181 / 216
第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第117話 因縁の地へ
しおりを挟む
カコッカコッカコッ・・・・・
カコッカコッカコッ・・・・
収穫間近の小麦畑が広がる街道をセルジオたち一行はマデュラ騎士団第一隊長コーエンと第二隊長エデルの後に続き進んでいた。
ブルルルル・・・・
第一隊長コーエンが馬を止め振り返ると誰ともなく声を掛けた。
「小麦畑を抜けると我がマデュラ騎士団城塞東門が見えてきます。もうしばらくの辛抱です」
バルドが呼応する。
「コーエン様、エデル様、出迎え感謝申します」
コーエンはバルドとオスカーが間近に来るまで立ち止まり待っていた。
トリプライト男爵領のブラウ村修道院で初代セルジオの『無念の感情』を水に流した後、セルジオの回復を待ち一週間ほど滞在をした。
その後、一行は南に下りマデュラ子爵領北城門へ向かった。
北城門へは隣国エフェラル帝国と陸路を結ぶ交易街道を進む。
荷馬車が難なく通行できるように王都までの道のりのほとんどが石畳で舗装されている。
農村部脇の街道だけは唯一石畳ではないが、土が踏み固められ雨天でも馬や馬車がぬかるみに足を取られる事がない様、整備されていた。
早朝にブラウ修道院を出発したセルジオ達がマデュラ子爵領北城門に到着した頃、商会荷馬車で北城門は混雑していた。
通常、貴族所領の城門は閉ざされており、通行許可を得た者だけに開かれる。
これまでの貴族騎士団巡回でも所領城門を通過する時に難儀したものだ。
所が、マデュラ子爵領北城門は両扉も落とし格子も解放されており、門番が通行証を確認するだけで荷の確認すら行われていない様子だった。
バルドとオスカーは城門から少し離れた所で一旦馬を止めた。
セルジオが怪訝な様子でバルドへ顔を向ける。
「バルド、城門を抜けないのか?」
バルドはセルジオの顔を見ることなく、検問の様子を窺いながらセルジオの小さな左肩に手を置いた。
オスカーが馬から下り、バルドに歩み寄ると馬の手綱を握った。
「バルド殿、セルジオ様とエリオス様には馬上にて待機して頂きますから、城門内の様子をご覧になってきて下さい」
オスカーの申し出にバルドはヒラリと馬から下りる。
「オスカー殿、感謝申します」
バルドは一言告げると足早に北城門に向かった。
オスカーは馬上のセルジオとエリオスに問いかける。
「セルジオ様、エリオス様、バルド殿がなぜ先に城門の様子を窺いに向かったかお解りになりますか?」
バルドとオスカーは事ある毎に騎士として最低限に知っておくべき状況把握と危険回避の方法をセルジオとエリオスに問い聞かせた。
セルジオが先に口を開く。
「荷馬車が大勢で混雑しているから本当に商会の商人なのかを確かめに行ったのではないか?」
「左様ですね。大勢の者が集まる場所では、そこに何者が集っているのかを知る事が身を守る策にございますね」
オスカーはセルジオにニコリと微笑みを向けた。
そうなのだ。
現にクリソプ男爵領では大勢が行きかう繁華街でセルジオとエリオスは拉致された。
セルジオはその時の事を教訓にしているのだろう。
オスカーは己の身に起きた事を忘れず教訓にできるセルジオを誇らしく思った。
続いてオスカーはエリオスへ目を向けた。
オスカーの視線にエリオスが口を開いた。
「城門のあり様が今までの貴族所領門と違います。あのように落とし格子も城門も開いているのは初めて目にします。交易街道に位置する城門だからなのか、それとも今だけが特別なのかを確かめに行かれたのかと考えます」
エリオスは教えを受ける時は師としてオスカーと接していた。
オスカーはエリオスの返答に目を細める。
セルジオ騎士団城塞西の屋敷を出立してから9ヵ月、エリオスの成長は凄まじいと感じていたからだ。
「左様です。常時の事なのか、一時の事なのかを見極めるには常時を知らねばなりません。これまで18貴族中、9つの貴族所領城門を通りました。それらが全て同じであれば常時となります。今回が正に一時の事として城門のあり様を捉えましたね。お二方ともお見事にございます」
オスカーは2人を賞賛した。
「二つ、付け加えると致しましょう」
オスカーはセルジオとエリオスを見上げた。
「一つは我らの役目を常に頭に置いておくことです。表向きのお役目は各貴族騎士団との交流を深めること、秘したお役目は各貴族騎士団のあり様と状態が王国貴族騎士団の定めから逸脱した行いがないかを探る事にございます」
「所領城門の守護、検問、開閉の権限は各貴族騎士団に委ねられております。クリソプ男爵東城門を守護していたのは先代クリソプ男爵の私兵でしたね。これは定めに逸脱した行いです。まして、マデュラ子爵領北城門は王都へ続く交易街道の出発点でもあります。守護、検問、開閉のお役目の責任が重くなると言う事です。マデュラ騎士団がそのお役目に覚悟を持って従事しているかを確かめに行かれたのです」
オスカーは馬上のセルジオとエリオスへ神妙な面持ちを向けた。
「今一つは、マデュラ子爵領だからです。青と赤の因縁が始まった地にて。どの様な些細な事も見逃せば命取りとなります。まずは無事にマデュラ子爵領に入ること、そして、生きてマデュラ子爵領を出ること。その為に我らは今まで以上に注意を払うこととしています」
オスカーは2人に微笑みを向けた。
「とは、申しましてもマデュラ子爵領北城門が常時開いておりますのはシュタイン王国では周知の事にて、ご安心下さい」
オスカーはセルジオとエリオスに危機感を抱かせるのと同時に張り詰め過ぎないものの見方を示した。
「オスカー殿」
名を呼ばれ振り向くと緋色のマントを纏った騎士2人を引き連れバルドが戻ってきた。
2人の騎士を目にするとオスカーはセルジオとエリオスを馬上より下ろす。
セルジオとエリオスの前で2人の騎士は跪いた。
「マデュラ騎士団第一隊長コーエン様と第二隊長エデル様です」
バルドが2人を紹介すると第一隊長コーエンが挨拶を述べた。
「お初にお目に掛かります。青き血が流れるコマンドールと守護の騎士様。ようこそ、マデュラ子爵領へお越し下さいました。我が騎士団団長ブレン・ド・マデュラより我ら案内役を任ぜられました。これよりマデュラ騎士団城塞へご案内致します」
セルジオは2人に顔を上げる様に言うと呼応する。
「我らへの案内のこと、感謝もうします。セルジオにございます。こちらがエリオス、オスカー、そしてお2人をお連れした者がバルドにございます。滞在中、よろしくお願い申します」
セルジオの挨拶に3人は同時に左手を胸に当て騎士の挨拶をした。
コーエンとエデンは堂々としたセルジオの様子に驚くでもなく呼応する。
「はっ!マデュラ領を後にされるまで誠心誠意お尽くしする様、団長ブレンより命を受けています。どうぞ、ご安心下さい」
コーエンの言葉にバルドとオスカーは意味深なものを感じずにはいられなかった。
カコッカコッカコッ・・・・
カコッカコッカコッ・・・・
隣国エフェラル帝国と隣接しているマデュラ子爵領は東西に長い領地で北城門から速歩で3時間程走れば所領南部に位置する騎士団城塞東門に到着する。
農村部に差掛るとコーエンは馬を歩かせた。
「小麦畑を抜けると我がマデュラ騎士団城塞東門が見えてきます。もうしばらくの辛抱です」
早駆けでないとはいえ、速歩で2時間以上馬を走らせた。
コーエンは幼いセルジオとエリオスの身体を慮っている様だった。
バルドが呼応する。
「コーエン様、エデル様、出迎え感謝申します」
馬上のセルジオとエリオスへ目を向けたコーエンは驚いた表情を見せた。
セルジオとエリオスから疲れた様子など微塵も感じられなかったからだ。
バルドの呼応に続き、セルジオも礼を述べた。
「コーエン様、エデル様、感謝申します。お蔭様で夕暮れ前にマデュラ騎士団城塞に到着できます」
セルジオはコーエンに微笑みを向け、収穫間近の小麦畑に目を移すと嬉しそうに呟いた。
「実った小麦を見るのは初めてなのです」
黄褐色に染まった一面の小麦畑が金色の絨毯の様だとセルジオはバルドへ首を回し語り掛け、エリオスとオスカーへも初めて目にするものの喜びを伝えていた。
『あのような幼子があれだけの道中を馬上で揺られれば口も開けぬ程、疲労しているはずだ。やはり、覚醒した青き血は侮れぬな』
コーエンはセルジオとエリオスの姿に空恐ろしさを感じるのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
いよいよ!『青と赤の因縁』が始まった地、マデュラ子爵領に入りました。
身を引き締めて臨んだ因縁の地での出だしは歓迎に近い出迎えで安堵しています。
はてさて、セルジオ達一行は無事に因縁の地を後にできるのかっ!
乞うご期待くださいませ。
次回もよろしくお願い致します。
カコッカコッカコッ・・・・
収穫間近の小麦畑が広がる街道をセルジオたち一行はマデュラ騎士団第一隊長コーエンと第二隊長エデルの後に続き進んでいた。
ブルルルル・・・・
第一隊長コーエンが馬を止め振り返ると誰ともなく声を掛けた。
「小麦畑を抜けると我がマデュラ騎士団城塞東門が見えてきます。もうしばらくの辛抱です」
バルドが呼応する。
「コーエン様、エデル様、出迎え感謝申します」
コーエンはバルドとオスカーが間近に来るまで立ち止まり待っていた。
トリプライト男爵領のブラウ村修道院で初代セルジオの『無念の感情』を水に流した後、セルジオの回復を待ち一週間ほど滞在をした。
その後、一行は南に下りマデュラ子爵領北城門へ向かった。
北城門へは隣国エフェラル帝国と陸路を結ぶ交易街道を進む。
荷馬車が難なく通行できるように王都までの道のりのほとんどが石畳で舗装されている。
農村部脇の街道だけは唯一石畳ではないが、土が踏み固められ雨天でも馬や馬車がぬかるみに足を取られる事がない様、整備されていた。
早朝にブラウ修道院を出発したセルジオ達がマデュラ子爵領北城門に到着した頃、商会荷馬車で北城門は混雑していた。
通常、貴族所領の城門は閉ざされており、通行許可を得た者だけに開かれる。
これまでの貴族騎士団巡回でも所領城門を通過する時に難儀したものだ。
所が、マデュラ子爵領北城門は両扉も落とし格子も解放されており、門番が通行証を確認するだけで荷の確認すら行われていない様子だった。
バルドとオスカーは城門から少し離れた所で一旦馬を止めた。
セルジオが怪訝な様子でバルドへ顔を向ける。
「バルド、城門を抜けないのか?」
バルドはセルジオの顔を見ることなく、検問の様子を窺いながらセルジオの小さな左肩に手を置いた。
オスカーが馬から下り、バルドに歩み寄ると馬の手綱を握った。
「バルド殿、セルジオ様とエリオス様には馬上にて待機して頂きますから、城門内の様子をご覧になってきて下さい」
オスカーの申し出にバルドはヒラリと馬から下りる。
「オスカー殿、感謝申します」
バルドは一言告げると足早に北城門に向かった。
オスカーは馬上のセルジオとエリオスに問いかける。
「セルジオ様、エリオス様、バルド殿がなぜ先に城門の様子を窺いに向かったかお解りになりますか?」
バルドとオスカーは事ある毎に騎士として最低限に知っておくべき状況把握と危険回避の方法をセルジオとエリオスに問い聞かせた。
セルジオが先に口を開く。
「荷馬車が大勢で混雑しているから本当に商会の商人なのかを確かめに行ったのではないか?」
「左様ですね。大勢の者が集まる場所では、そこに何者が集っているのかを知る事が身を守る策にございますね」
オスカーはセルジオにニコリと微笑みを向けた。
そうなのだ。
現にクリソプ男爵領では大勢が行きかう繁華街でセルジオとエリオスは拉致された。
セルジオはその時の事を教訓にしているのだろう。
オスカーは己の身に起きた事を忘れず教訓にできるセルジオを誇らしく思った。
続いてオスカーはエリオスへ目を向けた。
オスカーの視線にエリオスが口を開いた。
「城門のあり様が今までの貴族所領門と違います。あのように落とし格子も城門も開いているのは初めて目にします。交易街道に位置する城門だからなのか、それとも今だけが特別なのかを確かめに行かれたのかと考えます」
エリオスは教えを受ける時は師としてオスカーと接していた。
オスカーはエリオスの返答に目を細める。
セルジオ騎士団城塞西の屋敷を出立してから9ヵ月、エリオスの成長は凄まじいと感じていたからだ。
「左様です。常時の事なのか、一時の事なのかを見極めるには常時を知らねばなりません。これまで18貴族中、9つの貴族所領城門を通りました。それらが全て同じであれば常時となります。今回が正に一時の事として城門のあり様を捉えましたね。お二方ともお見事にございます」
オスカーは2人を賞賛した。
「二つ、付け加えると致しましょう」
オスカーはセルジオとエリオスを見上げた。
「一つは我らの役目を常に頭に置いておくことです。表向きのお役目は各貴族騎士団との交流を深めること、秘したお役目は各貴族騎士団のあり様と状態が王国貴族騎士団の定めから逸脱した行いがないかを探る事にございます」
「所領城門の守護、検問、開閉の権限は各貴族騎士団に委ねられております。クリソプ男爵東城門を守護していたのは先代クリソプ男爵の私兵でしたね。これは定めに逸脱した行いです。まして、マデュラ子爵領北城門は王都へ続く交易街道の出発点でもあります。守護、検問、開閉のお役目の責任が重くなると言う事です。マデュラ騎士団がそのお役目に覚悟を持って従事しているかを確かめに行かれたのです」
オスカーは馬上のセルジオとエリオスへ神妙な面持ちを向けた。
「今一つは、マデュラ子爵領だからです。青と赤の因縁が始まった地にて。どの様な些細な事も見逃せば命取りとなります。まずは無事にマデュラ子爵領に入ること、そして、生きてマデュラ子爵領を出ること。その為に我らは今まで以上に注意を払うこととしています」
オスカーは2人に微笑みを向けた。
「とは、申しましてもマデュラ子爵領北城門が常時開いておりますのはシュタイン王国では周知の事にて、ご安心下さい」
オスカーはセルジオとエリオスに危機感を抱かせるのと同時に張り詰め過ぎないものの見方を示した。
「オスカー殿」
名を呼ばれ振り向くと緋色のマントを纏った騎士2人を引き連れバルドが戻ってきた。
2人の騎士を目にするとオスカーはセルジオとエリオスを馬上より下ろす。
セルジオとエリオスの前で2人の騎士は跪いた。
「マデュラ騎士団第一隊長コーエン様と第二隊長エデル様です」
バルドが2人を紹介すると第一隊長コーエンが挨拶を述べた。
「お初にお目に掛かります。青き血が流れるコマンドールと守護の騎士様。ようこそ、マデュラ子爵領へお越し下さいました。我が騎士団団長ブレン・ド・マデュラより我ら案内役を任ぜられました。これよりマデュラ騎士団城塞へご案内致します」
セルジオは2人に顔を上げる様に言うと呼応する。
「我らへの案内のこと、感謝もうします。セルジオにございます。こちらがエリオス、オスカー、そしてお2人をお連れした者がバルドにございます。滞在中、よろしくお願い申します」
セルジオの挨拶に3人は同時に左手を胸に当て騎士の挨拶をした。
コーエンとエデンは堂々としたセルジオの様子に驚くでもなく呼応する。
「はっ!マデュラ領を後にされるまで誠心誠意お尽くしする様、団長ブレンより命を受けています。どうぞ、ご安心下さい」
コーエンの言葉にバルドとオスカーは意味深なものを感じずにはいられなかった。
カコッカコッカコッ・・・・
カコッカコッカコッ・・・・
隣国エフェラル帝国と隣接しているマデュラ子爵領は東西に長い領地で北城門から速歩で3時間程走れば所領南部に位置する騎士団城塞東門に到着する。
農村部に差掛るとコーエンは馬を歩かせた。
「小麦畑を抜けると我がマデュラ騎士団城塞東門が見えてきます。もうしばらくの辛抱です」
早駆けでないとはいえ、速歩で2時間以上馬を走らせた。
コーエンは幼いセルジオとエリオスの身体を慮っている様だった。
バルドが呼応する。
「コーエン様、エデル様、出迎え感謝申します」
馬上のセルジオとエリオスへ目を向けたコーエンは驚いた表情を見せた。
セルジオとエリオスから疲れた様子など微塵も感じられなかったからだ。
バルドの呼応に続き、セルジオも礼を述べた。
「コーエン様、エデル様、感謝申します。お蔭様で夕暮れ前にマデュラ騎士団城塞に到着できます」
セルジオはコーエンに微笑みを向け、収穫間近の小麦畑に目を移すと嬉しそうに呟いた。
「実った小麦を見るのは初めてなのです」
黄褐色に染まった一面の小麦畑が金色の絨毯の様だとセルジオはバルドへ首を回し語り掛け、エリオスとオスカーへも初めて目にするものの喜びを伝えていた。
『あのような幼子があれだけの道中を馬上で揺られれば口も開けぬ程、疲労しているはずだ。やはり、覚醒した青き血は侮れぬな』
コーエンはセルジオとエリオスの姿に空恐ろしさを感じるのだった。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
いよいよ!『青と赤の因縁』が始まった地、マデュラ子爵領に入りました。
身を引き締めて臨んだ因縁の地での出だしは歓迎に近い出迎えで安堵しています。
はてさて、セルジオ達一行は無事に因縁の地を後にできるのかっ!
乞うご期待くださいませ。
次回もよろしくお願い致します。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる