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連載
使えるものは王太子の肩書だって使います
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空には鈍色の雲が重く垂れ込めて、今にも雪が降ってきそうだ。この寒空の下、パーシヴァルは朝の鍛錬をしている。俺はといえば、外で頑張っているパーシヴァルに申し訳ないなぁと思いつつ、暖かい部屋でのんびりと過ごしているところだ。体力が壊滅的だから、本当は少しぐらい鍛えた方が良いんだろうけど。人間とは楽な方へと流される生き物だから仕方がないのだ。
食後の蜂蜜入りの温かいお茶を飲みながら窓の外を見下ろせば、ヴァンダーウォールの騎士と兵士が、茂みの中に入ったり樹上を見上げたりしている様子が見えた。
「……なにをしてるんだろう?」
お茶を飲み終わる頃になってもまだ何かしているので、どうしても気になった俺はフェルトの外套を纏いそっと部屋を出た。本当はパーシヴァルが来るまで部屋にいるようにと、スザンナさんに言われているんだけどね。なんでも、まだ城に滞在しているゲストもいるのだそうだ。相手は貴族なので、うっかり顔を合わせて、かしこまった会話をすることになったら面倒だけど、ちょっと庭先を彷徨くくらいならきっと大丈夫。
人目を避けながら守備よく外に出た俺は、ゴソゴソと茂みをかき回している騎士に声をかける。
「すみません、此処で何をしているんですか?」
「え? ああ、サフィラス殿でしたか。実は髪飾りを探しているのです」
「髪飾り……」
それって、もしかして俺が知っているあの金の髪飾りの事だろうか?
「なんでも、ミラー伯爵令嬢がこの辺りで竜の髪飾りを紛失したらしいのですが、なかなか見つからないのですよ」
「無くしたんじゃねぇ、わざと投げ捨てたって話だ」
茂みに頭を突っ込んでいた兵士が、苛立ったように言い放つ。城にゲストが滞在している上に、新年を控えた今は特に忙しいだろうから、余計な仕事を任されて苛々する気持ちもわかる。見つかるまでは、此処を離れるわけにはいかないだろうし。本当なら無くした……もとい、捨てたフラヴィア本人が探すべきなんだろうけど。この寒空の下、貴族のご令嬢に自分で探せとは言えないよな。
ともかく、それはやっぱり俺が知っている髪飾りだろう。だったら話は早い。一度俺が身につけたものならきっとすぐに見つけられる。
「よければお手伝いします。おいで、クー・シー」
俺は召喚陣を描くと、クー・シーを呼び出す。クー・シーなら、髪飾りに残っている俺の魔力を追うことができるからね。
「クー・シー、俺の魔力が付いた髪飾りがこの辺りにあるはずなんだ。見つけてくれないかな?」
お願いすると、クー・シーは枯れ葉の下に埋まっていた髪飾りをたちまちのうちに見つけ出してくれた。褒めてとばかりに俺の前に座って、背中に巻いた長い尾を千切れんばかりに振っている。
彼が咥えているそれは、案の定昨夜フラヴィアに毟られた髪飾りだった。
「これですか?」
見つけた髪飾りを騎士に渡す。
「……そうです、これです! 助かりました、サフィラス殿!」
「坊主、やるじゃねえか」
探し物から解放されたからか、さっきまで厳しい顔をしていた兵士の表情が和らぐ。
「お役に立てたのならなによりです。ありがとう、クー・シー。君は最高だね!」
魔力を与えながらめいいっぱい頭を撫でてやれば、クー・シーは満足そうに帰っていった。
だけどなんだってフラヴィアは髪飾りを捨てたりしたんだ。俺から奪い取るほど、欲しかった髪飾りだったんじゃないのか? 女の子の考えることは複雑でよくわからないな。
「サフィラス殿は召喚魔法も使えるのですね」
無事に探し物も見つかって本来の仕事に戻っていった騎士達を見送っていると、見知らぬ男に声をかけられた。貴族らしい佇まいから察するに、この城に滞在しているゲストの一人だろう。背が高く、身体つきもしっかりしていて、俺よりも随分と年上に見える。
「……ええ、まあ」
「昨夜の転移魔法も実に見事でした。私も多くの魔法使いを知っていますが、あなたのように詠唱もなしで、あれほど正確な転移をする魔法使いには出会ったことがありませんよ。本当に素晴らしい」
「それはどうも……」
ベリサリオ家の客人である以上、失礼な態度をとるわけにもいかないのはわかっている。だけど、にこにこと善良そうな笑みを浮かべてはいるけれど、それがなんとなく胡散臭い。ここは適当に話を切り上げて部屋に戻った方が良さそうだ。
「あの、申し訳、」
「ヴァンダーウォール辺境伯がサフィラス殿は大変優秀な魔法使いだと言っておりましたが、学院の第一学年で転移も召喚も使いこなすなんて、優秀の一言ではとても片付けられませんよ」
いとまを告げてその場を去ろうとしたけれど、俺の言葉を遮って男は尚も話を続ける。確かに俺は優秀な魔法使いだからな。将来雇いたいとかそう言う話をするつもりなのか? だったら速攻でお断りだぞ。
「それに……サフィラス殿は精霊のように美しい。その艶やかな黒髪はまさに夜の闇のようだ」
男はそう言うと、いきなり手を伸ばして無遠慮にも髪に触ろうとしたので、俺はサッと後ろに下がった。避けられたのが意外だったのか、男は少し驚いた表情を見せたけど、むしろこっちが驚きだ。よくわからない男に、そう気安く触られてたまるか。もしかしたら、昨夜エントランスで顔を合わせているのかもしれないが、紹介されていないから俺はこいつの事を全く知らない。例え紹介されていたとしても、触らせたりはしないけどな。
大体この男ときたら一見上品そうなフリをしているけれど、嘗ての婚約者と同じ目で俺を見ているじゃないか。下心が透けすぎだろう。
「……ああ! 自己紹介が遅れて申し訳ない。私はトレス侯爵家のエイダン・ロックウェルと申します」
俺の胡乱げな視線に気が付いたのか、男は行き場を無くした手を胸に当て、いささか芝居がかった調子で今更すぎる自己紹介をした。家柄を知ったら態度を軟化させるとでも思っているんだろうか。
「麗しき魔法使い殿。貴方はもっと自分の価値を知るべきだ。パーシヴァル殿は確かに優秀だが、所詮は三男です。テオドール殿とカーティス殿が居られる以上、一部隊長が精々でしょう」
おいおい、一体何の話が始まったんだ? 背中がゾワゾワするじゃないか。それに、パーシヴァルが三男である事の何が悪いんだよ。男の言いたい事はわからないが、猛烈に不愉快な気分だぞ。
「我がトレス侯爵家は、遠縁の他家より養子を迎える事もできます。ですから、嫡男が男性の伴侶を迎えることにも寛容なのですよ」
「へぇ、そうですか」
トレス侯爵家の事情など俺に聞かせてどういうつもりなんだろう。男の伴侶を迎えようが、養子を迎えようが好きにしたらいいじゃないか。俺には関係ないことだし。世間話をしたいなら、似たような立場の奴とやってくれ。
こういう変な奴がいるから、スザンナさんは部屋から出るなって言ってたんだな。この男の話に付き合う義理もないし、そろそろ部屋に帰ろう。
「話の途中ですみません。俺はもう部屋に戻りますので」
「お待ちください、サフィラス殿! 我が侯爵家は優秀な魔法使いである貴方に相応しい立場を用意できる。宝石のように美しいサフィラス殿を、私は心から愛すると誓いましょう。だから、この手を取ることを考えては頂けないだろうか?」
「はぁ?」
取り繕うことも忘れた俺は、思わず低い声を漏らしてしまった。もしかしてこの男、俺に求婚してるのか? 冗談だろう?!
「サフィラス殿」
目の前で跪いた男が、今度は俺の手を取ろうとしたので慌てて手を引っ込める。それとほぼ同時に、腰をぐいと引き寄せられて、レモネとミンタの香りがふわりと俺を包む。
「……パーシヴァル、」
「サフィラス、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
気味の悪い話はされたけどね。
「ロックウェル卿、ここで一体何をなさっておられるのです?」
男は立ち上がり膝を叩くと、俺に向けていた下心見え見えの表情を取り繕って澄ました顔を見せた。さっき、パーシヴァルは三男だから云々と言っていた時と同じ、何処となく自分が優位に立っているつもりの顔だ。パーシヴァルがまだ若いからと侮っているのかもしれない。
「我が侯爵家に来ては頂けないかと、サフィラス殿をお誘いしていたのですよ。ベリサリオ家も、お二人のことはまだ正式に発表されていないようですからね。もしかしたら、私が名乗りを上げても良いのではないかと思いまして」
俺の腰を抱いているパーシヴァルの腕にグッと力が入り、怒りの気配が伝わってきた。パーシヴァルは俺の生い立ちを知っているからな。俺が利用されそうになっているので、代わりに怒ってくれているんだろう。だけど心配しなくても大丈夫だ。冒険者になるなら、この程度は自分で対処しないと。俺は腰を抱くパーシヴァルの腕をトントンと叩くと、大丈夫の意味を込めてニカっと笑って見せた。
「俺とパーシヴァルは冒険者になるので、俺が卿のところに行くことは天地がひっくり返っても無いですよ。王太子殿下公認にて、この地での冒険者登録が認められていますし。将来、もしも何かお仕事がありましたら、ヴァンダーウォールのギルドに依頼して下さい。ご指名なら歓迎しますよ」
ただし、指名料はたんまりと頂くけどな。
「……王太子殿下公認」
王太子殿下を出したら、ナントカ卿の顔色が少し悪くなった。王家に比べたら、侯爵家の力なんてそこそこのものだ。太陽の獅子の威を借る小鼠かもしれないけど、使えるものは遠慮なく使わせてもらう。その代わり、借りた分はちゃんと返すつもりだよ。
「……あ、そうだ。俺達のパーティ名がまだだったな。どうする、パーシヴァル?」
指名をするにもパーティ名が無くっちゃね。そう思ってもう一度パーシヴァルを見上げると、何故かパーシヴァルは頬を紅く染めて、空いている方の手の甲で口元を隠していた。
あれ? 急にどうしちゃったんだ、パーシヴァル?
食後の蜂蜜入りの温かいお茶を飲みながら窓の外を見下ろせば、ヴァンダーウォールの騎士と兵士が、茂みの中に入ったり樹上を見上げたりしている様子が見えた。
「……なにをしてるんだろう?」
お茶を飲み終わる頃になってもまだ何かしているので、どうしても気になった俺はフェルトの外套を纏いそっと部屋を出た。本当はパーシヴァルが来るまで部屋にいるようにと、スザンナさんに言われているんだけどね。なんでも、まだ城に滞在しているゲストもいるのだそうだ。相手は貴族なので、うっかり顔を合わせて、かしこまった会話をすることになったら面倒だけど、ちょっと庭先を彷徨くくらいならきっと大丈夫。
人目を避けながら守備よく外に出た俺は、ゴソゴソと茂みをかき回している騎士に声をかける。
「すみません、此処で何をしているんですか?」
「え? ああ、サフィラス殿でしたか。実は髪飾りを探しているのです」
「髪飾り……」
それって、もしかして俺が知っているあの金の髪飾りの事だろうか?
「なんでも、ミラー伯爵令嬢がこの辺りで竜の髪飾りを紛失したらしいのですが、なかなか見つからないのですよ」
「無くしたんじゃねぇ、わざと投げ捨てたって話だ」
茂みに頭を突っ込んでいた兵士が、苛立ったように言い放つ。城にゲストが滞在している上に、新年を控えた今は特に忙しいだろうから、余計な仕事を任されて苛々する気持ちもわかる。見つかるまでは、此処を離れるわけにはいかないだろうし。本当なら無くした……もとい、捨てたフラヴィア本人が探すべきなんだろうけど。この寒空の下、貴族のご令嬢に自分で探せとは言えないよな。
ともかく、それはやっぱり俺が知っている髪飾りだろう。だったら話は早い。一度俺が身につけたものならきっとすぐに見つけられる。
「よければお手伝いします。おいで、クー・シー」
俺は召喚陣を描くと、クー・シーを呼び出す。クー・シーなら、髪飾りに残っている俺の魔力を追うことができるからね。
「クー・シー、俺の魔力が付いた髪飾りがこの辺りにあるはずなんだ。見つけてくれないかな?」
お願いすると、クー・シーは枯れ葉の下に埋まっていた髪飾りをたちまちのうちに見つけ出してくれた。褒めてとばかりに俺の前に座って、背中に巻いた長い尾を千切れんばかりに振っている。
彼が咥えているそれは、案の定昨夜フラヴィアに毟られた髪飾りだった。
「これですか?」
見つけた髪飾りを騎士に渡す。
「……そうです、これです! 助かりました、サフィラス殿!」
「坊主、やるじゃねえか」
探し物から解放されたからか、さっきまで厳しい顔をしていた兵士の表情が和らぐ。
「お役に立てたのならなによりです。ありがとう、クー・シー。君は最高だね!」
魔力を与えながらめいいっぱい頭を撫でてやれば、クー・シーは満足そうに帰っていった。
だけどなんだってフラヴィアは髪飾りを捨てたりしたんだ。俺から奪い取るほど、欲しかった髪飾りだったんじゃないのか? 女の子の考えることは複雑でよくわからないな。
「サフィラス殿は召喚魔法も使えるのですね」
無事に探し物も見つかって本来の仕事に戻っていった騎士達を見送っていると、見知らぬ男に声をかけられた。貴族らしい佇まいから察するに、この城に滞在しているゲストの一人だろう。背が高く、身体つきもしっかりしていて、俺よりも随分と年上に見える。
「……ええ、まあ」
「昨夜の転移魔法も実に見事でした。私も多くの魔法使いを知っていますが、あなたのように詠唱もなしで、あれほど正確な転移をする魔法使いには出会ったことがありませんよ。本当に素晴らしい」
「それはどうも……」
ベリサリオ家の客人である以上、失礼な態度をとるわけにもいかないのはわかっている。だけど、にこにこと善良そうな笑みを浮かべてはいるけれど、それがなんとなく胡散臭い。ここは適当に話を切り上げて部屋に戻った方が良さそうだ。
「あの、申し訳、」
「ヴァンダーウォール辺境伯がサフィラス殿は大変優秀な魔法使いだと言っておりましたが、学院の第一学年で転移も召喚も使いこなすなんて、優秀の一言ではとても片付けられませんよ」
いとまを告げてその場を去ろうとしたけれど、俺の言葉を遮って男は尚も話を続ける。確かに俺は優秀な魔法使いだからな。将来雇いたいとかそう言う話をするつもりなのか? だったら速攻でお断りだぞ。
「それに……サフィラス殿は精霊のように美しい。その艶やかな黒髪はまさに夜の闇のようだ」
男はそう言うと、いきなり手を伸ばして無遠慮にも髪に触ろうとしたので、俺はサッと後ろに下がった。避けられたのが意外だったのか、男は少し驚いた表情を見せたけど、むしろこっちが驚きだ。よくわからない男に、そう気安く触られてたまるか。もしかしたら、昨夜エントランスで顔を合わせているのかもしれないが、紹介されていないから俺はこいつの事を全く知らない。例え紹介されていたとしても、触らせたりはしないけどな。
大体この男ときたら一見上品そうなフリをしているけれど、嘗ての婚約者と同じ目で俺を見ているじゃないか。下心が透けすぎだろう。
「……ああ! 自己紹介が遅れて申し訳ない。私はトレス侯爵家のエイダン・ロックウェルと申します」
俺の胡乱げな視線に気が付いたのか、男は行き場を無くした手を胸に当て、いささか芝居がかった調子で今更すぎる自己紹介をした。家柄を知ったら態度を軟化させるとでも思っているんだろうか。
「麗しき魔法使い殿。貴方はもっと自分の価値を知るべきだ。パーシヴァル殿は確かに優秀だが、所詮は三男です。テオドール殿とカーティス殿が居られる以上、一部隊長が精々でしょう」
おいおい、一体何の話が始まったんだ? 背中がゾワゾワするじゃないか。それに、パーシヴァルが三男である事の何が悪いんだよ。男の言いたい事はわからないが、猛烈に不愉快な気分だぞ。
「我がトレス侯爵家は、遠縁の他家より養子を迎える事もできます。ですから、嫡男が男性の伴侶を迎えることにも寛容なのですよ」
「へぇ、そうですか」
トレス侯爵家の事情など俺に聞かせてどういうつもりなんだろう。男の伴侶を迎えようが、養子を迎えようが好きにしたらいいじゃないか。俺には関係ないことだし。世間話をしたいなら、似たような立場の奴とやってくれ。
こういう変な奴がいるから、スザンナさんは部屋から出るなって言ってたんだな。この男の話に付き合う義理もないし、そろそろ部屋に帰ろう。
「話の途中ですみません。俺はもう部屋に戻りますので」
「お待ちください、サフィラス殿! 我が侯爵家は優秀な魔法使いである貴方に相応しい立場を用意できる。宝石のように美しいサフィラス殿を、私は心から愛すると誓いましょう。だから、この手を取ることを考えては頂けないだろうか?」
「はぁ?」
取り繕うことも忘れた俺は、思わず低い声を漏らしてしまった。もしかしてこの男、俺に求婚してるのか? 冗談だろう?!
「サフィラス殿」
目の前で跪いた男が、今度は俺の手を取ろうとしたので慌てて手を引っ込める。それとほぼ同時に、腰をぐいと引き寄せられて、レモネとミンタの香りがふわりと俺を包む。
「……パーシヴァル、」
「サフィラス、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
気味の悪い話はされたけどね。
「ロックウェル卿、ここで一体何をなさっておられるのです?」
男は立ち上がり膝を叩くと、俺に向けていた下心見え見えの表情を取り繕って澄ました顔を見せた。さっき、パーシヴァルは三男だから云々と言っていた時と同じ、何処となく自分が優位に立っているつもりの顔だ。パーシヴァルがまだ若いからと侮っているのかもしれない。
「我が侯爵家に来ては頂けないかと、サフィラス殿をお誘いしていたのですよ。ベリサリオ家も、お二人のことはまだ正式に発表されていないようですからね。もしかしたら、私が名乗りを上げても良いのではないかと思いまして」
俺の腰を抱いているパーシヴァルの腕にグッと力が入り、怒りの気配が伝わってきた。パーシヴァルは俺の生い立ちを知っているからな。俺が利用されそうになっているので、代わりに怒ってくれているんだろう。だけど心配しなくても大丈夫だ。冒険者になるなら、この程度は自分で対処しないと。俺は腰を抱くパーシヴァルの腕をトントンと叩くと、大丈夫の意味を込めてニカっと笑って見せた。
「俺とパーシヴァルは冒険者になるので、俺が卿のところに行くことは天地がひっくり返っても無いですよ。王太子殿下公認にて、この地での冒険者登録が認められていますし。将来、もしも何かお仕事がありましたら、ヴァンダーウォールのギルドに依頼して下さい。ご指名なら歓迎しますよ」
ただし、指名料はたんまりと頂くけどな。
「……王太子殿下公認」
王太子殿下を出したら、ナントカ卿の顔色が少し悪くなった。王家に比べたら、侯爵家の力なんてそこそこのものだ。太陽の獅子の威を借る小鼠かもしれないけど、使えるものは遠慮なく使わせてもらう。その代わり、借りた分はちゃんと返すつもりだよ。
「……あ、そうだ。俺達のパーティ名がまだだったな。どうする、パーシヴァル?」
指名をするにもパーティ名が無くっちゃね。そう思ってもう一度パーシヴァルを見上げると、何故かパーシヴァルは頬を紅く染めて、空いている方の手の甲で口元を隠していた。
あれ? 急にどうしちゃったんだ、パーシヴァル?
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