拾われた孤児は助けてくれた令嬢に執着する

あおくん

文字の大きさ
20 / 26

別れ

しおりを挟む



「なにが“へ?”よ!私の馬鹿!!!」

アレンにプロポーズなるものをされた私は、一人ベッドの上で悶えていた。
大きな枕を思いっきり抱きしめ、何度も顔を押し付ける。
なにをしているのかと他の人がみたらそういうかもしれないが、羞恥心が凄かったのだ。

アレンの言葉は嬉しい。
嬉しい以外なにも考えられなかった。
そしてこの時点で私はアレンのことが恋愛という意味で好きだということに気付く。
考えてみれば私の理想のタイプにアレンはめちゃくちゃ当てはまっているのだ。
いや、もしかしたら無意識にアレンのことが好きになっていたから、アレンの特徴に当てはまっている人がタイプだと思っていたのかもしれない。

ならちゃんと返事をしなさいと思うが考えてみてほしい。
前世の事はわからないため除外するが、十三歳に私はなったばかりだ。
ぐんぐんと成長し大人の“ように見える”素敵な男性に成長したアレンに、プロポーズをされたのだ。
ように見えるというのは単純にアレンの本当の歳を知らないため。
まぁ同じくらいの年齢ということは合っているだろうから、学園も同じ学年で通っているのだけど。

(……………うぅ…)

アレンは貴族ではない。
それはアレン自身でもわかっているから、本来は私の結婚相手に選ばれる存在ではないと理解しているはずなのに、アレンはその上で私に告白した。
私の伴侶に立候補してもいいかと、そう告げたのだ。
その一言にアレンがどれほど勇気を奮い立たせたのか。
そんなことも知らず、私は思った。

(え、アレンが私の事を?いつから?へ?)

と。
そして顔に熱が集まり、色々想像してしまった。
アレンの大きな手と手を繋ぐところや、アレンの意外と鍛えられた筋肉質な肉体に抱きしめられるところとか、アレンの形のいい唇にキスするところとか、それはもういろいろと考えた。
その結果があの返答だ。

”へ?”

なにがへ?だ!と私は時間が経ち羞恥心でいっぱいになって今に至る。

アレンは私にプロポーズをした後「すみません…」とそそくさと逃げるように部屋を出た。
きっと勇気を出して私にプロポーズをしたのにこんな返事しかもらえない。悲しい!と思っただろう。
でもちがうの!私の頭が十分な回転をしなかったの!

だけどそれをすぐにアレンに伝えるのは出来なかった。
顔が熱を持ったように熱くて、きっと今アレンをみたらまた思考が止まってしまうかもしれないと危惧したのだ。

……………。
ううん、言い訳だ。
アレンに誤解なんてされたくない。
私もアレンのことが好きなんだとそう伝えたい。
貴族と平民が籍を入れるという大きな問題はあるが、そこは想いを通わせてから考えよう。
二人で考えたらきっといい案が出てくるはずだ。

(アレンが晩御飯を知らせに来たら、ちゃんと言おう…!)

だから今は勇気を奮い立たせるために、もう少し一人にさせて!



だけどその日の晩御飯の時間、私はお父様から衝撃的な話を聞くことになった。






「………アレンが、出ていった……?」

羞恥心もある程度まで収まった私は、晩御飯を知らせに来てくれるはずのアレンを待った。
だが来たのは私のドレスの着付けを手伝いしてくれるメイドで、アレンではなかった。
(アレンも顔を会わせづらいのかな)と勝手な解釈をした私はそのままお父様とお母様が待っている食堂へとやってきた。

自分の席に座り、従者たちが食事を運んできてくれる中お父様が話を切り出す。
その内容は主に領地の事で合ったり、社交界で広がっている噂であったりが主なのだが今日は違った。
アレンが辺境伯領の地に向かったという内容だったのだ。

「出ていった、というのは言葉が過ぎるな。
“アレンの要望でアレンを辺境領の地に派遣した”だ。
指示を受けて向かったのだから、“出ていった”わけではない」

「アレンは何故……辺境伯領に?」

お父様の言葉に私は尋ねた。
理由を知りたかったのだ。

「……お前も知っていると思うが、辺境伯領はあらゆる脅威からこの国を守っている砦ともいえる領地だ。
そこから少し前に救援を求む手紙が寄せられた。
レリスロート家としては辺境伯領とは離れている為、少数だけを派遣しようと考えていたところにアレンが自らを派遣するようにと告げたのだ」

「ですから何故!?」

私が知りたかったのは辺境伯領に派遣を送り出す経緯ではなく、アレンが行くことになった“理由”だ。
そもそもアレンは稽古を受けた身であるが、騎士ではない。
私の従者だ。
そして将来の執事で、旦那さんになるかもしれない相手である。

「…アレンはなにも言わなかったのですか?」

そう尋ねる私に、お父様が困ったようにお母様に助けを求めた。

「ミレーナはアレンに愛されてるってことよ」

「なんですか!そんなの理由になりません!」

「本当に?アレンの身分の人間が辺境伯領に行って功績を積む理由なんて、一つしかないのに?」

「…え?」

お母様の言葉に私は眉を顰める。
アレンが辺境伯領に行ったのは、活発化している魔物の動きを抑える為だ。
例年よりも多い魔物の数に、辺境伯領主が他貴族に協力を要請していることは王家も認め承諾し、他の貴族たちも助力するようにと伝えられていること。
それだけ辺境伯領の担っていることは大きい。
アレンの身分は平民だ。
魔物退治をして、与えられるものなんて……

「まさか、爵位…ですか?」

私の導き出した答えにお母様はにこりと笑う。
否定も肯定もなかった。
話しを逸らすように、ナイフとフォークを手にする。

「ほら、料理が冷めてしまうわよ」

それでも食事をする気分になれない私は、ナイフとフォークを手に持ったまま動くことをしなかった。動けなかった。

アレンが強くなったというのは知っている。
アレンの努力をこの目でみてきたからだ。
幼い頃は沢山の傷を作って、『私がミレーナ様をお守りしますからね』と笑みを浮かべながら懸命に稽古に励んでいた姿を私は知ってる。
『俺にも勝てないくせに』と当時アレンに稽古をつけていた騎士が笑い飛ばしていたが、それからすぐに上達したアレンがその騎士を負かした。
メキメキと上達したアレンはレリスロート子爵家に仕える騎士の中で断トツの実力者になっていたのだ。
でもそれはレリスロート家の中の話。
世の中にももっともっと強い人はいるし、なにより今回相手にしなければいけないのは人間の勝負の世界を知らない魔物である。
アレンが怪我をしたら?
怪我よりももっと重傷をおったら?
死んでしまったら__?
ああ、嫌だ。やだ。やだよ。

「ミレーナ」

お父様の呼び掛けに私は弱々しくも返事をする。

「アレンの才能を信じなさい」

「え?」

顔を上げた私はひどい顔をしているのだろう。
お父様が少しだけ驚いた顔をした後、まるで困った子だといっているような表情を浮かべつつ苦笑する。

「執事としてお前の傍にいると決めたアレンが、お前の結婚相手になる為に功績作りに行ったんだ。
その結果をお前は心待ちにするくらいでいいと、私は思う」

だろ?と笑ったお父様は、それでも食事が喉を通らない私のために簡単なメニューを作るよう指示をした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

処理中です...