とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第13話:氷の貴公子

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ラドフォール公爵家領はシュタイン王国領土の四分の一を占める。エステール伯爵領が開墾かいこんされた平地で農業、畜産等を統治しているのに対し、ラドフォール公爵領は山と森を統治していた。

山々から採掘さいくつされる鉄鉱石を鍛造たんぞうし剣等の武具やよろいや鐘等の製造をする。

また、岩塩が豊富に採れ、塩泉質の温泉が湧き出ていた。水晶の採掘場もありセルジオとエリオスがポルデュラから授かった月のしずくの名を持つロイヤルブルームーンストーンもラドフォール公爵領から採掘されたものだった。

森からの恵みは加工した木工、ハチミツや獣脂じゅうしからロウソクの製造をする。中でも燃料となる薪や木炭はシュタイン王国のほぼ全域をまかなっていた。

その広大な領地には王都にほど近い場所に領主が居住する城があり、国境線に位置する東西と北方の3か所に騎士団城塞が築かれていた。領国東方に位置する第一の城塞はラドフォール騎士団前団長ウルリヒ・ド・ラドフォールが治める土の城塞。

北方に位置する第二の城塞は現当主第三子カルラ・ド・ラドフォールが治める火焔かえんの城塞。
西方に位置する第三の城塞はラドフォール騎士団現団長アロイス・ド・ラドフォールが治める水の城塞であった。

ラドフォール公爵家は代々魔導士を多く輩出はいしゅつしているシュタイン王国建国以来の名家でもある。
その血筋はエステール伯爵家と同様、さかのぼるとシュタイン王国王家へと通じる。

また、ラドフォール公爵家の魔導士は土・火・水・風の四大精霊に仕え、それぞれの精霊に仕える魔導士は仕える精霊と同様の魔術の使い手と力を生まれながらに備えていた。

ラドフォール騎士団第三の城塞、水の城塞はリビアン山の中腹にあたる岩壁城塞だった。
エステール伯爵家領に一番近く、北の森と地続きとなるシュピリトゥスの森を抜けるとラドフォール騎士団第三の城塞がそびえ立つ。

リビアン山からの雪解け水が湧き出で滝に囲まれていることから水の城塞と呼ばれていた。
セルジオ達4人は、バラの噴水に魅入みいっていた。

バラの噴水の先には登ってきた石の階段、通ってきたアーチ形の木々が眼下がんかに見下ろせシュピリトゥスの森が果てなく続いている。

噴水と森の調和が何とも美しい景色を生みだしていた。
間欠泉かんけつせんとなっている噴水は三段階で水の吹き出しが調整されていた。

湧きあがる水の高さを変えることで、水が織りなす情景が演出されている。
日の光の当り具合で水の色も変化し、きることなく目をうばわわれる。

ピィィィィーーーー

ポルデュラの使い魔ハヤブサのカイの鳴き声に4人は我に返った。
セルジオは水の城塞までの道案内役はシュピリトゥスの森の精霊シルフからカイが与えられた役目であったことを思い出す。

鳴き声からカイを探すと噴水の上空じょうくう旋回せんかいし、セルジオ達の様子をうかがっている様だ。

セルジオはカイを呼ぶ。

「カイ!」

カイはセルジオの声に反応すると噴水上空を二度旋回せんかいし、滝の右奥に位置していた石の道へ飛んで行った。

カイの行く手を目で追う。
カイが向かった先には銀糸で縁取られた深紫色のマントをまとった3人の騎士がたたずんでいた。

カイは先頭にいた年若い騎士が差し出した左腕にフワリと舞い降りた。

スッ!

気配を全く感じさせない深紫色のマントをまとった3人の騎士に気付くとバルドとオスカーはその場でかしずいた。

ススッ!

セルジオとエリオスはバルドとオスカーがかしずくのを目にすると慌ててその場でかしずく。

「・・・・」

無言でかしずくセルジオの後ろからバルドがこっそり耳打ちした。

「セルジオ様、ご挨拶を」


「あっ!あいわかった・・・・」

「ふうぅぅぅ・・・・」

セルジオはその場で深く息を吐くと上体を正し声を発した。

「お初にお目にかかります。
エステール伯爵家第二子、セルジオ・ド・エステールにございます。
こちらに控えますのはローライド准男爵家第二子、エリオス・ド・ローライド。
並びにエステール伯爵家従士バルド、
ローライド准男爵家従士オスカーにございます」

「我らシュタイン王国騎士団総長より18貴族騎士団の友好のため、
準備の役目をたまわりましたセルジオ騎士団団長の
名代みょうだいとして、まかりこしました」

パサッ!

バルドが王都騎士団総長より預かった書簡をセルジオに渡す。

セルジオは書簡を受け取るとかしずいたまま両手で頭上に掲《かか》げた。

「こちらにございます書簡はこの度の我ら滞在に関します
シュタイン王国騎士団総長よりの念書ねんしょにございます。
お目通しの程、お願い存じます」

先頭せんとうにいた騎士はカイを左腕から右肩に乗せかえると左手をちゅうではらった。

ファサッ!!

キィィィンーーーー

冷たい風と共に冷たい音が響く。

ザァァァァッ!!!
パリッパリッパリッ!!!!

滝が氷つき、噴水の吹き出しも止まる。滝は氷の斜面を創り、3人の騎士はカイを右肩に乗せた騎士を先頭に氷の斜面を滑り降りた。

カッカッカッ・・・・

カイを右肩に乗せた騎士はセルジオに歩み寄ると頭上にかかげられた書簡しょかん両端りょうはたから両手で丁寧ていねいに持ち上げる。

「セルジオ騎士団団長名代、エステール伯爵家第二子、
セルジオ・ド・エステール殿とその守護の騎士・・・・・よ。
ラドフォール騎士団第三の城塞、水の城塞を治めるラドフォール公爵家第二子、
アロイス・ド・ラドフォールです」

「王都騎士団総長よりの書簡、確かに受け取りました。
セルジオ騎士団団長より滞在のことうかがっています。
ようこそ、我がラドフォール騎士団水の城塞へお越し下さいました。
心ゆくまで滞在して下さい」

サッ

アロイスは膝を折り、セルジオと目線を合わせる。

「セルジオ殿、
お会いしたいと願っておりました。願い叶いうれしゅうございます。
叔母おばポルデュラからもお話は常々伺っていました。
どうぞ、お顔をお上げください」

セルジオが顔を上げるとラドフォール公爵家の血統けっとうを現す銀色の髪、深い緑色の瞳を持つ美しい青年が微笑みを向けていた。

「言い伝え通りのお姿ですね。
『黄金に輝く髪、深く青い瞳、白く透き通る肌には青き血が流れる』
お小さいお身体を感じさせない光が発せられております」

アロイスはふっと笑うとエリオスへ目を向けた。

守護の騎士・・・・・エリオス殿、
我がラドフォール一族はあなた様に多大な御恩がございます。
初代セルジオ様と我が先祖オーロラと共に水の城塞を築かれ、
シュタイン王国騎士団のいしずえを創られました。
そして守護の騎士としてお命を散らした。
ラドフォールの一員として感謝申します。
今世は末永・・くお力添ちからぞえ下さい」

アロイスは左手を胸にあて騎士の挨拶をした。
続いてバルド、オスカーへ目を向ける。

「バルド殿、オスカー殿、お久しゅうございます。
以前、お会いした際はセルジオ騎士団第一隊長ジグラン殿の従士でいらした。
私は騎士団へ入団間もない見習みならい従士でした」

「お二人の鋭く研ぎ澄まされた眼差まなざしに強く憧れを抱いておりました。
我がラドフォール騎士団は主に魔導士で構成されております故、
戦い方も後方支援が主だったもの」

先陣せんじんを切り開き、敵を圧倒あっとうする
セルジオ騎士団とはこうも違うものかと感じておりました。
また、お会いできました事、この上なく喜びと感じます」

アロイスは4人に丁寧に挨拶をすると立ち上がった。

「それでは我が水の城塞をご案内致します」

アロイスはつき随っていた2人の騎士へバルドとオスカーから馬を預かるよう指示を出す。
2人のラドフォール騎士団の騎士は、バルドとオスカーからたずなを預かると凍りついた滝の左手へと姿を消した。

アロイスはセルジオらにニコリと微笑みを向ける。

「馬は近道ができませんから、我が配下の者にお任せ下さい。
我らは氷の階段を登ります」

ファサッ!!

先程と同じ様に左腕を右から左へ大きくはらう。

バシャアッ!

凍りついていた滝が再び水に戻った。

ファサッ!!

再び左腕を左から右へ空へ向けはらった。

ザバァッ!
ザァァァァッ!!!
パリッパリッパリッ!!!!

滝の水が割れたと思うとたちまち凍りつき、氷の階段が石の道へ向けてのびていた。

「さぁ、皆様、どうぞ。氷の階段を登り、我が水の城塞までまいります。
滑り止めを施してありますからご安心下さい」

そう言うとアロイスは氷の階段を登り始めた。
セルジオはバルドを見上げるとコソッと尋ねる。

「バルド・・・・
アロイス様は魔導士であり、騎士でもあるのか?
それとも騎士であって、魔術も使われるのか?」

バルドはセルジオと手をつなぎ、氷の階段を登りながら返答をした。

「はい、左様にございます。
ラドフォール公爵家は魔導士の御家柄おいえがらです。
アロイス様はラドフォール騎士団現団長であり、
水の魔導士でございます」

「水を自在に操り、水を凍らせ氷にもできれば、熱することもできます。
氷でこの階段ように造形物ぞうけいぶつをも創られます。
時には氷の彫刻ちょうこくで白鳥や城等を創られ、
王都へ献上けんじょうされることもございます。
その美しいお姿から『氷の貴公子』と誉高ほまれたかきお方です」

バルドの言葉に氷の階段を先に登るアロイスが振り向き、クスリッと笑う。

「バルド殿。
その様に大仰おおぎょうなことをセルジオ殿へ申されては困ります。
私の水の魔術の使い道がかような事でしか活かせぬだけにございます」

「叔母ポルデュラの様に人を活かす魔術であればよいのですが、
水の魔術は一瞬で大勢の者をあやめることができるもの。
使い方を間違わぬ様に制御せいぎょの訓練の為、
水鳥みずどりや城の彫刻を創っているだけにございます」

「それがたまたま国王の目にとまり、
冬の時期にだけ王都中央広場にて行きかう人々の目を
いやす様にとの仰せに従ったまでのこと。
王都への献上等と申されては困ります」

アロイスは優しくセルジオへ微笑みを向ける。

サアァァァァァーーーー

風が吹き、アロイスの銀色の髪が風になびいた。

ドキッ!

目の前にいるアロイスの姿がバラの噴水で見かけた少女に代わる。

真っ白な衣服と銀色の長い髪が風に揺れ、深い緑の瞳でセルジオへ微笑みを向けていた。

『セルジオ!見て!
ここから見上げると水の城塞まである18の滝が水のカーテンの様に見えるの。
なんと美しいのでしょう』

『石の道が滝の下を通るから城までは遠回りになるけれど
攻め入ることはできないわ。
セルジオとエリオスの言う通り、
水の城塞は鉄壁てっぺき岩城いわじろね。
そして、美しい・・・・この城がラドフォールの城の中で一番好きだわ』

少女は両手を広げ、空を見上げると微笑みながらクルクルと回っていた。
真っ白な衣と銀色の長い髪が風になびき、美しく輝いている。

セルジオの視線はアロイスを通り越し、少女が言う18の滝が創り出す水のカーテンへと向けられていた。ポツリッとつぶやく。

「本当だ・・・・
オーロラの申す通り、滝が水のカーテンの様だ。
所々虹が架かっているな・・・・」

ハッ!

セルジオは我に返り、目をこする。

「アロイス様、申し訳ございません。
アロイス様が・・・・その・・・・」

セルジオは自身の今の状態をアロイスへ伝えてよいか迷う。

アロイスは微笑むとセルジオの頬へそっと口づけをした。

ピクリッ!

騎士としては珍しい行いにセルジオは一瞬、身をちぢめる。

「セルジオ殿、我が先祖オーロラが道案内をしておりますか?
私の姿は先祖オーロラと生き写しなのです」

「ラドフォール公爵家領主の城にあります先祖の肖像画しょうぞうが
初めて目にした折は驚きました。
そこにはドレスをまとった私が微笑ほほえんでいたのですから・・・・」

アロイスは王都の方角を向くと遠い目をした。

「我ら騎士となる者は幼き頃より両親、兄弟、姉妹と離れ訓練施設で育ちます。
己の血統けっとう間近まぢかで感じることはありません・・・・」

小さくつぶやく様に話すとアロイスは再びセルジオの頬へ口づけをする。

「されば、私の姿を先祖の姿と見て下さる事は血統を感じる機会です。
セルジオ殿、感謝申します。叔母ポルデュラよりもセルジオ殿、
エリオス殿の状況は伺っています。
ご案じなさらず瞳に映りますありのままをお話し下さい」

アロイスは優しい眼差しをセルジオへ向ける。
セルジオはアロイスが口づけをした頬へ手をやりアロイスを見上げる。

「アロイス様、感謝申します。
アロイス様のお姿がバラの噴水の所で目にしました少女に見えました。
水の城塞まである18の滝が水のカーテンの様だと申され、
微笑みながら踊ってみえました」

「私は・・・・その・・・・その少女が出てくると・・・・
オーロラと申されるその方を目にすると胸が重たく感じるのです・・・・
ドキッ!とするのです・・・・苦しくなるのです・・・・」

セルジオは月のしずくの首飾りを左手で握りしめ、うつむいた。

アロイスは膝を折るとセルジオを抱き寄せる。

「初代セルジオ様は我が先祖オーロラを
それは、それは深くいつくしんでいたそうです。
魔女狩りにあったオーロラを、炎で焼かれるオーロラを助けに行くほどに。
そして、共に炎で焼かれるほどに」

「2人の灰はエステール伯爵領西の森のクルミの樹の
根元に埋められたと伝えられています。
それほどにいつくしんでいらした。
セルジオ殿はその時の記憶が残こられているのでしょう。
胸の重さは愛しみのあかしです」

アロイスはセルジオをギュッと抱きしめる。

「どんなに愛しもうとも初代セルジオ様は
先祖オーロラをこのように抱きしめることは叶いませんでした。
それは心からのたましいの愛しみです」

アロイスは抱き寄せるセルジオの頭に再び口づけをするとすっと立ち上がり、18の滝の方向へ身体を向けた。
両手を強く握りしめたたずむその背中は小刻こきざみに震えている。

セルジオはアロイスに近づきそっと左手を握った。

ハッ!

アロイスが振り向き、左手を握るセルジオを見る。セルジオは微笑み・・・を向けていた。

「アロイス様、
私は先程、エステール伯爵領を通る最中さなかに二度目の微笑みができたのです。
最初に微笑んだのは我が兄に初めてまみえ、バルドに抱えられていた時でした」

「二度目はエリオスとオスカーと共に敷物しきものの布を畳み終えた時です。
今、アロイス様へ三度目に微笑みました」

「アロイス様、
私は微笑みができたことで胸が暖かく感じるのです。
微笑みとは愛しむ心の現れではないかと思うのです。
私の心は初代様の無念と悔恨かいこんの感情と共に
己の奥底に封印されました」

「されど、心は封印されても微笑むことができたのです。
愛しむことができるのです。初代様はきっと・・・・
いえ、私はきっと、オーロラと微笑むことで愛しみ合っていたのだと思うのです。
今もこのように胸が苦しくなるのは・・・・
今もなお愛しんでいるのだと思います。ですから大事ございません!」

ホロリッ・・・・

アロイスの目から涙がこぼれ落ちる。
セルジオは再びアロイスへ微笑みを向けた。

「ふっ・・・・」

アロイスはふっと一つ息を漏らすとセルジオへ微笑を向ける。

「セルジオ殿・・・・
いえ、セルジオ殿と守護の騎士の皆様、お見苦しい所をお見せいたしました。
先祖オーロラの生まれ変わりはシュタイン王国第14王女オーロラ様と解っております。
されど・・・・私は・・・・先祖オーロラと姿が生き写しだからでしょうか・・・・」

「この城の主だからでしょうか・・・・時が重なることがあるのです。
まるで己がその時代にいたかのように時が重なることがあるのです。
初代セルジオ様もエリオス殿も先祖オーロラも水の城塞の建築に
関わる全ての方がよみがえったかのように瞳に映るのです」

「それはとても楽し気な光景で映るのです。
その先に待ち受ける非業ひごうな最後のことなど
微塵みじんも感じさせずに・・・・それは、それは楽し気に・・・」

ホロリッ・・・・

アロイスの目から再び涙がこぼれ落ちる。
エリオスはセルジオが握るアロイスの左手にそっと手を添える。

「アロイス様、
我らはエステール伯爵領北の森の門番に
シュピリトゥスの森へのかぎを開けて頂きました。
その際に北の森の門番の娘から北の森の精霊シルフィード様から
授かったと緑の光の珠を我ら2人の額へ移しました」

「その緑の光の珠は今と過去、過去と今の景色がみえるのです。
こちらへの道中にも我が主セルジオ様と私は道造りの情景や噴水の調整の情景を視ました。
さればアロイス様も精霊から今と過去、過去と今の情景が視える何かを
授かってみえるのではありませんか?」

エリオスはアロイスの瞳をじっと見つめる。アロイスはいつの頃から情景が視えるようになったのかを思い返す。

『・・・・あれは・・・・
肖像画を初めて見たときからだ。その後・・・・からだ』

「エリオス殿・・・・
そう言えば子供の頃、4、5歳の頃です。
今のセルジオ殿と同じ歳の頃です。
肖像画を初めて観たあの日、ポルデュラ様に連れられ、この城にきました」

アロイスはエリオスの言葉に目を閉じ幼い頃の記憶を辿たどる。

かすみがかかった記憶が徐々に色を帯び始めた。
ポルデュラに手を引かれた己の姿が見える。

「アロイス殿、よいか?
そなたもまたラドフォールの血を色濃く受け継ぐ者じゃ。
将来、そなたがこの城とシュピリトゥスの森を治めるのじゃぞ。そして・・・・」

アロイスは身体がフワリと浮き上がる感覚を覚える。
アロイスの左手を握るセルジオとエリオスがその動きにピクリと反応した。

「アロイス様?・・・・」

アロイスの身体は後ろへ倒れかかる。

「アロイス様!!!」

バルドとオスカーは倒れるアロイスへ慌てて駆け寄った。
アロイスの右肩に乗っていたカイがバサッと羽音を立て上空へ飛び立つ。

ピキッ!ピシッ!

「!!!!氷が!!」

セルジオは激しく裂目が入る氷の階段の音を聞き逃さなかった。
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