168 / 256
冒険者編①
24 念願の食材②
しおりを挟む「サラちゃん凄いよ!あんな魔法みたことない!!」
アレグレンさんは私に駆け寄ると興奮した様子でそういった。
余程興奮したのか距離感がおかしいアレグレンさんに、私は一歩二歩と後退していると、間にフロンが割り込んだ。
『サラにとってあれくらいは余裕だよ』
(余裕ではなかったけどね)
魔力的な感覚で言うと確かにフロンの言った通り余裕ではあったが、水刃の魔法陣を一つ一つ描くことは同時発動と同じ意味になるから、あれだけの量を発動するのは結構辛いものがある。
それじゃあなぜやったのかというと、棒立ちで戦っている二人を眺めているのが嫌だったからだ。
私だって冒険者だと、それを主張したいと思ってしまった。
悪く言えば目立ちたがり屋だけど、二人には私だって出来るんだぞということを知ってもらいたかったから良いのだ。
だって一時的とはいえパーティーメンバーなんだから。
そして私が凍らせたキラービーの巣を回収したルファーさんは「とりあえず俺が持っておく」といって鞄にしまう。
すぐに味見をしてみたかったけど、凍らせてしまっているからね。
しょうがない。
「それにしてもなんでサラがCランクなのかわからない」
ルファーさんが不思議そうに言った。
「確かにそうだね。見た目で言うとたぶん俺たちとそんな変わらないでしょ?
でもかなりの実力なんだからもっとランクが上がっていてもおかしくないのに」
ちなみに俺たちは十八だよ。と答えるアレグレンさんに、私の二つ上だったことを知った。
それでも二歳差なんだからもっと気軽に話してよというアレグレンさんの言葉に甘えて、私は敬語をとる。
「私、ついこの間まで学園に通っていて、半年前に冒険者登録したばかりなの」
「半年前!?てか半年でCランクになれるもんなの!?」
「うん。ポーションの買取って意外とお金になるから、それで累積報酬額を稼いだって感じかな?
あとはランク上げに必要なクエストを受けられればすぐに上がったよ」
私がそういうとアレグレンさんとルファーさんは「そんな手があったのか…」と驚いていた。
私もアラさんに教えてもらった方法だからね。
「それよりこれからどうするの?また上空から確認する?」
私がアレグレンさん達に今後の捜査方法を尋ねると、ルファーさんが少し考えた後「このまま地上を歩こう」と告げる。
「なんでだよ?空からなら早く終わるし、俺の視力ならよく見れるぞ?」
そういったアレグレンさんにルファーさんがため息をつく。
「霊獣に乗ってるからといって俺の魔力が消費していることを忘れるなよ。
それにさっき上から見て気付いたことなんだが、ここからずっと南に言った先に鳥の群れのようなものが見えた。
異変の捜査ならその場所を確認した方がいいと思う」
「ならまた空から確認すれば…」
「視力がいいって言っても近づかないとみれないだろうが。
それにもしその鳥が魔物で、遮蔽物も何もない場所から俺たちが見ていたことに気付かれたら、物凄い勢いで襲ってくるだろ。
流石に逃げ切る魔力なんて残らないぞ」
ルファーさんがそういって地上を歩くことを説得すると、私達は南へと向かう。
私の望遠魔法で確認するといったのだが、遠くからみただけでは数の詳細までわからないままだといわれてしまえばルファーさんの言う通りにするしかなかった。
王都から南の場所にあるマーオ町だけど、更に南には森を挟んだところに辺境の大きな町があるのだ。
いったことがないけど、とても大きな町だと聞いたことがある。
二百メートル程歩いたところで私はふと上を見上げた。
本当になんとなくだ。
理由なんてない。
もし無理やり理由をつけるとするならば、代り映えのない森の光景を一度空を見上げたくなったのだと思う。
だけど私の行動は寧ろよかったのかもしれない。
木の高い位置から黒い瞳で私達を見下ろすヴァルチャーという鳥の魔物がいたのだ。
「キェェェェエエェェェ!」
ガラガラとした声で鳴いたヴァルチャーは止まっていた木から飛び降りて、そのまま南下する。
流石というかなんというか、かなり速度が速い。
私は急いでフロンに跨りながら後を追うと、ルファーさんとアレグレンさんも付いてくる。
ぶつからない様に木を避けながらヴァルチャーの後を追う私に呼びかけるようにアレグレンさんの声が聞こえた。
振り返ると追いかけたばかりの頃よりも、かなり差が開いている。
私はすぐに速度を緩めてルファーさん達が乗っている霊獣の隣にフロンを付けた。
「どうしたんです!?」
「だめだ!これ以上はルファーの魔力が持たない!」
焦ったように話すアレグレンさんに私は少し考えた後、フロンから飛び降りた。
そして二人にフロンの背に乗るように促す。
ちなみに飛び降りる前にちゃんと強化魔法を体全体に駆けているから、怪我もなく、そして飛ぶフロンの横も容易に走って追いつけている。
「それじゃあサラちゃんが…!」
心配するアレグレンさんと、汗を流しながら必死で霊獣に魔力を送り込むルファーさんに私は告げる。
「私魔力も体力も多い方なんで。まだまだ平気なの」
二ッと笑ってそういうと「いったい何者なんだ?」と言われたけれど、普通にオーレ学園卒業生で普通の冒険者だ。今はまだ。
「早くフロンに乗って!このままだとヴァルチャーにドンドン差をつけられてしまう!」
私は二人に焦った口調でそういうと二人はフロンの体に飛び乗った。
二人が乗れるほどに体を大きくしていたこともあって、二人が地面に落ちることはなかったけどそれでも顔色が少しだけよくない。
「フロン、速度上げていいからね」
『うん!わかった!』
私がフロンに伝えると、フロンは乗っている二人に遠慮なく速度を速めた。
17
あなたにおすすめの小説
報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?
小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。
しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。
突然の失恋に、落ち込むペルラ。
そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。
「俺は、放っておけないから来たのです」
初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて――
ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】田舎育ちの令嬢は王子様を魅了する
五色ひわ
恋愛
エミリーが多勢の男子生徒を従えて歩いている。王子であるディランは、この異様な光景について兄のチャーリーと話し合っていた。それなのに……
数日後、チャーリーがエミリーの取り巻きに加わってしまう。何が起こっているのだろう?
ディランは訳も分からず戸惑ったまま、騒動の中心へと引きづりこまれていくのだった。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる