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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第78話 奴隷の城館4
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サラサラと優しく頭をなでられている感覚がする。
トクンッ トクンッ トクンッ・・・・
規則正しい心地よい響きが額に感じられた。
『・・・・私はこの響きを知っている・・・・どこでだったか・・・・』
トクンッ トクンッ トクンッ・・・・
『・・・・ああ、思い出した・・・・エリオスの鼓動だ・・・・バルトより優しい音・・・・』
「・・・・エリオスの音だ・・・・」
小さく呟くと頭をなでる手が止まった。
ガサッ・・・・
「・・・・セルジオ様?・・・・お目覚めですか?」
エリオスは自身の胸に額をつけているセルジオの顔を覗きこんだ。
「・・・・」
セルジオの瞼は閉じられている。
「・・・・寝言か・・・・この様な時だが・・・・よくお休みになれ、よかった」
エリオスは小さく息を吐くと再びセルジオの頭を優しくなでだした。
「・・・・エリオス、ここはどこだ?」
暫くするとセルジオは瞼をゆっくり開け、頭をなでるエリオスを見上げた。
ピタリッ!!
エリオスはセルジオの頭をなでる手を止める。
「お目覚になられましたか。どこか痛む所はありませんか?目は見えますか?呼吸は?・・・・息は難なく吸えますか?頭は?痛くありませんか?手足は動きますか?」
エリオスは自身の腕の中にすっぽりと納まっているセルジオに矢継ぎ早に質問をした。
セルジオは怪訝な表情を浮かべる。
「エリオス、ここがどこかと聞いている」
セルジオは身体を起こしながら先程より強めに問うた。
フワッ・・・・
ガシッ!!!
頭を起こすと身体がゆらゆらと揺られている様で慌てて左手をついた。
エリオスがセルジオの身体を支える。
「大事ございませんか?まだ、少し横になられていた方がよいかと思います」
フワリッ・・・・
セルジオをゆっくりと横たわせる。
「・・・・」
セルジオは無言でエリオスに身を委ねた。
身体を横たえ、同じ様に横になるエリオスの顔を改めて眺める。
「!!!エリオスっ!そなたっ!髪がっ!髪の色がっ!髪の長さもっ!どうしたのだっ!」
目を見開きエリオスの変化に大声をあげた。
「しぃぃぃ!!!セルジオ様、お声が大きいです。セルジオ様の頭髪も私と同じです。短く刈られ、萌黄色に染められています」
パパッ!!!
セルジオは己の頭に手をあてた。
短く刈られた髪の先がチクチクと刺さる様に感じる。
エリオスの着ている衣服が実兄フリードリヒが身に付けている着衣と同じ様子にふぅと一つ息を吐いた。
「どこかに囚われた・・・・と、言う事だな・・・バルトとオスカーが申していた通りになった・・・・」
部屋の様子を眺める。
見たこともない豪奢な造り、空が見える大きなガラス窓、天蓋付の大きなベッドに横たわっている。
部屋には甘い香りが漂っていた。
エリオスはセルジオが辺りを目視するのを終えた頃合いで相槌を打つ。
「はい、どこかの城館に連れてこられた様ですね。窓も扉も開きません。窓越しに外を見ましたが、周りは森に囲まれている様です」
エリオスはセルジオが目覚めるまでに確認した事を静かに話し出した。
「扉の外には見張が4人程いる様です。弱い血香が感じられます」
エリオスは上体を起こすとセルジオの身体をゆっくりと起き上がらせた。
「我らの姿が一見では解らぬ様に細工をされています。それと・・・・」
エリオスは自身の胸に左手をあて、セルジオの胸に右手をあてた。
「月の雫が、外されています」
「!!!」
セルジオは慌てて己の胸に手をあてた。
あるべきものがそこにはなかった。
「どうやって外されたのだっ?月の雫は己以外はポルディラ様の手でのみ外せるのではなかったのかっ?」
セルジオは驚いた表情をエリオスへ向ける。
「ふふっ・・・・」
エリオスはセルジオのその様子に微笑みを漏らした。
「!!!エリオスっ!何を笑っているのだっ!月の雫が奪われたのだぞっ!なぜ、笑うのだっ!」
セルジオは憤慨した表情を向けた。
「ふふふっ・・・・セルジオ様がその様に驚かれたり、怒ったお顔をされたり・・・・」
そっ・・・
セルジオの左頬に優しく触れる。
「この様な時ですが、セルジオ様のお顏が様々変わることが嬉しく・・・・つい・・・・ようございましたね。お気持ちがそのままお顏に出る様になりました」
そっとセルジオを引き寄せると抱きしめる。
「エリ・・・・」
セルジオがエリオスの名前を呼ぼうとするとエリオスはセルジオを抱きしめる腕に力を込めた。
力強い言葉を発する。
「セルジオ様、我らは何としても生きてセルジオ騎士団西の屋敷へ戻ります。いえ、戻らねばならぬのです。先程、赤茶色の髪の男が申していました。『この部屋の中では何をしていてもいい、この部屋の中は安全だ』と。なれば我らは何かしらの事が始まるまで、知力、体力を温存せねばなりません。日々の訓練と食事、そしてよく眠ること、このことを怠らずに致しましょう。今、我らにできることはその事より他ありません。生きて、生き抜いて、バルド殿もオスカーも共にセルジオ騎士団西の屋敷へ戻るのです」
ぎゅぅぅぅ
エリオスはセルジオをぎゅっと抱きしめた。
セルジオはエリオスの背中に両手を回すと負けじと両腕にギュッと力を込める。
「承知したっ!バルドとオスカーが申していた通りになったのだ。今はよくよく状況を受け入れる他ないということだな。エリオス、私は未熟だっ!どうか、導いてくれっ!頼む」
セルジオはエリオスの顔を見上げると力強く言い放つのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂き、ありがとうございます。
薬で眠らされていたセルジオも目を覚ましました。
窮地に陥っていてもセルジオの表情が豊かになっていることに喜びを感じるエリオス。
あ~なんて深い愛情なのでしょう。
バルドとは少し異なる感情でセルジオを見つめるエリオスの今後もご期待下さいませ。
バルドとオスカーの動きも気になる所です。
2人はどうしているのか?
次回もよろしくお願い致します。
トクンッ トクンッ トクンッ・・・・
規則正しい心地よい響きが額に感じられた。
『・・・・私はこの響きを知っている・・・・どこでだったか・・・・』
トクンッ トクンッ トクンッ・・・・
『・・・・ああ、思い出した・・・・エリオスの鼓動だ・・・・バルトより優しい音・・・・』
「・・・・エリオスの音だ・・・・」
小さく呟くと頭をなでる手が止まった。
ガサッ・・・・
「・・・・セルジオ様?・・・・お目覚めですか?」
エリオスは自身の胸に額をつけているセルジオの顔を覗きこんだ。
「・・・・」
セルジオの瞼は閉じられている。
「・・・・寝言か・・・・この様な時だが・・・・よくお休みになれ、よかった」
エリオスは小さく息を吐くと再びセルジオの頭を優しくなでだした。
「・・・・エリオス、ここはどこだ?」
暫くするとセルジオは瞼をゆっくり開け、頭をなでるエリオスを見上げた。
ピタリッ!!
エリオスはセルジオの頭をなでる手を止める。
「お目覚になられましたか。どこか痛む所はありませんか?目は見えますか?呼吸は?・・・・息は難なく吸えますか?頭は?痛くありませんか?手足は動きますか?」
エリオスは自身の腕の中にすっぽりと納まっているセルジオに矢継ぎ早に質問をした。
セルジオは怪訝な表情を浮かべる。
「エリオス、ここがどこかと聞いている」
セルジオは身体を起こしながら先程より強めに問うた。
フワッ・・・・
ガシッ!!!
頭を起こすと身体がゆらゆらと揺られている様で慌てて左手をついた。
エリオスがセルジオの身体を支える。
「大事ございませんか?まだ、少し横になられていた方がよいかと思います」
フワリッ・・・・
セルジオをゆっくりと横たわせる。
「・・・・」
セルジオは無言でエリオスに身を委ねた。
身体を横たえ、同じ様に横になるエリオスの顔を改めて眺める。
「!!!エリオスっ!そなたっ!髪がっ!髪の色がっ!髪の長さもっ!どうしたのだっ!」
目を見開きエリオスの変化に大声をあげた。
「しぃぃぃ!!!セルジオ様、お声が大きいです。セルジオ様の頭髪も私と同じです。短く刈られ、萌黄色に染められています」
パパッ!!!
セルジオは己の頭に手をあてた。
短く刈られた髪の先がチクチクと刺さる様に感じる。
エリオスの着ている衣服が実兄フリードリヒが身に付けている着衣と同じ様子にふぅと一つ息を吐いた。
「どこかに囚われた・・・・と、言う事だな・・・バルトとオスカーが申していた通りになった・・・・」
部屋の様子を眺める。
見たこともない豪奢な造り、空が見える大きなガラス窓、天蓋付の大きなベッドに横たわっている。
部屋には甘い香りが漂っていた。
エリオスはセルジオが辺りを目視するのを終えた頃合いで相槌を打つ。
「はい、どこかの城館に連れてこられた様ですね。窓も扉も開きません。窓越しに外を見ましたが、周りは森に囲まれている様です」
エリオスはセルジオが目覚めるまでに確認した事を静かに話し出した。
「扉の外には見張が4人程いる様です。弱い血香が感じられます」
エリオスは上体を起こすとセルジオの身体をゆっくりと起き上がらせた。
「我らの姿が一見では解らぬ様に細工をされています。それと・・・・」
エリオスは自身の胸に左手をあて、セルジオの胸に右手をあてた。
「月の雫が、外されています」
「!!!」
セルジオは慌てて己の胸に手をあてた。
あるべきものがそこにはなかった。
「どうやって外されたのだっ?月の雫は己以外はポルディラ様の手でのみ外せるのではなかったのかっ?」
セルジオは驚いた表情をエリオスへ向ける。
「ふふっ・・・・」
エリオスはセルジオのその様子に微笑みを漏らした。
「!!!エリオスっ!何を笑っているのだっ!月の雫が奪われたのだぞっ!なぜ、笑うのだっ!」
セルジオは憤慨した表情を向けた。
「ふふふっ・・・・セルジオ様がその様に驚かれたり、怒ったお顔をされたり・・・・」
そっ・・・
セルジオの左頬に優しく触れる。
「この様な時ですが、セルジオ様のお顏が様々変わることが嬉しく・・・・つい・・・・ようございましたね。お気持ちがそのままお顏に出る様になりました」
そっとセルジオを引き寄せると抱きしめる。
「エリ・・・・」
セルジオがエリオスの名前を呼ぼうとするとエリオスはセルジオを抱きしめる腕に力を込めた。
力強い言葉を発する。
「セルジオ様、我らは何としても生きてセルジオ騎士団西の屋敷へ戻ります。いえ、戻らねばならぬのです。先程、赤茶色の髪の男が申していました。『この部屋の中では何をしていてもいい、この部屋の中は安全だ』と。なれば我らは何かしらの事が始まるまで、知力、体力を温存せねばなりません。日々の訓練と食事、そしてよく眠ること、このことを怠らずに致しましょう。今、我らにできることはその事より他ありません。生きて、生き抜いて、バルド殿もオスカーも共にセルジオ騎士団西の屋敷へ戻るのです」
ぎゅぅぅぅ
エリオスはセルジオをぎゅっと抱きしめた。
セルジオはエリオスの背中に両手を回すと負けじと両腕にギュッと力を込める。
「承知したっ!バルドとオスカーが申していた通りになったのだ。今はよくよく状況を受け入れる他ないということだな。エリオス、私は未熟だっ!どうか、導いてくれっ!頼む」
セルジオはエリオスの顔を見上げると力強く言い放つのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂き、ありがとうございます。
薬で眠らされていたセルジオも目を覚ましました。
窮地に陥っていてもセルジオの表情が豊かになっていることに喜びを感じるエリオス。
あ~なんて深い愛情なのでしょう。
バルドとは少し異なる感情でセルジオを見つめるエリオスの今後もご期待下さいませ。
バルドとオスカーの動きも気になる所です。
2人はどうしているのか?
次回もよろしくお願い致します。
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