恋愛初心者の恋の行方

あおくん

文字の大きさ
191 / 256
冒険者編①

47 昇級試験

しおりを挟む





歩き進めてやっと隣町が見えてきた。
太陽が沈みかけ、雲一つない青空だった空模様がオレンジ色に染まりつつあった時のことだ。

ここまで本っっっっ当に何もなかった。
何も起こらな過ぎて護衛クエストをやる意味があるのか?ルドウィンさん達は何をしているんだ???と思ってしまうくらいに何も起こらなかった。
まぁ安全で平和に進むことが出来たことはいいことだけどね。

それでも夜になにか起きてはまずいと魔道具を購入し、皆の安全のために起動させていたが一度も結界魔法を破られることがなかったときには、ちょっと勿体ないと思ったり思わなかったり……。
でもお陰で十分に体を休めることも出来た。

そして、私の護衛相手でもあり今回私の昇級試験を手伝ってくれる四人の目的地でもあるヘルレイス町が見えてきたとき、黒いローブを着た四人組が目の前に立ちふさがる。

沈むかける太陽を背に、逆光でよく見えなかったが昇級試験を担当している筈のルドウィンさん達だろう。
ちなみに四人の後方で門番の方々がこちらをちらちらみていたのが見えたけれど、私が苦笑しながら首を振ったことから問題なしと判断したようだ。
状況適応能力が高くないと門番も務まらないよね。

「命が欲しくば有り金全部置いてけーー!」

恐らくルドウィンさんと思われる人物が棒読みで叫ぶ。
恐らくというのは逆光で見えないというのもあるけど、フードを目深に被って顔が見えないからだ。
それでも声で男性だということはわかるし、イライアンさんが声を張る姿は想像できないので、発言したのはルドウィンさんだろうと推測する。
そしてルドウィンさんに続くように二コラさんがどもりながらも声を張った。

「…え、えっと…わるものだぞおお!」

これだけで二人がどれだけいい人なのか想像するのも容易かったが、そんな二人にナードさんが呆れたように口にする言葉に便乗するようにイライアンさんが口を開く。

「悪者って自分たちの事悪者っていわないんじゃ…」

「ここから先は通さん」

意外とノっている男性とノりきっていない女性。
こうしてみると同じ人間だけど、性別が違うだけで全然違うのね。
そして護衛される側の役として私の後方にいた四人がそれぞれ発言する。

「き、キャーーー!サラちゃんたすけてーー!」

「う、うおぉぉ!!!!……、あ!や、やーらーれーるー!」

「……私達もこれノらなきゃいけなんだっけ~?」

「いや、護衛対象役をお願いされたけどなりきれとは言われてないからいいんじゃねーか?」

「え、そうだったっけ?うわっはず~い!」

こっちはこっちで悪者に遭遇してしまった役に撤している…と思いきや、そうではないらしい。
ちなみに性別で違うんじゃなくて、やっぱり人それぞれ違うということを再認識した。

「ほら、サラちゃんも!セリフセリフ!」

そう助言するルルちゃんに私も!?と慌てながらも咄嗟に思いついた言葉を口にした。

「え、えっと……皆さん!私が守りますから動かないでくださいね!」

そういいながら私は四人を囲むように結界を張る。
すると薄い膜で覆った結界を見たルドウィンさんはひゅ~と口笛を鳴らした。
ちなみにいつの間にかフードを脱いでいた。視界が悪かったんだろう。

「スゲーな、無詠唱で結界使ったぜ」

「ああ、コイツは思ったより期待できそうだな…。二コラ!」

「…<ラーメー・デオー>」

二コラさんが魔法名を口にすると、生み出された氷の刃が私とルルちゃん達に向かってくる。
私はルルちゃん達の前に立ちふさがった。
例え結界が張ったとしても、私はルドウィンさん達の実力を知らないから、実力を把握する意味でも書面から攻撃を受ける必要があった。
そもそも私が張った防御魔法は物理攻撃には弱い。
魔法攻撃にも強い方だが、氷や土魔法のように形ある魔法にも弱かった。

私は手を前方に向けて魔法を発動させる。

<ラーメー・デオー>

氷には氷で対応。
私は二コラさんが発動した氷属性の魔法に、氷属性の魔法で対応した。
というより、魔法玉をなるべく消費しない様氷魔法で対処しただけなんだけど。

二コラさんの氷の刃を空中で打ち落とすと、他のメンバーからの魔法攻撃が間髪入れずに撃ち込まれた。
私は鞄から魔法玉を取り出し、ギュッと握りしめて構える。

ナードさんは土属性。
一般的に水属性は土属性に勝ると言われているが攻撃面限定では劣ると言われている。
それは土が水を吸い込むからだ。
ならばと土の水分を抜いてやるとナードさんの威力も落ちるようにスピードが緩くなった。
今後は一気に水魔法で土に水分を与えてあげると、困惑したナードさんは更に魔力を込める為、私は大量に水を含ませた土を凍らせる。
ちなみに水魔法での水分吸引についてはもともと薬草保存のために毎日のように行っていたことだから、今では得意な魔法になっていた。

ルドウィンさんは雷属性。
一般的に水属性と相性がいい属性だが、敵となると水属性のが劣勢だ。
だから物理攻撃として認識されている魔法を利用する。
魔力濃度の高い水の刀を生み出し雷を吸収、そして遠隔操作でルドウィンさん以外の三人に向けて放つ。
でも三人の姿を目を追っているわけではないから正確性はないけど、それでも探知魔法でどこにいるのか大体の位置は把握しているから時間稼ぎには十分だろう。

そして、ルドウィンさん。
ルドウィンさんに対しては物理攻撃で対応する。
理由は簡単だ。
ルドウィンさんは魔法での細かなダメージを重視するタイプではなく、物理攻撃の高威力を重視するタイプ。
それは背中に背負っている大剣からみても明らかだった。
他の三人の魔力量を考えても、ルドウィンさんが魔力が低いとは到底考えられなかったけれど、それでも物理攻撃を重視しているのか魔法を使うことなく重そうな大剣を抱えて踏み出した。
そして振り落とす。
私は着ている衣服全体にいきわたるように魔力を流した。
そして自身にも身体能力強化魔法をかけて、魔法で短剣を作り出しルドウィンさんの剣をいなす。

剣を習っておいてよかった。
色々な魔法も習得できていてよかった。
レルリラとの日々の鍛錬も頑張ってよかった。
おかげで、魔法での複数同時発動も出来るし、物理攻撃も出来るから。

私はルドウィンさんの剣を躱したりいなしたりしていただけだったが、一発打ち込もうと足にグッと力を入れた時だった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?

小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。 しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。 突然の失恋に、落ち込むペルラ。 そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。 「俺は、放っておけないから来たのです」 初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて―― ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】田舎育ちの令嬢は王子様を魅了する

五色ひわ
恋愛
 エミリーが多勢の男子生徒を従えて歩いている。王子であるディランは、この異様な光景について兄のチャーリーと話し合っていた。それなのに……  数日後、チャーリーがエミリーの取り巻きに加わってしまう。何が起こっているのだろう?  ディランは訳も分からず戸惑ったまま、騒動の中心へと引きづりこまれていくのだった。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...