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冒険者編②
23 見えない壁の先②
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地面に降り、レルリラから素早く離れて周りを見渡した。
どうやら穴は洞窟のようになっていて、外が近いのか光が差し込んでいる。
つまり今いる場所が洞窟の最深部にあたるところなのだろう。
レルリラに抱き締められながら穴の中を降りた私は、途中で密着状態になっていることに気付き、そこからずっとドキドキと心臓が煩い。
辺りは暗く、うっすらとしか周りを確認することが出来ない為、絶対に赤くなっている顔を見られずにすんだことが幸いだった。
「サラ」
「なに明かりつけてんのよ!?」
呼ばれたために振り向くと、光の魔法で辺りを照らすレルリラに私は驚きながらも咄嗟に解除魔法で魔法を消す。
再び暗くなったことで見えないが、不思議そうにしていることはわかった。
「…熱でもあるのか?顔が赤_」
「くない!それに何があるかわかんないんだから明かりは付けない方がいいでしょ?」
「探知で周囲に危険になりそうな魔物がいないかは既に確認してる」
仕事が早いなコイツ。
褒められるべきことではあるが、今はやめてほしい。
私はため息をついて、自分で少し明るさを控えた光の玉を作った。
(たぶんもう顔が熱くないから平気だと思うけど、念には念をいれなきゃ)
レルリラのことを好きだと自覚してから、私は自分の気持ちを隠すことを決めた。
そもそも伝えたところで受け入れられるわけがないからだ。
レルリラには王女様という婚姻相手が決まっているんだから、気持ちを伝えたとしても無駄だということは考えなくてもわかるし、友達という関係自体を崩したくなんてないからだ。
(……そう、今は)
いつかはレルリラの側から離れなければならない時がやってくる。
友達であったとしても、異性である私はレルリラのそばに居続けることはできない。
第一身分の問題だって出てくるだろう。
平民と貴族、冒険者と騎士団、他にも釣り合わない理由があるかもしれない。
そもそも私が今騎士団で特務隊のレルリラと共に行動できるのは、私が聖水を作れるという理由があるからだ。
(もしこの洞窟でなんらかの手がかりが見つかれば、行動を共にする理由もなくなる)
だから今は、平然とした態度で、普通の友達のようにそばにいることだけを考えなければならない。
上を見上げるレルリラの姿に見惚れつつ、私は「どうする?」と問いかける。
「…とりあえず先に進もう」
「……そういえば穴に落ちたんだから、レルリラの魔法で登れば戻れるんじゃないの?」
「勿論戻れるが、大量にいる魔物がまた襲ってこないとは限らないからな。どうせなら別のルートで戻った方がいいだろ」
レルリラの言葉に私は確かにと納得して、先に進もうとするレルリラの後に続くように歩く。
洞窟の中は思ったよりも広い。
天井は高く、剣を振り回しても壁にぶつかることなんてないくらいに広かった。
だが人も動物も全くこない場所なのか、地面はデコボコと歩きにくい。
それでも光が差し込めるほどに短い道だったからすぐに外に出ることが出来た。
「わぁ…、遺跡、っていうの?凄い…」
洞窟から出ると、人工的に大地をくり抜いたかのようにポッカリと開けられた一帯に、まるで昔は集落があったかのように石造りで作られた家が崩れた状態で存在していた。
長い年月が経っているのか、苔なのか草なのか生えた状態で、もう誰も住んでいないのだろうとわかる。
(…考古学者、とかが見たら喜びそうな場所ね)
それよりもわざわざ土地をくり抜き、周りよりも低くした場所に家を建てるだなんて、まるで誰かに見つからないように隠れて過ごしていたような、そんな考えにさせるこの場所に私は不思議な気持ちになる。
洞窟から集落を繋げるためだろう階段を下りた私達はキョロキョロと見渡しながら集落の様子を伺うと、洞窟の入り口からでは決して見えない場所に大きな洞穴があることがわかった。
洞穴の中にはまるで神殿の一部を埋め込んだかのような造りに、私は思わず息を飲む。
なんだか、不思議。
周りは随分荒れているのにこの場所だけは綺麗だったのだ。
それに神聖な空間だからかわからないけど、容易に踏み込んではいけないような、そんな気持ちにされる。
「って、ちょっと待ってよ!」
そんな神殿に躊躇なく進んでいくレルリラに私はギョッとしながらも後を追った。
胸がざわざわする感覚を覚えながらも、私はレルリラの後ろを歩きながら祭壇のような場所に行きついた。
「え…」
「あれは…魔物か?」
祀るためか、それとも供養するためか、祭壇の上に人間に近い見た目をした何かが横たわっているのが遠目から見える。
頭から角が生えているその人は人族ではないだろう。
かといって獣人でもなさそうだ。
それでは魔物か?と私とレルリラが推測しながら近づいたところで、横たわるその人は目を開く。
魔物特有の黒に染まった目に、人間ではなく魔物だということを察した私達は素早く警戒態勢をとった。
人型の魔物はゆっくりと体を起こし、祭壇から足を下ろすと私とレルリラを視界に入れる。
その時だ。
「____え、?」
気付くと祭壇には魔物の姿が消えていた。
それと同時に浴びる風と、後方でなにかが激しく崩れたような音が聞こえる。
私は横を向いた。
だけどそこにいたはずのレルリラの姿はなく、代わりに祭壇の上にいたはずの魔物がすぐそばに立っている。
私は咄嗟に距離を取ろうと後ろに飛んだ。
神殿のような造りになっているここは、洞窟や集落のような足場の悪い造りにはなっていない。
だから咄嗟に後ろに飛んでも転ぶようなことはなかったが、魔物が素早く手を伸ばしたことで、避けようとした私はバランスを崩した。
どうやら穴は洞窟のようになっていて、外が近いのか光が差し込んでいる。
つまり今いる場所が洞窟の最深部にあたるところなのだろう。
レルリラに抱き締められながら穴の中を降りた私は、途中で密着状態になっていることに気付き、そこからずっとドキドキと心臓が煩い。
辺りは暗く、うっすらとしか周りを確認することが出来ない為、絶対に赤くなっている顔を見られずにすんだことが幸いだった。
「サラ」
「なに明かりつけてんのよ!?」
呼ばれたために振り向くと、光の魔法で辺りを照らすレルリラに私は驚きながらも咄嗟に解除魔法で魔法を消す。
再び暗くなったことで見えないが、不思議そうにしていることはわかった。
「…熱でもあるのか?顔が赤_」
「くない!それに何があるかわかんないんだから明かりは付けない方がいいでしょ?」
「探知で周囲に危険になりそうな魔物がいないかは既に確認してる」
仕事が早いなコイツ。
褒められるべきことではあるが、今はやめてほしい。
私はため息をついて、自分で少し明るさを控えた光の玉を作った。
(たぶんもう顔が熱くないから平気だと思うけど、念には念をいれなきゃ)
レルリラのことを好きだと自覚してから、私は自分の気持ちを隠すことを決めた。
そもそも伝えたところで受け入れられるわけがないからだ。
レルリラには王女様という婚姻相手が決まっているんだから、気持ちを伝えたとしても無駄だということは考えなくてもわかるし、友達という関係自体を崩したくなんてないからだ。
(……そう、今は)
いつかはレルリラの側から離れなければならない時がやってくる。
友達であったとしても、異性である私はレルリラのそばに居続けることはできない。
第一身分の問題だって出てくるだろう。
平民と貴族、冒険者と騎士団、他にも釣り合わない理由があるかもしれない。
そもそも私が今騎士団で特務隊のレルリラと共に行動できるのは、私が聖水を作れるという理由があるからだ。
(もしこの洞窟でなんらかの手がかりが見つかれば、行動を共にする理由もなくなる)
だから今は、平然とした態度で、普通の友達のようにそばにいることだけを考えなければならない。
上を見上げるレルリラの姿に見惚れつつ、私は「どうする?」と問いかける。
「…とりあえず先に進もう」
「……そういえば穴に落ちたんだから、レルリラの魔法で登れば戻れるんじゃないの?」
「勿論戻れるが、大量にいる魔物がまた襲ってこないとは限らないからな。どうせなら別のルートで戻った方がいいだろ」
レルリラの言葉に私は確かにと納得して、先に進もうとするレルリラの後に続くように歩く。
洞窟の中は思ったよりも広い。
天井は高く、剣を振り回しても壁にぶつかることなんてないくらいに広かった。
だが人も動物も全くこない場所なのか、地面はデコボコと歩きにくい。
それでも光が差し込めるほどに短い道だったからすぐに外に出ることが出来た。
「わぁ…、遺跡、っていうの?凄い…」
洞窟から出ると、人工的に大地をくり抜いたかのようにポッカリと開けられた一帯に、まるで昔は集落があったかのように石造りで作られた家が崩れた状態で存在していた。
長い年月が経っているのか、苔なのか草なのか生えた状態で、もう誰も住んでいないのだろうとわかる。
(…考古学者、とかが見たら喜びそうな場所ね)
それよりもわざわざ土地をくり抜き、周りよりも低くした場所に家を建てるだなんて、まるで誰かに見つからないように隠れて過ごしていたような、そんな考えにさせるこの場所に私は不思議な気持ちになる。
洞窟から集落を繋げるためだろう階段を下りた私達はキョロキョロと見渡しながら集落の様子を伺うと、洞窟の入り口からでは決して見えない場所に大きな洞穴があることがわかった。
洞穴の中にはまるで神殿の一部を埋め込んだかのような造りに、私は思わず息を飲む。
なんだか、不思議。
周りは随分荒れているのにこの場所だけは綺麗だったのだ。
それに神聖な空間だからかわからないけど、容易に踏み込んではいけないような、そんな気持ちにされる。
「って、ちょっと待ってよ!」
そんな神殿に躊躇なく進んでいくレルリラに私はギョッとしながらも後を追った。
胸がざわざわする感覚を覚えながらも、私はレルリラの後ろを歩きながら祭壇のような場所に行きついた。
「え…」
「あれは…魔物か?」
祀るためか、それとも供養するためか、祭壇の上に人間に近い見た目をした何かが横たわっているのが遠目から見える。
頭から角が生えているその人は人族ではないだろう。
かといって獣人でもなさそうだ。
それでは魔物か?と私とレルリラが推測しながら近づいたところで、横たわるその人は目を開く。
魔物特有の黒に染まった目に、人間ではなく魔物だということを察した私達は素早く警戒態勢をとった。
人型の魔物はゆっくりと体を起こし、祭壇から足を下ろすと私とレルリラを視界に入れる。
その時だ。
「____え、?」
気付くと祭壇には魔物の姿が消えていた。
それと同時に浴びる風と、後方でなにかが激しく崩れたような音が聞こえる。
私は横を向いた。
だけどそこにいたはずのレルリラの姿はなく、代わりに祭壇の上にいたはずの魔物がすぐそばに立っている。
私は咄嗟に距離を取ろうと後ろに飛んだ。
神殿のような造りになっているここは、洞窟や集落のような足場の悪い造りにはなっていない。
だから咄嗟に後ろに飛んでも転ぶようなことはなかったが、魔物が素早く手を伸ばしたことで、避けようとした私はバランスを崩した。
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