異世界転移物語

森の全貌を掴むには……

「何、話してるんです？」

   外に出てきた電気さんが、僕たちが集まっているのを見て、そばに寄ってきた。

「いや、ただ闇雲に森を歩き回っててもなあ……って話してたんだ」

    スカウトさんが電気さんに説明する。

「あ、こんなのはどうです？」

    何か思いついたことがあるのか、自転車君が声を上げた。

「高いところに登ってみたら、森の全貌が分かるんじゃないんですか？」

「高いところってどこだよ？」

    僕はすかさず疑問を口にした。

「ええと、例えば……高い木のてっべんとか」

「誰が登るの？」

「それは……」

    そこまで考えてなかったらしく、自転車君は口ごもってしまった。

「それはいい方法ではあるな。俺も似たようなことは考えた」

    大工さんが助け舟を出した。

「一番高い木の上でもとても森の全貌が見えるとは思えないし、登るといっても簡単じゃない。だが、物見台となる櫓を建てるっていうのはいい考えだと思う」

「なるほど。確かに村にそういうものがあるのは普通だ。誰か双眼鏡持ってきていたはずだから、遠見の確認も出来るし」

    スカウトさんが同調する。

「でも、資材が全然足りないし、それだけのものを建設する道具もない。作るとすれば、今ある高い木を利用して、人が乗れる足場を組み上げていくことぐらいかな」

「どういうことです？」

「木を柱に見立てて、その周囲に板や木材で組んでいくってことだ。簡単なことではないが、一から建てるよりははるかに実現可能だ」

「でも開けているのは集落の周囲だけなんで、木のてっぺんまで上がったとしても、森より頭一つ抜け出てないとあまり意味がないと思うんですが……」

    僕は素朴な疑問を口にした。

「確かにな」

    大工さんもそれは承知の上だったらしく、あっさりうなずいた。

「スマホを空に飛ばして撮影するってのはどうでしょう？」

    自転車君がまたまた奇抜なアイディアを出してきた。

「飛ばすって簡単に言うけど、どうやって？」

    スカウトさんの切り返しに、自転車君はまたおたおたする。

「え、風船とか……飛行機とかヘリコプターとか……」

「そんなものどこにあるんだよ！」

    僕は軽く突っ込みを入れたが、意外にも他のメンバーからはその案を吟味する言葉が続けて出てきた。

「スマホを放り投げてって線はないな。高さが足りないのと、クルクル回って撮影どころじゃない。それに落下して壊れる可能性も高い」

   スカウトさんが冷静に分析する。

「風船は撮影には適していると思うが、そもそもガスがないし、落下地点の予測が出来ないな」