魔物好きゲイテイマーの異世界転生記

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第3章 シュルトーリア

冒険者講習1日目 午前

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「おはようございます。」

翌朝、先日と同じ建物の影でディメンジョンルームを開いて夜を明かした俺は、6時の鐘が鳴る頃には目を覚まし、食事と身支度を整えて8時頃にツェマーマンを迎えに工房を訪れた。

「おう、来たな。今日は資材のほかに排水用貯水タンクもあるからな。すぐに搬入を始めるぞ。

そう言ってツェマーマンは傍に置かれた大きな箱をゴンゴンと叩いた。

「これは鉄の箱ですか?使ってるうちに錆びません?」
「箱自体の素材は確かに鉄だが、マッドフロッグの皮から作った撥水性の高い塗料を内側に塗ってあるから心配いらん。」
「皮から作った塗料ですか?」
「知らんのか?撥水性の高い魔物素材、うちではマッドフロッグの皮使っているがそれを乾燥させて粉末化する。それを錬金術ギルドが販売している溶剤に溶くと溶剤が皮と同じ撥水を持つようになる。その溶剤で塗料を希釈すれば撥水性を持った塗料が出来上がるというわけだ。」
「なるほど。他の物を溶かして違った効果も持たせられるんですか?」
「できるぞ。たとえばファイアアントの殻の様な耐火性の素材を溶かせば耐火性を持った溶剤になるし、逆にファイアバードの羽のような素材自体が熱を発してる物を溶かせば溶剤が熱を出すようになる。まぁ、錬金術ギルドで売ってる溶剤は何種類もあるし、溶剤と素材、持たせる性能との相性なんかもあるからな、配合は企業秘密だ。」

ファイアアントの殻でそのまま鎧を作るつもりだったが、ファイアアントの殻で作った耐火塗料を他の鎧に塗るっていうのも面白いかもしれない。

「いえ、勉強になりました。ありがとうございます。」

少し話し込んでしまった俺は慌ててオーク達に資材の搬入をさせ、冒険者ギルドに急いだ。




ギリギリで9時の鐘が鳴る少し前にギルドに入ると、辺りを見渡し待合席に座る『大地の盾』の面々を見つけた。

「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」
「おはよう。会議室を確保してあるから行こうか。」
「わかりました。」

2階に上がり、昨日とは違う会議室に入るとそこには壁に黒板と長机が3列並んでいて、大学の講義室を思わせる部屋だった。ダイクンの指示で真ん中の列の一番前に座り、昨日の帰りに用意しておいた羊皮紙と筆記用具を取り出す。

「それじゃあ、さっそく始めるぞ。基礎中の基礎からってことだから登録した時に説明を受けたとは思うけど冒険者ギルドについておさらいから。」

ダイクンさんは黒板に書き出しながら冒険者ギルドについて登録時に教わらなかったところの補足も含めて教えてくれる。

曰く冒険者ギルドおよび冒険者とは
・国から独立した組織、構成員であり、国からどんな強制も受けることはない。
・冒険者は原則誰でもなることができ、ギルドは登録を拒むことはできないが、国家及び貴族の騎士団員など国に仕えている者は登録することができない。
・冒険者ギルドが各国に税金を納める代わりに冒険者はギルドカードの提示することで入国税、入市税、住民税を払う必要はない
・ギルドは各国からの悪質な引き抜きや嫌がらせなどから冒険者を守る義務がある。ただし、冒険者が引き抜きを受けることを引き留めることもできない。
・ギルドは依頼に適切なランクを定めなくてはいけない。
・冒険者はギルドが定めたランク(F~S)で管理され、現在のランクの一つ上のランクの依頼までしか受けることができない。
・冒険者は依頼に失敗した時、依頼料の倍額の賠償を支払う。

「だいたいこんなところか。質問はあるか?」
「各ランクの冒険者の実力はどのくらい何でしょうか?」
「Fが見習い。Eが新人。Dが一般。Cが熟練。Bが凄腕。Aが英雄。Sは測定不能ってとこだな。」
「測定不能ですか?」
「Aが戦争に出れば一騎当千の働きをする英雄と呼べる実力者だがSはそのAを軽く凌駕し、一人で国を滅ぼせる実力者とされている。そんな実力者は一言では言い表せない。ちなみに、そのランクSは今の所世界で3人いる。」
「3人ですか?」
「"剣聖"レオニダス。"魔女"フィアナ。"滅弓"ヨーナ。この3人がランクS冒険者だ。3人についての詳細は長くなるから別の機会にしよう。次は冒険者についてだな。冒険者とは……。」

・冒険者とは冒険者ギルドに所属している者のことをいう。
・冒険者の稼ぎ方はいくつかあるが大まかに依頼、狩り、ダンジョン探索がある。
・依頼とはそのまま冒険者ギルドに斡旋してもらった依頼と達成することで報酬を貰う方法である。
・狩りとは依頼の有無に関係なく。狩りで得た物を売却して報酬を得ることである。
・ダンジョン探索とはダンジョンを探索し、ダンジョン内の魔物を狩ったり内部にある宝箱から色々な物を手に入れてそれを売却する。もしくはダンジョン内の貴重な情報を売却することで報酬を得ることである。

「ダンジョンですか。」

定番といえば定番だがこの世界にもあるんだな。

「ダンジョンはまだまだ解明されていないことが多いんだ。とりあえず内部は洞窟だったり遺跡だったり、はたまたジャングルだったり。外見と中身が一致しない空間だ。内部は外とは違う強力な魔物が徘徊し、倒すと霞のように消えてしまうがたまに何かを残すことがある。残すものは倒した魔物由来の素材だったり、魔道具だったり色々だな。あと各所に宝箱が設置されていてこれも中身を抜くと宝箱は消え、またどこかに再出現する。そういった物を集めてギルドに売るのがダンジョン探索だ。」
「なるほど。ダンジョンの最深部はどうなってるんですか?」

定番通りならダンジョンコア的なものがあると思うけど。

「最深部には守護者と呼ばれる特別強力な魔物がいる。そいつを討伐するとコアクリスタルていう魔石に似た魔力の結晶が出現する。大きさはダンジョンの規模とか徘徊する魔物とかによって変わるんだが、それがダンジョンの核でダンジョンから持ち出せはダンジョンは一時的に機能停止する。」
「一時的に?完全には止まらないんですか?」
「あぁ、しばらくすると弱い魔物しか出ないがまた活動を再開するし、そのタイミングで最深部の守護者を討伐すれば豆粒みたいなモンだがまたコアクリスタルも手に入る。」
「その流れからするとダンジョンを徘徊する魔物は少しずつ強力になってコアクリスタルも大きくなるってことですか?」
「そうだ。ダンジョンを徘徊する魔物は時間と共に協力になるし、宝箱から出る物もよりいい物になる。ただ、ダンジョンが強力になっていくのは時間がそれなりに時間が掛かるけどな。」
「なるほど。この近くにダンジョンはあるんですか?」
「この町の近くにはないな。国内ならダンジョン都市ロイトシャイトのダンジョンが有名だな。ここは複数のダンジョンの入り口が街中にある都市だからな。数年に事に攻略される小型のダンジョンから過去攻略された記録のない大型ダンジョンまで色々あるからな興味があるなら行ってみるのもいいだろ。」

ダンジョン産の魔道具とか興味あるし、コアクリスタルも魔力の結晶なら色々加工できるかもしれない。

「続けるぞ。狩りは言うまでもないな。魔物を討伐してその死体をまるまるギルドに預けるか自分で解体して売れる部位を持ち込めばいい。死体をまるまる持ってくるのは大変だし、解体手数料も取られるから自分で解体して売れる部位だけを持ってくるのが一般的だな。依頼を受けるのと違って成果が無くても収入がないだけで損害賠償なんかはないし、ダンジョン程危険はない。なんなら討伐依頼と並行してできるから3つの方法のなかで一番気楽にできる稼ぎ方だな。」

確かに俺も依頼を受けて、ついでにギルドに卸すのがほとんどだ。

「最後が依頼だが依頼には通常依頼、指名依頼、強制依頼の3種類がある。通常依頼はギルドの掲示板に張り出される依頼で、ランクごとに振り分けられている。冒険者はこれを剥がしてカウンターで手続きすることで依頼を受ける。」

普段俺も受けている一般的な依頼の受け方だ。掲示板に採取、討伐、護衛、調査と色々張り出されてた。

「指名依頼は依頼主、もしくはギルドが特定の冒険者かパーティを指定して依頼をする方法だ。指名依頼とはいえ冒険者はもちろん断る権利がある。指名依頼はあらかじめ相手を指定するから基本的にランクは関係ない。最も指名されるほど名前が売れた冒険者なら高位の冒険者になるから依頼内容も相応に危険なものになることが多いがな。この俺らが受けた講習依頼もギルドからの指名依頼になる。」

指名依頼されるということはそれだけ実力が認められているということだろう。ただ、旅をするには邪魔になりそうな気もする。ラノベで定番なのは実力を見るために指名で討伐依頼をして、成功したら騎士や護衛として引き抜こうとするような貴族や大商人だ。

「強制依頼はスタンピード発生時などのギルド支部管轄地域に甚大な被害が出ると予想される場合にすべての冒険者が強制的に駆り出される依頼だ。強制依頼は断ることができない。それでも拒否したり、依頼を受けずに逃亡した場合には除名処分のうえ、指名手配されることになるから絶対に拒否したり逃げたりしないように。」

やっぱり拒否できない強制依頼もあるのか。スタンピードの強制依頼で無双しちゃってっていうのも定番だな。その時にはやり過ぎないように気を付けないと。

その後もギルドと冒険者についての講義が続き、お昼を迎えた。
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