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第3章 シュルトーリア
スキル確認⑤
しおりを挟む遅くなりましたが何とか今週分書きあがりました。
もしかしたら来週分が間に合わなくなるかもしれませんがなるべく更新しますのでこれからもよろしくお願いします。
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ガルドが集落の前に姿を現すと見張りのオーク達が騒ぎだす。その鳴き声に呼ばれるように五つの小屋からオーク達が飛び出してきた。
中には進化前のガルドと同じように剣を携えているオークや弓、杖、槍持ちもいる。
集まってきたオークは全部で50匹位。その内剣、弓、杖、槍持ちが合わせて約10匹。残りは素手と棍棒というより薪と言った方がいいような木の棒を持っている。
ガルドは剣を抜くと集落の入り口に集まったオーク達に切っ先を向けて吠えた。
「ブヒブヒィ。ブフブヒィ!(我が名はガルド。この村のリーダーに一騎討ちを申し込む!)」
それに反応してオーク達が一斉に鳴き声をあげた。
「(相手の力量も図れんとは。)」
ここからでは表情は見えないがガルドが嘆かわしいと言うようにうつむき、首を左右に振る。
その反応からすると『ふざけるな』とか『俺達だけで十分だ』みたいな事を言ってるんだろうな。
ガルドのその動作を隙と取ったのか最前線にいた素手のオークが飛び掛かった。
ガルドが顔をあげると剣を持つ腕の筋肉が盛り上がる。
ブォン!
「プギィ!」
力強い風音と共にオークの短い鳴き声が響いた。
ドサッ。
続けてオークが地に倒れる音がする。しかしそこに頭はない。
ドスッ。
遅れて先ほどよりだいぶ軽い音が響く。そちらを見ると目を見開いたオークの頭が転がっている。
「「「プギィィィ!」」」
それを合図にするかのように他のオーク達もガルドに向かって駆け出した。
ガルドが剣を振るう度にオークの死体が一つ、二つと増えていく。
剣持ち、槍持ちもいるがその切っ先はガルドが振るう剣に阻まれ届かない。
そんなにガルドに群がるオークとは違い杖持ち、弓持ちはその場から動かない。そして、杖持ちの1匹が持っていた杖を振り上げるとその杖の先に火が灯った。その火は少しずつ大きく、丸く形を変え、オークの頭ほどの火球に姿を変える。
「(ガルド!集落の方から火球の魔法がくるぞ!)」
「(分かっている。心配するな。)」
「プギッ!」
ガルドは直ぐそばのオークの頭を鷲掴みにして持ち上げる。
それと同時に杖持ちがその杖を振り下ろすとその先に灯っていた火球がガルドに向けて放たれた。
ガルドが火球に向かってそのオークを投げ飛ばすと火球は投げられたオークの背中に着弾し、毛皮に燃え移って丸焼きの死体が一つ出来上がった。
「(仲間を盾に使われるような攻撃をするとは。まるでなってない。)」
弓持ちも攻撃に加わるがガルドは巧みにオークが射線にくるように動き、同士討ちを誘う。
そして弱ったオークを掴んでは投げ、杖持ち、弓持ちを潰していく。
「ブギギィィィィ!!」
「うぉっ、うるせぇ!」
オークの数が三分の一程になると集落の奥から大きな鳴き声が響く。それは約50匹のオークが一斉に鳴いた時よりも大きく、俺は思わず身をいっそう低く屈めて耳を塞いだ。
「(ようやく出てきたか。)」
ガルドの方に向き直ると村の奥からはガルドより少し大きい位のオークが剣を片手(俺からしたら両手でも扱えない大剣の部類だが)にのそのそと歩いて来た。
距離があってここからでは鑑定出来ないが、あの体格で剣を持ってるならガルドと同じオークジェネラルだろう。
「ブヒブヒィ。」
「あっ!」
オークジェネラルが集落の入り口に立ち、側にいた弓持ちに何かを言うとその首を切り飛ばした。
「ブヒプギィ!(貴様、自分の部下を手に掛けるのか!)」
それにガルドが激昂し、辺り殺気が広がる。今度は距離もあり、ガルドの後ろにいるから俺は大丈夫そうだ。
しかし、ガルドを取り囲んでいたオーク達は金縛りにあったかのように全く動かない。そんな中、オークジェネラルだけはガルドの殺気を気にした様子もなくガルドに近づいていく。
ガルドを見ると俺が掛けた強化が切れたのか薄く覆っていた膜が無くなっている。
「(ちょうどいい。妻の魔法なしで倒して見せよう。)」
ガルドも同じように近づき、数mのところまで近づくとオークジェネラルとガルドが同時に剣を振り抜いた。
互いの剣がぶつかり、重たい音が響く。そのまま続けて2合、3合と互いに避けずに剣を打ち合わせていく。2人の巨体が大剣を打ち合わせる圧倒的な光景に俺は目を奪われる。
しかし、こう打ち合うと武器の質の差が大きく出てくる。片やろくに手入れもしていないのかボロボロの剣。片や日ごろからしっかり手入れをしている剣。打ち合うたびにオークジェネラルの大剣は刃は少しずつ欠けていってるように見える。
何合打ち合ったか、突然先ほどまでとは違う、砕けるような甲高い音が響いた。それと同時にガルドがさらに剣を1度振るい2人の動きが止まる。
数秒してオークジェネラルが膝をつき、倒れるとガルドの足元にその首が転がった。
そしてガルドが雄叫びを上げると周囲の生き残りオーク達は膝をつきガルドに頭を下げた。そのうちの1匹がガルドに何かを言うとガルドがそれに頷いて答えた。
「ブヒブヒィ。(いいだろう、我が部下として仕えるがいい。)」
どうやら生き残りのオーク達が配下に加わりたいと志願してきたみたいだ。
「ブヒィ……。(ただし……。妻よ出てきてくれ。)」
ガルドに呼ばれ、ロア達と茂みから出ていくとオーク達が一斉に顔をこちらに向ける。俺はなるべく気にした様子を見せないようにガルドの隣に並び立った。
「ブヒブヒィ。(この者は我の妻であり、主でもある。)」
ガルドが俺の肩に腕を回し抱き寄せる。オーク達は黙ったまま視線を俺とガルドの間で彷徨わせている。
「ブヒィブヒィ。(我の配下に加わるのであれば、我が主にも忠誠を誓ってもらう。)」
「ブヒィ。」
「ブヒィブヒィ。ブヒィブヒィ。ブヒィ。(それからビッグサキュバススライムのバラム殿とダークハウンドのロア殿だ。彼らは我と同じくこの者の夫だ。彼らは我と同格と心得よ。)」
「ブヒィ。」
「ブヒィブヒィ。(では今よりお前たちは我の配下だ。)」
「ブヒィ。」
「ブヒィブヒィ。ブヒィブヒィ。ブヒィ。(あぁ、言い忘れていたが、妻に手を出したら容赦はしない。)」
「ピギッ。」
一瞬だけガルドの殺気が放たれ、オーク達が悲鳴のような鳴き声を上げる。何匹か欲情したような熱のこもった視線を俺に向けていたが、そういった視線が消え、視線を送っていたものは真っ蒼になっているように見える。
オーク達を鑑定してみると状態に支配、備考にガルドの配下が記載されている。
「……問題なくスキルで支配できたみたいだな。」
「(うむ。)」
「でもな……。」
「(どうした?)」
「一度に支配するには多すぎだろ……。」
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