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冒険者編①
3 幼馴染との再会
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今日もいい天気。
空は雲一つない青空の下で、リンゴの果樹園にいる私はさわやかな風に髪の毛を揺らしていた。
(そう言えば髪の毛も結構伸びたな…)
私が最後に髪の毛を切った…いや、切られた?時は四学年の時。
あの時は貴族の女性は髪の毛を大事にするという習慣すら知らず色々あったのだが、その後も流石に周りの声もありずっと伸ばし続けていた。
それからもう二年も経った。
元の髪の毛よりは短いけれど、それでも肩には余裕でつき、肩甲骨にも届きそうな程に長くなった。
支援魔法で小さな刃を生み出し、自由自在に動かせば木に実った果物がいくつも落ちてくる。
私はそれらが地面に着く前に浮遊の魔法を掛けて浮かせると、収穫の籠につぎつぎと入れていった。
そしてあっという間に空だった籠がいっぱいになり、空の籠がなくなる程になった頃だった。
「お前、もしかしてサラか!?」
遠くから大きな声で呼ばれた私は果樹園を囲む柵に近づいた。
そして私の名前を口にした人を確認すると、見覚えのある雰囲気を纏った男性が私に向けて全力の笑顔を浮かべていた。
「……もしかしてマイク?」
黄色に近い金髪の髪の毛を短く立たせ、背中には大剣を背負った男性が駆け寄る。
「本当に久しぶりだな!元気にしていたか?」
男性が近づいて果樹園の柵に手を置いた。
そしてやっぱりマイクだと私は確信する。
元気な姿と面影ある雰囲気が自分の幼馴染の一人であるマイクだと告げていたからだ。
「うん、元気だったよ」
私はへらりと笑った。
マイクは久しぶりの再会で気まずいと感じる部分もあるのか、後頭部を触るような仕草をとりながら私から視線を逸らす。
「…てかサラってば急にいなくなったと思ったらまさか王立学園に入ってたんだな。聞いた時はびっくりしたんだぞ
」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「言ってねーよ。忙しくなるからギルドマスターの話を聞けないってだけで、他はなんも言ってなかった」
マイクの言葉に私は昔の自分を思い出す。
大半は忙しいという理由が占めているが、たまに邪魔をしてくるマイクがうっとおしくて何も伝えていなかったというのが本当の理由だ。
「…あ、ごめんね。あの頃は勉強するのに本当忙しくて」
「ま、いいけど……こうして会えたんだからな。
それより何してるんだ?果樹園にいて、王立学園にいったってことは騎士団とかに入ったんじゃねーのか?」
「ううん。冒険者になったんだよ。
てかマイクも冒険者になったの?デカい剣背負ってるけど」
私はマイクの背にある体験を指さしながら尋ねる。
私よりは成長したマイクだけど、それでもあまり目線の高さに差はないから、背負っている大剣が大きすぎなのではないかと疑問に思っているのだ。
「俺も冒険者になったんだ。この剣もギルドマスターを真似てみた」
へへっと嬉しそうに告げるマイクに「そうなんだ」と返す。
確かにギルドマスターもこんな感じの大きな剣を使っていた。様々な鉱石を使用している為か滅茶苦茶な色を纏い、怪しげな雰囲気を出している剣だけど、大きさだけを見たらマイクの持っている剣と似ている。
ギルドマスターの剣って聞いて思い出したけど、そういえば魔力付与の件、結局出来てなかったんだよね。
アラさんにいってギルドマスターの剣借りてみようかなと考えていると、どこからか痛いくらい鋭い視線が向けられていることに気付く。
私は向けられた視線の先を確かめると、マイクがやってきた方向に複数人いるのが見えた。
「……ねぇマイク、あの人たちは?」
私はあえて指を差さずに視線だけでマイクに尋ねる。
もしマイクも知らない人で、私達…いやこの場合は睨まれている私だけだろう。
私を敵視している怪しい人達なら、下手に行動してマイクを巻き込んでしまうかもしれないからだ。
だけどマイクは気にせず振り向き、その人物たちを確認すると二パッと笑った。
「あぁ、あいつらは俺の冒険者パーティーのメンバーなんだ」
「パーティー?マイクの?」
「ああ。…そうだ!サラも俺たちのパーティーに入らねえか?歓迎するぞ」
確かにマイクの言う通り冒険者と言えば複数人と組むパーティーと共に冒険し、クエストをこなしていく中に生まれる友情が連想される。
私も別に好きで一人でいるわけではなく、仲間を作れる環境にいるなら喜んでパーティーを組んでいるところだ。
だけどマーオ町を出て五年。
幼少期しか付き合いのない私よりももっと仲を深め、そして既にパーティーとして組んでいる人たちが大半だ。
しかもあと少しで成人となる年齢まで冒険者登録していない人なんて稀で……。
つまりどういうことかというと、私と同年代の人達でも私よりもランクが上で、既にパーティーを組み仲を深めているということ。
今からFランクである私なんて入れてくれるパーティーなんてなかったのだ。
(同じランクだと、本当小さい子たちしかいないのよ……)
だからマイクの提案は凄く嬉しい。
パーティーというものにも憧れている為、誘ってくれて本当に嬉しいのだ。
「…嬉しいけど遠慮_」
「嬉しいんだな!サラもそう思ってくれて俺も嬉しいよ!
じゃあ皆には俺から話してみるから、またな」
「え!?ちょ!」
引き留めようにもさっさと駆け出してしまったマイクをみて私はため息をついた。
私を睨みつける女性の視線。
最初私かマイクどちらかに向けられているものなのかわからなかったから警戒したけど、マイクの仲間ならマイクを睨む理由がわからない。
なら女性が睨む先は必然的に私に向けられるというもの。
学園の頃に痛いほど味わってきた人様の恋愛事情に、私は再び巻き込まれることになるのねと肩を落とす。
「…まぁあの子も私が仲間に入るってなったら拒否するだろうし……」
今はクエストの続きに集中しようと意識を切り替えたのだった。
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