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出発に向けて
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「私も行ってみたいんだけど、健太君以外女二人だとなにかと困るでしょうから、ここは男よね、やっぱり。釣りキチさんは行けないし、そうなると林さんか、栗原さん、海原君、和也君のうちの誰かということになるけど……」
陽子さんはそう言いながら男性メンバーを見回す。
「僕が行こうか? あ、ほら、僕だって一応若手だし、海原君は力があるから、金田さんが帰ってきたときの事を考えて、ここに残ったほうがいいんじゃないかと思うんだけど」
陽子さんと目があった和也がおずおずと名乗りを上げる。海原君のくだりは一理ある。確かに残ってもらったほうがいいかもしれない。和也なら僕も気心が知れているし、理科さんとも行動を共にした経験もある。
「じゃあ、僕と和也と理科さんで調査に行く、ということでいいでしょうか? そんなに準備も必要なさそうなので、明日には出発したいんですが」
「明日? そんなにすぐ?」と安食さん。
「ええ。テントと食料は必須ですが、それほど重装備にしなくてもいいと思われるので」
「期間は?」と林さんが問う。
「そうですね。二泊して三日目に折り返すぐらいでどうでしょうか」
「全部で五日ってことか。うん。まあ、いいんじゃねえの。それぐらいで」
林さんは二度ほどうなずいた。料子さんも心配そうな表情で僕らに声をかけた。
「気をつけて行ってね。ほら、金田さんみたいに急に具合が悪くなることもあったりするから」
「大丈夫です。無理だと思ったらすぐに引き返しますから。絶対に今行かなきゃならないものでもないですしね」
それから僕と和也、理科さんは明日の準備をした。非常時に備えることを考えれば、色々と持っていきたいものはあるが、あまり欲張らないほうがいい。そもそもこの家の中にさえ物が少ない上に、疲労を考慮すればなるべく軽装のほうがいいだろう。最低限の食糧、テント、スマホは必須だが、それ以外は取捨選択する必要がある。
何かを発見さえすれば、本格的な調査は後日出直しすればいいので、無理することはない。時間はいくらでもあるのだから。
ふと気づくと、近くで栗原さんと陽子さんが会話をしていて、その内容が断片的に耳に入ってきた。どうやら善蔵さんの家からの帰り道で話していた「ウインダー」の件について話しているようだった。そういえば栗原さんもバリバリの理系だったことを思い出した。
「それ、聞いたことありますよ。研究室でもちょっとだけ話題になったことがあったな」
陽子さんはそう言いながら男性メンバーを見回す。
「僕が行こうか? あ、ほら、僕だって一応若手だし、海原君は力があるから、金田さんが帰ってきたときの事を考えて、ここに残ったほうがいいんじゃないかと思うんだけど」
陽子さんと目があった和也がおずおずと名乗りを上げる。海原君のくだりは一理ある。確かに残ってもらったほうがいいかもしれない。和也なら僕も気心が知れているし、理科さんとも行動を共にした経験もある。
「じゃあ、僕と和也と理科さんで調査に行く、ということでいいでしょうか? そんなに準備も必要なさそうなので、明日には出発したいんですが」
「明日? そんなにすぐ?」と安食さん。
「ええ。テントと食料は必須ですが、それほど重装備にしなくてもいいと思われるので」
「期間は?」と林さんが問う。
「そうですね。二泊して三日目に折り返すぐらいでどうでしょうか」
「全部で五日ってことか。うん。まあ、いいんじゃねえの。それぐらいで」
林さんは二度ほどうなずいた。料子さんも心配そうな表情で僕らに声をかけた。
「気をつけて行ってね。ほら、金田さんみたいに急に具合が悪くなることもあったりするから」
「大丈夫です。無理だと思ったらすぐに引き返しますから。絶対に今行かなきゃならないものでもないですしね」
それから僕と和也、理科さんは明日の準備をした。非常時に備えることを考えれば、色々と持っていきたいものはあるが、あまり欲張らないほうがいい。そもそもこの家の中にさえ物が少ない上に、疲労を考慮すればなるべく軽装のほうがいいだろう。最低限の食糧、テント、スマホは必須だが、それ以外は取捨選択する必要がある。
何かを発見さえすれば、本格的な調査は後日出直しすればいいので、無理することはない。時間はいくらでもあるのだから。
ふと気づくと、近くで栗原さんと陽子さんが会話をしていて、その内容が断片的に耳に入ってきた。どうやら善蔵さんの家からの帰り道で話していた「ウインダー」の件について話しているようだった。そういえば栗原さんもバリバリの理系だったことを思い出した。
「それ、聞いたことありますよ。研究室でもちょっとだけ話題になったことがあったな」
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