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旧友
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「ええと……巻君は、健太君の小学校時代の友達ってことでいいのかな……?」
黙って僕らのやりとりを聞いていた金田さんが戸惑ったように確認する。
「そうみたいです。記憶も一致してるし、面影もあるので本人に間違いないですね。和也は僕たちが小学五年生の時に転校してしまったんでそれ以来ということになりますけど」
「そうか。なら話はスムーズにいくだろう。まあ、とにかく俺らと一緒に来てくれないか」
「分かりました」
和也は今度はあっさり了承した。足下の緑のバッグをえいこらと担ぐ。それにしてもこんなところで古い知り合いに会うとは、なんてすごい偶然なんだろう。今までも随分と驚かされてきたが、まさかこんなサプライズがあるとは! 今の和也がどんな状態か分からないが、僕にとっては心強いことこの上ない。
家に戻って、桂坂さんたちに和也を紹介した。僕と和也が幼なじみであることを伝えると、皆一様に驚いた顔をした。
「そんなことがあるのね。たったこれだけの人数で知り合いと会う機会なんか滅多にないわよね」
安食さんの感想に、僕は一応付け加える。
「ええと、前の集落でも同級生が遅れて来た高校生がいたんで、まったく無いというわけじゃないみたいです」
「あら、そう。でも良かったわね。知り合いとまた一緒になれて。あーあ、私も誰か友達来ないかなあ」
「みんなそう思いますよね。家族とか友人とか。身近な人がそばにいるのは、とても安心します」
桂坂さんがしんみりとそんなことを言う。家族にまた会いたいという気持ちが再び湧き上がってきたのかもしれない。
「夫婦とかだと、旦那に会わずに済んでのびのびしてる人もいるかもしらないけどね」
料子さんがいつものように茶化して、場を和ませる。
「そう考えると、善蔵さんたち夫婦は幸せだったんだなあ」
金田さんが天を見上げつつため息をつく、
「ところで和也、お前、沖縄にいるって言ってたけど、全然沖縄弁じゃないな。それに転校先って確か富山か石川あたりじゃなかったっけ?」
頃合いをみて、僕は旧友に話を振った。
「ああ。沖縄は大学に入ってからだ。だからほとんど標準語だよ。転校は石川県の小学校だったけど、中学からはまた首都圏に戻っちまったよ」
「大学では何を専攻してるんだ?」
「ああ。情報工学さ。分かりやすく言えばコンピュータ関係だ」
「理系か。それにしてもなんでわざわざ沖縄なんて遠いところに」
僕は素朴な疑問を旧友にぶつけた。
「沖縄はいいぞ。自然は豊かで海は泳ぎ放題。田舎だから他の誘惑に惑わされることなく研究に専念できるんだぞ。まあ、入れたのがたまたま沖縄の大学だけだったってのも理由の一つではあるんだがな」
黙って僕らのやりとりを聞いていた金田さんが戸惑ったように確認する。
「そうみたいです。記憶も一致してるし、面影もあるので本人に間違いないですね。和也は僕たちが小学五年生の時に転校してしまったんでそれ以来ということになりますけど」
「そうか。なら話はスムーズにいくだろう。まあ、とにかく俺らと一緒に来てくれないか」
「分かりました」
和也は今度はあっさり了承した。足下の緑のバッグをえいこらと担ぐ。それにしてもこんなところで古い知り合いに会うとは、なんてすごい偶然なんだろう。今までも随分と驚かされてきたが、まさかこんなサプライズがあるとは! 今の和也がどんな状態か分からないが、僕にとっては心強いことこの上ない。
家に戻って、桂坂さんたちに和也を紹介した。僕と和也が幼なじみであることを伝えると、皆一様に驚いた顔をした。
「そんなことがあるのね。たったこれだけの人数で知り合いと会う機会なんか滅多にないわよね」
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「ええと、前の集落でも同級生が遅れて来た高校生がいたんで、まったく無いというわけじゃないみたいです」
「あら、そう。でも良かったわね。知り合いとまた一緒になれて。あーあ、私も誰か友達来ないかなあ」
「みんなそう思いますよね。家族とか友人とか。身近な人がそばにいるのは、とても安心します」
桂坂さんがしんみりとそんなことを言う。家族にまた会いたいという気持ちが再び湧き上がってきたのかもしれない。
「夫婦とかだと、旦那に会わずに済んでのびのびしてる人もいるかもしらないけどね」
料子さんがいつものように茶化して、場を和ませる。
「そう考えると、善蔵さんたち夫婦は幸せだったんだなあ」
金田さんが天を見上げつつため息をつく、
「ところで和也、お前、沖縄にいるって言ってたけど、全然沖縄弁じゃないな。それに転校先って確か富山か石川あたりじゃなかったっけ?」
頃合いをみて、僕は旧友に話を振った。
「ああ。沖縄は大学に入ってからだ。だからほとんど標準語だよ。転校は石川県の小学校だったけど、中学からはまた首都圏に戻っちまったよ」
「大学では何を専攻してるんだ?」
「ああ。情報工学さ。分かりやすく言えばコンピュータ関係だ」
「理系か。それにしてもなんでわざわざ沖縄なんて遠いところに」
僕は素朴な疑問を旧友にぶつけた。
「沖縄はいいぞ。自然は豊かで海は泳ぎ放題。田舎だから他の誘惑に惑わされることなく研究に専念できるんだぞ。まあ、入れたのがたまたま沖縄の大学だけだったってのも理由の一つではあるんだがな」
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