異世界転移物語

法則の謎

    僕はなんとなく、この現象は誰にも見られないところで起こる現象だと勝手に思い込んでいたが、それはどうやら思い込みに過ぎなかったらしい。他人に見られないとか他人に知られないという要素は、この現象にとってあまり意味のないことなのかもしれない。

   買い物途中だった路木さんは、買い物用のカートと中の商品を伴ってこちらに現れた。しかもカートは別のがもう一台あるというサービス精神旺盛な登場だ。もう一つのカートは商品補充用のカートで、詳しく話を聞いてみると、どうやら近くで店員さんが商品補充をしたのが一緒に紛れ込んで来てしまったらしい。もちろん店員さんは置き去りだ。

   またカートとは別に袋も抱えていたが、その中には生鮮食品や保存のきくカップ麺や缶詰もあった。先に食品売り場に行ったとのこと。

   カートの中は女物の服中心にたくさん詰められていたが、面白いことにもう一つのカートには下着類が綺麗に積まれた状態になっていた。おそらく店員が商品補充している途中のやつがそのままこちらに来たのだろう。

    女性陣は着替えの服に困っていたので、これには随分喜んだようだ。もっともサイズによっては着れないものもあるから、全員というわけにはいかないだろうが。

    路木さんの話によると、奥さんはややぽっちゃり系で高校生のお嬢さんは普通体型とのこと。相変わらず男の方は着替えのない状態だが、洗濯もできるし、それほど深刻な問題ではない。

   暗くなる頃に、スカウトさんたちが戻ってきた。自転車君も理科さんも何か重たそうなものを持っている。どこかで合流したのか、釣りキチさんと保育士さんも一緒だった。

「いいニュースがあるぞ！」

    帰ってくるなりスカウトさんが皆に報告した。

「湧き水と小さな川を発見した」

「ほんとですか！」

    僕らは色めき立った。

「理科さんが一緒だったので、最初は立ち止まりながら樹木や虫の調査をしていたんですが、途中で理科さんが『湖を調べたい』って言うので、僕たちは湖に行くことにしたんです」

    代表して自転車君が説明を始める。

「湖に着いたあと、理科さんは湖の様子を観察したり、魚の具合を観たりしていて、僕らはその間どうしようかと考えたわけです」

「湖の周りをみると、草が少し刈ってあり、部分的に通り道が出来ていた。保育士さんが少しずつ進めていてくれたんだ。」

     スカウトさんが自転車君の話を引き継いで話し始めた。

「そこで俺たちは、さらに高い草を刈りつつ、湖の周りを進んでみることにした。自転車君、保育士さんの三人で協力しながら進めたので効率はよかったよ」