209 / 216
第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第145話 青き血が流れるコマンドール
しおりを挟む
――――マデュラ騎士団城塞館 セルジオ一行滞在部屋――――
チリリリリィ・・・・
ガタッ!!!
ベルの音に反応し控えの間で待機していたルイーザはセルジオ達一行滞在部屋へ急ぎ向かった。
トンットンットンッ・・・・
滞在部屋の扉を叩き、返答を待つとバルドの声が聞こえた。
「どうぞ」
ギイィィィ・・・・
「失礼を致します!」
ルイーザが室内に入るとバルドがマントに包んだセルジオ(の身代わり人形)を抱えていた。
「ルイーザ殿、今朝はセルジオ様のお顔の色が幾分よろしいようです。外気に触れさせたく案内頂けますか?」
バルドはセルジオの寝顔をルイーザに見せる様にマントを少し捲ってみせた。
「!!!」
滞在部屋にセルジオとバルドが籠って一週間、ルイーザははじめてセルジオの寝顔を目にした。
訓練場で魅せた生命力溢れる姿とは異なり生気が感じられないセルジオの姿にルイーザは入室を拒まれていた事態を納得する。
『セルジオ騎士団団長名代のこの姿を他家名貴族騎士団で見せる訳にはいかなかったのだろう。憂いを抱く事はなかったということか・・・・』
じっとセルジオへ視線を向けるルイーザにバルドは微笑みを向けた。
「ご心配をお掛け致しました。セルジオ様は毒耐性の訓練を受けておりません。解毒薬ですら毒となる可能性がありましたので、徐々に毒気を抜いていく方法を取りました」
バルドは腕に抱えるセルジオへ愛おしそうな眼差しを向けながらルイーザに解毒の対処法を説明した。
「・・・・」
ルイーザは黙したまま静かに語るバルドを見つめていた。
「そろそろ、ポルデュラ様から頂いた茶がなくなります。ラルフ商会に届いている頃合いと存じますので案内頂けますか?」
バルドはルイーザにマデュラ騎士団城塞繁華街にあるラルフ商会商館への案内を依頼した。
「・・・・」
ルイーザはバルドがセルジオを抱えるたおやかな姿に見惚れ言葉を失っていた。
「ルイーザ殿?」
バルドの問いかけにルイーザは慌てて呼応した。
「はっ!!!承知しましたっ!」
「お願い致します」
バルドはルイーザに微笑みを向けるとマントに包んだセルジオを首から下げた麻布に固定し、ルイーザと共に滞在部屋を後にした。
――――エンジェラ河航行中、ラルフ商会商船――――
ポルデュラに回復術を施されたセルジオはベアトレスに抱えられラルフ商会商船船尾から出されたゴンドラに揺られていた。
アロイスが船頭を務めポルデュラも含めた4人でマデュラ騎士団城塞繁華街にあるラルフ商会商館を目指した。
セルジオはベアトレスに身体を預けぐったりとしてはいるものの初めて乗るゴンドラに目を輝かせている様だった。
4人を乗せたゴンドラは水音一つさせずに川面を滑る様に進んだ。
遥か先を進む商船の船影が見えなくなるとアロイスはゴンドラをエンジェラ河の河岸に近づけた。
「叔母上、そろそろです」
船首からアロイスが船尾のポルデュラへ声を掛ける。
「うむ。承知した」
ポルデュラは呼応すると何かを乗せる様に左掌を上に向け木々が生い茂る河岸に向けて「ふぅぅ」と息を吹きかけた。
ザバンッ!!!
ザザザアァァァァ・・・・
生い茂る木々が左右に分かれ小川が姿を現した。
「この後もお願い致します」
「承知した」
スゥとゴンドラが小川に舵を切ると左右に分かれた木々が船尾からザバザバと音を立て元に戻っていく。
ベアトレスに抱えられているセルジオが船尾に顔を向けポツリと呟いた。
「・・・・北の森と同じだ・・・・ポルデュラ様、ここも精霊の森なのですか?」
ポルデュラはセルジオに微笑みを向け呼応した。
「我らラドフォールは精霊の加護を受けし魔導士じゃからな。今は風と水が作用した魔術じゃな。音もなく滑る様にゴンドラが進むのも同じことじゃ。セルジオ様はひと際、風と水の精霊に愛されておるからな我らの魔術もより精度が上がるのじゃよ」
ポルデュラは「ふふふ」と嬉しそうに微笑んだ。
木々の生い茂る小川を暫く進むと岩山が姿を現した。
岩山の中へと続いている小川を進むと発光石が岩肌にびっしりと輝く洞窟に入った。
「セルジオ様、どうじゃ?この景色も見覚えがあろう?」
ベアトレスの肩越しにポルデュラへ目を向けるセルジオは「ブラウ修道院」と呼応した。
「そうじゃ。聖水の泉があるブラウ村の修道院じゃ。青く輝く水面が綺麗じゃろう?」
青白い発光石が反射した洞窟の水面は青く輝き灯りがなくとも難なく進める。
「発光石は土の精霊の贈り物じゃ。風、水、土の精霊が生み出す情景じゃよ」
ポルデュラは洞窟の天井を見上げるセルジオにフワリと銀色の風の珠を送った。
「セルジオ様、大きく息を吸うのじゃ。風、水、土の精霊から清き精気を授けて頂こう。これより大仕事が待っているからの。回復術だけでは大きな声を出せるまでお身体を戻せぬのでな。さっ、大きく息を吸うのじゃ」
「すぅぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅぅ・・・・すぅぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅ・・・・」
セルジオはポルデュラに言われた通りバルドに仕込まれた呼吸法を繰り返した。
何度も何度も繰り返していく内にセルジオは腹が温かさを感じる。
「すぅぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅ・・・・すぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅ・・・・」
セルジオの呼吸に合わせて銀色の風の珠を送るポルデュラの動きが止まった。
「どうじゃ?セルジオ様。そろそろ立ち上がれるのではないかの?」
セルジオがベアトレスの顔を見上げるとベアトレスはゆっくりとセルジオの上体を起こし、両足を船底に付けた。
「セルジオ様、支えておりますからご安心下さい」
ベアトレスはゴンドラの中央にセルジオを立たせ両手を添える。
セルジオは両足の太腿にぐっと力を入れ立ち上がった。
「大丈夫そうじゃな」
ポルデュラは満足をそうな顔をする。
「ポルデュラ様、感謝もうします」
セルジオは普段と変わらない声音で左手を胸にあて頭を下げた。
「間に合い、ようございました。そろそろラルフ商会商館に到着します」
船首のアロイスが振り向くことなく声を掛けると3人は前方へ目を向けると洞窟が少し開けた川岸にランタンを手にした人影が見えた。
アロイスが静かに人影の主の名を口にした。
「マデュラ騎士団城塞にてラルフ商会の主人を務めます我が影部隊アルナです。私が不在の間はバルド殿との繋ぎ役を担っておりました。ブレン殿に引けを取らぬ騎槍の使い手です」
アルナはランタンを上下左右に動かし、アロイスへ信号を送っている様だった。
「着岸します」
アロイスはゴンドラの速度を弱めアルナが川岸に置いたランタンの前に滑る様に着岸した。
左手を胸にあて跪いたアルナが出迎える。
「アロイス様、ポルデュラ様、お待ち申し上げておりました。準備は滞りなく整っております」
「予定より遅くなった。外の様子に変わりはないか?」
「はっ!今の所は変わりございませんが、逐次、影部隊が状況を掴んでおります」
「そうか。ご苦労だった」
アロイスは呼応しつつポルデュラとベアトレスを先にゴンドラから下ろす様、アルナに指示するとセルジオに左手を差し出した。
セルジオの小さな右手をぎゅっと握り微笑みを向けると川岸に降り立つ様促し、ポルデュラとベアトレスを補助するアルナに目を向けた。
「当代の青き血が流れるコマンドール、セルジオ・ド・エステール殿だ。これより、この始まりの地にて青と赤の因縁の終わりの始まりを告げるお覚悟を決められた。我がラドフォールはセルジオ殿を全身全霊で守護することとした。抜かりなく事を運べっ!」
「はっ!!!」
語気を強めたアロイスの言葉と呼応するアルナの声が洞窟内に木魂した。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
マデュラ騎士団城塞に戻ってきたセルジオの回でした。
バルドとの連携も上々の様で、青と赤の因縁の終わりの始まりを宣言する準備は水面下で着々と進んでいきます。
次回はいよいよ!!セルジオとブレン団長との共闘となります。
次回もよろしくお願い致します。
精霊の森の情景は
第3章 第9話精霊の森
となります。
振返りでご覧頂ければと思います。
そして、
2023年(令和5年)は本日で最終の更新となります。
実は今年中に第3章を終わらせる予定でしたが、残り4話とエピローグを残し来年に持ち越しとなりました。
一年間、お付き合い頂き、ありがとうございました。
また、来年もよろしくお願い致します。
チリリリリィ・・・・
ガタッ!!!
ベルの音に反応し控えの間で待機していたルイーザはセルジオ達一行滞在部屋へ急ぎ向かった。
トンットンットンッ・・・・
滞在部屋の扉を叩き、返答を待つとバルドの声が聞こえた。
「どうぞ」
ギイィィィ・・・・
「失礼を致します!」
ルイーザが室内に入るとバルドがマントに包んだセルジオ(の身代わり人形)を抱えていた。
「ルイーザ殿、今朝はセルジオ様のお顔の色が幾分よろしいようです。外気に触れさせたく案内頂けますか?」
バルドはセルジオの寝顔をルイーザに見せる様にマントを少し捲ってみせた。
「!!!」
滞在部屋にセルジオとバルドが籠って一週間、ルイーザははじめてセルジオの寝顔を目にした。
訓練場で魅せた生命力溢れる姿とは異なり生気が感じられないセルジオの姿にルイーザは入室を拒まれていた事態を納得する。
『セルジオ騎士団団長名代のこの姿を他家名貴族騎士団で見せる訳にはいかなかったのだろう。憂いを抱く事はなかったということか・・・・』
じっとセルジオへ視線を向けるルイーザにバルドは微笑みを向けた。
「ご心配をお掛け致しました。セルジオ様は毒耐性の訓練を受けておりません。解毒薬ですら毒となる可能性がありましたので、徐々に毒気を抜いていく方法を取りました」
バルドは腕に抱えるセルジオへ愛おしそうな眼差しを向けながらルイーザに解毒の対処法を説明した。
「・・・・」
ルイーザは黙したまま静かに語るバルドを見つめていた。
「そろそろ、ポルデュラ様から頂いた茶がなくなります。ラルフ商会に届いている頃合いと存じますので案内頂けますか?」
バルドはルイーザにマデュラ騎士団城塞繁華街にあるラルフ商会商館への案内を依頼した。
「・・・・」
ルイーザはバルドがセルジオを抱えるたおやかな姿に見惚れ言葉を失っていた。
「ルイーザ殿?」
バルドの問いかけにルイーザは慌てて呼応した。
「はっ!!!承知しましたっ!」
「お願い致します」
バルドはルイーザに微笑みを向けるとマントに包んだセルジオを首から下げた麻布に固定し、ルイーザと共に滞在部屋を後にした。
――――エンジェラ河航行中、ラルフ商会商船――――
ポルデュラに回復術を施されたセルジオはベアトレスに抱えられラルフ商会商船船尾から出されたゴンドラに揺られていた。
アロイスが船頭を務めポルデュラも含めた4人でマデュラ騎士団城塞繁華街にあるラルフ商会商館を目指した。
セルジオはベアトレスに身体を預けぐったりとしてはいるものの初めて乗るゴンドラに目を輝かせている様だった。
4人を乗せたゴンドラは水音一つさせずに川面を滑る様に進んだ。
遥か先を進む商船の船影が見えなくなるとアロイスはゴンドラをエンジェラ河の河岸に近づけた。
「叔母上、そろそろです」
船首からアロイスが船尾のポルデュラへ声を掛ける。
「うむ。承知した」
ポルデュラは呼応すると何かを乗せる様に左掌を上に向け木々が生い茂る河岸に向けて「ふぅぅ」と息を吹きかけた。
ザバンッ!!!
ザザザアァァァァ・・・・
生い茂る木々が左右に分かれ小川が姿を現した。
「この後もお願い致します」
「承知した」
スゥとゴンドラが小川に舵を切ると左右に分かれた木々が船尾からザバザバと音を立て元に戻っていく。
ベアトレスに抱えられているセルジオが船尾に顔を向けポツリと呟いた。
「・・・・北の森と同じだ・・・・ポルデュラ様、ここも精霊の森なのですか?」
ポルデュラはセルジオに微笑みを向け呼応した。
「我らラドフォールは精霊の加護を受けし魔導士じゃからな。今は風と水が作用した魔術じゃな。音もなく滑る様にゴンドラが進むのも同じことじゃ。セルジオ様はひと際、風と水の精霊に愛されておるからな我らの魔術もより精度が上がるのじゃよ」
ポルデュラは「ふふふ」と嬉しそうに微笑んだ。
木々の生い茂る小川を暫く進むと岩山が姿を現した。
岩山の中へと続いている小川を進むと発光石が岩肌にびっしりと輝く洞窟に入った。
「セルジオ様、どうじゃ?この景色も見覚えがあろう?」
ベアトレスの肩越しにポルデュラへ目を向けるセルジオは「ブラウ修道院」と呼応した。
「そうじゃ。聖水の泉があるブラウ村の修道院じゃ。青く輝く水面が綺麗じゃろう?」
青白い発光石が反射した洞窟の水面は青く輝き灯りがなくとも難なく進める。
「発光石は土の精霊の贈り物じゃ。風、水、土の精霊が生み出す情景じゃよ」
ポルデュラは洞窟の天井を見上げるセルジオにフワリと銀色の風の珠を送った。
「セルジオ様、大きく息を吸うのじゃ。風、水、土の精霊から清き精気を授けて頂こう。これより大仕事が待っているからの。回復術だけでは大きな声を出せるまでお身体を戻せぬのでな。さっ、大きく息を吸うのじゃ」
「すぅぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅぅ・・・・すぅぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅ・・・・」
セルジオはポルデュラに言われた通りバルドに仕込まれた呼吸法を繰り返した。
何度も何度も繰り返していく内にセルジオは腹が温かさを感じる。
「すぅぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅ・・・・すぅぅぅぅ・・・・ふぅぅぅぅ・・・・」
セルジオの呼吸に合わせて銀色の風の珠を送るポルデュラの動きが止まった。
「どうじゃ?セルジオ様。そろそろ立ち上がれるのではないかの?」
セルジオがベアトレスの顔を見上げるとベアトレスはゆっくりとセルジオの上体を起こし、両足を船底に付けた。
「セルジオ様、支えておりますからご安心下さい」
ベアトレスはゴンドラの中央にセルジオを立たせ両手を添える。
セルジオは両足の太腿にぐっと力を入れ立ち上がった。
「大丈夫そうじゃな」
ポルデュラは満足をそうな顔をする。
「ポルデュラ様、感謝もうします」
セルジオは普段と変わらない声音で左手を胸にあて頭を下げた。
「間に合い、ようございました。そろそろラルフ商会商館に到着します」
船首のアロイスが振り向くことなく声を掛けると3人は前方へ目を向けると洞窟が少し開けた川岸にランタンを手にした人影が見えた。
アロイスが静かに人影の主の名を口にした。
「マデュラ騎士団城塞にてラルフ商会の主人を務めます我が影部隊アルナです。私が不在の間はバルド殿との繋ぎ役を担っておりました。ブレン殿に引けを取らぬ騎槍の使い手です」
アルナはランタンを上下左右に動かし、アロイスへ信号を送っている様だった。
「着岸します」
アロイスはゴンドラの速度を弱めアルナが川岸に置いたランタンの前に滑る様に着岸した。
左手を胸にあて跪いたアルナが出迎える。
「アロイス様、ポルデュラ様、お待ち申し上げておりました。準備は滞りなく整っております」
「予定より遅くなった。外の様子に変わりはないか?」
「はっ!今の所は変わりございませんが、逐次、影部隊が状況を掴んでおります」
「そうか。ご苦労だった」
アロイスは呼応しつつポルデュラとベアトレスを先にゴンドラから下ろす様、アルナに指示するとセルジオに左手を差し出した。
セルジオの小さな右手をぎゅっと握り微笑みを向けると川岸に降り立つ様促し、ポルデュラとベアトレスを補助するアルナに目を向けた。
「当代の青き血が流れるコマンドール、セルジオ・ド・エステール殿だ。これより、この始まりの地にて青と赤の因縁の終わりの始まりを告げるお覚悟を決められた。我がラドフォールはセルジオ殿を全身全霊で守護することとした。抜かりなく事を運べっ!」
「はっ!!!」
語気を強めたアロイスの言葉と呼応するアルナの声が洞窟内に木魂した。
【春華のひとり言】
今日もお読み頂きありがとうございます。
マデュラ騎士団城塞に戻ってきたセルジオの回でした。
バルドとの連携も上々の様で、青と赤の因縁の終わりの始まりを宣言する準備は水面下で着々と進んでいきます。
次回はいよいよ!!セルジオとブレン団長との共闘となります。
次回もよろしくお願い致します。
精霊の森の情景は
第3章 第9話精霊の森
となります。
振返りでご覧頂ければと思います。
そして、
2023年(令和5年)は本日で最終の更新となります。
実は今年中に第3章を終わらせる予定でしたが、残り4話とエピローグを残し来年に持ち越しとなりました。
一年間、お付き合い頂き、ありがとうございました。
また、来年もよろしくお願い致します。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる