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第2章:生い立ち編1~訓練施設インシデント~
第8話 インシデント4:火種の消滅
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青白き炎の中に浮かんでいた人物はエステール伯爵家でセルジオを名乗った初代セルジオ・ド・エステールであった。
ポルデュラは今世のセルジオの中へ初代セルジオの悔恨の感情を封印するとバルドとベアトレスをセルジオが横たわるベッドの脇へ誘った。
「バルド、ベアトレスをこれへ!」
セルジオは吐き出し乳と鮮血で染まったベッドの上でぐったりと横たわっていた。
ポルデュラの両掌がセルジオの小さな身体の上で円を描く様な動きをしている。柔らかい風があたるのか真っ赤に染まった衣が小刻みに揺れている。
バルドとベアトレスがベッドへ近づくとポルデュラの放つ柔らかな風に乗り、吐き出した乳と鮮血の混ざった何とも言えない臭いが鼻をついた。
『うっ・・・・』
平然としているバルドの横でベアトレスはセルジオの姿とその臭いに口と鼻を両手で覆う。
「ポルデュラ様!セルジオ様は!ご無事でいらっしゃいますか?」
ベアトレスは泣き出さんとばかりにポルデュラへ問うた。
「・・・・」
ポルデュラはベアトレスの問いに直ぐに応じない。その間が更にベアトレスを不安にさせた。
「ポルデュラ様っっ!!!」
胸が張り裂けそうな痛みを覚え、ベアトレスは叫ぶ様にポルデュラの名を呼んだ。
サッ・・・・
バルドはセルジオに覆いかぶさる勢いのベアトレスの両肩を抱え、優しく諭す。
「ベアトレス様、ご心配ございません。
ポルデュラ様は、ただ今セルジオ様の手当を施しておいでです。
今しばらくお待ち下さい」
バルドの言葉にセルジオの胸の上で円を描き治癒の風と珠を降り注ぐポルデュラが口を開いた。
「案ずるな!お主ら2人の祈りが通じた故、お命に別状はない。
よい働きをしたの。今、風の珠をセルジオ様の胸の奥深くへ鎮めた。
ポルデュラの名で封印をした故、
ご自身では外せぬ・・・・もちろん、初代セルジオ様もな・・・・」
ポルデュラはベアトレスを安心させようと己の術を簡単に説明する。
「ベアトレス、悪いがセルジオ様の着替えと
寝所を整える用意をしてくれぬか。
セルジオ様がお目覚めの後、湯の用意もしてくれ」
ポルデュラは変わらずセルジオの身体へ向けて円を描いてはいるが治療の終わりが近づいているのか言葉数が増えてきた。
「はいっ!承知致しました!すぐにご用意致しますっ!」
ベアトレスは居ても立っても居られない思いだった。何かしていないとどうにかなりそうな自分を制することができなくなると感じていたのだ。
ペコリッ
ベアトレスはポルデュラへ軽く頭を下げると
セルジオの着替えとベッド周りの品を取りに隣室へ急ぎ向かった。
タッタタッ・・・・
パタンッ
ベアトレスが部屋を出るのを見届けるとバルドはポルデュラにセルジオの容態を確認する。
「ポルデュラ様、セルジオ様はお目ざめになりますでしょうか?」
セルジオはぐったりと横たわってはいるが、心なしか頬に色味がさしてきた様に見える。
「案ずるな!ベアトレスが戻る頃にはお目ざめになる。
それよりもバルド、この騒ぎ・・・マデュラが黙ってはおるまい。
封じたとはいえ、王家星の魔導士ダグマル様の予兆通り
『青き血が流れるコマンドール』がお出ましになり、
セルジオ様が生まれ変わりだと知れたのだ。
どんな手に出てくるか・・・・心しておけっ!」
王家の血筋ラドフォール公爵家の第三子であり、王家直属の魔導士であるポルデュラはエステール伯爵家とマデュラ子爵家の「因縁の始まり」を伝え聞いていた。
『内紛』の火種を断つ事もまた王家直属の魔導士の役割でもある。出方を違えればセルジオは王家とマデュラの双方から厄介な存在とされ、その身を更に危険にさらすことになる。
バルドはポルデュラとの会話を頭の中で反芻していた。
セルジオの手に巻かれた紐が食い込んでいた事、マデュラの刺客と思われる3人の男たち、『青白い炎』を目にした時、マデュラの乳母を殺めた時、躯をエステール伯爵家へ運び入れた時、西の門番に王都騎士団総長へ報告を頼んだ時、そして、今。
『何が一番、最善の策となろうか・・・・』
バルドはエステール伯爵家セルジオ騎士団第一隊長の従士であり、諜報活動を得意としていたかつての自分自身と怪我で退団を余儀なくされ、セルジオの従士として訓練施設での任についている今の自身と役割が変わっていない事に気付き口元が緩んだ。
『何も変わってはおらぬな・・・・
まだ、この身は役目を果す事ができる!』
ザアァァァァ・・・・
フワッフワッフワッ
ポルデュラは両掌を大きく天へ向けるとセルジオの身体全体を銀色の風の大きな珠で包みこんだ。バルドの様子を見ると言葉をかける。
「固まったようだの。して、いかがいたす」
当然、ポルデュラにも役割があるのだろうと言わんばかりにバルドに問うた。
バルドは静かに穏やかに頭の中で組み立てた『今の最善の策』を話し出した。
「ボルデュラ様はこのこと、ラドフォール公爵様へお伝え頂きたく、
そして、ラドフォール公爵様よりシュタイン王へ
今この場にて起りましたことをお伝え頂きたく存じます。
100年有余年前の『青き血が流れるコマンドール』は
王家直属魔導士ポルデュラ様の手にて封印をしたとお伝え下さいませ」
バルドは事実を迅速に王家へ伝える事でエステール伯爵家とマデュラ子爵家の間で『内紛』の兆しはない事を知らしめるための策を伝えた。そして続ける。
「私は我が主、
エステール伯爵ご当主ハインリヒ様に次の様にお願い致します。
『エステール伯爵家は遠く過ぎし日の事を
これにて終わらせた事をお約束する』と
シュタイン王からマデュラ子爵へお伝え頂きたいと」
バルドはシュタイン王国国内の事情にも明るかった。
『内紛』の火種はエステール伯爵家とマデュラ子爵家だけではない。歴史が積み重なればその分、ほころびは自ずと生まれるものだ。
ただ、どの家名も『勃発家』にはなりたくない。その為、『どこかが起こした内紛の兆し』を利用し、自らの手は汚さない事が最良の策だと考える。
バルドはその事を重々承知した上で『火種自体を消滅』する策に出た。
爵位は伯爵家であるエステールが上位である。爵位が上位の家名からの申し出があり、しかもシュタイン王直々に『過去からの因縁の終了宣言』を公にすれば心の内はどうであれ『表向き』は両家とも従わざるを得ない。
ポルデュラはバルドの策に大きくうなずいた。
「そなた!腕はなまっておらぬな。
従士であった頃よりも冴えているのではないか?」
ポルデュラは表情を緩ませバルドを称賛する。
「・・・・そうやもしれません。
騎士団を中心として物事を見ていた時よりも・・・・」
バルドは毎日が生きた心地がしなかったかつての経験を活かす場を与えられた今と怪我により騎士団を退団した事で肩の力が抜け視野が広がった自身をポルデュラの言葉で初めて認識した。
「ハインリヒ様の見る目は確かだの。そう思わぬか?」
ポルデュラはバルドの心が読めているかの様に笑顔を見せた。
「して、そなたら2人はいかが動くのだ?
それも考えているのであろう?」
ポルデュラは『火種の消滅』をした後の事を問うていた。
バルドは考えていた。今後、セルジオが訓練施設を出て無事に騎士団へ入団する7歳を迎える時まで。
そして、今この事態の後を無事に乗り切る策を。
「はい、いくつか策は思い浮かんでおります・・・・
が、全てはベアトレス様と私の役割をお互いに
しっかりと頭に叩き込む必要がございます。
それ故、ベアトレス様に『始まりのはなし』をお伝えした後となりましょう」
バルドは『青き血がながれるコマンドール』の出現前にベアトレスに伝えようとしていた話しを思い返していた。
「そうじゃの。では、その場に私も同席しよう。
これからのセルジオ様への事も話しておかねばなるまい」
ポルデュラは初代セルジオの悔恨の感情を『セルジオの心と共に封印』した事でのセルジオとの接し方をバルドとベアトレスに話しておく必要があると考えていた。
「お願いいたします。
特にベアトレス様はセルジオ様に
我が子以上のお気持ちを抱かれておいでです」
バルドはベアトレスの人となりをポルデュラへ伝える。
「そのこと、重々承知しておる。安心いたせ。
あの場に、封印までの場に留まっていられる度量はたいしたものだ」
ポルデュラはセルジオに向けていた両掌を止めた。
ゴソッ・・・・・
吐き出した乳と血液が固まり、ごわごわになったシーツの上でセルジオが手足を動かした。
「お目ざめになりましたか。
大事ございません故、ご安心くだされ」
ポルデュラが優しくセルジオに語りかける。
「セルジオ様っっ!」
バルドは目覚めたセルジオの乳と血で汚れた両頬を両掌で包むと深く青い瞳を安堵の表情で覗きこんだ。
ポルデュラは今世のセルジオの中へ初代セルジオの悔恨の感情を封印するとバルドとベアトレスをセルジオが横たわるベッドの脇へ誘った。
「バルド、ベアトレスをこれへ!」
セルジオは吐き出し乳と鮮血で染まったベッドの上でぐったりと横たわっていた。
ポルデュラの両掌がセルジオの小さな身体の上で円を描く様な動きをしている。柔らかい風があたるのか真っ赤に染まった衣が小刻みに揺れている。
バルドとベアトレスがベッドへ近づくとポルデュラの放つ柔らかな風に乗り、吐き出した乳と鮮血の混ざった何とも言えない臭いが鼻をついた。
『うっ・・・・』
平然としているバルドの横でベアトレスはセルジオの姿とその臭いに口と鼻を両手で覆う。
「ポルデュラ様!セルジオ様は!ご無事でいらっしゃいますか?」
ベアトレスは泣き出さんとばかりにポルデュラへ問うた。
「・・・・」
ポルデュラはベアトレスの問いに直ぐに応じない。その間が更にベアトレスを不安にさせた。
「ポルデュラ様っっ!!!」
胸が張り裂けそうな痛みを覚え、ベアトレスは叫ぶ様にポルデュラの名を呼んだ。
サッ・・・・
バルドはセルジオに覆いかぶさる勢いのベアトレスの両肩を抱え、優しく諭す。
「ベアトレス様、ご心配ございません。
ポルデュラ様は、ただ今セルジオ様の手当を施しておいでです。
今しばらくお待ち下さい」
バルドの言葉にセルジオの胸の上で円を描き治癒の風と珠を降り注ぐポルデュラが口を開いた。
「案ずるな!お主ら2人の祈りが通じた故、お命に別状はない。
よい働きをしたの。今、風の珠をセルジオ様の胸の奥深くへ鎮めた。
ポルデュラの名で封印をした故、
ご自身では外せぬ・・・・もちろん、初代セルジオ様もな・・・・」
ポルデュラはベアトレスを安心させようと己の術を簡単に説明する。
「ベアトレス、悪いがセルジオ様の着替えと
寝所を整える用意をしてくれぬか。
セルジオ様がお目覚めの後、湯の用意もしてくれ」
ポルデュラは変わらずセルジオの身体へ向けて円を描いてはいるが治療の終わりが近づいているのか言葉数が増えてきた。
「はいっ!承知致しました!すぐにご用意致しますっ!」
ベアトレスは居ても立っても居られない思いだった。何かしていないとどうにかなりそうな自分を制することができなくなると感じていたのだ。
ペコリッ
ベアトレスはポルデュラへ軽く頭を下げると
セルジオの着替えとベッド周りの品を取りに隣室へ急ぎ向かった。
タッタタッ・・・・
パタンッ
ベアトレスが部屋を出るのを見届けるとバルドはポルデュラにセルジオの容態を確認する。
「ポルデュラ様、セルジオ様はお目ざめになりますでしょうか?」
セルジオはぐったりと横たわってはいるが、心なしか頬に色味がさしてきた様に見える。
「案ずるな!ベアトレスが戻る頃にはお目ざめになる。
それよりもバルド、この騒ぎ・・・マデュラが黙ってはおるまい。
封じたとはいえ、王家星の魔導士ダグマル様の予兆通り
『青き血が流れるコマンドール』がお出ましになり、
セルジオ様が生まれ変わりだと知れたのだ。
どんな手に出てくるか・・・・心しておけっ!」
王家の血筋ラドフォール公爵家の第三子であり、王家直属の魔導士であるポルデュラはエステール伯爵家とマデュラ子爵家の「因縁の始まり」を伝え聞いていた。
『内紛』の火種を断つ事もまた王家直属の魔導士の役割でもある。出方を違えればセルジオは王家とマデュラの双方から厄介な存在とされ、その身を更に危険にさらすことになる。
バルドはポルデュラとの会話を頭の中で反芻していた。
セルジオの手に巻かれた紐が食い込んでいた事、マデュラの刺客と思われる3人の男たち、『青白い炎』を目にした時、マデュラの乳母を殺めた時、躯をエステール伯爵家へ運び入れた時、西の門番に王都騎士団総長へ報告を頼んだ時、そして、今。
『何が一番、最善の策となろうか・・・・』
バルドはエステール伯爵家セルジオ騎士団第一隊長の従士であり、諜報活動を得意としていたかつての自分自身と怪我で退団を余儀なくされ、セルジオの従士として訓練施設での任についている今の自身と役割が変わっていない事に気付き口元が緩んだ。
『何も変わってはおらぬな・・・・
まだ、この身は役目を果す事ができる!』
ザアァァァァ・・・・
フワッフワッフワッ
ポルデュラは両掌を大きく天へ向けるとセルジオの身体全体を銀色の風の大きな珠で包みこんだ。バルドの様子を見ると言葉をかける。
「固まったようだの。して、いかがいたす」
当然、ポルデュラにも役割があるのだろうと言わんばかりにバルドに問うた。
バルドは静かに穏やかに頭の中で組み立てた『今の最善の策』を話し出した。
「ボルデュラ様はこのこと、ラドフォール公爵様へお伝え頂きたく、
そして、ラドフォール公爵様よりシュタイン王へ
今この場にて起りましたことをお伝え頂きたく存じます。
100年有余年前の『青き血が流れるコマンドール』は
王家直属魔導士ポルデュラ様の手にて封印をしたとお伝え下さいませ」
バルドは事実を迅速に王家へ伝える事でエステール伯爵家とマデュラ子爵家の間で『内紛』の兆しはない事を知らしめるための策を伝えた。そして続ける。
「私は我が主、
エステール伯爵ご当主ハインリヒ様に次の様にお願い致します。
『エステール伯爵家は遠く過ぎし日の事を
これにて終わらせた事をお約束する』と
シュタイン王からマデュラ子爵へお伝え頂きたいと」
バルドはシュタイン王国国内の事情にも明るかった。
『内紛』の火種はエステール伯爵家とマデュラ子爵家だけではない。歴史が積み重なればその分、ほころびは自ずと生まれるものだ。
ただ、どの家名も『勃発家』にはなりたくない。その為、『どこかが起こした内紛の兆し』を利用し、自らの手は汚さない事が最良の策だと考える。
バルドはその事を重々承知した上で『火種自体を消滅』する策に出た。
爵位は伯爵家であるエステールが上位である。爵位が上位の家名からの申し出があり、しかもシュタイン王直々に『過去からの因縁の終了宣言』を公にすれば心の内はどうであれ『表向き』は両家とも従わざるを得ない。
ポルデュラはバルドの策に大きくうなずいた。
「そなた!腕はなまっておらぬな。
従士であった頃よりも冴えているのではないか?」
ポルデュラは表情を緩ませバルドを称賛する。
「・・・・そうやもしれません。
騎士団を中心として物事を見ていた時よりも・・・・」
バルドは毎日が生きた心地がしなかったかつての経験を活かす場を与えられた今と怪我により騎士団を退団した事で肩の力が抜け視野が広がった自身をポルデュラの言葉で初めて認識した。
「ハインリヒ様の見る目は確かだの。そう思わぬか?」
ポルデュラはバルドの心が読めているかの様に笑顔を見せた。
「して、そなたら2人はいかが動くのだ?
それも考えているのであろう?」
ポルデュラは『火種の消滅』をした後の事を問うていた。
バルドは考えていた。今後、セルジオが訓練施設を出て無事に騎士団へ入団する7歳を迎える時まで。
そして、今この事態の後を無事に乗り切る策を。
「はい、いくつか策は思い浮かんでおります・・・・
が、全てはベアトレス様と私の役割をお互いに
しっかりと頭に叩き込む必要がございます。
それ故、ベアトレス様に『始まりのはなし』をお伝えした後となりましょう」
バルドは『青き血がながれるコマンドール』の出現前にベアトレスに伝えようとしていた話しを思い返していた。
「そうじゃの。では、その場に私も同席しよう。
これからのセルジオ様への事も話しておかねばなるまい」
ポルデュラは初代セルジオの悔恨の感情を『セルジオの心と共に封印』した事でのセルジオとの接し方をバルドとベアトレスに話しておく必要があると考えていた。
「お願いいたします。
特にベアトレス様はセルジオ様に
我が子以上のお気持ちを抱かれておいでです」
バルドはベアトレスの人となりをポルデュラへ伝える。
「そのこと、重々承知しておる。安心いたせ。
あの場に、封印までの場に留まっていられる度量はたいしたものだ」
ポルデュラはセルジオに向けていた両掌を止めた。
ゴソッ・・・・・
吐き出した乳と血液が固まり、ごわごわになったシーツの上でセルジオが手足を動かした。
「お目ざめになりましたか。
大事ございません故、ご安心くだされ」
ポルデュラが優しくセルジオに語りかける。
「セルジオ様っっ!」
バルドは目覚めたセルジオの乳と血で汚れた両頬を両掌で包むと深く青い瞳を安堵の表情で覗きこんだ。
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