異世界転移物語

車と荷物の問題

　生果さんは、「食品」とだけ表示された箱をバリバリと破って開けた。伝票を見ると女の人から男の人への配送となっている。

「あら。お米」

　中に入っていたのは、お米5kgの他、諸々の野菜だった。これは車さんが運んできた分であるが、目一杯詰めてあり制限重量に近いぐらい重たかったのではないだろうか。

「どうやら実家からの息子への贈り物ってとこね」

　想像していた通りだった。僕が持ってきた箱には掃除機が入っていた。オンラインショッピングをしてものと思われる。他の二つの箱には、それぞれ野菜セットと半袖シャツ5着まとめ買いしたものが入っていた。

「おお。トラックが来たんだってな」

　宝泉さんと大工さんが入ってきた。

「宅配便か。これはこれは」

　車さんの制服を一目見て少し微笑む。続いて農家さんや算田さんたちも来たところで、今後のことを相談した。

「荷物を残しておくわけにはいかないので、六人ぐらいで取りに行きたいのですが」

「車に乗せといたままじゃダメなのか？」

　車さんが再確認する。「冷房だって効くし」

「うーん。燃料に限りがある以上、車はあまり使いたくないんですよ。それよりこっちに運んで榁（むろ）で冷やしたほうが」

　大工さんや電気さん、宝泉さんなどで、実は地面を掘ってむろを作っていた。外に作ったが、屋根を設置し水が入らないよう工夫したため、野菜などを入れるのに充分な広さが使える。ここに小型冷凍庫で作った氷を入れ替えながら冷やせば、外気温よりは低い温度で管理できる。充分なスペースもある。

「分かった」

「では、もう一度場に行くメンバーを決めたいと思います」

　集まったメンバーで相談して、僕と車さん、桂坂さん、陸、電気さん、宝泉さん、エンジさん、それに宙の八人が行くことになった。

　場にもう一度たどり着いた僕たちは、手分けして荷物を手にした。そこで僕は気がついた。

「車さん、ちょっと車の位置を移動してもらえます？」

「うん？　何か問題でも？」

「ええ。ここは毎日新しい人が出現する場所なんです。そんなところにデンと車が居座っていれば……」

「ああ、なるほど。この車が邪魔ってわけだな。そんなら話ははええ。ちょっと動かすぐらいは容易いもんさ」

　車さんはトラックに乗り込むと、車を動かし、スペースを開けた。これでいい。

「まあ、このくらい開けときゃいいだろ？」

「ＯＫです。旅客機なんかが来たら、車はお陀仏ですけどね」

「おいおい、物騒なこと言うなよな」

「あくまで可能性の問題です」