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冒険者編①
9 親友の結婚
しおりを挟むそしてあっという間に半年が過ぎた。
私はこの半年の間にFランクからCランク、つまりお父さんと同じランクまで昇格することが出来た。
これもアラさんとフロンのお陰ね。
フロンと契約してから移動の時間が大幅に削減でき、数多くの依頼をこなせるようになった上に、疲労回復用のポーションだけではなく、魔力が回復できるマジックポーションや毒消し等、様々なポーションの買取をお願いした為に効率よくランクアップのための報酬金額を稼ぐことが出来たのだ。
その為とんとん拍子でランクを上げることに成功し、マイクたちには羨ましがられ、お父さんとお母さんには褒めちぎられた。
なんだか調子に乗ってしまいそうな気持になってしまう。
いかんいかん。気持ちを切り替えないと!
パンパンと頬を叩いて私はデスクに向きなおす。
今はポーションの制作中。
薬草よりもポーションの買取の方が高額とアラさんに聞いてから、作ってはギルドに売っていたため、他の人よりも圧倒的に買取数が多かった私は、今ではギルドから個別に作成依頼が来るようになるほどだ。
流石にエステルの様には作れないポーションもあるけど、それなりの薬草があればそれなりの品物は作れるから安易に引き受けていたのだ。
今日もクエストを済ませた私は暗くならないうちに家に帰り、晩御飯の時間まで部屋に引きこもっている。
実は今ポーションの需要が非常に高くなっていた。
エステルの実家が事業でやっているように、専門の職業でやっている人達がいるにも関わらず、需要が高くなっている背景には、村や町までに供給が追い付いていない為なのだ。
ポーションに使用する薬草は、魔力回復が出来る魔癒草、疲労と体力を回復するポーション草、毒状態を回復するポイズン草、麻痺状態を回復するパラライズ草がある。
それぞれの薬草毎に効能が違う為、例えばポーション草だけで作ったポーションは疲労体力を回復するのに特化するが、もしポーション草と魔癒草を混ぜて作ったポーションは疲労体力魔力は回復するが効果は半減する。
これはそれぞれの薬草が反発しあい、効能が低下していると考えられている。
その為、ポーションと一括りにいってはいるが魔力回復ができるマジックポーションに毒や麻痺を解消する毒消し等種類が存在するのだ。
ちなみに作り方はどれも同じく、薬草を煎じ、薬草のカスを取り除き、魔力を流す。
たったこれだけなのだが、葉をすりつぶす際には葉の細胞を壊しすぎるとポーションの効果も落ちることと言われている為繊細な作業なのだ。
また同じ薬草の種類でも流す魔力量が微妙に違うし、第一この基本的な作り方だけではゲロマズポーションが出来てしまうので、飲みやすくする味付けの工程が必要になる。
そういった作業が面倒くさいと、マーオ町ではいい報酬を提示されていようがクエストを引き受けるものがいなかったのである。
(本当に学校通っててよかった)
腕前はエステルには及ばないけれども、それでも冒険者になるのが目標だった私は絶対に身につけたいと思ってエステルに頼み込んで教えてもらってたし、今はアラさんにだって認められてるんだから、私の作ったポーションだってそれなりだと思う。
だからこうしてお願いされた分は作ろうと頑張ってはいるが、こんなにもポーション作りに励むことになるとは思わなかったと、凝った首筋を伸ばしたその時だった。
「サラー!サラってば!まだやってるのー?!」
「うんー、もうちょっとで終わるよ!」
あと十本くらいと心の中で答えると、トントンと階段を上がる音が聞こえてくる。
そして数秒の間もなく開かれた先には、お母さんとニーナの姿があった。
私は想定外の人物の登場に目を丸くする。
「ニーナちゃんが来てるんだけど?」
何故か腕を組んで機嫌悪そうに私を見下ろすお母さんの後ろで、ニーナが「やっほぉ…」と力なさげに手を小さく揺らしていた。
「ニーナ!?」
そして私は立ち上がって駆け寄った。
「もう、ちゃんと返事をしなさいね!」
そしてぷんぷん怒ってお母さんは一階へと降りていく。
「サラのお母さん何度も呼んでたんだよ」とニーナが教えてくれて、私はずっとお母さんの呼びかけを無視していたことを知った。
後でお母さんには謝ろう。
「それで、どうしたの?」
私はニーナを部屋に招き入れてそう聞いた。
ニーナは私の幼馴染の一人で、マイクたちよりももっとずっと一緒にいた女の子だ。
今はマーオ町にあるお花屋さんで働いているらしい。
私が地元に戻り、冒険者登録をした後久しぶりに会ったニーナに報告すると「本当に冒険者になったんだ」と驚いていた。
「あの、あのね…私もう少しで結婚するの…」
「そうなの?おめでって結婚!?」
思いもよらない言葉に私は驚いた。
「え!あ!本当におめでとう!てか誰と!?あ、批判するとかじゃなくてね!?純粋に気になって!」
ワタワタと挙動不審になってしまったけれど、気を悪くしなかったのかニーナはくすりと笑う。
「サラもよく知っている人だよ」
そんなこと言われても私が良く知っている人がマーオ町に残っているのは片手で数えるくらいだ。
「マイク…は違うよね、リクスとか?」
「うん」
マイクと付き合っているってなったら、パーティーメンバであるフィナのやっかみが凄そうだと私はその考えに否定する。
なら次に考えられるのはリクスになるわけだけど…
「……え、今うんっていった?リクスと結婚?」
「そうだよ」
「え!?」
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