地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

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第四章 私たちが歩む道

62.美術館デート

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 チケットを購入して、二人でゆっくりと作品を見ていく。
 老若男女、色々な年齢層の人が見に来ていて人気があるんだなあ。
 でも、混みすぎず少なすぎずだから、割合的にはちょうど良いくらいで見やすい感じ。

「絵だけじゃなくて、建造物も作られる方でしたよね」
「有名だからな。絵は個性的だが、訴えかけてくるものがあって自分的には好みだ」

 確かに正直説明があっても、どこを示しているのか分からない作品も多い。
 それでも顔と言われればここが目で鼻でと分かるレベルだから、個性的だけど可愛い感じもする。

「この椅子とか可愛い。座っていいみたいですよ?」

 手の形を模したベンチのような椅子は二人掛けで、ここでは座ることも許されているみたい。
 子どもたちがはしゃいで写真撮影が終わったところを見計らって、展示物のスペースへと降りていく。

「折角ですし、写真撮りましょう」
「写真とは、作品ではなく私たち、ということか?」

 笑顔で頷くと、渋っていた秦弥さんも納得してくれた。
 早くしないと次の人たちが来ちゃうし、急いで携帯を構える。

「分かった。私が持つから、もう少しこちらに」

 私から携帯を受け取って、秦弥さんが代わりに私たちが入るように腕を伸ばしてくれる。
 二人でフレーム入るように、うまく自撮りの位置に体を寄せていく。

 よさそうなポイントで秦弥さんが携帯をタッチする。

「これでいいだろうか」

 携帯を渡されたので、改めて写真を確認する。
 そこには嬉しそうに身体を寄せる私と、少し恥ずかしそうにしているけど微笑している秦弥さんが写っていた。

「良かった。いい感じで写真が撮れてますから、このままどんどんいきましょう」
「撮影班も大変だな。折角来たのだから、撮れる時には撮ろうか」

 作品のことなのか、私たちのことかは分からないけれど。
 秦弥さんがそこまで拒否したりしないなら、私は写真を撮って楽しい時を残しておきたい。

 この後も作品の前でポーズをして撮ったり、素敵な作品たちを写真に収めて楽しい時間を過ごすことができた。
 回っているとあっという間に終わってしまって、また入口まで戻ってきてしまう。

「折角ですし、グッズも見ていきましょう」
「そうだな。何か琴線に触れるものが売っているかもしれないからな」

 最後にグッズも一通り眺める。
 作品を模した小さなぬいぐるみは可愛かったけど、こういうのって買いすぎるとぬいぐるみだらけになっちゃうんだよね。
 諦めて、無難なクリアファイルを何枚か買っておく。
 これなら仕事でも使えるし、見るたびに楽しくなりそう。

「秦弥さんも、グッズ買いますか?」
「そうだな……風音が買った同じものを購入してもいいが、今日は作品集の本にしておこう」

 分厚い本を手に取ると、本当にレジに向かっていく。
 本となると好きじゃないとなかなか買わないから、この人の作品が気に入っているんだろうな。
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