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予期せぬ事態
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「嬉し泣きだからいいでしょ。でも大丈夫。泣いててもしょうがないもんね。前を向かなきゃ」
「まあ、なんにしろ、お前が元気になって良かったよ」
僕は心底そう思ったので、ついそのまま口に出した。
「また保護者みたいなこと言って。あ~あ、和也、帰って来ないかなあ~」
「そんなに和也のこと、気になるの?」
「だって、健太は真面目過ぎるんだもん。お笑い担当の和也がいないとつまんない」
あいつはいつからお笑い担当になったんだ。本人が聞いたらきっと嘆くに違いない。
前と後ろでそれぞれ会話が弾むうちに、あっという間に、新しい人の出現場所に着いた。なんの変哲もないただの森の中の一画。どうしてここが出現場所に指定されたのだろうか。この空間に何があるというのか。他の場所と違う何かがあるのか。今までも繰り返し考えてきた謎が再び僕の頭に蘇る。それでもいつも答えは出ないのだけれど。
「さて、今日こそ、金田さんが戻ってくるかな」
僕が軽く口に出すと、陽子さんが応じた。
「どうだろうね。たとえ戻ってきたとしても容態が心配だわ」
皆の間に一瞬、静粛が訪れた。
「そろそろ時間ですね」と海原君が告げる。
緊張の瞬間だ。もう何度経験したか分からないほど何度もこの時を迎えているはずなのに、いまだに身震いしてしまう。
見慣れた白い靄がかかる。そして霧が晴れるとそこには……
「金田さん!!」
ぐたっと横になったままの金田さんが姿を見せた。そしてその横で、驚きの表情を浮かべたままの若い女性とコンテナらしき荷物。
「きゃーっ!!」
あまりの異常事態にその女性は悲鳴をあげた。ただでさえ、見知らぬ森の中に放り出された上に、瀕死の病人がいきなり目の前に現れたのだから、むしろ平然ているほうがおかしい。僕らはその女性を刺激しないようゆっくり近づけば良かったのだろうが、そんな余裕はなかった。金田さんの様子を見ればそれどころじゃない。僕らは小走りに駆け寄った。
「金田さん、大丈夫ですか!」
ひとまず若い女性のほうは無視し、僕は金田さんの顔に自分の顔を近づけて、聞こえるように声をかけた。海原君と陽子さんもそばに来て一緒に呼びかけている。だが、金田さんは僕たちの呼びかけにも答えない。意識がないのだろうか?
「お姉さん、ちょっと待っててね。今たてこんでるから」
後ろでいのりが呑気に若い女性に声をかけているようだ。女性の興奮した息づかいが背中から聞こえる。
「ちょっと! 一体、どういうことよ。あんたたち何なの? 何か知ってんだったら私にも分かるように説明してよ!」
「まあ、なんにしろ、お前が元気になって良かったよ」
僕は心底そう思ったので、ついそのまま口に出した。
「また保護者みたいなこと言って。あ~あ、和也、帰って来ないかなあ~」
「そんなに和也のこと、気になるの?」
「だって、健太は真面目過ぎるんだもん。お笑い担当の和也がいないとつまんない」
あいつはいつからお笑い担当になったんだ。本人が聞いたらきっと嘆くに違いない。
前と後ろでそれぞれ会話が弾むうちに、あっという間に、新しい人の出現場所に着いた。なんの変哲もないただの森の中の一画。どうしてここが出現場所に指定されたのだろうか。この空間に何があるというのか。他の場所と違う何かがあるのか。今までも繰り返し考えてきた謎が再び僕の頭に蘇る。それでもいつも答えは出ないのだけれど。
「さて、今日こそ、金田さんが戻ってくるかな」
僕が軽く口に出すと、陽子さんが応じた。
「どうだろうね。たとえ戻ってきたとしても容態が心配だわ」
皆の間に一瞬、静粛が訪れた。
「そろそろ時間ですね」と海原君が告げる。
緊張の瞬間だ。もう何度経験したか分からないほど何度もこの時を迎えているはずなのに、いまだに身震いしてしまう。
見慣れた白い靄がかかる。そして霧が晴れるとそこには……
「金田さん!!」
ぐたっと横になったままの金田さんが姿を見せた。そしてその横で、驚きの表情を浮かべたままの若い女性とコンテナらしき荷物。
「きゃーっ!!」
あまりの異常事態にその女性は悲鳴をあげた。ただでさえ、見知らぬ森の中に放り出された上に、瀕死の病人がいきなり目の前に現れたのだから、むしろ平然ているほうがおかしい。僕らはその女性を刺激しないようゆっくり近づけば良かったのだろうが、そんな余裕はなかった。金田さんの様子を見ればそれどころじゃない。僕らは小走りに駆け寄った。
「金田さん、大丈夫ですか!」
ひとまず若い女性のほうは無視し、僕は金田さんの顔に自分の顔を近づけて、聞こえるように声をかけた。海原君と陽子さんもそばに来て一緒に呼びかけている。だが、金田さんは僕たちの呼びかけにも答えない。意識がないのだろうか?
「お姉さん、ちょっと待っててね。今たてこんでるから」
後ろでいのりが呑気に若い女性に声をかけているようだ。女性の興奮した息づかいが背中から聞こえる。
「ちょっと! 一体、どういうことよ。あんたたち何なの? 何か知ってんだったら私にも分かるように説明してよ!」
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