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冒険者編①
53 初めての同伴で② ※視点変更有
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よく、人の話は最後まで聞きましょうという言葉を言われた人は多いかもしれない。
私も言われたことがある側の一人だ。
気を付けようと思ってはいるが、思い込んでしまうと猪突猛進的に行動してしまうことがあった。
学園を卒業して、そんな自分が少なくなってきたと。
そう感じていた筈なのに、やっぱり人は簡単には変わらないんだなと、私は目の前の子供に手を伸ばし、子供の顔をみてふと思ったのだ。
「サラ!!!!」
レルリラのこんなにも焦った声を聞くのなんていつぶりなんだろう。
そんなことを考えながら口しかない子供の顔を見て思う。
子供は顔の唯一であるパーツをにやりと弧を描くようにして笑った。
目があれば、口元とは逆の形で弧を描いていただろう。
目の前の子供は魔物なのか、それとも人間なのか。
私はわからないまま、私の手を握りしめた子供をじっと見ていた。
【待ってた。私の想いを受け取れるアナタをずっと、ずっと…】
そんな言葉が頭に響く。
目の前の子供の口元は動いていない筈なのに、レルリラもフロンもこんな言葉を私に言うわけがないのに、何故か聞こえる声に私の体がふらついた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
視点変更
「ふっふーん!ついにゲットしたぞ!」
買ったばかりの【異世界ハンサム】のゲームを腕に抱きかかえ、あたしは今最高潮に気分がよかった。
「発売前から気になってたんだよね~。攻略キャラは皆イケメンだし、しかも恋愛シュミレーションゲームなのに、RPG要素もあるって騒がれてて~」
まぁRPG要素はそこまで凝らなくてもいいけど。
だってそういうゲームって、レベル上げしないとクリアできないでしょ?
序盤ぐらいまでは楽に進めるけど、後になると行き詰っちゃって。
あたし結構そういうので途中で辞めちゃうからRPG要素はそこまでいらないのよねー。
ゲームの内容はこんな感じ。
舞台は異世界。
唯一浄化の力を持つ聖女を異世界から召喚し、攻略キャラと共に国を救世する物語。
イケメンたちと過ごす戦いの日々の中で、主人公はどのキャラクターと愛を育むのか?みたいな王道ストーリー。
実はこの作品は第二弾のシリーズものだが、一弾目とはキャラが全く違うから二作目だけでも十分楽しめる(らしい)。
一弾目とは違ってRPG要素も濃く、それが口コミで話題になって販売初日で売上数で上位に上り詰めていた。
しかもコーナーまで出来ていて、お店の押しっぷりにも驚いた。
ちなみにあたしは前作をやったことあるから、ある程度の内容は把握してる。
RPG要素いらないのになんで買ったんだって感じで思われるだろうけど、キャラが違うのがイイんだよね。
しかも前回いなかった隠しキャラ迄いるっていうならもう、これやるっきゃないって思って即買いしたのよ。
そんな発売日よりも前から楽しみにしていたゲームを買えて、ルンルン気分で帰宅途中の時だった。
足元から急に光りが生まれる。
その光は、眼も開けないぐらい眩しいものだった。
そして次に目を開けた場所は、全く見たこともない世界だった。
目の前にはさっきまで腕に抱えていたはずのゲームのパッケージに描かれているイケメンたちが並んでいる。
「え?え?」
あたしは困惑した。当たり前だ。
日本にやってくる外国人が多いとは聞いたことがあるが、あたしの町で外国人なんてみたこともない。
しかも輝く金髪に空のように青い瞳はともかく、炎のように熱い赤髪や自然にある木々のような緑色をした髪の人間なんていなかった。
「ようこそ聖女様」
「わが国を救ってください」
頭を下げるイケメンたち(恐らく攻略対象キャラ)に、あたしは戸惑いながらも「はい」と頷いてしまった。
今思うとこれ、本当に安直だった。
だから時間を戻せるなら戻してもらいたいし、この時のあたし自身に引き受けたりするなと叱ってやりたかった。
◇
あれからあたしの持っていると思われる聖女の力_浄化の力_を試すべく教会といわれる場所に連れていかれた。
教祖様?っていうの?
その人もまたイケメンで、…ん~、なんていうのかな、イケメン腹黒優男みたいな感じ?
イケメンな顔に拝むのはいいけど、付き合いたくは絶対ないかなって感じの人。
口に出してないよ?
心で思ってるだけだもん。
腹黒そうだし。
でもこの人もゲーム内だとたぶん攻略対象だから、これが本当にゲームの世界と同じならこれからも関わることがあるだろう。
第一弾では攻略対象だったけど、第二弾はまだパッケージも開けてないからわからない。
でも、第二弾の作品でもゲームでは聖女は力の使い方を教会でみっちりと特訓するのは変わらない筈だ。
まぁ、ゲームでは特訓シーンは暗くなって一瞬で終わるから、特訓がどんなもんかは知らないけど。
でもその特訓中、この人とのイベントが発生したらたまに特訓シーンのイラストが差し込まれるぐらいはあった。
ちなみに、確かに腕に抱えていたゲームはいつのまにか消えていた。
あたしの8000円返せ。
消費税もタイミングよく上がって……いやその分萌えまくってみせる!とか思ってただけに、腕の中から消えていてショックを受けた。
かなりショックだった。
ものすごくショックだった。
というかあたしに頭を下げたイケメンたちを見た瞬間、ゲームキャラじゃん!もしかしてここゲームの中とか!?って冗談交じりで思ってたけど、こうして教会に連れてこられて疑念が確信へと変わっていく。
ここはゲームの世界かもしれないと。
だから持ってたゲームもなくなった?
それなら仕方ないね。
むしろ8000円以上の経験ができるじゃない。
と思ったけど、鏡見たらあたしそのままだったから、それはそれでちょっと残念だった。
どうせなら超絶美少女キャラにしてくれよね。
まぁ、いずれにしてもこれって転移だよね。異世界転移。
で、聖女があたしだから、あたしってばこれからこのイケメンたちと恋するのかー!
……うう~ん。
モテない……いやこの16年間で告白はされたことあるから…、片手で足りるぐらいだけど。
だから全くモテないわけでは、ない。筈!
まぁなにをいいたいかというと、美少女な容姿でもないのにイケメンたちとかーって思って。
うん。ちょっと腹筋しようかな。
このだらけまくってる贅肉ちゃんに鞭を入れたくなってしまったのも乙女心あるあるだよね!
私も言われたことがある側の一人だ。
気を付けようと思ってはいるが、思い込んでしまうと猪突猛進的に行動してしまうことがあった。
学園を卒業して、そんな自分が少なくなってきたと。
そう感じていた筈なのに、やっぱり人は簡単には変わらないんだなと、私は目の前の子供に手を伸ばし、子供の顔をみてふと思ったのだ。
「サラ!!!!」
レルリラのこんなにも焦った声を聞くのなんていつぶりなんだろう。
そんなことを考えながら口しかない子供の顔を見て思う。
子供は顔の唯一であるパーツをにやりと弧を描くようにして笑った。
目があれば、口元とは逆の形で弧を描いていただろう。
目の前の子供は魔物なのか、それとも人間なのか。
私はわからないまま、私の手を握りしめた子供をじっと見ていた。
【待ってた。私の想いを受け取れるアナタをずっと、ずっと…】
そんな言葉が頭に響く。
目の前の子供の口元は動いていない筈なのに、レルリラもフロンもこんな言葉を私に言うわけがないのに、何故か聞こえる声に私の体がふらついた。
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視点変更
「ふっふーん!ついにゲットしたぞ!」
買ったばかりの【異世界ハンサム】のゲームを腕に抱きかかえ、あたしは今最高潮に気分がよかった。
「発売前から気になってたんだよね~。攻略キャラは皆イケメンだし、しかも恋愛シュミレーションゲームなのに、RPG要素もあるって騒がれてて~」
まぁRPG要素はそこまで凝らなくてもいいけど。
だってそういうゲームって、レベル上げしないとクリアできないでしょ?
序盤ぐらいまでは楽に進めるけど、後になると行き詰っちゃって。
あたし結構そういうので途中で辞めちゃうからRPG要素はそこまでいらないのよねー。
ゲームの内容はこんな感じ。
舞台は異世界。
唯一浄化の力を持つ聖女を異世界から召喚し、攻略キャラと共に国を救世する物語。
イケメンたちと過ごす戦いの日々の中で、主人公はどのキャラクターと愛を育むのか?みたいな王道ストーリー。
実はこの作品は第二弾のシリーズものだが、一弾目とはキャラが全く違うから二作目だけでも十分楽しめる(らしい)。
一弾目とは違ってRPG要素も濃く、それが口コミで話題になって販売初日で売上数で上位に上り詰めていた。
しかもコーナーまで出来ていて、お店の押しっぷりにも驚いた。
ちなみにあたしは前作をやったことあるから、ある程度の内容は把握してる。
RPG要素いらないのになんで買ったんだって感じで思われるだろうけど、キャラが違うのがイイんだよね。
しかも前回いなかった隠しキャラ迄いるっていうならもう、これやるっきゃないって思って即買いしたのよ。
そんな発売日よりも前から楽しみにしていたゲームを買えて、ルンルン気分で帰宅途中の時だった。
足元から急に光りが生まれる。
その光は、眼も開けないぐらい眩しいものだった。
そして次に目を開けた場所は、全く見たこともない世界だった。
目の前にはさっきまで腕に抱えていたはずのゲームのパッケージに描かれているイケメンたちが並んでいる。
「え?え?」
あたしは困惑した。当たり前だ。
日本にやってくる外国人が多いとは聞いたことがあるが、あたしの町で外国人なんてみたこともない。
しかも輝く金髪に空のように青い瞳はともかく、炎のように熱い赤髪や自然にある木々のような緑色をした髪の人間なんていなかった。
「ようこそ聖女様」
「わが国を救ってください」
頭を下げるイケメンたち(恐らく攻略対象キャラ)に、あたしは戸惑いながらも「はい」と頷いてしまった。
今思うとこれ、本当に安直だった。
だから時間を戻せるなら戻してもらいたいし、この時のあたし自身に引き受けたりするなと叱ってやりたかった。
◇
あれからあたしの持っていると思われる聖女の力_浄化の力_を試すべく教会といわれる場所に連れていかれた。
教祖様?っていうの?
その人もまたイケメンで、…ん~、なんていうのかな、イケメン腹黒優男みたいな感じ?
イケメンな顔に拝むのはいいけど、付き合いたくは絶対ないかなって感じの人。
口に出してないよ?
心で思ってるだけだもん。
腹黒そうだし。
でもこの人もゲーム内だとたぶん攻略対象だから、これが本当にゲームの世界と同じならこれからも関わることがあるだろう。
第一弾では攻略対象だったけど、第二弾はまだパッケージも開けてないからわからない。
でも、第二弾の作品でもゲームでは聖女は力の使い方を教会でみっちりと特訓するのは変わらない筈だ。
まぁ、ゲームでは特訓シーンは暗くなって一瞬で終わるから、特訓がどんなもんかは知らないけど。
でもその特訓中、この人とのイベントが発生したらたまに特訓シーンのイラストが差し込まれるぐらいはあった。
ちなみに、確かに腕に抱えていたゲームはいつのまにか消えていた。
あたしの8000円返せ。
消費税もタイミングよく上がって……いやその分萌えまくってみせる!とか思ってただけに、腕の中から消えていてショックを受けた。
かなりショックだった。
ものすごくショックだった。
というかあたしに頭を下げたイケメンたちを見た瞬間、ゲームキャラじゃん!もしかしてここゲームの中とか!?って冗談交じりで思ってたけど、こうして教会に連れてこられて疑念が確信へと変わっていく。
ここはゲームの世界かもしれないと。
だから持ってたゲームもなくなった?
それなら仕方ないね。
むしろ8000円以上の経験ができるじゃない。
と思ったけど、鏡見たらあたしそのままだったから、それはそれでちょっと残念だった。
どうせなら超絶美少女キャラにしてくれよね。
まぁ、いずれにしてもこれって転移だよね。異世界転移。
で、聖女があたしだから、あたしってばこれからこのイケメンたちと恋するのかー!
……うう~ん。
モテない……いやこの16年間で告白はされたことあるから…、片手で足りるぐらいだけど。
だから全くモテないわけでは、ない。筈!
まぁなにをいいたいかというと、美少女な容姿でもないのにイケメンたちとかーって思って。
うん。ちょっと腹筋しようかな。
このだらけまくってる贅肉ちゃんに鞭を入れたくなってしまったのも乙女心あるあるだよね!
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