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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第118話 2人の成長
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「樽を積み込めっ!!!これで最後だっ!」
ブロンズ色の髪、薄い青い瞳の筋骨たくましい男が河岸に停泊している船の甲板で号令をかけている。
男の声に呼応すると大勢の人夫が甲板に渡した木板に樽を乗せゴロゴロと転がしながら積み込んでいく。
セルジオ達一行は、マデュラ子爵領北城門まで出迎えに来ていたマデュラ騎士団、第一隊長コーエンと第二隊長エデルの先導でエンジェラ河河岸に設けられた船着き場に到着した。
黄褐色の小麦畑とその先の小さな森を通りぬけるとマデュラ騎士団城塞東門は直ぐだった。
コーエンとエデルは騎士団城塞には向かわず、活気溢れる商業区域を通り、セルジオ達一行を案内した。
船着き場が見えてくると南の隣国エフェラル帝国との交易の要衝で、マデュラ騎士団守護の要だと説明を受ける。
船着き場には2本マストに2枚の三角帆の商船が4艘停泊していた。
甲板で行きかう大勢の人夫と積荷の木箱が頭をのぞかせている。
初めて目にする大きな船にセルジオとエリオスは目を輝かせた。
エフェラル帝国側から荷を積み込んでいるようで、セルジオ達の目の前で荷積みされている商船が最後の様だった。
「暫くご覧になって下さい」
コーエンに言われセルジオ達は馬を下りた。
立ち並ぶ倉庫の脇で作業の邪魔にならない場所にエデルが案内する。
夕暮れが近づくエンジェラ河河岸から少し冷たい風が吹き抜けセルジオとエリオスのフードを捲った。
クリソプ男爵領で短く刈られた髪も耳に掛かる位まで伸びている。
夕陽に照らされた2人の金色の髪は短いながらも風に揺られキラキラと輝き、その場に居合わせた人夫達の目を引いた。
人夫達がどよめき、作業の統制が一瞬乱れた。
エデルが慌ててセルジオとエリオスへフードを被る様に言うか言わないかの内に甲板にいた男が怒声を発した。
「気を抜くなっ!荷積みが終わるまで各々の作業に集中しろっ!」
「オオサッ!!」
50人近い人夫が一斉に呼応し、乱れた統制は瞬く間に立て直された。
セルジオとエリオスは顔を見合わせる。
騎士や従士でない者たちの見事な統制に驚いたのだ。
セルジオがエリオスに近づき耳打ちをする。
「騎士や従士でなくともあのように一言で隊列を合わせる事ができるのだな」
エリオスはうんうんと大きく頷きオスカーの顔を見上げた。
「他の貴族所領ではあのような動きを見せる者達はいなかった。まるで騎士団の様な動きをしている。マデュラ領でだけ特別なのか?」
質問を投げかける。
セルジオ達はこれまで18貴族騎士団の内、9つの貴族所領と騎士団城塞を巡回してきた。
バルドとオスカーはでき得る限り、騎士団城塞以外の地区をセルジオとエリオスへ見聞させた。
民の暮らしがどのように営まれ、何を感じ、何を想い、日々を送っているかを肌で感じさせること。
正義と不正義は立場や役割でいかようにも変わること。
様々な考え方、様々な感情を持つ者が混在する集団をどのようにまとめ、統制を取るのかを知ること。
騎士団団長と第一隊長に最低限必要な個々人の能力を見抜き、見分け、活かすための観察眼を養うためだった。
オスカーはエリオスの問いかけに微笑みを向ける。
違いを把握し、具体的な問いを導きだせるまでに成長している2人が誇らしかった。
オスカーは返答を待ち視線を向けるセルジオとエリオスの前で膝を折ると2人を抱き寄せた。
「オスカー?いかがしたのだ?」
セルジオとエリオスはオスカーの腕の中で顔を見合わせ、首を傾げた。
オスカーは小刻みに震え泣いている様だった。
「オスカー?いかがした!」
エリオスが慌ててオスカーの顔を覗く。
オスカーはホロリと涙を零した。
「大事ございません。セルジオ様とエリオス様が益々見聞を深められていらっしゃる事に感極まってしまい・・・・」
バルドは3人の姿を目を細めて見下ろしていた。
ここまで様々な事があった。
命取りになっていたかもしれないと思い返すだけでも背筋が凍る出来事も一度や二度ではない。
そんな中でも確実に成長しているセルジオとエリオスへの愛おしさが募る気持ちも頷ける。
バルドは労いを込めてオスカーの肩をポンッポンッと叩いた。
オスカーはバルドを見上げ、微笑みを向ける。
気を取り直してエリオスの問いに返答をしようと口を開くとエデルが呼びに来た。
「荷積みが終わりました。これらの船は明朝出航します。我ら騎士団が夜間の警護も致しますゆえ、一度城塞へご案内する様、団長ブレンより指示がありました。ご同道願います」
そう言うとエデンは馬留へ向かった。
いつの間にか第一隊長コーエンの姿もなかった。
これまで、騎士団城塞の城門には騎士団団長が隊長2名ほどを従え出迎えにきていた。
所が、マデュラ騎士団では団長ブレンの姿がなかったばかりか城塞への案内は第二隊長エデルのみだ。
バルドとオスカーは予想はしていたものの、あまりにも簡素な出迎えに2人の成長の喜びもつかの間、再び気を引き締めるのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
マデュラ騎士団城塞へ入りました。
セルジオ騎士団城塞、西の屋敷を出発してから9ヵ月。
セルジオとエリオスの目覚ましい成長を喜ぶのもつかの間、不穏な動きをするマデュラ騎士団に疑念を抱くバルドとオスカー。
気を引き締めて案内役の第二隊長エデルの後に続きます。
次回もよろしくお願い致します。
ブロンズ色の髪、薄い青い瞳の筋骨たくましい男が河岸に停泊している船の甲板で号令をかけている。
男の声に呼応すると大勢の人夫が甲板に渡した木板に樽を乗せゴロゴロと転がしながら積み込んでいく。
セルジオ達一行は、マデュラ子爵領北城門まで出迎えに来ていたマデュラ騎士団、第一隊長コーエンと第二隊長エデルの先導でエンジェラ河河岸に設けられた船着き場に到着した。
黄褐色の小麦畑とその先の小さな森を通りぬけるとマデュラ騎士団城塞東門は直ぐだった。
コーエンとエデルは騎士団城塞には向かわず、活気溢れる商業区域を通り、セルジオ達一行を案内した。
船着き場が見えてくると南の隣国エフェラル帝国との交易の要衝で、マデュラ騎士団守護の要だと説明を受ける。
船着き場には2本マストに2枚の三角帆の商船が4艘停泊していた。
甲板で行きかう大勢の人夫と積荷の木箱が頭をのぞかせている。
初めて目にする大きな船にセルジオとエリオスは目を輝かせた。
エフェラル帝国側から荷を積み込んでいるようで、セルジオ達の目の前で荷積みされている商船が最後の様だった。
「暫くご覧になって下さい」
コーエンに言われセルジオ達は馬を下りた。
立ち並ぶ倉庫の脇で作業の邪魔にならない場所にエデルが案内する。
夕暮れが近づくエンジェラ河河岸から少し冷たい風が吹き抜けセルジオとエリオスのフードを捲った。
クリソプ男爵領で短く刈られた髪も耳に掛かる位まで伸びている。
夕陽に照らされた2人の金色の髪は短いながらも風に揺られキラキラと輝き、その場に居合わせた人夫達の目を引いた。
人夫達がどよめき、作業の統制が一瞬乱れた。
エデルが慌ててセルジオとエリオスへフードを被る様に言うか言わないかの内に甲板にいた男が怒声を発した。
「気を抜くなっ!荷積みが終わるまで各々の作業に集中しろっ!」
「オオサッ!!」
50人近い人夫が一斉に呼応し、乱れた統制は瞬く間に立て直された。
セルジオとエリオスは顔を見合わせる。
騎士や従士でない者たちの見事な統制に驚いたのだ。
セルジオがエリオスに近づき耳打ちをする。
「騎士や従士でなくともあのように一言で隊列を合わせる事ができるのだな」
エリオスはうんうんと大きく頷きオスカーの顔を見上げた。
「他の貴族所領ではあのような動きを見せる者達はいなかった。まるで騎士団の様な動きをしている。マデュラ領でだけ特別なのか?」
質問を投げかける。
セルジオ達はこれまで18貴族騎士団の内、9つの貴族所領と騎士団城塞を巡回してきた。
バルドとオスカーはでき得る限り、騎士団城塞以外の地区をセルジオとエリオスへ見聞させた。
民の暮らしがどのように営まれ、何を感じ、何を想い、日々を送っているかを肌で感じさせること。
正義と不正義は立場や役割でいかようにも変わること。
様々な考え方、様々な感情を持つ者が混在する集団をどのようにまとめ、統制を取るのかを知ること。
騎士団団長と第一隊長に最低限必要な個々人の能力を見抜き、見分け、活かすための観察眼を養うためだった。
オスカーはエリオスの問いかけに微笑みを向ける。
違いを把握し、具体的な問いを導きだせるまでに成長している2人が誇らしかった。
オスカーは返答を待ち視線を向けるセルジオとエリオスの前で膝を折ると2人を抱き寄せた。
「オスカー?いかがしたのだ?」
セルジオとエリオスはオスカーの腕の中で顔を見合わせ、首を傾げた。
オスカーは小刻みに震え泣いている様だった。
「オスカー?いかがした!」
エリオスが慌ててオスカーの顔を覗く。
オスカーはホロリと涙を零した。
「大事ございません。セルジオ様とエリオス様が益々見聞を深められていらっしゃる事に感極まってしまい・・・・」
バルドは3人の姿を目を細めて見下ろしていた。
ここまで様々な事があった。
命取りになっていたかもしれないと思い返すだけでも背筋が凍る出来事も一度や二度ではない。
そんな中でも確実に成長しているセルジオとエリオスへの愛おしさが募る気持ちも頷ける。
バルドは労いを込めてオスカーの肩をポンッポンッと叩いた。
オスカーはバルドを見上げ、微笑みを向ける。
気を取り直してエリオスの問いに返答をしようと口を開くとエデルが呼びに来た。
「荷積みが終わりました。これらの船は明朝出航します。我ら騎士団が夜間の警護も致しますゆえ、一度城塞へご案内する様、団長ブレンより指示がありました。ご同道願います」
そう言うとエデンは馬留へ向かった。
いつの間にか第一隊長コーエンの姿もなかった。
これまで、騎士団城塞の城門には騎士団団長が隊長2名ほどを従え出迎えにきていた。
所が、マデュラ騎士団では団長ブレンの姿がなかったばかりか城塞への案内は第二隊長エデルのみだ。
バルドとオスカーは予想はしていたものの、あまりにも簡素な出迎えに2人の成長の喜びもつかの間、再び気を引き締めるのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
マデュラ騎士団城塞へ入りました。
セルジオ騎士団城塞、西の屋敷を出発してから9ヵ月。
セルジオとエリオスの目覚ましい成長を喜ぶのもつかの間、不穏な動きをするマデュラ騎士団に疑念を抱くバルドとオスカー。
気を引き締めて案内役の第二隊長エデルの後に続きます。
次回もよろしくお願い致します。
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