魔物好きゲイテイマーの異世界転生記

タスク

文字の大きさ
98 / 108
第3章 シュルトーリア

浴室完成

しおりを挟む
木材を全て矢に作り変え、日が沈む前に街に戻ってきた。ツェマーマン工房に入り、ディメンジョンルームを開くとツェマーマン達が楽しそうに談笑していた。

「お疲れ様です。」
「おう、来たか。塗装したところも乾いているし完成したぞ。」
「塗装はもう乾いたんですか?」

俺が浴室に目を向けるとそこには今朝とは違い、ニスを塗ったような艶のある壁になっていた。

「あぁ、内側には浴室の保温性を高めるために防腐性の素材と一緒に火属性の素材を溶剤に混ぜたからな乾燥も早い。外側は塗装の後風魔法で乾かした。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「それじゃあ、全体を確認して問題なければ残金の支払いをしてくれ。」
「はい。」

ツェマーマンに促され、浴室の中を確認するとほぼ希望通りの作りになっていた。

「浴槽と洗い場の排水口はここだ。この排水口の先でパイプが繋がって排水槽に水を溜めるようになっている。それからあっちに床下と排水槽の点検用の扉を取り付けた。」

そう言って歩き出すツェマーマンについていくと床下収納の扉の様な物が取り付けられていた。取ってを引き、扉を開けると中には排水槽の上に降りられるようになっており、そこから床下に降りられるようになっていた。排水槽の上部には排水槽の中に降りられる扉もあった。

これは注文した時の話にはなかった物だが用意してもらうと重要な物だと分かる。

「これは注文した時の話にはなかった物ですよね。わざわざありがとうございます。」
「なに、気にするな。これは作ってる最中に気が付いたものだからな。」

そう言って浴室の外に出るツェマーマンに付いて、今度はキッチンに向かった。

「ここの洗い場も浴室の床下の排水槽に繋がってる。隣は作業台だ。それから一番外側。ディメンジョンルームの壁際に排水槽に水を排出する弁も取り付けてある。」

そう言われて確認するとディメンジョンルームの壁際に設置された作業台のすぐ脇に捻るタイプの蛇口の取っての様な物が付けられていた。

「これを捻ると排水槽の水が出てくる。川辺とか水を流しても問題ない所で小まめに水を抜くようにしろよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「よし、それじゃあ問題ないな。工房に戻って精算するぞ。」
「はい。」

ツェマーマンに促され、工房に戻ると依頼書に施工完了のサインをして残金の金貨15枚を支払った。

「確かに受け取った。」
「それとこれを。」

俺はそう言って追加で金貨3枚を取り出した。

「なんだ、これは?」

ツェマーマンが眉間に皺を寄せると鋭い目つきでこちらを睨みつけた。

「俺は自分の仕事と技術に誇りを持っているし、その仕事に見合うだけの金は貰った。確かにうちは資金繰りにこまっちゃいるが施しで追加で金を貰うほど落ちぶれちゃいないぞ。」
「心付けのつもりです。結果として今全額を払うことができましたけど、金貨5枚をツケにしてくれました。それに設計の時に無かった重要な点検用の設備も付けてくれました。他にも俺の都合で作業ができなくて完成が遅れましたし、素材の効果を移す溶剤も教えてもらいました。そういった諸々を含めたお礼です。」

そういうとツェマーマンの眉間の皺がスッと消え、ばつの悪そうに視線を逸らした。

「そういうことか。その……すまん、ありがとうよ。しかし、それでも金貨3枚は貰い過ぎだ。1枚でいい。」

そう言ってツェマーマンは金貨を1枚だけ取って残りをこちらに押し返した。

「わかりました。本当にお世話になりました。」
「あぁ、こっちも仕事を任せてもらって感謝している。なにかあればまた来い。」
「はい。それじゃあまた。」

そう言ってツェマーマンの工房を後にしていつもの場所でディメンジョンルームに入った。




食事を終え、お待ちかねの入浴タイムだ。俺は浴室に入ると給湯の魔道具とインゴットを取り出し、浴槽の縁に固定した。給湯の魔道具に魔石を2つ嵌めると勢いよくお湯が流れた。

「よしよし。あとは魔石一つずつでどのくらいお湯が溜まるかだな。簡単な魔法だから燃費はいいはずだけど浴槽のサイズがデカいからな。」

そのまましばらく様子を見ながら放置する。

「た、溜まらねぇ……。」

30分程放置したが全く溜まっていなかった。床下を確認したが漏れている様子もの無く、単純にお湯の供給量が少ないのが原因だと分かる。

「仕方ない。作り足すか。」

俺はインゴットを取り出し。同じ給湯の魔道具を3つ作り、最初の魔道具と並べて設置してお湯を流し始めた。

「これで秒間1リットルあるか無いかくらいか?あれ?もしかしてこの風呂を溜めるの絶望的?」

仮に秒間1リットルとして風呂が溜まる時間を計算する。

「ガルド、ロア、ダブが一緒に入るから満タンに入れる必要はない。それでも半分くらいは必要だよな。浴槽が6m×4m深さが俺の肩位だから1.5mくらいか?6×4×1.5で33.6㎥か?1㎥1000ℓだから33600ℓ。半分でいいとして16800ℓか?秒間1リットルだから16800秒。これを60秒で割ると……。280分でさらに60分で割ると4.666……。ほぼ4時間半じゃねぇか!」

俺は思わず計算に使っていたペンを叩きつけた。

「完全に失敗だ。でも今更解体するわけにも行かないし。はぁ~、給湯の魔道具を作り直すか。」

給湯の魔道具から魔石を抜くとわずかに溜まったお湯を抜いて、落ち込んだまま眠ることになった。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

【完結】僕は、メタルスライムに転生しちゃった。2

そば太郎
BL
僕は、平凡な男子高校生だったんだ。あの日までは・・・。 気がついたら、森の中にいて、何故かメタルスライムになっていた・・・。 え? そんな僕が、三白眼のガチムチな冒険者のお嫁さんを手に入れた!さぁ、頑張って、可愛がるぞぉ♡♡♡⬅️今は、ここから少し先に進んだ未来♡♡ぐへへ、赤ちゃん出来ちゃった♡♡もちろん、スライム♡♡ ※メタルスライムとは、攻撃が1しか入らず、しかもヒットの確率は限りなく低い。運良く倒すと。経験値が爆上がり!なスライム。しかし、主人公はちょっと特殊みたいで・・・。 ⚠️赤ちゃんスライム産みましたし、現在進行形で孕んでいます♡♡ ⚠️スライム×ガチムチ冒険者 ムーンさんでも投稿しています。少し題名変えてますけど。

駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ
BL
何をしても『駄目人間』な僕、朝霧志弦。 そんな僕が転移した先は魔法の使えるいわゆる異世界だった。そんな世界で僕は神様に剣と風魔法のチート能力をもらった。そんなこんなで森に引きこもっているつもりだったが…。 ▷そんな駄目じゃないのに思い込みの激しい主人公が世界を見て恋する話です。

欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日
BL
大量の魔獣によって国が襲われていた。 最後の手段として行った召喚の儀式。 儀式に巻き込まれ、別世界に迷い込んだ拓。 剣と魔法の世界で、魔法が使える様になった拓は冒険者となり、 鍛えられた体、体、身体の逞しい漢達の中で欲望まみれて生きていく。 マッチョ、ガチムチな男の絡みが多く出て来る予定です。 苦手な方はご注意ください。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ
BL
※イヴ視点26以降(ハルフィリア編)大幅修正いたします。 見てくださった皆様には申し訳ございません。 これからも見ていただけたら嬉しいです。 外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。 当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。 それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。 漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは… 出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。 メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。 最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士

ボスルートがあるなんて聞いてない!

BL
夜寝て、朝起きたらサブ垢の姿でゲームの世界に!? キャラメイクを終え、明日から早速遊ぼうとベッドに入ったはず。 それがどうして外に!?しかも森!?ここどこだよ! ゲームとは違う動きをするも、なんだかんだゲーム通りに進んでしまい....? あれ?お前ボスキャラじゃなかったっけ? 不器用イケメン×楽観的イケメン(中身モブ) ※更新遅め

処理中です...