拾われた孤児は助けてくれた令嬢に執着する

あおくん

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結婚相手

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平和な日常に戻った私は、ある日お父様に呼ばれ、お父様の執務室に向かった。
そしてお父様の話を聞いた私は一気に憂鬱になってしまったのである。

「…はぁ」

そもそも貴族の結婚は政略結婚だけど、それがなされるのは高位貴族か、経済面で厳しい生活を送っている貴族が基本だ。
その他の貴族たちは娘や息子に任せ、学園内で相手を見繕ったり、デビュタントで相手を見つけたりする。

『ミレーナには私の後を継いでもらいたいと思い、特進クラスへと入学させたが…そもそもあそこのクラスだと伴侶を探すのも一苦労だろう?
そこで令息たちの情報を集めた。まだ婚約者がいない事は確かだから目を通しておいてくれ』

そうして渡されたのは何枚もの肖像画と性格や経歴が書いた男性たちの情報の束だった。
私はその紙の束を見て大きく息を吐き出した。

(婚約相手をこの中から選びなさいと言っているようなものじゃない)

詳細には思い出せない前世の記憶だが、前の私が暮らしていた日本では恋愛結婚が普通だったということは覚えている。
見目がいい男性だったり、性格や価値観が合う男性だったり、いいなぁと思う男性に想いを伝えてそしてお付き合いが始まる。
恋が愛に変わった時結婚するのだ。
その記憶があるからか、私の理想にもなっている。

(まぁ付き合った記憶も思い出せないから前世は未婚だったのかもしれないけどね)

それなのに唐突に父から渡された“婚約者候補”の束に私は重い重いため息をつくしかないのは当然のことだ。

「ミレーナ様?どうしました?」

私が溜息をついたタイミングで、お茶を持ってきたアレンが不思議そうに尋ねる。
私はワゴンに乗せられたスイーツをみて、(今日は抹茶のスポンジにクリームチーズをのせたケーキね)と気分が上がった。

「どうもこうもないわ。お父様から婚約者候補の書類をわたされたのよ。
……はぁ、話をしたことも顔を会わせたこともない人たちばかりなのに……」

再び気分が落ち込んでくるが、私の目の前にスイーツとお茶を用意するアレンをみると不思議と心が落ち着いてくる。
(アレンってばマイナスイオンでも出しているのかしら…)と馬鹿なことを考えながら私はフォークを手に取った。

「見ても?」とお父様から渡された束を指さすアレンに「どうぞ」といいながらスイーツを口に運ぶ。
抹茶のほろ苦さとチーズの酸味とまろやかさがいい感じで合わさって、絶妙な味を醸し出していた。
車や電車、携帯電話やパソコンなど便利道具はないが、それに代わる魔道具がこの世界にあるし、なによりスイーツが美味しいことが、前世の記憶を思い出した時に一番に感謝したことである。
私は作りかたとか詳しく知らない為、もしスイーツが発展していない世界だったとしたら、再現できない問題に指をくわえていただけだったかもしれなかった。

「…ひとまず、ですがこちらの男性たちを選ぶのはやめておいた方がいいかと」

私がスイーツのおいしさに感動している間、アレンは全ての婚約者候補たちの情報を見終えたのだろう。
二つの山に分けられていた。
しかも片方が数枚で、もう片方には大部分の書類が積まれている。
なんて仕事が早いのだ。
でも少し目が据わっていて怖い。

「これは私独自の情報網ですが、除外としたこの男性たちにはそれぞれ問題がございます。
女性問題に賭博、酒癖の悪さに暴力沙汰になったと噂の人もいますね。
ミレーナ様には当然のことながら相応しくありません」

「…じゃあ、そっちの男性は真面なひとって事?」

「そうともいえません。私の情報不足ですぐに判断が出来ないだけですから」

「そう……」

私は思わず目を瞬いだ。
でも同時に助かったと思った。
アレンには悪いが、あまり気乗りしていなかっただけにこうして確認し分別してもらうのは本当に助かったからだ。

「アレン、ありがとうね」

「………。とんでもございません」

そういったアレンはいつもなら嬉しそうに表情をほころばせるのだが今日は違った。
どこか痛いのか、それとも苦しいのか表情が暗い。
私はそんなアレンが心配で、なにがあったのか、それとも体調が悪いのか、尋ねようと口を開く。

「アレン、どう_」

「ミレーナ様は……あ、申し訳ございません」

言葉が被ったことでアレンが謝罪をする。
私は首を振って、アレンに続きを促した。
すると少しだけ渋ったアレンが恐る恐るといった様子で私に尋ねる。

「ミレーナ様は、どのような男性がお好み、ですか?」

「…結婚相手ってこと?」

「はい」

正直私は恋愛結婚に憧れがある。
前世の記憶が詳細で、結婚歴があったのならば今世は契約結婚でもいいかと諦め、相手は誰でもいい思っていたかもしれない。

だけどそうじゃない。
私には記憶がないのだ。
だからこそ譲りたくない。
でもそれがわがままというのはわかる。
この領地は私が継いでいく。
私が領民達を生かしていくのだ。
その為の伴侶がいかに大事であることは、私にもわかるしもっと小さな子供にだってわかること。
声を大にして恋愛結婚がいいだなんて、言えるわけがないのだ。
だから私はアレンにこう答えた。

「…一緒に、領地を守っていってくれる人、かな」

本当は沢山ある。
背が私より高い人。
可愛いところがある人。
意外と甘い物が好きで、一緒に食べてくれる人。
細マッチョで脱げば凄い人。
その人の笑顔をみるだけで癒される。そんな愛嬌がある人。
あ、あと浮気は絶対にだめだね。
私だけを愛してくれなきゃ嫌だから。

とはいってもこんな条件を上げたら相手を探すのは難しいといわれてしまう。
何故なら浮気をしない人は稀、というよりこの国では一夫多妻制を取り入れている。
前世と何が違うのかはわかっていないが、医療面は魔法でカバーしているため死亡率が低いのだが、出生率が低い。
前世と違うところと言えば魔力の有無。
きっと魔力量か、魔力の相性に関係があると思っている。
だから出生率を上げる為一夫一妻の夫婦は、貴族にも平民にも少ないのだ。
ちなみにお父様とお母様はこの少ない部類にあたる。 

「…ミレーナ様は出世…とか興味はないのですか?
高位な貴族と繋がりを持とう等は…」

「え、あるわけないよ。私はレリスロート家の次期女子爵よ?
勿論領民達が笑顔でいられるなら嬉しい事に越したことないけど、その為に私は私を圧し潰すようなことしたくない。
領主になる私の心に余裕があってこそ、私は領民の事を考えることが出来る。そう思っているから、爵位だけ取柄な男性を選んで、言いたいことも言えないような窮屈な生活になるのだけは嫌なの」

「それは……相手に身分は求めない、ということですか?」

「ええそうよ」

「一代限りの男爵位でも?」

「私が子爵なのだから問題ないわ」

そう答えた私にアレンは暫し沈黙してから「触れてもいいですか?」と尋ねた。
私は「うん」と答えるとアレンは片膝をついて、私を見上げた。

「私がミレーナ様の伴侶に立候補しても、よろしいでしょうか?」

熱のこもった瞳で懇願された私は、たっぷりの沈黙の後口を開き、こう告げた。












「へ?」




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