恋愛初心者の恋の行方

あおくん

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冒険者編①

11 お誘いの手紙

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「まさかサラがもうお父さんと同じランクになるだなんてなぁ」

今日も充実した一日を終え帰宅した私は、お父さんとお母さんと三人で食卓を囲み、お母さんが作ってくれた料理を口に運んでいると、お父さんが感慨深く言葉を告げた。

今こうして食卓に座っていると、本当に帰ってきたんだなと、卒業したばかりのころはよく思っていたことを思い出す。
私の前にお父さんがいて、お父さんの隣にはお母さんが座っていて。
私の位置から見える綺麗に整えられているキッチンも。
横を向けば寛げるスペースがあり、逆を向くと両親の寝室と私の部屋に繋がる階段がある。
全く変わっていない実家の光景に、私はとても安心できた。

そして今、お父さんは嬉しそうに微笑んでいたが、それでも寂しそうな表情を浮かべている。
私のランクが上がると嬉しいけど寂しいとお父さんの顔には書いている。
でもなぜ寂しいと思っているのかわからなくて、私はどういう意味でそういっているのか、私が尋ねる前にお父さんが再び口を開く。

「……サラは冒険者になったが、旅に出ようとは思ってないのか?」

その言葉にお父さんが寂しそうな表情を浮かべている意味が分かった。
ギルドが冒険者の身分を保証する条件はCランクになってからと決まっている。
私がCランクになったことで、私が家を出て旅に出てしまうのではないかと、お父さんは考えているのだ。

だから嬉しいけど、寂しそうにしているのかと納得した。

「思ってるよ」

私が肯定するとお父さんの眉に皺が寄る。
実の父親ながら、とてもわかりやすいと私は苦笑した。
ふとお父さんの隣に座っているお母さんに視線を向けると、ニコリと微笑まれ頷かれた。
お母さんがどんな気持ちでいるのかはわからないけど、反対しようと思っていないことは伝わってくる。

「…けど、旅にでるなら亜空間鞄を買ってからにしようと思っているの」

亜空間鞄とは、空間系の魔法の鞄だ。
学園に入った当初レルリラ達が使っていた鞄がそう。
小さな見た目の鞄の筈なのに、倍以上の物が入れれるほか、保有している重量にも影響しない優れものだ。
だけどお値段もびっくり。
私がほぼポーションで稼いできた半年間の収入でも足りないくらいに高額な商品だ。
まぁでもこれからはCランクになったんだから、前よりもお金をためやすくなっただろうと考えると、あとひと踏ん張りともいえる。
そう、あと、ひと踏ん、張り……。

消沈するお父さんは付け加えるように話した私の言葉を聞いて顔を上げた。
「そうか」と花が咲いた様に喜ぶお父さんに、お母さんは苦笑する。

でも私も実家に戻り、そして冒険者になって半年は経ったけど、まだ半年なのだ。
元々すぐ旅に出るつもりはない。

「そうだ、サラ。あなた宛てに手紙が届いてたのよ」

お母さんは席から立ち上がり、纏めていた手紙から一通の手紙を取ると私へと渡した。

茶色でシンプルな封筒にはドライフラワーが添えられていて、シンプルながらも可愛い印象を受ける。
私は裏返し名前を確認した。

「レロサーナだ!」

多くて月に一度、レロサーナとエステルと手紙のやり取りをしている私はレロサーナからの手紙に喜んだ。
御飯中ではあったが「読んでもいいわよ」といってくれたお母さんの言葉に甘えて、その場で手紙を開ける。

便せんは花柄でお洒落なものが選ばれていて、そんな便せんに歯綺麗で丁寧なレロサーナの文字が並ばれていた。
私はレロサーナの文字を目で追っていると、「なんて書かれているんだ?」とお父さんに尋ねられる。

「んっとね、卒業してから一度も会っていないから、たまには会いましょうだって」

もっというと他にもいろいろ書かれていたが、それはレロサーナの事情でもあるのでお父さんには言わない。
あと手紙にはもうすでにエステルにも日程の確認は済んでいて、この日はどう?と書かれていた。
私は冒険者なので先々の予定はないに等しいけど、出来るならもっとクエストを受けてランクを上げたいんだよね。
そんなことを考えていると、目標に突っ走る私の性格を熟知したお母さんが口を開く。

「いいじゃない。サラってばこの半年間ずっと働きづめだったし、たまの息抜きで遊んできなさい」

「そうだな。場所が遠いならお父さんが連れてってやるぞ」

お父さんとお母さんにもそう言われ、私はレロサーナの手紙をじっと眺めた後に頷いた。
学生の頃も勉強やトレーニングばっかりだって言われたことを思い出したのだ。

「うん。久しぶりに二人に会いたいしね」

「場所はどこなんだ?」

「王都だから一人で行ってくるよ。フロンとも契約したし、移動も問題ないから安心して」

そう言って私はさりげなくお父さんの申し出を断った。
学園からマーオ町に帰る時はゆっくり移動してきたが、マーオ町から学園に試験を受けに行った時のお父さんの屍姿を私は今でも思い出せる。
あんな状態になってまで送ってもらうというのはなんともいえない罪悪感でいっぱいな気持ちになるというものだ。

(しかも私の方が魔力量多いだろうし)

私に断られたお父さんは落ち込んでいたが、お母さんに慰められて息を吹き返す。

私はそんな父に笑って、少し冷めてしまったお母さんの料理を食べ終えたのだった。







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