異世界転移物語

連鎖する異常事態

　金田さんのその推測には僕も同感だったので、さらに話を発展させる方向で考えてみた。

「つまり、事故に巻き込まれたか、別の誰かに危害を加えられたか、あるいは……また転移したか……考えられる可能性は、そんなところでしょうかね？」

「うーん。まあそんな感じだろうな。可能性があるっちゃ、何でもありはするんだがな……」

「それにしても、栗本君や楓さんは本当に来たばかりなのに災難ですね」

　安食さんが同情するように感想を述べる。

「向こうで善蔵さんたちがいなくなったのと何か関係してるんでしょうか？」

　僕は何気なく疑問を口にした。

「さあ。どうだろうな。偶然にしては出来過ぎている気がするが、実際に関係あるかは分からないな」

　金田さんは腕を組んで考え込んだ。

「これで今は六人になっちゃいましたね」

　桂坂さんの言葉で改めて残っているメンバーを見渡す。僕以外に、金田さん、釣りキチさん、桂坂さん、料子さん、安食さんだ。幸い、食料の心配も暮らしの心配もそれほどしなくても大丈夫そうだが、やはり寂しくはある。

「こっちにきてから、なんだか動きが目まぐるしいですね。前の集落の時は、ゆっくりと生活基盤の構築に専念出来てた気がしますが」

　僕は正直に実感を述べた。前の村は、毎日新しい人が来るという刺激はあったものの、それほどアクシデントに襲われることなく、割と平穏無事だったイメージがある。尤も、それも途中までだったのだが。

「正直、この世界では何があっても驚かなくなったわ……とはまだ言えないけど」

　桂坂さんが小声でつぶやいた。

「今、思ったことがあるんですが。あのメロンパンの袋の持ち主についてです」

「健太君、何だい？　聞かせてくれないか」

　金田さんに発言を促されて、僕は話し始めた。

「今のところ、メロンパンの袋を持ってきた人物は見つかっていません。もしかしたらこの近くに住んでいるのかも知れませんが、三ヶ月もいた善蔵さんたちがまったく会ったことがない、というのはちょっと考えにくいですよね。だから、たまたま近くを通ったときに袋を落として、そのまま遠くへと離れて行ってしまったと考えるべきだと思うんです」

「うん。まあ妥当な考えだな」

「ですが、その場合でも善蔵さんや金田さんたちに接触する確率はかなり高いと思います。向こうも人を探しているでしょうから、もし生活の痕跡が少しでもあれば、そこに止まって、向こうから接触する方法を考えるでしょう。つまり何が言いたいのかといえば、メロンパンの持ち主は、他の人間に接触する前に転移してしまったのではないか、ということなんです」

　僕は一気にまくし立てた。