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シュテルンクスト王太子のお茶会
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「サフィラス君、」
うわ。厄介なやつに声をかけられたな、と思いながら振り向いたからだろう。そんな俺の心情が思い切り顔に出ていたらしい。
「露骨に嫌な顔をされると、さすがの私も傷つくね」
嘘を言うな。そんなこと微塵も思っていないだろう。
「一体なんのご用でしょうか?」
ご覧の通り、俺は婚約者とお茶を楽しんでいるところなんだけど?
最近の俺とパーシヴァルは、誰憚ることなく一緒にいる。これまでだって憚る必要はなかったわけだけど。そんな俺たちの邪魔をしておきながらケレイブは全く気にする様子はなく、それどころか、同席しているパーシヴァルに一切視線を向けない。
「何度かサフィラス君の部屋に伺ったのだが、留守だったものだからね」
まぁね。今俺の部屋を使っているのはクロウラーだ。いくら可愛いくて優秀なクロウラーでも、人の言葉は操れないんだ。すまないな。
「王太子殿下からこちらを預かってきた。直接サフィラス君に渡すように言われていてね」
そう言って、ケレイブは懐から何かを取り出した。なんだか派手で大袈裟な封筒だけど、これは一体なんだ? 俺が警戒して封筒に手を出さずにいれば、ケレイブはそこでようやくパーシヴァルに視線を向けた。
「王太子殿下からお茶会のご招待だ。ベリサリオ殿も是非にと仰っている。先日の詫びを兼ねてのご招待だ。ぜひとも参加して頂きたい」
杜撰な思惑が外れたので、二の矢を放ってきたと言うところだろうか。
これは是非とも行きたくないご招待だな。断るってあり?
「我が公爵家から迎えの馬車を用意する。当日はそれに乗ってきてくれたまえ」
ケレイブは招待状を半ば強引にパーシヴァルに押し付けると、案外あっさりと離れていった。この場で出欠の返事を迫られるのかなって思ったけど、今の物言いだとどうやら参加は絶対らしい。
パーシヴァルは封蝋の隙間に親指を差し込むと、かなり無造作に封筒を開封した。普通、こういうご立派な封筒ってペーパーナイフなんかを使ってうやうやしく開くものなんじゃない? 常に礼儀正しい騎士であろうとしているパーシヴァルの荒々しい一面を見たな。
パーシヴァルが取り出した中身は、封筒に負けず劣らずのご立派な招待状だった。さっと目を通したパーシヴァルの眉間に深い皺が寄る。
「俺たちはまだ成人していない。本来ならば、他国の王城に上がるならば母国の大使か、滞在国で後ろ盾となっている貴族が付き添うものだが……しかし、招待されているのは俺たちだけのようだな」
ソルモンターナの王室は、シュテルンクルストの王室とそれほど親しいわけじゃない。しかも、この国に俺たちの後ろ盾になってくれた貴族なんていたか? いや、いない。
そんな状態で、一介の学生でしかない俺たちだけが王城に招待されているわけか。しかも、お茶会の開催はわずか3日後。そんな短期間では母国や生家に連絡を取ることもできない上に、招待状を送ってきた相手が王太子では欠席することも難しい。普通の留学生だったら、まず対応できないだろう。底意地が悪いったらないな。
そして、いつもの俺ならこのまま何も考えずに招待に応じて、何かあれば魔法でどうにかすればいいやと思っていただろう。だけど、今の俺は以前までの俺とは違うぞ。
「ねぇ、パーシヴァル、」
「そうだな。茶会の前に一度ヴァンダーウォールに戻ろう」
やっぱりそうだよね!
俺たちは頷き合うと、席を立った。
「まぁ! サフィ! お帰りなさい! 元気そうで嬉しいわ!」
ベリサリオの城に転移すると、アデライン夫人が出迎えてくれた。相変わらず細腕のどこにそんな力があるのかと思うほど強く抱きしめられる。
「ふぎゅ……!」
「奥様、サフィラス様が窒息してしまいます!」
あわや窒息かというところを、スザンナさんのおかげでなんとか免れる。歓迎してもらえるのは嬉しいけれど、もう少しお手柔らかにお願いしたい。全身の骨が折れるかと思った……
「あ、あら……ごめんなさいね。帰ってきてくれたのが嬉しくて、つい……パーシィもよく帰ってきてくれました」
「母上。父上と今すぐに話をしたいのですが」
挨拶もそこそこにパーシヴァルが言えば、笑顔だったアデライン夫人がガラリと表情を変えた。
「わかりました。すぐに戻ってきていただきましょう。ジェイコブ」
「はい、奥様」
側に控えていたジェイコブが素早くエントランスから外へ出ていく。きっとヴァンダーウォール卿を呼びに行ったんだろう。
俺たちはアデライン夫人にヴァンダーウォール卿の執務室へと案内される。スザンナさんがお茶を用意してくれたけど、それほど待つことなくヴァンダーウォール卿が戻ってきた。隊服を着ているところを見ると、訓練場にいたんだろう。
「待たせてすまない。して、一体何事だ? 先日の件に関わることか?」
「これを」
パーシヴァルがケレイブから渡された招待状を差し出す。その封筒の仰々しさに僅かに目を見張りつつも、中の招待状を見たヴァンダーウォール卿は眉間に深い皺を刻んだ。やっぱり親子だな。パーシヴァルと同じ反応だ。
「これは……」
「一体なんですの?」
ヴァンダーウォール卿は手にしていた招待状を黙ってアデライン夫人に渡す。さっと目を通した夫人の眦が、わかりやすく跳ね上がった。
「……これは随分とわたくしたちを侮ったご招待ね」
「うむ……状況はよくわかった。こちらも打てる手は全て打つが、万が一の際に状況を判断して動けるのはパーシヴァル、お前だけだ。相手は他国の王族、しかも王太子。難しい判断を迫られる可能性がある」
「はい」
パーシヴァルが神妙に頷く。
権力を持っている奴が愚かだと本当に厄介だ。そんな厄介者からの招待に応じる必要はないと思うけど、今の俺は自由気ままな冒険者じゃなく、ソルモンターナの有力貴族から援助を得ている学生で、さらには国境を護る辺境伯家と縁を結ぶことになっている身だ。両家とも大恩があるので、迷惑はかけられない。だから、何かあったとしてもいきなり力技は使わないようにしないとね。せめて隠蔽できる程度で収まるように気をつけよう。
デジェネレス公爵家の立派な馬車に揺られてシュテルンクストの城にやってきた俺たちは、待ち構えていた従僕にお茶会の会場まで案内されている。随分と城の奥まで来たような気がするけど、そこに意図的なものを感じるのは気のせいかな?
「サフィラス、何があっても俺の側を離れないでくれ」
パーシヴァルも何か感じたのか、真っ直ぐ前を見据えたまま小さく囁く。
「勿論」
俺だってパーシヴァルの側を離れるつもりはない。敵が何かを仕掛けるとしたら、まず俺とパーシヴァルの分断を考えるはず。だけど、俺は何があってもパーシヴァルを守るからな。
ヴァンダーウォール卿は、連絡役として二人の騎士を俺たちに同行させてくれた。彼らは今ケルサスで待機してくれている。パーシヴァルは一体どこで風隼を飛ばしたんだろうかと思っていたけれど、街の中にはこの国の民に交じって辺境伯の連絡係がいるんだって。確かに表向きは平和とはいえ、何をしでかすかわからない国だ。警戒していて当然だった。
「どうぞ、こちらでございます」
案内された会場はそこそこ広く、天窓から光が差し込んで明るく開放感がある。すでに客人たちは揃っているようで、花で飾られたテーブルでは家格の高そうな貴族たちが和やかに会話を楽しんでいたけれど、俺たちが入室すると、侮るような値踏みするような、なんとも形容し難い視線が向けられた。
今日の衣装はアデライン夫人がしっかりと揃えてくれた。ヨールのパーティの時ほど派手ではないけれど、やっぱり対の衣装になっている。婚約した俺たちが、いつどんな招待を受けるかわからないからと衣装の準備はしていたんだとか。まさかその準備がこんな形で役に立つとは思わなかったと、アデライン夫人は深いため息をついていた。
そんなわけで、やんごとなきお方からの急な招待だったけど、俺たちの支度に抜かりはない。
不躾な貴族たちの視線を集めている俺たちの元に、胡散臭い笑みを浮かべたケレイブがやってくる。
「サフィラス君、待っていたよ。さぁ、こちらへ。王太子殿下に君たちを紹介しよう」
そういえば俺はこの国の王太子の顔を知らないな。名前すら知らないけど、まぁいいか。どうせこれから挨拶をするんだ。
「殿下。サフィラス君とヴァンダーウォール辺境伯子息ベリサリオ卿がいらっしゃいました。サフィラス君、こちらが我がシュテルンクスト王国王太子であらせられる、エイドリアン・アエテルニタス・シュテルンクスト殿下だ」
「サフィラス殿、そしてベリサリオ卿、よくきてくれたね。私がエイドリアンだ」
一番奥の席に座っている男は、この国の直系の王族に出やすい燃えるような赤い髪と金色の瞳をしていた。それなりに鍛えているのか、体格はしっかりしている。年齢は二十をそこそこといったところかな?
「本日はお招き下さりありがとうございます」
「サフィラス殿とは一度ゆっくりと話をしたかったのだがね。その前に、我が臣下が随分と失礼な態度をとったようだ。厳重に注意しておいたので、許してやってほしい」
多分、ソルモンターナから何某かの抗議があったんだろう。この場で形だけでも丸く収めておこうってことか。
「……結果として、女神のご意志は私の側にあったようですので、なんら問題はございません」
俺的に問題はなかった。だけど、許す許さないの話をするつもりはないと言外に込める。そんな俺の答えに周囲がざわつく。他国の小僧風情が不敬な! ってところかな? だけど、地味に嫌がらせをされていた俺にはそれくらい言う権利はあると思うよ。
「これはこれは、手厳しいな!」
ところが、周囲の反応に対してエイドリアンはさほど気にした様子もなく笑って受け流した。なるほど、直情的な性格ではないらしい。
「サフィラス殿は甘味が好きだと聞いている。せめてもの詫びだと思って、今日は我が国のお茶と菓子を存分に楽しんでいって欲しい」
……へぇ、随分と俺のことを調べ上げてるな。俺はエイドリアンのことをこれっぽっちも知らないのに。まぁ、知る必要もないんだけど!
うわ。厄介なやつに声をかけられたな、と思いながら振り向いたからだろう。そんな俺の心情が思い切り顔に出ていたらしい。
「露骨に嫌な顔をされると、さすがの私も傷つくね」
嘘を言うな。そんなこと微塵も思っていないだろう。
「一体なんのご用でしょうか?」
ご覧の通り、俺は婚約者とお茶を楽しんでいるところなんだけど?
最近の俺とパーシヴァルは、誰憚ることなく一緒にいる。これまでだって憚る必要はなかったわけだけど。そんな俺たちの邪魔をしておきながらケレイブは全く気にする様子はなく、それどころか、同席しているパーシヴァルに一切視線を向けない。
「何度かサフィラス君の部屋に伺ったのだが、留守だったものだからね」
まぁね。今俺の部屋を使っているのはクロウラーだ。いくら可愛いくて優秀なクロウラーでも、人の言葉は操れないんだ。すまないな。
「王太子殿下からこちらを預かってきた。直接サフィラス君に渡すように言われていてね」
そう言って、ケレイブは懐から何かを取り出した。なんだか派手で大袈裟な封筒だけど、これは一体なんだ? 俺が警戒して封筒に手を出さずにいれば、ケレイブはそこでようやくパーシヴァルに視線を向けた。
「王太子殿下からお茶会のご招待だ。ベリサリオ殿も是非にと仰っている。先日の詫びを兼ねてのご招待だ。ぜひとも参加して頂きたい」
杜撰な思惑が外れたので、二の矢を放ってきたと言うところだろうか。
これは是非とも行きたくないご招待だな。断るってあり?
「我が公爵家から迎えの馬車を用意する。当日はそれに乗ってきてくれたまえ」
ケレイブは招待状を半ば強引にパーシヴァルに押し付けると、案外あっさりと離れていった。この場で出欠の返事を迫られるのかなって思ったけど、今の物言いだとどうやら参加は絶対らしい。
パーシヴァルは封蝋の隙間に親指を差し込むと、かなり無造作に封筒を開封した。普通、こういうご立派な封筒ってペーパーナイフなんかを使ってうやうやしく開くものなんじゃない? 常に礼儀正しい騎士であろうとしているパーシヴァルの荒々しい一面を見たな。
パーシヴァルが取り出した中身は、封筒に負けず劣らずのご立派な招待状だった。さっと目を通したパーシヴァルの眉間に深い皺が寄る。
「俺たちはまだ成人していない。本来ならば、他国の王城に上がるならば母国の大使か、滞在国で後ろ盾となっている貴族が付き添うものだが……しかし、招待されているのは俺たちだけのようだな」
ソルモンターナの王室は、シュテルンクルストの王室とそれほど親しいわけじゃない。しかも、この国に俺たちの後ろ盾になってくれた貴族なんていたか? いや、いない。
そんな状態で、一介の学生でしかない俺たちだけが王城に招待されているわけか。しかも、お茶会の開催はわずか3日後。そんな短期間では母国や生家に連絡を取ることもできない上に、招待状を送ってきた相手が王太子では欠席することも難しい。普通の留学生だったら、まず対応できないだろう。底意地が悪いったらないな。
そして、いつもの俺ならこのまま何も考えずに招待に応じて、何かあれば魔法でどうにかすればいいやと思っていただろう。だけど、今の俺は以前までの俺とは違うぞ。
「ねぇ、パーシヴァル、」
「そうだな。茶会の前に一度ヴァンダーウォールに戻ろう」
やっぱりそうだよね!
俺たちは頷き合うと、席を立った。
「まぁ! サフィ! お帰りなさい! 元気そうで嬉しいわ!」
ベリサリオの城に転移すると、アデライン夫人が出迎えてくれた。相変わらず細腕のどこにそんな力があるのかと思うほど強く抱きしめられる。
「ふぎゅ……!」
「奥様、サフィラス様が窒息してしまいます!」
あわや窒息かというところを、スザンナさんのおかげでなんとか免れる。歓迎してもらえるのは嬉しいけれど、もう少しお手柔らかにお願いしたい。全身の骨が折れるかと思った……
「あ、あら……ごめんなさいね。帰ってきてくれたのが嬉しくて、つい……パーシィもよく帰ってきてくれました」
「母上。父上と今すぐに話をしたいのですが」
挨拶もそこそこにパーシヴァルが言えば、笑顔だったアデライン夫人がガラリと表情を変えた。
「わかりました。すぐに戻ってきていただきましょう。ジェイコブ」
「はい、奥様」
側に控えていたジェイコブが素早くエントランスから外へ出ていく。きっとヴァンダーウォール卿を呼びに行ったんだろう。
俺たちはアデライン夫人にヴァンダーウォール卿の執務室へと案内される。スザンナさんがお茶を用意してくれたけど、それほど待つことなくヴァンダーウォール卿が戻ってきた。隊服を着ているところを見ると、訓練場にいたんだろう。
「待たせてすまない。して、一体何事だ? 先日の件に関わることか?」
「これを」
パーシヴァルがケレイブから渡された招待状を差し出す。その封筒の仰々しさに僅かに目を見張りつつも、中の招待状を見たヴァンダーウォール卿は眉間に深い皺を刻んだ。やっぱり親子だな。パーシヴァルと同じ反応だ。
「これは……」
「一体なんですの?」
ヴァンダーウォール卿は手にしていた招待状を黙ってアデライン夫人に渡す。さっと目を通した夫人の眦が、わかりやすく跳ね上がった。
「……これは随分とわたくしたちを侮ったご招待ね」
「うむ……状況はよくわかった。こちらも打てる手は全て打つが、万が一の際に状況を判断して動けるのはパーシヴァル、お前だけだ。相手は他国の王族、しかも王太子。難しい判断を迫られる可能性がある」
「はい」
パーシヴァルが神妙に頷く。
権力を持っている奴が愚かだと本当に厄介だ。そんな厄介者からの招待に応じる必要はないと思うけど、今の俺は自由気ままな冒険者じゃなく、ソルモンターナの有力貴族から援助を得ている学生で、さらには国境を護る辺境伯家と縁を結ぶことになっている身だ。両家とも大恩があるので、迷惑はかけられない。だから、何かあったとしてもいきなり力技は使わないようにしないとね。せめて隠蔽できる程度で収まるように気をつけよう。
デジェネレス公爵家の立派な馬車に揺られてシュテルンクストの城にやってきた俺たちは、待ち構えていた従僕にお茶会の会場まで案内されている。随分と城の奥まで来たような気がするけど、そこに意図的なものを感じるのは気のせいかな?
「サフィラス、何があっても俺の側を離れないでくれ」
パーシヴァルも何か感じたのか、真っ直ぐ前を見据えたまま小さく囁く。
「勿論」
俺だってパーシヴァルの側を離れるつもりはない。敵が何かを仕掛けるとしたら、まず俺とパーシヴァルの分断を考えるはず。だけど、俺は何があってもパーシヴァルを守るからな。
ヴァンダーウォール卿は、連絡役として二人の騎士を俺たちに同行させてくれた。彼らは今ケルサスで待機してくれている。パーシヴァルは一体どこで風隼を飛ばしたんだろうかと思っていたけれど、街の中にはこの国の民に交じって辺境伯の連絡係がいるんだって。確かに表向きは平和とはいえ、何をしでかすかわからない国だ。警戒していて当然だった。
「どうぞ、こちらでございます」
案内された会場はそこそこ広く、天窓から光が差し込んで明るく開放感がある。すでに客人たちは揃っているようで、花で飾られたテーブルでは家格の高そうな貴族たちが和やかに会話を楽しんでいたけれど、俺たちが入室すると、侮るような値踏みするような、なんとも形容し難い視線が向けられた。
今日の衣装はアデライン夫人がしっかりと揃えてくれた。ヨールのパーティの時ほど派手ではないけれど、やっぱり対の衣装になっている。婚約した俺たちが、いつどんな招待を受けるかわからないからと衣装の準備はしていたんだとか。まさかその準備がこんな形で役に立つとは思わなかったと、アデライン夫人は深いため息をついていた。
そんなわけで、やんごとなきお方からの急な招待だったけど、俺たちの支度に抜かりはない。
不躾な貴族たちの視線を集めている俺たちの元に、胡散臭い笑みを浮かべたケレイブがやってくる。
「サフィラス君、待っていたよ。さぁ、こちらへ。王太子殿下に君たちを紹介しよう」
そういえば俺はこの国の王太子の顔を知らないな。名前すら知らないけど、まぁいいか。どうせこれから挨拶をするんだ。
「殿下。サフィラス君とヴァンダーウォール辺境伯子息ベリサリオ卿がいらっしゃいました。サフィラス君、こちらが我がシュテルンクスト王国王太子であらせられる、エイドリアン・アエテルニタス・シュテルンクスト殿下だ」
「サフィラス殿、そしてベリサリオ卿、よくきてくれたね。私がエイドリアンだ」
一番奥の席に座っている男は、この国の直系の王族に出やすい燃えるような赤い髪と金色の瞳をしていた。それなりに鍛えているのか、体格はしっかりしている。年齢は二十をそこそこといったところかな?
「本日はお招き下さりありがとうございます」
「サフィラス殿とは一度ゆっくりと話をしたかったのだがね。その前に、我が臣下が随分と失礼な態度をとったようだ。厳重に注意しておいたので、許してやってほしい」
多分、ソルモンターナから何某かの抗議があったんだろう。この場で形だけでも丸く収めておこうってことか。
「……結果として、女神のご意志は私の側にあったようですので、なんら問題はございません」
俺的に問題はなかった。だけど、許す許さないの話をするつもりはないと言外に込める。そんな俺の答えに周囲がざわつく。他国の小僧風情が不敬な! ってところかな? だけど、地味に嫌がらせをされていた俺にはそれくらい言う権利はあると思うよ。
「これはこれは、手厳しいな!」
ところが、周囲の反応に対してエイドリアンはさほど気にした様子もなく笑って受け流した。なるほど、直情的な性格ではないらしい。
「サフィラス殿は甘味が好きだと聞いている。せめてもの詫びだと思って、今日は我が国のお茶と菓子を存分に楽しんでいって欲しい」
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