異世界転移物語

月夜

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スカウトさんからの新たな提案

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    翌日、スカウトさんから提案があった。

「人数も増えたから、このあたりでもう一度、森の探索に出たいんだが」

「森の脱出ルートの調査ですか?」

    おそらくそうだろうと思ったが、僕は一応確認してみた。

「ああ、そうだ。そこでだ。探索だとどうしても遠出する上に、危険な場所もあるかもしれん。だから、俺以外に誰か一緒に行って欲しいんだ」

    僕たちは顔を見合わせた。スカウトさんの意見には賛成だが、同行するとなると……

「私、行きましょうか?」

桂坂さんがおずおずと切り出した。

「優子ちゃんか……それでもいいが、俺は健太がいいと思うんだ」

「僕……ですか」

    スカウトさんはやや戸惑いつつ返事をした僕にさらに説明を続けた。

「やはり、森の中を歩き回ることを考えると、男の方がいいと思う。釣りキチ君は釣りだし、農家さんには畑をやってもらいたい。となると健太しかいない」

「僕は構いませんけど……」

    僕はそう言いながら、農家さんの顔を伺う。

「畑仕事は気にするな。どうせお前さんがいてもいなくても、たいして変わらん」

    それはちょっと悲しい。

「あ、畑仕事なら私が手伝いましょうか」

    そう申し出たのは意外なことにナースさんだった。

「私、こう見えても農作業は好きなんです。実家が農家だったもので、小さい頃からたまに手伝いをしてましたから」

「ほう。それは有難い。どっかの坊主より役にたつかもな」

    農家さんから見ると、僕はよほど頼りない存在に見えるらしい。

「勘弁してくださいよ~」

    みんながドッと笑った。僕はすっかりかたなしだったが、場の雰囲気が和んだので良しとしよう。

「それじゃ、健太君に行ってもらうとして、新しい人の迎えはどうしましょうか?」

    桂坂さんが伺いを立てた。

「迎えって、今日もまた誰か来るんですか」

    桂坂さんの問いかけに、生果さんが反応した。昨日のうちに事情は説明しておいたはずだが、毎日同じ時間に決まって新しい人が来ることまでは伝えてなかったっけ。

「そうなんです。毎日決まった時刻に新しい人がここに来ます。現れるのは昨日生果さんが現れたあの場所です。だから今日も午後1時に誰か来るはずです。少なくとも今までは例外なくそうでした。毎回その人の迎えを私と健太君で行くことにしていたんです」

「そうですか……じゃあ、私が一緒に行きましょうか?」

「そうしてくれると嬉しいです」

    というわけで、今日の新人の迎えは桂坂さんと生果さんに任せ、僕とスカウトさんは夕方帰還の予定で森の中に出発した。
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