とある騎士の遠い記憶

春華(syunka)

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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~

第85話 合流

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「三日程、商会が運営している宿屋にお泊り下さい。そうすれば傷も癒えましょう」

カリソベリル騎士団第一隊長フェルディをクリソプ男爵領から無事に脱出させた翌日、ブリーツはフェルディを伴いカリソベリル伯爵領商業部にあるラルフ商会に来ていた。

当初の予定では、このままカリソベリル騎士団城塞へフェルディを送り届けることとしていた。

しかし、クリソプ男爵が追手として私兵を差し向けた事で予定を変更せざるをえなくなった。

カリソベリル伯爵領に入ったとはいえ、このまま騎士団城塞へ向かうには危険だと判断したのだ。

クリソプ男爵西の領門を通る際に負った傷も昨日の今日では癒えていない。

ブリーツは、あくまで『傷が癒えるまで』と念を押した。

フェルディは、あれから一言も口を開こうとはしなかった。

自領に入ったものの、騎士団城塞に戻るまでは他者から正体を悟られる訳にはいかないと考えているのだろう。

ブリーツは置かれている状況と役目に徹するフェルディの姿勢に貴族騎士団に対する自身の考えが徐々に変化していると感じていた。

ブリーツもまた、ラドフォール騎士団、影部隊シャッテンであることをフェルディに悟られる訳にはいかない。

行動を共にすることが続けば、正体は知れぬとしても何者かと疑念は抱かれるだろう。

ブリーツは、荷出しの待機部屋でテーブルをはさみ宿屋に留まるようフェルディに切り出した。

「・・・・」

フェルディは、言葉を発する事なくブリーツの顔をじっと見つめる。

荷出し準備を終えた他の荷運び達が待機部屋を出ていくとブリーツとフェルディは二人きりとなった。

フェルディは辺りの様子を窺う。

待機部屋に他に誰もいないことを確認すると静かに口を開いた。

「ブリーツ殿、一刻も早く騎士団城塞へ向かわねばならぬのです」

フェルディはカリソベリル騎士団団長フレイヤに事の次第を早急に伝える必要があると考えていた。

「それに・・・・クリソプ男爵居城の南門を通った際、近習の者達が『騎士が不始末を起こした』と申していました。このことが、王国にわざわいを招くのではと案じているのです。詳しくは申せませぬが、内紛の火種となりはしないかと・・・・」

フェルディの目からは焦りの色が感じられた。

カリソベリル騎士団団長フレイヤへはラドフォール騎士団団長アロイスから既に事の次第が使い魔で知らされている。

だが、その事をフェルディに伝えればラルフ商会がラドフォール騎士団の影部隊シャッテンの隠れみのである事がうかがい知れてしまう。

ブリーツはあくまでクリソプ男爵領ラルフ商会主人のベンノから指示されたことを前提として話しを進めた。

「その事ならばご心配には及びません。道中に不測の事態が起き、『積荷』に損害が出た場合はラルフ商会が責任を持って対処することが我が商会のモットーです」

フェルディは顔を上げ、ブリーツを見つめる。

「フェルディ様は、あたしらがお預かりした大切な『積荷』です」

ブリーツはニコリと微笑んだ。

「クリソプ男爵領を抜ける際、一部の『積荷』が破損しました。修理のためカリソベリル伯爵領ラルフ商会に三日ほど留置くとカリソベリル伯爵領ラルフ商会主人より騎士団団長様へ言伝ことづてがされています」

「クリソプ男爵領ラルフ商会主人のベンノよりも『よくよく積荷の安全に配慮すること』と申し付かっています。ラルフ商会は王国一、信用を誇る商会です。ご安心いただき、傷を癒して下さいましな」

この時代、荷と共に最新の情報を運ぶ事が荷運び商会の腕の見せ所だった。

それも、依頼主の状況に合わせたものでなくては意味をなさない。

フェルディはほっとため息をついた。

「なるほど・・・・王国一の信用ですか・・・・少し冷静になれば解りますね。今、ラルフ商会の荷馬車が騎士団城塞に向かえば、争いの火種を城塞へ持ち込むことになりますね・・・・私は、何と浅はかな・・・・ブリーツ殿、感謝申します」

フェルディはブリーツに頭を下げた。

「!!!よして下さいなっ!フェルディ様っ!あたしらは『積荷』を最優先に考えているだけ。頭を上げて下さいなっ!」

ブリーツは慌てる。

フェルディがカリソベリル騎士団第一隊長だとは知らないことになっているブリーツだが、話し方からフェルディが何者かを察している口ぶりで言葉をつないだ。

「あたしらは様々な場所に荷を届けます。そして、様々な人に会う。だから、話し方や仕草から大方のことはわかるんですよ。フェルディ様は騎士様であるとお見受けしました。あたしらの様な者に騎士様が頭を下げるなど、とんでもないことです。頭を上げて下さいましな」

ブリーツは穏やかな声音をフェルディへ向けた。

フェルディと目が合うとニコリと微笑む。

「そうか。私が何者か解るのだな・・・・ブリーツ殿はとは思えぬな」

フェルディは意味深な眼をブリーツに向ける。

「荷馬車の手綱さばき、クリソプの領門を抜ける際の手際のよさ、事を成し遂げる度胸と裁量、荷運びとは・・・・到底思えぬ」

ブリーツの内面を探る様にじっと見つめる。

ブリーツはにこやかな微笑みを向けつつ大げさに驚いてみせた。

「あたしが荷運びでなけりゃ、何に見えるんです?ラルフ商会の荷運びは皆、こんなものですよ。王国中回りますしね、他国にも行きますから大抵のことは慣れるんです」

ブリーツはわははと笑って見せた。

話しを元に戻す。

「フェルディ様がお泊りになる宿屋はここの主人モニカが手配しています。後のことは全てモニカに頼んでおきますんで、何でも言いつけて下さいませね」

フェルディはコクンと頷き呼応した。

「承知した。ブリーツ殿はもう行かれるのか?」

ブリーツのこの先を気に掛ける。

「はい、荷積みが終わったらすぐに。そろそろ・・・・ヨシュカが呼びにくるでしょう」

ガタンッ!

ブリーツはそう言うと待機部屋の窓辺に近づいた。

ヨシュカが荷積みの人足たちにあれこれ指示をしているのが見える。

帳簿と荷の数を合わせているようだ。

ブリーツに気が付くとヨシュカは手を振った。
荷積みが終わった合図だった。

ブリーツは窓越しに頷く。
後ろを振り返るとフェルディも隣の窓からヨシュカを見ていた。

「頼もしいご子息だな。あの年で周りをよく観ている。騎士団に置いても・・・・」

フェルディはブリーツに目を向ける。

「いや、王国一の荷運び商会の後継を担う者だな。ブリーツ殿、改めて礼を申す。私をクリソプよりくれ、感謝申す」

フェルディはブリーツに微笑みを向けた。

「・・・・いえ・・・・」

ブリーツは一言、呼応する。

「では、後はモニカに頼んでおきます。フェルディ様、お達者で」

「ああ、ブリーツ殿も息災でな」

ブリーツは頭を下げると待機部屋を後にした。

ヨシュカが待機部屋の窓越しから見ているフェルディに大きく手を振った。

フェルディはニコリと微笑みを向けると左腕を胸の前にあて、小さく頭を下げた。



ヨシュカがガタガタと荷台に乗り込むと荷馬車はラルフ商会の門をくぐっていった。

ガタンッ!!
パサッ!!

ラルフ商会の門を荷馬車がくぐり抜けるとヨシュカが荷台から御者台に顔を出した。

「ブリーツ、ラルフから指示があった積荷は全部積んだよ。あんなに沢山の麻袋を何に使うんだろう?まぁ、軽くていいけどさっ」

「ヨシュカ、少し急ぐぞ。お前、御者台に乗れ。悪いがクリソプに戻るまでは読書はなしだ。それと、振り落とされない様にベルトを付けてくれ」

「そんなに急ぐの?ラルフからの伝令、なんだって?」

ヨシュカは御者台に備え付けてあるベルトを着ける。

「話はクリソプに着いてからだ。馬と車輪がもてば夜通し走るからな。お前は眠くなったら寝てろ。馬車を停める時に起こしてやる」

ブリーツはつい先程とは打って変わって厳しい眼をしていた。

「・・・・わかった」

ヨシュカは静かに呼応した。



クリソプ男爵領、東に位置する商業部の繁華街を抜け南に進む街道から脇道にそって一台の荷馬車が進んでいた。

荷馬車にかかる紋章は8頭の狼に引かれる馬車、ラルフ商会の荷馬車だ。

暫くすると木々が繁る森が行く手を遮り、荷馬車は静かに停止した。

パサッ!!
ガタンッ!!!

荷馬車の荷台から下りてきたのは銀色の長い髪をなびかせ、饗宴用の衣服を纏ったラドフォール騎士団団長アロイスだった。

行き止まりの先、森に向けて声を上げる。

「ラルフっ!到着したぞ」

ザッザザッ!!!

アロイスの声と共に風が吹いた。生い茂る木々が左右に横たわり道をつくる。

サッ!!

「アロイス様、お待ち申し上げておりました」

木々が開けた先に濃紺に金色の縁取りがされた豪奢な四頭立ての馬車が停まっていた。

正装した御者の装いのラドフォール騎士団、影部隊シャッテン隊長のラルフがかしづく。

「すまぬな。予定より少し遅れた」

アロイスは馬車へ歩み寄った。

ギィィィ・・・・・
トンットンッ・・・・

ラルフが扉を開けるとアロイスは軽やかに馬車に乗り込んだ。


「アロイス様、この度もまた、数々のご尽力感謝申します」

アロイスが乗り込んだ馬車に既に2人の影があった。

慣れない饗宴用の衣服を纏ったバルトとオスカーだ。

「いや、全てはシュタイン王国の安寧のため。水の精霊ウンディーネ様の身心に従ったまでです。私への感謝など不要にございますよ。バルト殿、オスカー殿」

アロイスがにこやかに呼応する。

セルジオとエリオスが連れ去られてから三日目。

昼を少し回った所で、アロイス、バルト、オスカーは合流をした。

今宵、クリソプ男爵領、東の館で催される饗宴に向かうためだ。

饗宴の主催者と招待客はラドフォール騎士団、影部隊シャッテンが既に把握をしていた。

主催者は隣国シェバラル国貴族、クレメンテ・ラ・ルチル伯爵だった。

今から五年程前、オプシティ河が氾濫した際、クリソプ男爵が自領に招いた家門で、現当主の実妹がシュタイン王国ベリル男爵に嫁いでいる。

そして、ベリル男爵先代当主の第三子がクリソプ男爵現当主の妻だった。

クリソプ男爵とは他国ではあるが親戚筋の家門ということになる。

ルチル伯爵は五年前に避難先として招かれた東の館を今では、まるで別邸の様に使い周辺諸国の関わりのある貴族を招いては饗宴を主催している。

表向きは。

その実、奴隷売買と麻薬売買の取引の場として使われていた。

奴隷売買と麻薬売買はシュタイン王国、8の禁忌の内の二つ。

クリソプ男爵は事が露呈しない様、招待客へ3つの鍵となる取決めをしていた。

まず、招待状はクリソプ男爵領、東の館で催される饗宴専用で、あらかじめどこの国の誰なのかが解る魔術が施されていた。

次に他国貴族が饗宴に参席する際にはシュタイン王国へ入国する王国門を『東門』に限定した。

王国東門は、東を所領とする4男爵家門が4年に一度の周期で交代制で警護の役目を担っている。

今年はクリソプ男爵の当番だった。通常は貴族騎士団がそれそれの所領門と王国門の警護にあたる。

しかし、クリソプ男爵領は自領の北門と王国門の警護は男爵の私兵を警護にあたらせていた。

ここで、通行証と共に専用の招待状を提示するとどこの国の誰が入国したかが解る仕掛となっている。

最後は招待客は全て仮面をつけ、饗宴場へ入ること。

これは、招待客同士の秘密を守るためでもあった。

ラドフォール騎士団、影部隊シャッテン隊長ラルフは、クリソプ男爵が取決めをしている3つの鍵を抜かりなく準備していた。

御者に扮したラルフがアロイスの後に続き、馬車へ乗り込む。

「こちらの招待状をお持ちください」

家門の紋章も宛名もない、淡い灰色の封筒を渡す。

カサッ・・・・

アロイスは静かに封筒を開け、招待状を取り出した。

血の色を連想させる真っ赤なインクで名前と思しき3行の文字が書かれていた。

「本日、アロイス様、バルト殿、オスカー殿は北の隣国ランツ国の豪商にございます」

ラルフは3人の顔を見ると饗宴に参席するための3つの鍵と入館の説明を始めた。

「既にこの馬車は、王国東門を通りました。招待状の色が淡い灰色となっていますのは、東門を通過した証にございます。これにて専用の招待状を持参すること、王国東門から入国することの3つの鍵の内の2つは事足りております」

アロイスの手元にある灰色の封筒を指し示す。

「東の館城門に到着しましたら馬車の窓から
この招待状を門番にお渡し下さい。招待状は門番が手元に留めおきます。渡すだけで構いません」

ラルフは何度も饗宴に参席したことがある様な口ぶりで説明を続けた。

パカッ!!

椅子の上に置いていた木箱を開ける。

「こちらの仮面を着けて頂きます。東の館を退館するまで外さぬ様になさって下さい」

木箱の口をアロイス達に向け並べられている仮面をそれぞれ手に取らせる。

「万が一に戦闘となりましても、仮面が外れぬ様、革紐に細工をしてあります」

眼鏡の様に両耳に掛けられる革紐と後頭部で結ぶ革紐がついていた。

サッサッ・・・・

アロイスは早速、仮面を装着する。

バルトとオスカーもアロイスに倣い、仮面を装着した。

「ラルフ商会の荷馬車も饗宴が始まる頃には到着します。『荷積み』をするための麻袋をカリソベリル領より多めに取り寄せました。アロイス様、バルト殿、オスカー殿が東の館を退かれる際に同道できますよう手配をしてあります」

ラルフは左腕を胸にあて頭を下げた。

アロイスが頷く。

「ラルフ、長らくの準備、大儀だった。では、総仕上げと参ろうか」

アロイスは珍しくニヤリと笑い、3人を見る。

「はっ!!」
「はっ!!」
「はっ!!」

ラルフ、バルト、オスカーは勢いを持たせて呼応するのだった。





【春華のひとり言】
今日もお読み頂き、ありがとうございます。

いよいよ、クリソプ男爵領、東の館での饗宴が幕を開けます。

ラドフォール騎士団団長アロイス率いる影部隊シャッテンが長い年月を掛け準備してきた水面下の諜報活動。

『東の歪み』を正す「総仕上げ」の号令をかけたアロイス。

余興の当事者となっているセルジオとエリオス。

次回は、一つの舞台に集結します。

クリソプ騎士団の回、クライマックスをお楽しみに。

次回もよろしくお願い致します。
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