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アスタリア王国編
150 新たな事実を知りましょう
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お茶を飲んでクッキーを齧り、一息ついてから本題へと入る。転生者がもう一人いるとは、エリーナもリズも考えたことすらなかった。それゆえに驚きと喜びが大きい。リズは弾む心を隠さず、にこにこと笑いながら自己紹介から始める。
「私の前世は女子高生で、事故に遭ってこちらに転生したんです。マルクさんは、王宮で料理人をされているんですよね。前世では何を?」
「へぇ、女子高生。若くして死んだのは残念だったね。俺は前世も板前でさ、料亭で修行して29の時だったかな。独り立ちができるってなった時に病気になって、闘病虚しくって感じだった」
マルクは軽い口調で話しているが、なかなか苦労をした前世だったようだ。
「でも、こっちの食文化って日本とかなり違ってるじゃん? 俺としては米と味噌汁が欲しいわけ。なんなら寿司も! だから、まずは王宮で修行してここの料理を覚えて、伝手を広げてから食材探して日本食を再現しようと思ってる」
そう熱く語るマルクの目は生き生きと輝いており、今を楽しんでいるのがわかる。リズはわぁと感嘆の声を上げ、目を瞬かせた。
「すごいですね。確かに食は違いますからね」
「だろ? こっちにも米はあるけど、粘り気と甘みがたりなくて物足りないし、野菜も大味で締まりがないし、魚に至っては港町に行かないと新鮮なものはないと来た……。軽く絶望したわ」
さすがは料理人。食へのこだわりが強い。エリーナはリズも同じような想いを抱いていたのかと気になって視線を向けるが、当のリズは口を半開きにしていた。
「そこまで気にしたことなかったですね。パンはおいしいし、スープや肉もあるので満足していました。スイーツもけっこうありますし」
「え、でも米と味噌汁は欲しくならない? あと納豆とか」
「ん~。私、前世でもパン派だったんですよね。家でも洋食が多かったので、あまり日本食が恋しくなったことはないです」
同じ日本人でも違いはあるようだ。マルクは信じられないと目をカッと見開き、拳を握る。
「これが現代っ子か!」
前世の二人はざっと十歳は違う。さらにリズからすれば、マルクは若い世代には入るが日本食を重視するタイプに思えた。
「マルクさん、こっちの生活大変そうですね」
「そりゃな。言語分からないし、意味の分からない世界だし……」
その言葉から二人は彼がこの世界を知らないことに気づき、顔を見合わせる。リズが「えっと」と気づかわし気に口を開いた。
「マルクさんはここが何の世界かご存知ですか?」
「え? 現代日本じゃない近世ヨーロッパっぽい世界でしょ?」
たいして疑問も抱いていなさそうなマルクに対し、リズは困惑気味で「実は」と切り出す。
「ここ、乙女ゲームの世界なんです」
「乙女ゲーム? ギャルゲーの女の子版?」
「えっと、そうですね。舞台はラルフレア王国でストーリーはほとんど終わっているのですが、そのゲームの世界に似たところです」
だがマルクはいまいち理解ができないようで、首を捻っていた。
「え~っと、つまり、気づいたらゲームの中にいた的な?」
「むしろ、ゲームの中で生きているに近いです」
マルクは数秒黙り込み、じっとリズを見つめた。
「まじで?」
「まじです」
マルクはう~と呻き声を上げ、額に手を当てた。その事実は彼にとって打撃が大きかったのか、なかなか受け入れられないようだ。
「えっと、リズはゲームの世界だと知っても平気だったのか?」
「あ、むしろ、このゲームが大好きでキャラたちを近くで見られるので最高だと思いました」
「何それうらやましー」
その反応から、どうやらマルクの前世はオタクではなかったようで、サブカルチャーにはあまり詳しくなさそうだ。そしてマルクは悩みを振り切るかのように二三度大きく頷き、「よしっ」と気合を入れる。
「割り切って生きていくわ! ありがとな。なんかすっきりした。周りに前世なんて言っている奴いないし、なんで俺だけって思ってたからさ」
晴れやかな表情を見せるマルクは、二人に顔を向けてニッと歯を見せて笑った。清々しい笑顔は好感が持てる。
「そっか、じゃ、リズさんは今が幸せなんだな」
「はい。壁と同化してキャラ達のやりとりを見るのがたまりません」
うふふと幸せそうな笑みを浮かべるリズを見て、マルクはあははと苦笑する。
「俺にも妹がいたんだけど、そいつもよく乙女ゲームをしてたわ。さっきの顔、あいつと一緒……ん?」
と、そこで何かにひっかかったのか、マルクは顎に手をやって考え込む。何かを必死に思い出すような顔つきになって、「そういえば」と言葉を続ける。その声は少し訝し気だった。
「入院している俺に、妹が勧めてきた乙女ゲームのキャラに似ている奴がいるような……」
「え!? どういうこと?」
「詳しく教えてください!」
マルクのあやふやな情報は二人の不安を的中させるものであり、身を乗り出して食いついた。ヒロインっぽい子がいる。それが意味する先は……。
「タイトルは思い出せないけど、パッケージの表紙にシルヴィオ殿下がいた気がするんだよなぁ」
超絶美形の第二王子。性格的にも攻略キャラとしては申し分ない。一気にゲーム世界が続いている可能性が濃くなり、エリーナは急激に不安になった。
「あ、あの。クリスは? 紅い髪の男はいた?」
もしあのゲームに続編があって、アスタリア王国が舞台になっていたら、クリスが攻略キャラに入っている可能性は十分ある。新しいヒロインに取られるのではと心拍数が早くなってきた。マルクはエリーナに配慮して、言葉遣いを丁寧なものに戻す。
「えっと、覚えてないです……。あ、でも真ん中にいた女の子は思い出した!」
真ん中の女の子。それはつまりヒロインだ。二人は息を飲んで続きを待つ。
「よく図書館にいるピンクの髪の女の子です。たまに近くの庭園ですれ違うんですが、いつもきょどってるから印象に残ってて」
その女の子は知っている。エリーナとリズは顔を見合わせて、声を合わせて叫んだ。
「やっぱりヒロイン!」
怪訝そうに首を捻るマルクを置き去りに、二人はどうする? と顔を突き合わせたのだった。
「私の前世は女子高生で、事故に遭ってこちらに転生したんです。マルクさんは、王宮で料理人をされているんですよね。前世では何を?」
「へぇ、女子高生。若くして死んだのは残念だったね。俺は前世も板前でさ、料亭で修行して29の時だったかな。独り立ちができるってなった時に病気になって、闘病虚しくって感じだった」
マルクは軽い口調で話しているが、なかなか苦労をした前世だったようだ。
「でも、こっちの食文化って日本とかなり違ってるじゃん? 俺としては米と味噌汁が欲しいわけ。なんなら寿司も! だから、まずは王宮で修行してここの料理を覚えて、伝手を広げてから食材探して日本食を再現しようと思ってる」
そう熱く語るマルクの目は生き生きと輝いており、今を楽しんでいるのがわかる。リズはわぁと感嘆の声を上げ、目を瞬かせた。
「すごいですね。確かに食は違いますからね」
「だろ? こっちにも米はあるけど、粘り気と甘みがたりなくて物足りないし、野菜も大味で締まりがないし、魚に至っては港町に行かないと新鮮なものはないと来た……。軽く絶望したわ」
さすがは料理人。食へのこだわりが強い。エリーナはリズも同じような想いを抱いていたのかと気になって視線を向けるが、当のリズは口を半開きにしていた。
「そこまで気にしたことなかったですね。パンはおいしいし、スープや肉もあるので満足していました。スイーツもけっこうありますし」
「え、でも米と味噌汁は欲しくならない? あと納豆とか」
「ん~。私、前世でもパン派だったんですよね。家でも洋食が多かったので、あまり日本食が恋しくなったことはないです」
同じ日本人でも違いはあるようだ。マルクは信じられないと目をカッと見開き、拳を握る。
「これが現代っ子か!」
前世の二人はざっと十歳は違う。さらにリズからすれば、マルクは若い世代には入るが日本食を重視するタイプに思えた。
「マルクさん、こっちの生活大変そうですね」
「そりゃな。言語分からないし、意味の分からない世界だし……」
その言葉から二人は彼がこの世界を知らないことに気づき、顔を見合わせる。リズが「えっと」と気づかわし気に口を開いた。
「マルクさんはここが何の世界かご存知ですか?」
「え? 現代日本じゃない近世ヨーロッパっぽい世界でしょ?」
たいして疑問も抱いていなさそうなマルクに対し、リズは困惑気味で「実は」と切り出す。
「ここ、乙女ゲームの世界なんです」
「乙女ゲーム? ギャルゲーの女の子版?」
「えっと、そうですね。舞台はラルフレア王国でストーリーはほとんど終わっているのですが、そのゲームの世界に似たところです」
だがマルクはいまいち理解ができないようで、首を捻っていた。
「え~っと、つまり、気づいたらゲームの中にいた的な?」
「むしろ、ゲームの中で生きているに近いです」
マルクは数秒黙り込み、じっとリズを見つめた。
「まじで?」
「まじです」
マルクはう~と呻き声を上げ、額に手を当てた。その事実は彼にとって打撃が大きかったのか、なかなか受け入れられないようだ。
「えっと、リズはゲームの世界だと知っても平気だったのか?」
「あ、むしろ、このゲームが大好きでキャラたちを近くで見られるので最高だと思いました」
「何それうらやましー」
その反応から、どうやらマルクの前世はオタクではなかったようで、サブカルチャーにはあまり詳しくなさそうだ。そしてマルクは悩みを振り切るかのように二三度大きく頷き、「よしっ」と気合を入れる。
「割り切って生きていくわ! ありがとな。なんかすっきりした。周りに前世なんて言っている奴いないし、なんで俺だけって思ってたからさ」
晴れやかな表情を見せるマルクは、二人に顔を向けてニッと歯を見せて笑った。清々しい笑顔は好感が持てる。
「そっか、じゃ、リズさんは今が幸せなんだな」
「はい。壁と同化してキャラ達のやりとりを見るのがたまりません」
うふふと幸せそうな笑みを浮かべるリズを見て、マルクはあははと苦笑する。
「俺にも妹がいたんだけど、そいつもよく乙女ゲームをしてたわ。さっきの顔、あいつと一緒……ん?」
と、そこで何かにひっかかったのか、マルクは顎に手をやって考え込む。何かを必死に思い出すような顔つきになって、「そういえば」と言葉を続ける。その声は少し訝し気だった。
「入院している俺に、妹が勧めてきた乙女ゲームのキャラに似ている奴がいるような……」
「え!? どういうこと?」
「詳しく教えてください!」
マルクのあやふやな情報は二人の不安を的中させるものであり、身を乗り出して食いついた。ヒロインっぽい子がいる。それが意味する先は……。
「タイトルは思い出せないけど、パッケージの表紙にシルヴィオ殿下がいた気がするんだよなぁ」
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もしあのゲームに続編があって、アスタリア王国が舞台になっていたら、クリスが攻略キャラに入っている可能性は十分ある。新しいヒロインに取られるのではと心拍数が早くなってきた。マルクはエリーナに配慮して、言葉遣いを丁寧なものに戻す。
「えっと、覚えてないです……。あ、でも真ん中にいた女の子は思い出した!」
真ん中の女の子。それはつまりヒロインだ。二人は息を飲んで続きを待つ。
「よく図書館にいるピンクの髪の女の子です。たまに近くの庭園ですれ違うんですが、いつもきょどってるから印象に残ってて」
その女の子は知っている。エリーナとリズは顔を見合わせて、声を合わせて叫んだ。
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