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スカウトさんと激論
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「食事は食事で楽しく食べたい気がするわ。ある意味この世界の唯一の楽しみとも言えるもの」
料子さんにそう言われて、生果さんはハッとした表情を見せた。
「まあ、もっと人が増えてきたら、全員集まるってのも難しくなるかもしれないが、今のところは健太君の提案でいいんじゃないかな」
大工さんがそう言って賛意を示すと皆うなずいた。
解散後は、三つの家に分かれて睡眠をとった。内装さんが来て、こちらも五人になっていたが、歳の近い僕や自転車君と一緒がいいだろうということで、宙もこちらの家で僕らと一緒に寝ることになった。宙がちゃんと寝付けるか心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。グーグーと何事もなかったような静かな寝息を立ててぐっすりと眠っていた。
翌朝も良い天気だった。今日で僕がこちらに来てから、十八日目になる。まだ二週間ちょっととも言えるし、もうそんなに経ったとも言える。こちらでは時間の流れ方も違う感じがする。それはもちろん気のせいだろうが。
「健太」
スカウトさんが僕を見つけて近寄ってきた。
「俺な、今晩、野宿してみようかと思うんだ」
「えっ」
「ほら、宙が寝袋持って来てただろ」
「まさか、その寝袋で野宿するってことですか?」
スカウトさんはニコッと笑い、大きくうなずいた。
「野宿は今まで何度か経験してるし、この森には危険な動物もいない。天候さえ良ければ、さしたる危険はないと思うんだ」
「でも、なんで野宿なんかするんです?」
「森で寝れば、帰りの時間を浪費しなくて済むからその分遠くまで探索出来るだろ?」
確かにそれはそうだ。帰り時間を気にしなければ、その日に進めるだけ進むことが出来る。
「自転車君は?」
「寝袋は一つだから、自転車君とは途中で分かれることになるな」
「その後は単独行動するってことですか!」
「まあ、そうなるな。でも、さっきも言ったように決して危なくは」
僕は強引にスカウトさんの言葉を遮った。
「それはダメです。ここで単独行動は危険です。いくら野生動物がいないからっていっても、何があるかは分からないんですよ。いままで無事だったから、きっと大丈夫なんて、なんの理由にもなりません」
僕はいつにも増してきつい口調でまくし立てた。
「野生動物がいないのって、もしかしたらめちゃくちゃ強い天敵動物に食い尽くされたってこともあり得るんですよ」
「それは考えすぎじゃ……」
「いえ。僕たちはまだ何も分かってないんです。本当に安心して暮らせるだけの情報はまだ得てないんです。それはスカウトさんも分かってるでしょ?」
料子さんにそう言われて、生果さんはハッとした表情を見せた。
「まあ、もっと人が増えてきたら、全員集まるってのも難しくなるかもしれないが、今のところは健太君の提案でいいんじゃないかな」
大工さんがそう言って賛意を示すと皆うなずいた。
解散後は、三つの家に分かれて睡眠をとった。内装さんが来て、こちらも五人になっていたが、歳の近い僕や自転車君と一緒がいいだろうということで、宙もこちらの家で僕らと一緒に寝ることになった。宙がちゃんと寝付けるか心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。グーグーと何事もなかったような静かな寝息を立ててぐっすりと眠っていた。
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「健太」
スカウトさんが僕を見つけて近寄ってきた。
「俺な、今晩、野宿してみようかと思うんだ」
「えっ」
「ほら、宙が寝袋持って来てただろ」
「まさか、その寝袋で野宿するってことですか?」
スカウトさんはニコッと笑い、大きくうなずいた。
「野宿は今まで何度か経験してるし、この森には危険な動物もいない。天候さえ良ければ、さしたる危険はないと思うんだ」
「でも、なんで野宿なんかするんです?」
「森で寝れば、帰りの時間を浪費しなくて済むからその分遠くまで探索出来るだろ?」
確かにそれはそうだ。帰り時間を気にしなければ、その日に進めるだけ進むことが出来る。
「自転車君は?」
「寝袋は一つだから、自転車君とは途中で分かれることになるな」
「その後は単独行動するってことですか!」
「まあ、そうなるな。でも、さっきも言ったように決して危なくは」
僕は強引にスカウトさんの言葉を遮った。
「それはダメです。ここで単独行動は危険です。いくら野生動物がいないからっていっても、何があるかは分からないんですよ。いままで無事だったから、きっと大丈夫なんて、なんの理由にもなりません」
僕はいつにも増してきつい口調でまくし立てた。
「野生動物がいないのって、もしかしたらめちゃくちゃ強い天敵動物に食い尽くされたってこともあり得るんですよ」
「それは考えすぎじゃ……」
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