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40 幼少期の真実?
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ユージンが寮の自室に戻ると呼び鈴の音が響き、室内にいるユージンの耳に届く。
完全に一人部屋を利用しているユージンは自らの手で扉を開けると客人を招き入れた。
ユージンの部屋に訪れた客人は毎日のように顔を合わせていた従者だった。
いや、最近はユージンの指示を遂行するために動いていた為、従者は主であるユージンの顔を見るのは久しぶりに思えた。
勿論従者の気持ちでありユージン本人は“やっと戻ったか”と思う以外、抱いた感情はなかった。
ユージンが誰かの顔を見て、なにかを感じるとなればその相手はアリエスだけだからだ。
ちなみにアリエスやユージンが通うフォーマード学園では従者をお供に連れてくることは出来るが、寮では例えお供であったとしても同じ部屋を使用することはなく、隣の部屋に控えるといった形がとられていた。
その為デインはユージンの自室の呼び鈴を鳴らした。
「お願いされていた件調べがつきました」
ユージンの従者として仕えているデインは、完全に扉が閉まったことを確認すると簡潔に用件を伝えた。
デインは少しの間無言になった主を不思議そうに見たが、すぐにいつもと変わらない表情だった為に“何か違う”と感じた考えを覆す。
「それでどうだった?」
向かい合うように置かれた二つのソファの片方に腰を下ろし、目の前へと座るよう促したユージンは、デインが腰を下ろすと調べた結果を求めた。
そしてデインの返答にユージンは綺麗な顔面の眉間に少し皺を作る。
「推測の通りでした」
「………やはりか」
ユージンがデインに頼んだことは幼少期のことだった。
ユージンはアリエスに言われるまでずっとアリエスと手紙のやり取りを行っていたものと信じていたが、それがつい最近事実ではないということを知ったのだ。
アリエスからの手紙はアリエス本人にも確認し、アリエスが自身で書いた手紙で間違いないと本物だと確かめた為、ユージンに手紙を届けてくれた乳母を疑う必要はなかったが、それでも乳母に渡したアリエス宛のユージンの手紙がアリエスに届かなかったことが疑問だった。
一体誰がなんのためにユージンの手紙を偽装したのか。
そもそも手紙を偽装するのなら、ユージンが書いた手紙だけでなく、アリエスの手紙も偽装する筈だろう。
いや、それよりもユージンをよく思わない者の仕業ならば、まずアリエスの手紙を偽装するか、もしくは処分してみせるべきだ。
だからユージンは最初父であるデクロン公爵の再婚相手であるのイマラの仕業かと考えたが、それならばこんな中途半端なことはしないだろうと考え直した。
先ほども言った通り、ユージンをよく思わないのなら手紙のやり取り自体を邪魔すればいいのだから。
デインが報告したのは、デクロン公爵が指示をしたという事実だった。
ユージンは“やはりか”と思うと同時に恨みの感情が沸き起こるような気がした。
ちなみにいうと乳母はなにも関わっていなかった。
道徳心が高い乳母が知れば必ず反対すると予想できたからだろう。
またユージンの乳母は長年公爵家に仕えてきた人間であり、現デクロン公爵であるセドリックを育てた経歴もあった為、セドリックは乳母に頭が上がらなかったのか、または知られたくはなかったのだろうと考えられる。
だからこそユージンに渡すアリエスの手紙には一切手を出せなかったのかもしれない。
ユージンはデインの調べた結果に驚くことなく淡々と答える。
「…何故公爵様はこのようなことを…」
「それは本人に聞かなければわからないけど、僕が考えるに父上なりの良心、だと思うよ。はた迷惑なことだけどね」
「良心、ですか?」
ユージンは頷いた。
「父は現当主としてのやる気というか、意欲はほとんどないんだ。ただあるのは早く次の跡継ぎである僕へ爵位を継ぐことだけ」
ユージンは取り乱すことなく冷静な態度で自身の考えを語った。
ユージンが寮の自室に戻ると呼び鈴の音が響き、室内にいるユージンの耳に届く。
完全に一人部屋を利用しているユージンは自らの手で扉を開けると客人を招き入れた。
ユージンの部屋に訪れた客人は毎日のように顔を合わせていた従者だった。
いや、最近はユージンの指示を遂行するために動いていた為、従者は主であるユージンの顔を見るのは久しぶりに思えた。
勿論従者の気持ちでありユージン本人は“やっと戻ったか”と思う以外、抱いた感情はなかった。
ユージンが誰かの顔を見て、なにかを感じるとなればその相手はアリエスだけだからだ。
ちなみにアリエスやユージンが通うフォーマード学園では従者をお供に連れてくることは出来るが、寮では例えお供であったとしても同じ部屋を使用することはなく、隣の部屋に控えるといった形がとられていた。
その為デインはユージンの自室の呼び鈴を鳴らした。
「お願いされていた件調べがつきました」
ユージンの従者として仕えているデインは、完全に扉が閉まったことを確認すると簡潔に用件を伝えた。
デインは少しの間無言になった主を不思議そうに見たが、すぐにいつもと変わらない表情だった為に“何か違う”と感じた考えを覆す。
「それでどうだった?」
向かい合うように置かれた二つのソファの片方に腰を下ろし、目の前へと座るよう促したユージンは、デインが腰を下ろすと調べた結果を求めた。
そしてデインの返答にユージンは綺麗な顔面の眉間に少し皺を作る。
「推測の通りでした」
「………やはりか」
ユージンがデインに頼んだことは幼少期のことだった。
ユージンはアリエスに言われるまでずっとアリエスと手紙のやり取りを行っていたものと信じていたが、それがつい最近事実ではないということを知ったのだ。
アリエスからの手紙はアリエス本人にも確認し、アリエスが自身で書いた手紙で間違いないと本物だと確かめた為、ユージンに手紙を届けてくれた乳母を疑う必要はなかったが、それでも乳母に渡したアリエス宛のユージンの手紙がアリエスに届かなかったことが疑問だった。
一体誰がなんのためにユージンの手紙を偽装したのか。
そもそも手紙を偽装するのなら、ユージンが書いた手紙だけでなく、アリエスの手紙も偽装する筈だろう。
いや、それよりもユージンをよく思わない者の仕業ならば、まずアリエスの手紙を偽装するか、もしくは処分してみせるべきだ。
だからユージンは最初父であるデクロン公爵の再婚相手であるのイマラの仕業かと考えたが、それならばこんな中途半端なことはしないだろうと考え直した。
先ほども言った通り、ユージンをよく思わないのなら手紙のやり取り自体を邪魔すればいいのだから。
デインが報告したのは、デクロン公爵が指示をしたという事実だった。
ユージンは“やはりか”と思うと同時に恨みの感情が沸き起こるような気がした。
ちなみにいうと乳母はなにも関わっていなかった。
道徳心が高い乳母が知れば必ず反対すると予想できたからだろう。
またユージンの乳母は長年公爵家に仕えてきた人間であり、現デクロン公爵であるセドリックを育てた経歴もあった為、セドリックは乳母に頭が上がらなかったのか、または知られたくはなかったのだろうと考えられる。
だからこそユージンに渡すアリエスの手紙には一切手を出せなかったのかもしれない。
ユージンはデインの調べた結果に驚くことなく淡々と答える。
「…何故公爵様はこのようなことを…」
「それは本人に聞かなければわからないけど、僕が考えるに父上なりの良心、だと思うよ。はた迷惑なことだけどね」
「良心、ですか?」
ユージンは頷いた。
「父は現当主としてのやる気というか、意欲はほとんどないんだ。ただあるのは早く次の跡継ぎである僕へ爵位を継ぐことだけ」
ユージンは取り乱すことなく冷静な態度で自身の考えを語った。
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