異世界転移物語

月夜

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メンバー全員による名簿分析

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    宙は僕らの無理強いをやんわりとかわした。

「こんな時に冷蔵庫があればなあ……」

    静かに肉を頬張っていたナースさんがつぶやく。

「ほんと、それ。冷凍庫で凍らせておければ、いつだって好きな時に食べれるのに」

    桂坂さんが同意する。

「小型の冷蔵庫や冷凍庫なら、電源をつないで動かせなくはないけどなあ」

    電気さんがそんなことを言う。

「あの発電機は使える時間に限りがあるから、常時使うってわけにはいかないが、別のポータブル電源なんかがあれば、そーれーと組み合わせたりして、長時間使える電源を確保することも不可能じゃないと思うんだ」

「昔の人は氷室とか作ってたんじゃないですか?」

    僕は急に頭に浮かんできた曖昧な知識を言葉にした。

「外気より多少涼しくする工夫はいくらかは施せると思うが、冷蔵庫の代用はとても無理だと思うぞ。ましてや凍らせるなんて」

    スカウトさんに一蹴される。

「それでもこれから夏になると思うから、地下とかにそういう場所を作る必要はあるかもしれないな」

「例えば、これから来る誰かが大量の凍ったドライアイスや蓄冷剤を持ってくることだってあるかもしれませんよね。そしたら密閉空間に入れてしまえば、しばらくは低温で維持できるんじゃないですかね」

   保育士さんが珍しく意見を出した。

「その通りね。密閉出来ていて、開閉さえしなければ低温を保つのは可能だわ。ただし、溶けた時体積増大するからドライアイスは密閉状態では使わないほうがいいと思うけど」

    理科さんがアドバイスしてくれた。

    夕食を終えて片付けも一段落したあと、僕らはネズミの家に集まった。全部で十七人。最初は広々と感じていたこの家もさすがに手狭になってきた。

    僕は皆の前で名簿の報告をした。昼間の考察についての一通りは話し終えた。

「結局、共通項は何も見つからなかったわけね」

     桂坂さんがズバリと確認する。そう言われては身も蓋もない。だからみんなで考えてもらうのだ。

     名簿をコピーするわけにも行かないので、実際に一人ずつ回してざっと見てもらった。

「関東の人が多いのはなんとなく分かってたけど、こうやって見ると全国いろんなところから来てるのね」

     理科さんの感想だ。

「専門家が多い印象なんですが、僕みたいな者もいますし、必ずしもそうじゃないんですよね」

     自転車君は控えめに発言する。

「最高齢は農家さん、最年少が今日来た宙君ね」

     保育士さんは年齢からアプローチを試みる。

「全体的に若いわよね」と料子さん。
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