サキュバス後輩が俺だけ落とせない件

たまやん

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告白

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 「俺、ピトちゃんに告白しようと思う」
 
 バイトの休憩時間、ファウスト文庫の狭い休憩室で、米本健二が俺に深刻な顔で声をかけてきた。
 30代前半の活発な男、元サッカー部らしいガタイがソファを占領してる。
 普段は明るい人なのに、今は目がガチガチに真剣だ。
 俺は唐揚げ弁当を箸でつついてた手を止めて「は?」と気の抜けた声を上げた。
 何!? 告白!? ピトに!? 頭が一瞬フリーズした。
 米本が「いや、マジだって」と立ち上がって、俺に詰め寄ってくる。  
 「宗二君、ピトちゃんってさ、めっちゃ可愛いよな。あのピンクのツインテール、ニコッて笑う顔、元気いっぱいに飛び跳ねる姿! 俺、もう我慢できねえよ。この気持ち、抑えられないんだ。止めないでくれ宗二君!」
 オーバーな動きで語り始めた。両手で胸を押さえて、目を潤ませて、しまいには片膝ついて天を仰ぐ。
 いや、ドラマの主人公かよ。米本のピトへの熱弁が止まらない。
 「あの子の『健二さん、カッコいいです!』って言葉、俺の心に刺さったんだよ!」とか言いながら、拳を強く握りしめる。
 俺は「……いや、まあ良いんじゃないっすかね」と、箸を置いて曖昧に応えた。
 一応応援するけど、内心じゃ不安が渦巻いてる。
 ピトが人間じゃない事、俺は知ってる。米本が告白したらどうなるんだよ。
 人外に告白って、アニメや漫画でしか見ない展開だ。
 悪い奴じゃなさそうだけど、何か企んでるっぽい時もあるし……。
 俺は「じゃ、俺、棚整理してきます」と弁当を片付けて、休憩室を出た。隠れて様子を見ようって決めた。

 棚の陰に身を潜めて、俺は米本とピトの様子を伺った。米本がレジに立つピトに近づいてく。
「一体どうなっちまうんだ……」と呟いた瞬間、すぐ後ろから「ピトちゃんに告白だなんて許せない……ぐぎぎぎ」と呪詛のような声が聞こえた。
 驚いて振り返ると、いつの間にか音もなく藍子さんが立ってた。
 黒髪ロングが顔に影を作って、目がギラッと光ってる。
 
 「うわっ!?」

 俺は腰を抜かして尻餅をついた。
 「いつの間にいたんだよ!?」と小声で訴えたけど、藍子が「しっ! 見て!」と指を指す。
 視線の先で、まさに米本がピトに声をかけてる姿があった。俺は慌てて立ち上がって、藍子と一緒に棚の陰から覗いた。
  米本が「よお、ピトちゃん、今日も元気だな」と軽い世間話から入る。
 ピトが「健二さん、お疲れ様です!」とニコニコ応えてる。
 突然、米本が「実はさ、俺、君に言いたいことがあって……」と切り出した。
 空気が一瞬張り詰める。藍子の「ぐぎぎ」が隣で聞こえて、俺の心臓がバクバクしてる。
 米本が深呼吸して「好きだ!」と男らしく告白した。
 「私も好きです!」と、ピトが元気に答えた。
 
「何!?」
「何ですって!?」
「何だと!?」

 俺、藍子、米本、全員が同時に驚いた。
 俺は「え!?」と声が漏れて、藍子が「ピトちゃん……!?」と目を丸くする。
 米本が「マジで!?」と前のめりになる。でも、ピトはニコニコしたままだ。
 米本が「じゃあ、俺と付き合ってくれるのか!?」と身を乗り出すと、ピトが可愛らしく小首を傾げて「どこにですか?」と答えた。
 
 「……は?」

 米本が固まった。俺と藍子も凍りつく。
 米本が「お、俺の事好きなんだよね?」と動揺しながら確認すると、ピトが「はい! 頼り甲斐があって好きです! 宗二先輩も優しくて好きです! 藍子さんや店長もみ~んな大好きです!」と、両手を大きく広げて花が咲いたような笑顔を見せた。
 「あ……」と、米本が呆然となる。
 ピトが「で、どこいくんですか?」と無邪気に問いかけると、米本が「あ、いや、忘れてください。あは、ははは」と虚無の表情で笑って、レジ裏から去っていった。肩が落ちて、魂が抜け落ちたみたいだ。
 藍子が「……良かった」と呟いて、米本が振られた事に喜んでる。
 俺は「あ、あいつ……本気で理解してないのか……?」と、ピトが米本の告白を全く理解してなかった事に衝撃を受けた。
 好きって気持ちを、恋愛じゃなくて仲間的な意味で返してる。天然すぎるだろ。いや天然で済む話か……?
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