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44 幼少期の真実?⑤
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昔、ユージンの手紙を偽り、アリエスに嘘の手紙を送った人物がはっきりと自分の父親であったとわかったユージンは、重々しく息を吐き出したあと婚約申し込みが取り下げられた事実を簡潔に告げ、つい先程届けられた新たな申込用紙を渡してみせる。
「こ、これは………」
ユージンから渡された申込用紙に目を通したデインは口元を引きつらせた。
そこに書かれていたのは当然アリエスの名前ではないが、アリエスよりも爵位が低い子爵家の令嬢で、しかも反王家派に属する貴族家の令嬢の名前が書かれていたからだ。
「つい先程あの女から届いた書面だよ」
「流石にこれは…」
「“ありえない”だろ?だけどあの女を追い出すいいネタを提供してくれたと思えば嬉しい限りだね。バカもここまで来れば笑えてくるよ。……これを僕に送ったのも父上の協力が得られないからだろう。それならあの女が勝手に動くことはまずないと見ていい」
ユージンはそう語った。
今まで実の子を暗殺しようとした女を処罰することもなかった父親だったが、流石に王家に仕えた公爵家が反王家派と手を組むことは国家転覆を図っているものと捉えられかねない。
今はなにを考えているのかなんてわからない父親だが、それでもデクロン公爵の当主である父が反王家派と手を組もうとしている、もしくは既に手を組んでいる人間を見逃すわけがないとユージンは考えた。
だが婚約に関しては光が見えない。
結局デクロン公爵の許可がなければアリエスと正式に婚約を結ぶことなどできないからだ。
アリエスにはああいったが、父が納得するのは未知数だった。
「……これからどうなさいますか?」
デインの問いにユージンは間を開けて答える。
「…アリスと約束してしまったからね。とりあえず次の休日にでも父上と話をしてくるよ」
ユージンはそう言いながら、窓を見つめとっくに暗くなった空を眺めた。
デインはデクロン公爵領で拾われた平民だ。
親がいない孤児として、どこに助けを求めていいのかすらわかっていなかったデインをユージンは拾った。
自分を拾い、生きる価値を与えてくれたユージンの憂いに満ちた表情を見て、今の今まで実の子を放置してきた親に会いに行くというユージンの気持ちに同情する。
とはいえデインにはその親すらもいないため、完全にユージンの心を理解することはできなかったが。
「…では私は…」
自身の主人のために次に向けて言いかけるデインの言葉をユージンは遮った。
そして口端を上げる。
笑みとは言い難いユージンの表情は、どこか人を見下すようなそんな怒りを含んでいるようにデインには見えた。
「お前にはまた別に調べてもらいたいことがあるんだ」
デインは首を傾げユージンを見つめる。
学園に通う誰よりも強いだろうユージンだが、従者兼護衛役としてお供で着いて行くようにと言われた自分が長い間ユージンの傍を離れても大丈夫なのかと思いながら、それでも主人の命であるのならと口を閉じた。
そして「ちょっと面倒だけど…」と前置きをしながら指示を出すユージンに、デインは自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。
「お任せください。情報部門の一従業員として必ず真実を暴いてみせましょう!」
ユージンはデインのやる気に満ちた表情を見ると、頼もし気に笑みを浮かべる。
そして「任せたぞ」と告げるとさっさと部屋から追い出したのだった。
■
「こ、これは………」
ユージンから渡された申込用紙に目を通したデインは口元を引きつらせた。
そこに書かれていたのは当然アリエスの名前ではないが、アリエスよりも爵位が低い子爵家の令嬢で、しかも反王家派に属する貴族家の令嬢の名前が書かれていたからだ。
「つい先程あの女から届いた書面だよ」
「流石にこれは…」
「“ありえない”だろ?だけどあの女を追い出すいいネタを提供してくれたと思えば嬉しい限りだね。バカもここまで来れば笑えてくるよ。……これを僕に送ったのも父上の協力が得られないからだろう。それならあの女が勝手に動くことはまずないと見ていい」
ユージンはそう語った。
今まで実の子を暗殺しようとした女を処罰することもなかった父親だったが、流石に王家に仕えた公爵家が反王家派と手を組むことは国家転覆を図っているものと捉えられかねない。
今はなにを考えているのかなんてわからない父親だが、それでもデクロン公爵の当主である父が反王家派と手を組もうとしている、もしくは既に手を組んでいる人間を見逃すわけがないとユージンは考えた。
だが婚約に関しては光が見えない。
結局デクロン公爵の許可がなければアリエスと正式に婚約を結ぶことなどできないからだ。
アリエスにはああいったが、父が納得するのは未知数だった。
「……これからどうなさいますか?」
デインの問いにユージンは間を開けて答える。
「…アリスと約束してしまったからね。とりあえず次の休日にでも父上と話をしてくるよ」
ユージンはそう言いながら、窓を見つめとっくに暗くなった空を眺めた。
デインはデクロン公爵領で拾われた平民だ。
親がいない孤児として、どこに助けを求めていいのかすらわかっていなかったデインをユージンは拾った。
自分を拾い、生きる価値を与えてくれたユージンの憂いに満ちた表情を見て、今の今まで実の子を放置してきた親に会いに行くというユージンの気持ちに同情する。
とはいえデインにはその親すらもいないため、完全にユージンの心を理解することはできなかったが。
「…では私は…」
自身の主人のために次に向けて言いかけるデインの言葉をユージンは遮った。
そして口端を上げる。
笑みとは言い難いユージンの表情は、どこか人を見下すようなそんな怒りを含んでいるようにデインには見えた。
「お前にはまた別に調べてもらいたいことがあるんだ」
デインは首を傾げユージンを見つめる。
学園に通う誰よりも強いだろうユージンだが、従者兼護衛役としてお供で着いて行くようにと言われた自分が長い間ユージンの傍を離れても大丈夫なのかと思いながら、それでも主人の命であるのならと口を閉じた。
そして「ちょっと面倒だけど…」と前置きをしながら指示を出すユージンに、デインは自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。
「お任せください。情報部門の一従業員として必ず真実を暴いてみせましょう!」
ユージンはデインのやる気に満ちた表情を見ると、頼もし気に笑みを浮かべる。
そして「任せたぞ」と告げるとさっさと部屋から追い出したのだった。
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