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第3章 シュルトーリア

スキル確認④

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「さっきのが威圧スキルだよな?」

俺は森の中を歩きながらガルドに先ほどオークと俺を動けなくした殺気の籠った威圧感について確認する。

「(うむ、どうやらそのようだ。先ほどは無意識だったが思い返せば確かにスキルの感覚があった。)」
「あの時の俺と同じ自動発動か。意志と行動でスキルは自動的に発動するって言ってたからな。」

あの時のガルドはオーク達に相当怒ってたからな。

「(あの時の俺と同じと言うのはなんの事だ?)」
「あぁ~……。今晩話すよ。」
「(ふむ、夫である我に隠し事か?)」
「そんなんじゃないよ。夜になったら家でちゃんと話すから。」

家と言うのはディメンジョンルームの事だ。今後はディメンジョンルームで生活するしディメンジョンルームだと長いから家と言うようにする。

「(そうか。)」
「(そう言えばガルドさんは何であんなに怒ってたんですか?)」

今教えてもらえないのが残念なのか、ガルドがしゅんとなっているとロアが気を使ったのか話題を反らす。

「そう言えば凄かったな。 『我が妻に何をすると言った!』って。俺、何を言われてたんだ?」
「(む、むぅ……。)」

気になったので聞いてみるがガルドは一度唸って黙り込んでしまった。

「どうした?」
「(むぅ……。どうしても言わなくては駄目か?)」
「(あー、ガルド隠し事!)」
「(いや、そういう訳ではない……。その、な。)」

ガルドはどうもらしくない歯切れの悪い言い方で続ける。

「(奴等は我妻の事を『孕みもしない雄がだぶち込みたくなる』だの『雌と違って簡単には壊れない』だの『村中で休みなく腹が裂ける程輪姦す』だの。これよりも酷い事も言っていた。)」

なかなか過激だが腹が裂ける程は萌えるな。俺のスキルなら簡単には裂けないし裂ける前に吸収できるけど。

『(むぅ、妻はそんな風ににされたかったのか……。)」
「おっと、念話で漏れてたか。ちょっと気になっただけで誰でも良いからされたい訳じゃないよ。」
「(そうか。)」

ガルドはそう言うと顎を擦り、思案顔で顔を反らした。

そのまま探索を続けるとグレイバウンドの臭いを嗅ぎ取り、そちらに向かう。

向こうもこちらに気が付いたのか、向こうから駆け寄ってくる。そこで俺たちは足を留めて迎撃することにした。

「(向かってくるのは6匹ですね。)」 
「それじゃあガルドとロアで左右から仕掛けろ。出来れば1、2匹間を抜けさせてこっちに回してくれ。)」

二人に指示を出して陣形を整えると直ぐにグレイハウンドが目視できた。

 「来たぞ!」

俺が剣を構えると先頭を走っていたグレイハウンドが吠える。すると後続が別れ、ロアに3匹、ガルドに2匹が向かい、こちらに吠えた1匹が向かってくる。

あいつが群のリーダーか。

グレイハウンドが数歩手前から跳躍し、俺に飛びかかってくる。

俺はそれを横に躱し、着地を狙って剣を突き出した。

「キャウン!」

切っ先が腹部に刺さると同時に甲高い悲鳴が上がる。

そのまま下に切り裂くように振り抜くと傷から内蔵がこぼれ落ち、グレイハウンドはその上に倒れた。

ひとつため息をついてガルドとロアを見ると、すでに5つの死体が転がっていた。 

「流石……。」

バラムも同じように瞬殺できそうだし、自分の戦闘能力を鍛える必要ないんじゃないかと思ってしまう。

俺は6匹から右耳を切り取って袋に詰めると死体と一緒に収納に放り込んだ。

「よし、グレイバウンドの討伐依頼はこれで完了だ。オーク肉の納品もさっきのオークを解体してもらって納品すればいいから依頼は完了だな。」
「(それではあとは我のスキル確認だな。)」
「あぁ、オークが直ぐに見つかれば良いんだけどな。……そう言えば近くにオークの集落があるのか?」

 俺は先ほどガルドが言っていたオーク達の言葉を思い出す。

「(村中で、と言っていたからな。少なくともそれなりの数が集まった村があるだろ。)」
「それが見つかれば良いんだが。」

集落を潰せれば大量のオーク肉と魔石、ギルドに認められれば集落討伐報酬も出るかもしれない。

「(じゃあ、オークが集まった臭いを探せば良いんですね。)」
「そうだな、あとは2、3匹でも構わない。今度は殺さずに、ガルドに支配させて村の場所を聞き出しても構わないからな。」 
「わかりました。」

そう言って臭いを探るロアを先頭に探索を再開すると思いの外直ぐに集落が見つかった。

茂みから様子を伺うと中央に大きめの小屋が一つ、その周囲にボロい小屋が五つ建っている。

「(中央の小屋に集落のリーダーが居そうだな。)」

最近は念話でも声に出すようにしていたが、流石にオーク達に見つかると面倒なので声には出さない。

「(うむ、間違いないだろう。)」
「(作戦はどうするか、みんなで正面から行っても負けないとは思うけど。)」

正直負ける心配はもうしていない。

手分けして攻めて死体が分散するより相手がこちらの1箇所に向かって着てくれた方が後片付けが楽になると思うくらいだ。

「(ふむ、そうだな……。ここは我一人に任せてくれぬか?)」
「(えぇ~ガルド一人でやるの?バラムも行きたいのに。)」
「(少し考えがあってな。次の機会にはバラム殿に譲ろう。)」
「(ぶ~。じゃあ我慢するけど、次はバラムだからね。)」
「(あぁ、約束しよう。)」

バラムとの話が纏まりガルドがこちらを見る。

「(では行ってくる。)」
「(あっ、ちょっと待った。)」
「(折角だから、俺のスキルも試させてくれ。何分くらいもつかわからないけどガルドに強化魔法をかける。)」
「(わかった、頼む。)」
Mモンスターパワーライズ。Mモンスターディフェンスライズ。」 

ガルドに手をかざして囁くように唱えると掌から光の粒子がガルド流れて吸い込まれる。掌から出る光が止まり、ガルドを見るとうっすらと光の膜がガルドを覆っているのがわかる。

「(済んだな。では今度こそ行ってくる。)」

ガルドがフンッと力強く鼻息を吐くと周囲の枝を体で折って音を立てながら堂々と集落に向かった。
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