天上下427

里之子 葱子

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2.私を、そのバトルロワイアルの参加者にしてくれません?

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外道院のバトルロワイアル参加者の選定方法は、実にテキトーだった。
全学園関係者のくじを作り、そこからランダムに複数選ぶというやり方だ。
選ばれた生徒について知りえる情報は、名前、所属、性別、種族、そして異能力のみという簡素なものだ。そして異能力だって、明記されている訳ではない。「だいたい炎を操る」とか、「風の剣とかあたりを生み出す」レベルのふわっとした情報でしかない。
つまりちゃんとしたデスゲームの運営のように、「ゲームバランスを考えよう!」といった意図は一切ないのである。
外道院は選定された参加者のプロフィールを途中まで目を通し、投げ捨てた。投げ捨てた資料は心音が慌ててキャッチした。
「まぁ、何人か強そうな奴もいるし、いい感じに殺しあってくれるだろ」
「ちょ、ちょっと待って清人君! この中、無能力者もいるよ!?」
「それがどうしたんだよ。異能力者だって、無能力者の拳銃で死ぬぜ? 差別するなよ」
「で、でも武器を持ってるとも限らないし、せめて無能力者は外したほうが……」
「心音。お前、俺に指図できる立場だと思ってんのか?」
「そ、それは……」
「この学園の生徒の人質は、俺の手の中にあることを忘れるじゃねぇぞ」
「…………」
「んじゃまぁ、参加者はこの12人で決定な。俺はこれから校内放送しに行くから、それまでに参加者全員に通達しておけ」
「は、はい!」
「すぐに!」
生徒会室の隅で事の成り行きを見守っていた書記と会計だったが、外道院の言葉を受けて、慌ただしく生徒会室を後にした。
「………」
「何突っ立ってんだよ。お前もだよ心音」
「……分かった」
とぼとぼと生徒会室を出て行く心音の後ろ姿を見送って、数秒。
「……おい、何してんだ」
外道院は扉の向こうに声をかけた。
「………」
「何してんだって聞いてんだ。この俺を無視するとはいい度胸だな」
「……あら」
と、扉の向こうから声がした。
声と共に、扉が開く。
「貴方を無視するのに、度胸が必要なんですか?」
現れたのは、黒髪で和服の少女。狐の面を斜めにしてつけている。年は高校生くらいだろう。
「誰だぁ、お前……」
外道院は目をすぼめて言う。目の前の相手は、全く認識がない。そして何より問題なのは、自身の能力、『人質』が適用できないということだ。
天上下学園というテリトリーにおいて、自身の能力が適用できない人間など、いない。
全校生徒、教師、そしてそれら関係者の身内に至るまで人質を捕る徹底ぶり。そこには一つの抜け穴すらない。ならば。
「すみません。私、転校生でして。といっても入学するのは明日、なんですけどね」
「あー……なんか転校生が来るとか、来ないとか……。言ってたような言ってなかったような……」
記憶を掘り起こせば、心音が言っていたような気もする。
転校生に関しては、初日に生徒会室に連行し、心音に大切なものを能力で探らせ、人質を捕る流れとなっている。
明日転校する、となればまだ能力を使えなくても仕方がない。
「で、そんな部外者が生徒会室の前で何してんだよ」
「確かに今は部外者ですが、明日からは関係者ですよ。ここに来たのは、貴方に頼みがあるからです」
「へぇ。俺に頼み」
「ええ」
「私を、そのバトルロワイアルの参加者にしてくれません?」
狐面の少女は、妖艶に笑って言った。


生徒会室で起こっているイレギュラーなど露知らず。
バトルロワイアルの参加者に通達を終えた心音達は、その報告へと生徒会室に戻っている最中だった。
「心音ちゃんだけが悪いんじゃないよ」
落ち込んでいるように見える心音に、書記は言う。
「皆、人質を捕られてるからな。仕方がないさ……」
「書記ちゃん。会計君。……不甲斐ない副会長でごめんなさい。せめて、二人の人質だけでも解放できればいいんだけど」
「そんな! それだったら心音ちゃんの人質だって……」
と、書記が言ってからふと気づく。
(そういえば私、心音ちゃんの人質、知らないな……)
「なぁ、天上下。君の人質って何なんだ?」
同じく知らないようで、会計が尋ねた。
すると心音は一層顔を曇らせ、
「……ごめんなさい。清人君に、言うなって命じられてるの」
「……そっか。それなら、仕方ないね」
「本当に、最低な男だ。外道院……」
「会計君! 生徒会長の悪口はだめだって! どこで聞かれてるか分からないんだよ!?」
「あっ、あぁ。そうだな。気を付けなければ……」
(それにしても人質を言えないって……。どういうことなんだろう?)
書記は疑問に思ったものの、その答えにたどり着くことはなかった。
何故なら、校内放送が行われたからである。

「ごきげんよう、愚民共」

予告無く天上下学園中に響き渡る校内放送は、不遜な一言からであった。
「第427期生徒会長の外道院清人だ。
早速だが、俺もこの度卒業することになった。
お前らの苦しむ顔が見れなくなるのは大変残念だが、俺も優秀な天上下の学生として社会人にならねぇとだからなぁ……。
と、いうことで、次期生徒会長を決めなければならないが、今回はバトルロワイアルをしていただくことにしよう!
俺が特別に選んでやった参加者。お前ら13人が殺しあって、最後に残った1人を生徒会長にしてやろう!」
(13人?)
心音、そして会計と書記は顔を見合わせた。
自分たちは12人にしか通達していないはずだが。

「お前も、お前もお前もお前も、お前らも。俺に捕られてる人質、返してほしいだろぉ?
なら争え。殺しあえ。そして俺を楽しませろぉ!」
その後、外道院の汚い高笑いが暫く続き、やがて放送は途切れた。

そして、天上下学園で次期生徒会長を決めるバトルロワイアルが幕を開けた。
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