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冒険者編①
55 初めての同伴で④
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◆
「サラ!!!!」
私は私の名を叫ぶ声で目を覚ました。
レルリラが羽織っていたローブを下に、私はいつの間にか地面に横になっていた。
「……っ……」
状況を考えれば私に夢を見させた子供のような見た目をした、魔物……といっていいのかわからない存在はレルリラに退治されたのだろう。
そして私は自分の体がふらついたのを最後に意識を失った。
何が原因かわからないために、無理に移動させることはせず、地面に横たわらせたのだろうと考える。
だから雲一つない晴天も、太陽の光で輝く木々たちの様子も視界に映った。
綺麗だと思ったし、こうして空を見上げたのはフロンとゆっくり過ごしたぶりだなと、そう思った。
そして、先程まで見ていた”夢”が実際にあったことなんだと、私は悟ったのだった。
空に浮かぶ太陽も、二つの月も同じ。
夢の中に出てきた王子の制服も、私が実際に着ていたオーレ学園のもの。
そして同伴者に選ばれた四人の男の中にいた騎士の制服も、今レルリラが着ている服と同じデザインだ。
たったそれだけの共通点。
それだけなら、これがただの夢と片づけられるのも仕方ないだろう。
だけど今の夢を見た私は思い出した。
初めて瘴気の魔物に会ったあの日の前の夜にみた夢。
マーオ町に瘴気の魔物が現れた前に見た夢。
ただの夢見が悪かったのだろうと、そう思っていただけだった。
だって目を覚ました私は夢の内容を全然覚えていなかったから。
だから気にすることもなかったし、忘れた夢をわざわざ思い出すこともしなかったけど、今はそうではない。
はっきり思い出した。
虐げられる女性の姿。
しかも先程見た夢の続きともいえる女性の夢を私は見たし、忘れていた夢を全て思い出したのだ。
もうこれがただの夢で終わらせられるわけがなかった。
『サラ…?』
フロンが私の名を呼ぶ。
私が目を覚まして一切の反応を見せていないから不安なのだろう。
でも私は、心に渦巻くこのもやもやした気持ちが抑えられなかった。
悲しみ。
怒り。
恨み。
憎しみ。
苦しみ。
そして、助けを求める切実な思い。
私は唇を噛み締めた。
(あぁ、そっか……)
初めて私が見た瘴気の魔物も、この前対峙した瘴気の魔物も。
私になにかを訴えているような、そんな気がして、でも魔物がそんなことをするわけがないと否定してきたが、あれは本当に私に伝えたかったのだ。
今、私に伝えた様に。
なんで私なのかわからないけど、それでも聖女が感じてきた感情を、私に伝えたかった。
だからこそ、じっと私を見て、逸らさなかったのだ。
二度目に見た聖女の夢。
最後の方では虐げた男たちへ向けた憎悪が激しく伝わってきた。
そして、憎しみに捕らわれた聖女に伸びる黒い影。
あれが、本当の瘴気の魔物の姿だ。
私を覗き込むレルリラとフロンが、ぎょっとした顔をする。
いつの間にか私の目からは涙がとめどなく溢れていた。
私は泣いていることを自覚すると、今度は鼻水までも流れ出し、グスグスと鼻をすすりながら泣き続けた。
『サラが泣いている!お前の所為だ!』
「最後にサラに話しかけたのはお前だろう!?」
言葉が通じない筈の二人は何故か言葉が通じているかのように責任を押し付け合う。
普段ならそんな姿が面白くて笑っているところだが、あいにくそんな気持ちになれなかった。
慌てる二人に、二人の所為じゃないと伝えたいけど、出来なかった。
私は涙を流しながら腕で顔を覆った。
苦しそうにしてまで浄化する聖女たちはきっと命を縮めていたんだ。
それでも役目を放棄することもせず、約束を果たそうとしてくれた。
異界の地からきた、全然関係ない私達の為に、聖女たちは犠牲になった。
そして聖女たちは苦しんだ。
しかも全く大切にされてこなかった。
本当に意味がわからなかった。
聖女は大切にされて当然の存在なのに。
どうしてそんな態度がとれるのかが、夢で彼らたちを見た私にはわからなかった。
それでも私は伝えなければいけない。
聖女を呼び出したこの国のトップに伝えるために。
そして聖女を保護しているレルリラ家に伝わることを祈って、あふれ出る涙を拭いながらレルリラの名を呼ぶ。
「レ、レルリラ、は、話がある、」
ぐすぐすと鼻を啜りながらだからうまく言葉が繋がらなかった。
それでもレルリラは頷いてくれた気がする。
だから私は自分が感じたこと、見たことを、漏らすことなくレルリラに伝えることに必死になった。
◆冒険者編①終わり
「サラ!!!!」
私は私の名を叫ぶ声で目を覚ました。
レルリラが羽織っていたローブを下に、私はいつの間にか地面に横になっていた。
「……っ……」
状況を考えれば私に夢を見させた子供のような見た目をした、魔物……といっていいのかわからない存在はレルリラに退治されたのだろう。
そして私は自分の体がふらついたのを最後に意識を失った。
何が原因かわからないために、無理に移動させることはせず、地面に横たわらせたのだろうと考える。
だから雲一つない晴天も、太陽の光で輝く木々たちの様子も視界に映った。
綺麗だと思ったし、こうして空を見上げたのはフロンとゆっくり過ごしたぶりだなと、そう思った。
そして、先程まで見ていた”夢”が実際にあったことなんだと、私は悟ったのだった。
空に浮かぶ太陽も、二つの月も同じ。
夢の中に出てきた王子の制服も、私が実際に着ていたオーレ学園のもの。
そして同伴者に選ばれた四人の男の中にいた騎士の制服も、今レルリラが着ている服と同じデザインだ。
たったそれだけの共通点。
それだけなら、これがただの夢と片づけられるのも仕方ないだろう。
だけど今の夢を見た私は思い出した。
初めて瘴気の魔物に会ったあの日の前の夜にみた夢。
マーオ町に瘴気の魔物が現れた前に見た夢。
ただの夢見が悪かったのだろうと、そう思っていただけだった。
だって目を覚ました私は夢の内容を全然覚えていなかったから。
だから気にすることもなかったし、忘れた夢をわざわざ思い出すこともしなかったけど、今はそうではない。
はっきり思い出した。
虐げられる女性の姿。
しかも先程見た夢の続きともいえる女性の夢を私は見たし、忘れていた夢を全て思い出したのだ。
もうこれがただの夢で終わらせられるわけがなかった。
『サラ…?』
フロンが私の名を呼ぶ。
私が目を覚まして一切の反応を見せていないから不安なのだろう。
でも私は、心に渦巻くこのもやもやした気持ちが抑えられなかった。
悲しみ。
怒り。
恨み。
憎しみ。
苦しみ。
そして、助けを求める切実な思い。
私は唇を噛み締めた。
(あぁ、そっか……)
初めて私が見た瘴気の魔物も、この前対峙した瘴気の魔物も。
私になにかを訴えているような、そんな気がして、でも魔物がそんなことをするわけがないと否定してきたが、あれは本当に私に伝えたかったのだ。
今、私に伝えた様に。
なんで私なのかわからないけど、それでも聖女が感じてきた感情を、私に伝えたかった。
だからこそ、じっと私を見て、逸らさなかったのだ。
二度目に見た聖女の夢。
最後の方では虐げた男たちへ向けた憎悪が激しく伝わってきた。
そして、憎しみに捕らわれた聖女に伸びる黒い影。
あれが、本当の瘴気の魔物の姿だ。
私を覗き込むレルリラとフロンが、ぎょっとした顔をする。
いつの間にか私の目からは涙がとめどなく溢れていた。
私は泣いていることを自覚すると、今度は鼻水までも流れ出し、グスグスと鼻をすすりながら泣き続けた。
『サラが泣いている!お前の所為だ!』
「最後にサラに話しかけたのはお前だろう!?」
言葉が通じない筈の二人は何故か言葉が通じているかのように責任を押し付け合う。
普段ならそんな姿が面白くて笑っているところだが、あいにくそんな気持ちになれなかった。
慌てる二人に、二人の所為じゃないと伝えたいけど、出来なかった。
私は涙を流しながら腕で顔を覆った。
苦しそうにしてまで浄化する聖女たちはきっと命を縮めていたんだ。
それでも役目を放棄することもせず、約束を果たそうとしてくれた。
異界の地からきた、全然関係ない私達の為に、聖女たちは犠牲になった。
そして聖女たちは苦しんだ。
しかも全く大切にされてこなかった。
本当に意味がわからなかった。
聖女は大切にされて当然の存在なのに。
どうしてそんな態度がとれるのかが、夢で彼らたちを見た私にはわからなかった。
それでも私は伝えなければいけない。
聖女を呼び出したこの国のトップに伝えるために。
そして聖女を保護しているレルリラ家に伝わることを祈って、あふれ出る涙を拭いながらレルリラの名を呼ぶ。
「レ、レルリラ、は、話がある、」
ぐすぐすと鼻を啜りながらだからうまく言葉が繋がらなかった。
それでもレルリラは頷いてくれた気がする。
だから私は自分が感じたこと、見たことを、漏らすことなくレルリラに伝えることに必死になった。
◆冒険者編①終わり
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