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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第84話 西領門の混乱
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「おいっ!!聞えないのかっ!!」
私兵が大声を上げた瞬間、
コケェーーーーーーー!!!
コッコッコケェーーーーーー!!!
バサッバサッバサッ!!!
8羽の鶏が荷台から飛び出した。
「あぁぁぁぁ!!!!大きな声に驚いて鶏が!!!」
トサッ!!!!
「まてぇーーーーー!!!!」
荷台から飛び下りたヨシュカがバタバタと鶏を追いかける。
「おお!!!こりゃ大変だっ!!!」
顔なじみの門番も四方八方に駆けだした鶏を追いかけた。
ザワッザワッザワッ!!!
二列に並び検分の順番を待っていた人と荷馬車が騒然となる。
ヒィヒヒィィィィン!!!
ガタッガタッガタッ!!!
コケェェェェェーーーー
バタバタバタッーーーー!!!
「早く捕まえろっ!」
「うわっ!!!うちの荷台に入ったぞっ!!」
コケェェェェェーーーー
バタバタバタッーーーー!!!
ヒィヒヒィィィィン!!!
ガタッガタッガタッ!!!
「うわぁぁぁぁ、馬がっ!馬がっ!!」
荷馬車の馬が足元を駆け抜ける鶏に驚き、後ろ足で立ち上がった。
バタバタバタッ!!!
「荷が!荷が!!!」
荷台から荷が落ちる。
ドカンッ!!
ドンッ!!!
「うわぁぁぁぁ」
馬が暴れて、荷馬車同士がぶつかる。
西領門は大混乱に陥った。
ブリーツは御者台に近づき、大声を上げた私兵に駆け寄る。
「騎士様、こいつは耳が聞こえないんだ。口もきけないっ!!一旦、馬から離れてっ!!!」
大混乱の発端となり、呆然と佇む私兵を荷馬車から離す。
フェルディは荷馬車の馬が暴れ出すまで、御者台から微塵も動かなかった。
「さっ!!早くっ!!!」
私兵を待機所まで連れ立ったブリーツは馬が暴れる荷馬車の御者台で振り落とされない様、取っ手にしがみついているフェルディの腕を掴んだ。
小声で耳打ちする。
『強く引きます。顔から転んで下さい』
グイッ!!!
ザザァァ!!
フェルディはブリーツに引かれるままに御者台で腰を浮かせると顔から地面に向けて飛び下りた。
ザザザザッッ・・・・
ブリーツは地面でうつ伏せになるフェルディの両腕を掴み、荷馬車から引き離す。
安全な場所まで退避させるとそっとローブをめくった。
フェルディの顏は鼻血と眉の上から滴り落ちる血で真っ赤に染まっていた。
『上出来です』
ブリーツは大声を出す。
「うわぁ、ごめんっ!!顔から落ちたかっ!」
ビリッ!!!
慌てる素振りで己の衣服の袖に歯を立て、引きちぎる。
引きちぎった衣服で眉の上から滴り落ちる血を拭うとフェルディの手を取り、傷口をぐっと押える様に促した。
「あんたはここにいるんだよっ!」
身振り手振りで今いる場所に留まる様に言い含める。
フェルディは傷口を押えながらコクンと静かに頷いた。
ブリーツは踵を返すとヨシュカを呼んだ。
「ヨシュカっ!!ヨシュカっ!!」
土埃が舞い、視界が遮られる。
「ゴホッ!!ヨシュカっ!!!どこにいるのっ!ヨシュカっ!!」
両手で土埃を払い鶏の声を頼りに進む。
「母さんっ!!こっちだっ!!」
ヨシュカは騒然とした輪の外側の街道脇で鶏を1羽抱えていた。
「ヨシュカっ!!」
ブリーツは駆け寄り、鶏ごとヨシュカを抱きしめた。
「よかったっ!ヨシュカっ!怪我はない?」
ヨシュカの身体を両手で辿り、怪我がないかを確かめる。
ズボンの膝が破れ、血が滲んでいた。
ビリッ!!
ブリーツはもう片方の袖も引きちぎると破れたヨシュカのズボンに巻き付ける。
「痛かったねっ!」
ヨシュカの顔を見上げる。
『よくやったっ!お前、腕を上げたなっ』
口元を動かさずに小声でヨシュカを称賛した。
ヨシュカは大事そうに抱える鶏に力を込め、心なしか嬉しそうに顔をほころばせた。
「よしっ!通れっ!!」
陽が傾き、辺りが薄暗くなる頃、ようやく事態は収拾した。
荷馬車が大破した商会、積荷が使い物にならなくなった商会、怪我を負った者は西領門の待機所で留まることとなった。
待機所は門番や騎士団従士などが寝泊まりできる宿泊所がある。
通常は領民が使う事はできないが、事態の発端が男爵の私兵であったことから特別に許された。
被害が少なかった商会や怪我人以外は、検分もそこそこに西領門を通された。
大混乱を引き起こした私兵は、待機所で打ちひしがれていた。
領門通過時に事故が起こった場合、荷や荷馬車の損害、怪我人の治療などは、領主貴族が負担することになっている。
クリソプ男爵の私兵は、仕える主人の形相が目に浮かんでいた。
ガタッガタッガタッ・・・・
ガタッガタッガタッ・・・・
「どう、どう・・・・」
ガタンッ!!
とっぷりと陽が暮れた頃、荷台の四方に明りを灯し、カリソベリル伯爵領ベリル村にフェルディを乗せた荷馬車は到着した。
ブリーツとヨシュカが荷の後始末をしている間、フェルディは待機所で西領門の門番に傷の手当てを受けた。
出血の割には眉の上の傷は浅く、鼻血もほどなくして止まった。
滴り落ちる血液が目に入らない様に顏半分を包帯で覆われ、見た目は痛々しくある。
ガタッガタッ!!!
トサッ!!
ヨシュカは荷台から飛び降りると御者台でブリーツの隣に座るフェルディに駆け寄った。
「お客人、俺らは先に宿に入ろう。母さんは荷馬車を倉庫に入れて、馬留めをするから、ここで下りてくれ」
ヨシュカは薄暗い中でフェルディを見上げ、左手を差し出した。
「・・・・」
顏半分に包帯を巻いたフェルディは無言でヨシュカを見下す。
慣れない荷馬車にほぼ丸一日揺られ、怪我を負い休む間もなくクリソプ男爵領西領門を後にした。
フラッ・・・・
ヨシュカの手を取ろうと身体の向きを変えた所で、視界がゆらりと歪んだ。
ガシッ!!!
「フェルディ様、足元お気をつけください」
ブリーツがフェルディの傾く身体を咄嗟に支える。
「ヨシュカ、宿の主人を呼んでおいで。怪我人がいるから手を貸してもらえるようお願いしてくるんだ」
フェルディの身体を支えながらヨシュカに人を呼んでくる様に言う。
「わかった。お客人、ちょっと待ってて」
タタタタタッ・・・・
ヨシュカは、一目散へ明りの灯る宿へ走っていった。
ガサッ!!
ポンッ!!
ブリーツは御者台の脇にある水筒を取るとフェルディの口元に運んだ。
「フェルディ様、水です。口をすすいで下さい」
フェルディはブリーツに言われるまま、差し出された水筒から口に水を含むと二三回、口の中で転がし、ペッと吐き出した。
「さっ、次は水を飲んで下さい」
ブリーツは再び水筒を傾ける。
コクンッ・・・・
乾き、張りついていた喉が潤う。
「さっ、もう一口」
コクンッ、コクンッ・・・・
ゴクッゴクッゴクッ!!!
フェルディはゴクゴクと喉を鳴らしてブリーツが傾ける水筒から水を飲んだ。
スッ・・・・
ブリーツは頃合いを見計らい、水筒を戻す。
「一旦、ここまでにいたしましょう。手伝いの者がきましたら宿で休んで下さい。湯浴みの用意をしているはずですから」
ブリーツはフェルディの背中をさする。
シュタイン王国の内紛の火種となりうる事態を回避し、無事にクリソプ男爵領からの脱出に成功した。
カリソベリル騎士団第一隊長である事を隠すためとはいえ、荷運びの衣服を身に着け、検問をぬけるために顔面から転び、怪我を負った。
騎士として想像だにしない今日一日の出来事に心身共にどれほどの傷を負ったであろう。
ブリーツは生まれながらにして騎士である事が定められている貴族騎士団の団員を快くは思っていなかった。
しかし、フェルディと行動を共にしたことで王国の安寧のために役目を果たすことになんら変わりはないのだと感じていた。
『あるとすれば、役割が異なるだけだな』
同志を得た思いでフェルディの背中をさする。
パタパタパタッ・・・・
「母さんっ!宿の主人を連れてきたよ」
ヨシュカが戻ってきた。
「ブリーツさん、怪我人がいるそうですね」
宿の主人は2人の男衆に担架を持たせ歩み寄る。
「ご主人、到着が遅くなってすまないね。ラルフの親戚でね。耳と口が不自由なんだ。話す時は正面から話してやってくれるかい?」
宿の主人は2人の男衆にフェルディを御者台から下すように指示する。
「わかりました。これはっ!ひどい怪我をしている。まずは傷口を洗いましょう」
「ご主人、わるいね。あたしは荷馬車を倉庫に収めてくるから後を頼めるかな?」
「はい、わかりました。倉庫は三番を使って下さい。厩も三番です」
「わかった。それじゃあ、頼むね」
ガタッガタッガタッ・・・・
ガタッガタッガタッ・・・・
ブリーツは真っ暗になった道を慎重に荷馬車を進めるのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
無事に!クリソプ男爵領を抜けました。
あ~よかった。
フェルディの変装ぶりも大したものです。
自尊心の高い騎士であればこそ、己の使命のためには全てをなげうつ覚悟がある。
参りました。
物語は、いよいよ、セルジオとエリオスが獅子との戦いに挑むシーンへ入ります。
次回もよろしくお願いします。
私兵が大声を上げた瞬間、
コケェーーーーーーー!!!
コッコッコケェーーーーーー!!!
バサッバサッバサッ!!!
8羽の鶏が荷台から飛び出した。
「あぁぁぁぁ!!!!大きな声に驚いて鶏が!!!」
トサッ!!!!
「まてぇーーーーー!!!!」
荷台から飛び下りたヨシュカがバタバタと鶏を追いかける。
「おお!!!こりゃ大変だっ!!!」
顔なじみの門番も四方八方に駆けだした鶏を追いかけた。
ザワッザワッザワッ!!!
二列に並び検分の順番を待っていた人と荷馬車が騒然となる。
ヒィヒヒィィィィン!!!
ガタッガタッガタッ!!!
コケェェェェェーーーー
バタバタバタッーーーー!!!
「早く捕まえろっ!」
「うわっ!!!うちの荷台に入ったぞっ!!」
コケェェェェェーーーー
バタバタバタッーーーー!!!
ヒィヒヒィィィィン!!!
ガタッガタッガタッ!!!
「うわぁぁぁぁ、馬がっ!馬がっ!!」
荷馬車の馬が足元を駆け抜ける鶏に驚き、後ろ足で立ち上がった。
バタバタバタッ!!!
「荷が!荷が!!!」
荷台から荷が落ちる。
ドカンッ!!
ドンッ!!!
「うわぁぁぁぁ」
馬が暴れて、荷馬車同士がぶつかる。
西領門は大混乱に陥った。
ブリーツは御者台に近づき、大声を上げた私兵に駆け寄る。
「騎士様、こいつは耳が聞こえないんだ。口もきけないっ!!一旦、馬から離れてっ!!!」
大混乱の発端となり、呆然と佇む私兵を荷馬車から離す。
フェルディは荷馬車の馬が暴れ出すまで、御者台から微塵も動かなかった。
「さっ!!早くっ!!!」
私兵を待機所まで連れ立ったブリーツは馬が暴れる荷馬車の御者台で振り落とされない様、取っ手にしがみついているフェルディの腕を掴んだ。
小声で耳打ちする。
『強く引きます。顔から転んで下さい』
グイッ!!!
ザザァァ!!
フェルディはブリーツに引かれるままに御者台で腰を浮かせると顔から地面に向けて飛び下りた。
ザザザザッッ・・・・
ブリーツは地面でうつ伏せになるフェルディの両腕を掴み、荷馬車から引き離す。
安全な場所まで退避させるとそっとローブをめくった。
フェルディの顏は鼻血と眉の上から滴り落ちる血で真っ赤に染まっていた。
『上出来です』
ブリーツは大声を出す。
「うわぁ、ごめんっ!!顔から落ちたかっ!」
ビリッ!!!
慌てる素振りで己の衣服の袖に歯を立て、引きちぎる。
引きちぎった衣服で眉の上から滴り落ちる血を拭うとフェルディの手を取り、傷口をぐっと押える様に促した。
「あんたはここにいるんだよっ!」
身振り手振りで今いる場所に留まる様に言い含める。
フェルディは傷口を押えながらコクンと静かに頷いた。
ブリーツは踵を返すとヨシュカを呼んだ。
「ヨシュカっ!!ヨシュカっ!!」
土埃が舞い、視界が遮られる。
「ゴホッ!!ヨシュカっ!!!どこにいるのっ!ヨシュカっ!!」
両手で土埃を払い鶏の声を頼りに進む。
「母さんっ!!こっちだっ!!」
ヨシュカは騒然とした輪の外側の街道脇で鶏を1羽抱えていた。
「ヨシュカっ!!」
ブリーツは駆け寄り、鶏ごとヨシュカを抱きしめた。
「よかったっ!ヨシュカっ!怪我はない?」
ヨシュカの身体を両手で辿り、怪我がないかを確かめる。
ズボンの膝が破れ、血が滲んでいた。
ビリッ!!
ブリーツはもう片方の袖も引きちぎると破れたヨシュカのズボンに巻き付ける。
「痛かったねっ!」
ヨシュカの顔を見上げる。
『よくやったっ!お前、腕を上げたなっ』
口元を動かさずに小声でヨシュカを称賛した。
ヨシュカは大事そうに抱える鶏に力を込め、心なしか嬉しそうに顔をほころばせた。
「よしっ!通れっ!!」
陽が傾き、辺りが薄暗くなる頃、ようやく事態は収拾した。
荷馬車が大破した商会、積荷が使い物にならなくなった商会、怪我を負った者は西領門の待機所で留まることとなった。
待機所は門番や騎士団従士などが寝泊まりできる宿泊所がある。
通常は領民が使う事はできないが、事態の発端が男爵の私兵であったことから特別に許された。
被害が少なかった商会や怪我人以外は、検分もそこそこに西領門を通された。
大混乱を引き起こした私兵は、待機所で打ちひしがれていた。
領門通過時に事故が起こった場合、荷や荷馬車の損害、怪我人の治療などは、領主貴族が負担することになっている。
クリソプ男爵の私兵は、仕える主人の形相が目に浮かんでいた。
ガタッガタッガタッ・・・・
ガタッガタッガタッ・・・・
「どう、どう・・・・」
ガタンッ!!
とっぷりと陽が暮れた頃、荷台の四方に明りを灯し、カリソベリル伯爵領ベリル村にフェルディを乗せた荷馬車は到着した。
ブリーツとヨシュカが荷の後始末をしている間、フェルディは待機所で西領門の門番に傷の手当てを受けた。
出血の割には眉の上の傷は浅く、鼻血もほどなくして止まった。
滴り落ちる血液が目に入らない様に顏半分を包帯で覆われ、見た目は痛々しくある。
ガタッガタッ!!!
トサッ!!
ヨシュカは荷台から飛び降りると御者台でブリーツの隣に座るフェルディに駆け寄った。
「お客人、俺らは先に宿に入ろう。母さんは荷馬車を倉庫に入れて、馬留めをするから、ここで下りてくれ」
ヨシュカは薄暗い中でフェルディを見上げ、左手を差し出した。
「・・・・」
顏半分に包帯を巻いたフェルディは無言でヨシュカを見下す。
慣れない荷馬車にほぼ丸一日揺られ、怪我を負い休む間もなくクリソプ男爵領西領門を後にした。
フラッ・・・・
ヨシュカの手を取ろうと身体の向きを変えた所で、視界がゆらりと歪んだ。
ガシッ!!!
「フェルディ様、足元お気をつけください」
ブリーツがフェルディの傾く身体を咄嗟に支える。
「ヨシュカ、宿の主人を呼んでおいで。怪我人がいるから手を貸してもらえるようお願いしてくるんだ」
フェルディの身体を支えながらヨシュカに人を呼んでくる様に言う。
「わかった。お客人、ちょっと待ってて」
タタタタタッ・・・・
ヨシュカは、一目散へ明りの灯る宿へ走っていった。
ガサッ!!
ポンッ!!
ブリーツは御者台の脇にある水筒を取るとフェルディの口元に運んだ。
「フェルディ様、水です。口をすすいで下さい」
フェルディはブリーツに言われるまま、差し出された水筒から口に水を含むと二三回、口の中で転がし、ペッと吐き出した。
「さっ、次は水を飲んで下さい」
ブリーツは再び水筒を傾ける。
コクンッ・・・・
乾き、張りついていた喉が潤う。
「さっ、もう一口」
コクンッ、コクンッ・・・・
ゴクッゴクッゴクッ!!!
フェルディはゴクゴクと喉を鳴らしてブリーツが傾ける水筒から水を飲んだ。
スッ・・・・
ブリーツは頃合いを見計らい、水筒を戻す。
「一旦、ここまでにいたしましょう。手伝いの者がきましたら宿で休んで下さい。湯浴みの用意をしているはずですから」
ブリーツはフェルディの背中をさする。
シュタイン王国の内紛の火種となりうる事態を回避し、無事にクリソプ男爵領からの脱出に成功した。
カリソベリル騎士団第一隊長である事を隠すためとはいえ、荷運びの衣服を身に着け、検問をぬけるために顔面から転び、怪我を負った。
騎士として想像だにしない今日一日の出来事に心身共にどれほどの傷を負ったであろう。
ブリーツは生まれながらにして騎士である事が定められている貴族騎士団の団員を快くは思っていなかった。
しかし、フェルディと行動を共にしたことで王国の安寧のために役目を果たすことになんら変わりはないのだと感じていた。
『あるとすれば、役割が異なるだけだな』
同志を得た思いでフェルディの背中をさする。
パタパタパタッ・・・・
「母さんっ!宿の主人を連れてきたよ」
ヨシュカが戻ってきた。
「ブリーツさん、怪我人がいるそうですね」
宿の主人は2人の男衆に担架を持たせ歩み寄る。
「ご主人、到着が遅くなってすまないね。ラルフの親戚でね。耳と口が不自由なんだ。話す時は正面から話してやってくれるかい?」
宿の主人は2人の男衆にフェルディを御者台から下すように指示する。
「わかりました。これはっ!ひどい怪我をしている。まずは傷口を洗いましょう」
「ご主人、わるいね。あたしは荷馬車を倉庫に収めてくるから後を頼めるかな?」
「はい、わかりました。倉庫は三番を使って下さい。厩も三番です」
「わかった。それじゃあ、頼むね」
ガタッガタッガタッ・・・・
ガタッガタッガタッ・・・・
ブリーツは真っ暗になった道を慎重に荷馬車を進めるのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
無事に!クリソプ男爵領を抜けました。
あ~よかった。
フェルディの変装ぶりも大したものです。
自尊心の高い騎士であればこそ、己の使命のためには全てをなげうつ覚悟がある。
参りました。
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次回もよろしくお願いします。
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