒否されるという考えがあった。
アルヴァルトよりも劣っている自分が手を出していいものではないと。
だがそれでも父親だ。息子を思う気持ちが少しでも持っているのならば、直接的な言葉ではなく何かと理由を付けて断るだろうと考えていたのだ。
その為エルフォンスはヴァイス国王の言葉を予め予想していた。
これを言われたらこう返そうと。
少しでも食らいつく為に考えていたのだ。
だからこそ神殿を言い訳にしようとしたヴァイス国王の言葉に被せるようにエルフォンスは返す。
「…そうか」
次は何を言い訳に断るのだろうかと、思考を巡らせるエルフォンス第二王子はゴクリと唾を飲み込んだ。
だが発せられたのはある意味想定していない言葉だった。
「ならば許そう。
エルフォンスよ。そなたも加わり必ず聖女の召還を成功させ、この国を救って見せろ!」
「…は、はい!」
あっさりと許可する父親の姿にエルフォンスは驚愕しながらもすぐさま返事を返した。
エルフォンスがどれだけ食らいついても許可をしないのではないかと思っていた。
例え許可をしたとしても、もっと渋るかと思っていた。
だがそうではなかった。
もしかしたら神殿から協力を要請されたという言葉が考えを変えさせるきっかけになったかもしれないが、それが定かだったかはわからない。
それでもエルフォンスが聖女召喚に関わることへの許可は下りたのだ。
エルフォンスは口元を緩め、楽し気に笑った。
その眼には久しぶりに生気が宿っているようにも思える。
足取り軽くエルフォンスは自室へと戻ると、早速着替えを済ませ、そのまま神殿へと向かったのだ。
エルフォンスは身なりを整え謁見の間を進むと、片膝をついた。
頭を伏せ、攻撃の意思などないことを表すように手を背中に回す。
「よい。楽にせよ」
エルフォンスは言葉通りに顔を上げ立ち上がった。
だが手は背中に回したままだ。
「陛下、お願いがございます」
エルフォンスの言葉に国王であり、エルフォンスの父親であるヴァイス・レン・キュオーレは目を見開いた。
そして少しだけ眉をひそめる。
優秀すぎるアルヴァルトと比べられ、一時期はやる気もなくしていた第二王子であり息子のエルフォンスが、再び瞳に輝きを取り戻し願った令嬢との婚約を許可しなかったことを思い出したのだ。
それでも王子として与えられた仕事はそれなりにこなしてきた息子が、次に願うのはなんだと、少しだけ困惑した。
「…お前の願とはなんだ?」
どうか令嬢との婚約話を蒸し返さないでくれ、もう決まった事なんだ。と願いながら息子の言葉を待つ。
心情が目に見えるのならば、ただのそこら辺にいる親子の会話と変わりなかった。
「はい。聖女の召還に私も関わらせていただきたく思います」
想定していなかったエルフォンスの言葉にヴァイス国王は瞬いた。
「…それは一体…?」
純粋な気持ちが口からでた。
聖女の召還は王家から神殿へと依頼はするが、主体は神殿なのだ。
例え半年以上成果が得られていなくとも、神殿から要請があるまで王家からは手出しできない。
勿論依頼しているのは王家な為に、催促は行うが。
その為召喚に携わるには遥か昔に決まった決まりごとが関係していた。
だがエルフォンスはそうは受け取らなかったし、そんな決まり事など知らなかった。
いや、決まり事を知っていたとしても純粋な疑問で口にしたのだと思わなかっただろう。
『今度は何を企んでいるのかしら』
『どうせアルヴァルト殿下より高い成果をあげられないんだから大人しくすればいいのに』
『あれでも王位継承権二位なんだ。なにかしらしたいのだろう』
周りが常に口にしていた言葉を思い出し、父親の言葉にも『何故お前ごときが加わろうとするのだ』と言っているように聞こえていたのだ。
ネガティブ過ぎと思えなくないが、今までの環境がエルフォンスをそう思い込ませるようになってしまったのだ。
「それは聖女がこの国へ召喚できていないからです。
私もオーレ学園で学びそして優秀な成績で卒業した身、微力ではございますが少しでもこの国の為、そして民の力になりたいと、そう思っているのです」
学園を卒業して一年も経っていない、そして成人の誕生日もまだ迎えていない人間がなんて偉そうなことをいうのかと、普段ならそう言われていただろう。
例え面と向かって言われなくとも、陰で言われ続けてきた内容なだけに、エルフォンスは許可が下りないかもしれないとそう思った。
だが例え許可が下りなくとも、食らいつけば少しは考えが変わってくれるかもしれないと、緊張な面持ちで返事を待つ。
一方ヴァイス国王は感動していた。
気に入った令嬢との婚約が断たれ、しかも令嬢の相手が自分の兄弟。
恋情が粉々に打ち砕かれ、すっかり消沈してしまっていた息子を心配していたのだ。
勿論日々の業務が忙しい為、息子に気の利いた言葉を掛けることは出来なかったが。
それでも(他に思う子がいたら…、その時は力になろう!)と考えていたのだ。
そしてヴァイス国王は、息子の民を思う心に感動する。
酷な事を息子にしたと思ってはいた。
それでもそれを乗り越え王子として、民を国を支えようとする息子の心に感銘を受けた。
だが
「……聖女の召還は神殿でのみ行うものとされている。王家が首を出していいものでは…」
「神殿からは直接要請を受けました」
「なに?」
エルフォンスは必ず拒否されるという考えがあった。
アルヴァルトよりも劣っている自分が手を出していいものではないと。
だがそれでも父親だ。息子を思う気持ちが少しでも持っているのならば、直接的な言葉ではなく何かと理由を付けて断るだろうと考えていたのだ。
その為エルフォンスはヴァイス国王の言葉を予め予想していた。
これを言われたらこう返そうと。
少しでも食らいつく為に考えていたのだ。
だからこそ神殿を言い訳にしようとしたヴァイス国王の言葉に被せるようにエルフォンスは返す。
「…そうか」
次は何を言い訳に断るのだろうかと、思考を巡らせるエルフォンス第二王子はゴクリと唾を飲み込んだ。
だが発せられたのはある意味想定していない言葉だった。
「ならば許そう。
エルフォンスよ。そなたも加わり必ず聖女の召還を成功させ、この国を救って見せろ!」
「…は、はい!」
あっさりと許可する父親の姿にエルフォンスは驚愕しながらもすぐさま返事を返した。
エルフォンスがどれだけ食らいついても許可をしないのではないかと思っていた。
例え許可をしたとしても、もっと渋るかと思っていた。
だがそうではなかった。
もしかしたら神殿から協力を要請されたという言葉が考えを変えさせるきっかけになったかもしれないが、それが定かだったかはわからない。
それでもエルフォンスが聖女召喚に関わることへの許可は下りたのだ。
エルフォンスは口元を緩め、楽し気に笑った。
その眼には久しぶりに生気が宿っているようにも思える。
足取り軽くエルフォンスは自室へと戻ると、早速着替えを済ませ、そのまま神殿へと向かったのだ。
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