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8話
しおりを挟む当時の私が嫌いだったものは、婚活よりも勉学を取った娘が気に食わない両親と、認められたいが為に一位を目指しているのに手強く首席に居座る公爵家令息だった。
「———・・・ねぇ、あの約束は本当なのよね⁉︎」
大嫌いなコルセットを締めて、咽せ返る様な入り混じった香水の臭いに堪える。隣の男の堂々っぷりは、やはり育ちを感じるものだ。
眉間をぴくりとも動かさない。その一方で私は、羽付の扇で口元を隠しながら隣のエレノアと会話していた。
「嗚呼、僕は嘘は吐かない。」
「分かったわ、信じる。」
「・・・ありがとう。」
先日、憎き首席のモテ男『エレノア』から舞踏会のパートナーに誘われ、拒もうとした時に提案されたのが・・・。
「君の両親を欺くにも、僕はぴったりの相手じゃないだろうか?」
それはぐうの音も出ない。願ったり叶ったりな事ではある。
だが両親の思う壺にはなりたくないので、絶対に高位貴族とだけはお近付きにはない。その気持ちに偽りはなく、難色を示す私に後押しをしてきた。
それは、今年度末のテストで首席を譲ってくれるという私にとって最も魅力的な誘惑だったのだ。
なんでも、エレノアは後期末から家業の方の手伝いで忙しくなるらしいので、その隙に頑張れば「僕なんて余裕で越せるだろう。」などと言うものだから、賢い私は一瞬だけ考えて二つ返事で了承した。
そして今、例の舞踏会に参加する為に、寮舎まで迎えに来た生粋の貴公子にエスコートされながら、学舎に併設された大ホール会場へと足を踏み入れた訳だが・・・何せ周囲からの視線を痛く感じるのだ。
隣の男は飄々とし、繕う微笑は尊敬しかない。これが公爵家?否、貴族を全うする者か・・・。
「さあレミリア・・・互いの悪い虫を蹴散らそうか。」
それは曲が変わるタイミングでのこと、ホールの中心で立ち止まったエレノアが、私と向かい合うと対の手を差し出してきた。
周りには羨望の眼差しを向けた令嬢たち。そして今宵の私の容姿に魅了され鼻の下を伸ばした令息共。
エレノアの言葉の真意を掴んだ私が「えぇ・・・」とその手を取れば、ぎゅっと腰に手を回されて彼の胸板が目の前に来た。
ふわりと薫るエレノアの香水は、不思議と外野を遮断してくれて、緊張が解れた私は彼に導かれるが儘に踊った。
その一夜以降、学園では私たちを噂する生徒が大半を占め始め・・・「で、どうだい?次は僕の恋人役
になるかい?」
「冗談にしては笑えない提案ね・・・」
気付いた時には私たちは、互いの為に互いを利用する仲になっていた。
そこに恋があったのか問われれば友情と即答出来る。それはノアも変わらないだろう。
「どうして二位なんだ・・・」
「知らないわよ!私は満点を取ったのに、アンタが特別加点を取るからじゃないっ!」
あの後、後期末テストで手を抜いたらしいエレノアだったが、彼の学力は手を抜いたところで揺るがなかった。
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