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第四章 モントシャイン学園・テスト編
第21話 おいらには使役したい理由がある!
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放課後。ブルーにとって、おやつの時間と夕食の時間の二つのラッキーな時間であった。しかし、今ブルーは猫型召喚獣レミィを前に教科書を広げて、うなっていた。
テストが近いこともあり、教室に残っている生徒も多い。
「うーんうーん」
「土属性については、ステラさんの方が詳しいのではない?」
「ステラも勉強しないとだからな。それに、今日は久しぶりの買い物だしな」
ステラとレミィの召喚士ミミィは、買い物に町へ向かったのだ。その間、ブルーはレミィと一緒に勉強会していた。
ブルーは教科書の土属性の説明をにらみながら、また『うーん』とうなった。
「どうして覚えられないんだ」
「何度も書いたり、声に出して読んでみたら?」
「うーん」
レミィは自分の手をなめながら、ブルーのうなり声を聞いていた。ブルーは真剣そのもので、ぶつぶつと教科書の言葉をつぶやいていた。
「お芝居の練習じゃないから、言葉だけを覚えても意味がないわ」
「そ、そうなのか⁉」
「ええ。ちゃんと理解してないと、応用がわからなくなってしまうの」
「ええ~」
ブルーは肩を落とすと、教科書のページを1ページもどった。そして、土属性のページをゆっくりと読んでいった。
「土属性は、石や土を操る魔法で、大地の力を借りる。怪我で出来た出血を止めたり、癒しの魔法でもある……」
「そうそう。ステラさんが得意な魔法ね。植物にも効果的なの。ほら、学園にはバラの庭園があるじゃない。あの庭園も、土属性の魔法が使われているのよ」
「へええ! そうだったのか!」
「ブルーはそのものを見て聞いて感じるほうが覚えられるかもしれないわね」
レミィはそういうと、懐かしい故郷の風景を思い出していた。 はるか遠くに存在する召喚獣の住まう聖星界アスタリア。聖獣《せいじゅう》たちの賑やかな世界である。太陽はにょろにょろのヘビの形をしており、月はハート型だ。そんな人間界とは違う世界からやってきた召喚獣たちにとって、人間用の勉強が合わない召喚獣も多い。
「庭園に行きましょうか。その方が覚えられるかもしれないわ」
「んじゃ、さっそく庭園に行こうぜ!」
◇◇◇
二匹は、庭園へ向かった。バラが咲き乱れる庭園はひっそりとしており、誰もいない。ブルーは教科書片手に、レミィから土属性の説明を聞いていた。
「……で、だから止血することも出来るの」
「なるほどなあ。わかりやすくて助かるぜ」
「それならよかったわ。……ねえブルー」
「うん? どうした」
レミィはバラを見上げると、その上に広がる青空を見つめた。青々とした空には大きな雲がところどころに泳いでいる。いつもなら、ブルーは雲を眺めて食べ物を連想していた。
「聖星界アスタリアに帰りたいと思うことはない?」
「えっ……」
ブルーは驚いてレミィの顔を見つめた。ミミィの瞳が緑色であることに気付いたブルーは、その綺麗な瞳にくぎ付けになっていた。
「私は、時々帰りたいなって思うときがあるわ」
「ミミィと一緒で楽しくないのか?」
「楽しいわ。楽しいからよ」
「楽しいから?」
「そう。故郷で自慢したいと思うことが何度もあるわ」
「ああ、そういうことか」
ブルーにとって、アスタリアは置いていかれていた記憶が重くのしかかった。寂しい気持ちと、焦りと、そして絶望感が襲い掛かってきたのだ。
「おいら、生まれてからずっと、召喚士に使役することが夢だったんだ」
「そうだったの?」
「カッコイイ名前を付けてもらって、いろんな場所で活躍できたら、おいら嬉しいからな」
「なるほどね」
レミィはそういうと、うつむいてしまった。
「うーん。おいら、有名になって、伝説として語られたかったんだけど。ステラに会って変わったんだ」
「どういうこと?」
レミィは顔を上げると、ブルーを見つめた。ブルーはマントの端を掴んだ。辛そうに、歯を食いしばっていた。
「ステラは両親もいなくて、病気で寝たきりで、部屋からも出たことがなかったんだ」
「そうだったの……」
「ステラ、一人で病気と闘ってた。おいら、力になりたいって思ったんだ。ステラは凄い痩せてて、弱弱しくて、でもおいらに笑いかけてくれた」
ブルーは八重歯をむき出しにさせながら、嬉しそうに笑っている。レミィはそんなブルーを見て、ホッと胸をなでおろした。
「おいら、有名になんてならなくていいんだ。ステラを助けられたらそれでいい。立派にカッコよく使役されたかったけど、……これからは、トモダチってやつをやるんだ。それでステラが笑ってくれるなら、今のままでいいと思ってるぜ」
ブルーは聖星界アスタリアで、孤独だった。それよりもずっとずっと、ステラの方が孤独だった。一人で部屋に閉じこもり病気と闘うなど、ブルーには無理だ。根気負けしてしまうだろう。絶望し、何もできなくなってしまうに違いなかった。
黙ってブルーの話を聞いていたレミィは、そっと呟いた。
「私も、ミミィの役に立ちたいって思ってる。でも、使役されてるからじゃない。トモダチだからだもの」
「だろ? ステラのためだったら、前向きにもなれる。そういう主人を持ったんだ、おいらは恵まれてるよ」
「そうね。私もミミィが主人でよかったと思ってるわ。ロジャーに仕えるワッツだって、セレーネに仕えるランだって、そうだと思う」
「でも……」
「でも? どうしたんだ?」
レミィは軽くあくびをしながら、教科書をしっぽでたたいてみせた。
「勉強しない理由にはならないわ。試されるのは二人の絆よ。もっと勉強して役に立たなきゃ!」
「ひえええ」
ブルー居残り勉強会決定!
― ブルーは試験勉強に忙しい! 勉強はいつやってもいいよね。 つづく! ―
テストが近いこともあり、教室に残っている生徒も多い。
「うーんうーん」
「土属性については、ステラさんの方が詳しいのではない?」
「ステラも勉強しないとだからな。それに、今日は久しぶりの買い物だしな」
ステラとレミィの召喚士ミミィは、買い物に町へ向かったのだ。その間、ブルーはレミィと一緒に勉強会していた。
ブルーは教科書の土属性の説明をにらみながら、また『うーん』とうなった。
「どうして覚えられないんだ」
「何度も書いたり、声に出して読んでみたら?」
「うーん」
レミィは自分の手をなめながら、ブルーのうなり声を聞いていた。ブルーは真剣そのもので、ぶつぶつと教科書の言葉をつぶやいていた。
「お芝居の練習じゃないから、言葉だけを覚えても意味がないわ」
「そ、そうなのか⁉」
「ええ。ちゃんと理解してないと、応用がわからなくなってしまうの」
「ええ~」
ブルーは肩を落とすと、教科書のページを1ページもどった。そして、土属性のページをゆっくりと読んでいった。
「土属性は、石や土を操る魔法で、大地の力を借りる。怪我で出来た出血を止めたり、癒しの魔法でもある……」
「そうそう。ステラさんが得意な魔法ね。植物にも効果的なの。ほら、学園にはバラの庭園があるじゃない。あの庭園も、土属性の魔法が使われているのよ」
「へええ! そうだったのか!」
「ブルーはそのものを見て聞いて感じるほうが覚えられるかもしれないわね」
レミィはそういうと、懐かしい故郷の風景を思い出していた。 はるか遠くに存在する召喚獣の住まう聖星界アスタリア。聖獣《せいじゅう》たちの賑やかな世界である。太陽はにょろにょろのヘビの形をしており、月はハート型だ。そんな人間界とは違う世界からやってきた召喚獣たちにとって、人間用の勉強が合わない召喚獣も多い。
「庭園に行きましょうか。その方が覚えられるかもしれないわ」
「んじゃ、さっそく庭園に行こうぜ!」
◇◇◇
二匹は、庭園へ向かった。バラが咲き乱れる庭園はひっそりとしており、誰もいない。ブルーは教科書片手に、レミィから土属性の説明を聞いていた。
「……で、だから止血することも出来るの」
「なるほどなあ。わかりやすくて助かるぜ」
「それならよかったわ。……ねえブルー」
「うん? どうした」
レミィはバラを見上げると、その上に広がる青空を見つめた。青々とした空には大きな雲がところどころに泳いでいる。いつもなら、ブルーは雲を眺めて食べ物を連想していた。
「聖星界アスタリアに帰りたいと思うことはない?」
「えっ……」
ブルーは驚いてレミィの顔を見つめた。ミミィの瞳が緑色であることに気付いたブルーは、その綺麗な瞳にくぎ付けになっていた。
「私は、時々帰りたいなって思うときがあるわ」
「ミミィと一緒で楽しくないのか?」
「楽しいわ。楽しいからよ」
「楽しいから?」
「そう。故郷で自慢したいと思うことが何度もあるわ」
「ああ、そういうことか」
ブルーにとって、アスタリアは置いていかれていた記憶が重くのしかかった。寂しい気持ちと、焦りと、そして絶望感が襲い掛かってきたのだ。
「おいら、生まれてからずっと、召喚士に使役することが夢だったんだ」
「そうだったの?」
「カッコイイ名前を付けてもらって、いろんな場所で活躍できたら、おいら嬉しいからな」
「なるほどね」
レミィはそういうと、うつむいてしまった。
「うーん。おいら、有名になって、伝説として語られたかったんだけど。ステラに会って変わったんだ」
「どういうこと?」
レミィは顔を上げると、ブルーを見つめた。ブルーはマントの端を掴んだ。辛そうに、歯を食いしばっていた。
「ステラは両親もいなくて、病気で寝たきりで、部屋からも出たことがなかったんだ」
「そうだったの……」
「ステラ、一人で病気と闘ってた。おいら、力になりたいって思ったんだ。ステラは凄い痩せてて、弱弱しくて、でもおいらに笑いかけてくれた」
ブルーは八重歯をむき出しにさせながら、嬉しそうに笑っている。レミィはそんなブルーを見て、ホッと胸をなでおろした。
「おいら、有名になんてならなくていいんだ。ステラを助けられたらそれでいい。立派にカッコよく使役されたかったけど、……これからは、トモダチってやつをやるんだ。それでステラが笑ってくれるなら、今のままでいいと思ってるぜ」
ブルーは聖星界アスタリアで、孤独だった。それよりもずっとずっと、ステラの方が孤独だった。一人で部屋に閉じこもり病気と闘うなど、ブルーには無理だ。根気負けしてしまうだろう。絶望し、何もできなくなってしまうに違いなかった。
黙ってブルーの話を聞いていたレミィは、そっと呟いた。
「私も、ミミィの役に立ちたいって思ってる。でも、使役されてるからじゃない。トモダチだからだもの」
「だろ? ステラのためだったら、前向きにもなれる。そういう主人を持ったんだ、おいらは恵まれてるよ」
「そうね。私もミミィが主人でよかったと思ってるわ。ロジャーに仕えるワッツだって、セレーネに仕えるランだって、そうだと思う」
「でも……」
「でも? どうしたんだ?」
レミィは軽くあくびをしながら、教科書をしっぽでたたいてみせた。
「勉強しない理由にはならないわ。試されるのは二人の絆よ。もっと勉強して役に立たなきゃ!」
「ひえええ」
ブルー居残り勉強会決定!
― ブルーは試験勉強に忙しい! 勉強はいつやってもいいよね。 つづく! ―
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